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博 士 ( 工 学 ) 渡 辺 秀 行 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 渡 辺 秀 行

学 位 論 文 題 名

センサ・アレーによる音源方位推定手法の高性能化に関する研究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  セ ンサ( マイ ク口ホ ン). アレー を用いて複数の入射音響信号の音源の位置を推定する問題(音 源 定位問 題)は ,ソナ ーや 地震波 解析な ど,多 方面 の音響 信号処 理分野 で古く から重要な問題で あ る。中 でも音 源がア レー から十 分遠方 にある と仮 定した 場合の ,平面 波入射 信号の音源方位推 定 は,音 源定位 問題に 対し て基礎 となる ものであり,極めて重要な問題である。この問題に対し,

限 られた 量のデ 一夕か ら精 度よく かつ高 速に音 源方 位を推 定する 手法の 研究が 近年盛んに行われ て いる。

  最 も古典 的な 手法の ーっと して, ビーム フオ ーミン グ法が あり, 現在 も広く 一般に用いられて い る。こ の手法 では, 方位 分解能 がセン サ素子 数に より制 限され ,セン サ素子 数の少ないアレー を 用いて 高い方 位分解 能を 得るこ とは困 難であ る。

  こ の従来 のビ ームフ ォーミ ングに 比べて 卓越 した分 解能が 得られ るよ うな音 源方位推定手法,

い わゆる 高分解 能手法 が数 多く提 案され ている 。高 分解能 手法の 中で特 に精度 が良いアルゴリズ ム と し てMUSICア ル ゴ リ ズ ム が 知 ら れ て い る 。MUSICは , い わ ゆ る し き い 値 領 域 ( 低SNR の 時また は少数 デー夕 ・サ ンプル の時) におい て分 解能及 び推定 精度の 劣化が 著しい。また,信 号 の 伝 達 がマ ル チ パ ス 伝達 で あ る 時 に 起こ る , コ ヒ ーレ ン卜入 射信号 に対し ,MUSICを単 独で 適 用する ことは 困難で ある 。この 解決法 として 空間 スム― ズィン グと呼 ばれる 前処理が提案され て いるが ,推定 精度・ 分解 能の点 で良好 な手段 とは 言えな い。

  こ の アプ 口 ― チ と は別 に , 音 源 方位 推 定 問 題 への 最 大尤 度法( 最尤法 ,ML)の適 用も検 討さ れ てきた 。最尤 法によ る音 源方位 推定法 は,コ ヒー レント 入射信 号に対 しても 単独で適用可能で あ り , し き い 値 領域 に お い てMUSICより も 高 分 解 能・ 高 推 定 精 度 であ る 。 し か し最 尤 法 は , 多 次元の 非線形 最適化 問題 を含む ため一 般に膨 大な 計算量 が必要 である 。最尤 推定を効率的に行 う 手 法 と し て ,ZiskindとWaxに よ るAP(Alternating Projection)ア ルゴ リ ズ ム ナ ょど が 提 案 されて いるが ,やは り計 算量が 膨大で ある。

  本 論文で は, 分解能 が高く ,推定 精度が 良好 で,か つ計算 量が少 ない 音源方 位推定手法の確立

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を目標 とし, 高分解 能・高 推定 精度を 有する 最大尤 度法 に着目 し,最 尤音源 方位推 定を少ない計 算量で 行うた めのア ルゴリ ズム を考察 する。 ここで は基 礎的な ものと して, 等間隔 直線センサ・

アレー を対象 にする 。

  第2章 では ,等 間隔直 線ア レーの 各セン サ素子 で得 られる デ―夕 の定式 化を行 う。 ここで は,

得られ る実デ ータに 基づい てデ ータの 複素表 現によ る定 式化を 行う。

  第3章 では ,等 間隔直 線ア レーの 場合に おける ,最 大尤度 法によ る音源 方位推 定問 題の定 式化 を行う 。尤度 関数の 最大化 問題 は一般 に多次 元の後 雑な 最適化 計算を 必要と するが ,アレーの形 状を巧 みに利 用する ことに より ,,最 尤法の評価基準が,多項式係数をパラメ一夕とした評価関数 となり ,方位 推定値 が多項 式零 点から 容易に 求まる こと を示す 。最終 的に最 尤音源 方位推定問題 は , 係 数 に 対 応 す る 実 ベ ク ト ル に よ る 制 約 条 件 な し の 最 適 化 問 題 に 帰 着 す る 。   第4章 では , セ ン サ 素子 数 が 入 射信 号数よ り1個だけ 多い場 合にお いて ,複雑 な非線 形計算 を 回避す る手法 を示す 。本手 法で は最適 ペクト ルが実 対称 行列の 固有ベ クトル で与え られるため,

計 算 量 が 少 ない 。 シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 実 験 によ り , 本 手 法がMUSICア ル ゴ リ ズム よ り 高 精 度 で あり,APアルゴ リズ ムより 計算量 が少な いこと を示 す。

  第5章 では , ア レ 一 全体 を 入 射 信 号 数よ り1個 だ け多 い セ ン サ 素子 数 を 有 す る複数 のサブ ア レーに 分割す ること により ,セ ンサ素 子数の 増加が 可能 な手法 を示す 。この 手法は ,真の最尤推 定法 の 近 似 である が,4章の 手法 を活用 できる ため, 非線形 最適 化問題 の回避 が可能 であ る。シ ミュ レ ー シ ョ ン実 験 に よ り ,本 手 法がAPアルゴ リズ ムより 計算量 が少な いこと を示 す。ま た、

サ ブ ア レ ー 分 割 はAPア ル ゴ リ ズ ム に 比 べ 推 定 精 度 の 劣 化 を 招 く こ と を 示 す 。   第6章では ,効率 的な繰 り返 し計算 を導入 するこ とによ り, サブアレー分割を必要としナょい手 法にっ いて示 す。こ の手法 は, 各繰り 返しス テップ が実 対称行 列の固 有ベク トル計 算で成り立っ て い る た め ,計 算 量 が 少 な い。 シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 実 験 によ り , 本 手 法がMUSICア ル ゴ リ ズ ム より 高 精 度 で あり ,APア ルゴ リ ズ ムより 計算量 が少 ないこ とを示 す。ま た,こ の手 法が, 評価 係数 の 正 確 な 微分 を 考 慮 し てい な い た め ,推 定 値 が 真 の 最尤 推 定 値 か らず れ るこ とを 示す。

  第7章 では , 評 価 係 数の 正 確 な 微分 を考慮 するこ とによ り, 第6章 の手 法にお ける最 尤推定 値 からの ずれを 削除す る手法 を示 す。こ の手法 も,実 対称 行列の 固有ベ クトル 計算に 基づいている ため , 計 算 量 が少 な い 。 シ ミュ レ ー シ ョ ン実 験 に よ り ,本 手法が ,MUSICアル ゴリズ ムより 高 精 度 で あ り ,APア ル ゴ リズ ム よ り 計 算量 が 少 な く , ある し き い 値 以上 のSNRで 正 確 な 最 尤 推 定値を 与える ことを 示す。 また この手 法は, 繰り返 し計 算の収 束性が 考慮さ れてい ないため,低 SNRな どの悪 条件で 真の最 尤推 定か行 えない 場合が あるこ とを 示す。

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  第8章 でtま,評 価関数 の勾配 の効 率的な 計算法 を示し ,最尤 音源 方位推 定問題に勾配法を適用 す る。こ こでは ,勾配 法の 中で収 束性・ 効率性 が最 も優れ ている と言わ れる準二ユートン法を適 用 し た 推 定手 法 を 中 心 に議 論 す る 。 シ ミュ レ ー シ ョ ン実 験 に よ り ,本 手 法 がMUSICア ルゴ リ ズ ム よ り 高 精 度 で あ り ,APア ル ゴリ ズ ム よ り 計算 量 が 少 な く,7章 の 手 法に 比 べ 低SNRに お い て安定 した最 尤推定 を行 えるこ とを示 す。

  第9章では ,最 尤法に よる音 源方位 推定 を適応 的推定 問題に 拡張す るこ とを試 みる。 適応的 音 源 方位推 定は, 時変の 音源 方位を 実時間 で推定 した い場合 (方位 トラッ キング問題)などに対し 有 効 で あ る。 こ こ で は ,第6章 の固有 ベクト ル計算 繰り返 し法 ,およ び第8章の 準二ユ ートン 法 に よる 方法 を適応 推定の 形式に 拡張し た2っのア ルゴ リズム にっい て論ず る。 シミュ レーシ ョン に より, これら2っ のアル ゴルズ ムの 有効性 を示す 。

  最 後 に, 第10章で , 本 研 究 の 成果 に っ い て 要約 し , 今 後 に残 さ れ た課 題にっ いて述 べる 。   本 研究で は, 等間隔 直線ア レーの 場合に おい て,最 大尤度 推定法 に着 目し,計算量の削減をは か り,高 分解能 ・高推 定精 度かっ 少計算量の音源方位推定手法が得られた。またこのことにより,

高 性能な 適応的 音源方 位推 定手法 が構築 された 。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    永 井 信 夫 副 査    教 授    伊 藤 精 彦 副 査    教 授    小 川 吉 彦 副 査    教 授    栃 内 香 次 副査    助教授   三木信弘

  セン サ゜ア レーに より複 数の 平面波 入射信 号の音 源方 位を推 定する 問題は,多方面の音響信号 処理分 野で 重要な 問題で ある。 この 問題に 対し, 限られ た量の デー タから高精度・高速に音源方 位を推 定す る手法 の研究 が,テ レビ 会議や 移動体 通信の 需要の 増大 に相まって,近年盛んに行わ れてい る。

  最大 尤度法 による 音源方 位推 定手法 は,雑 音環境 下に おいて 方位分 解能や推定精度で優れてい るが, 一般 に膨大 な計算 量を必 要と する。

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  本論文 は,最 尤音 源方位 推定を 少ない 計算量 で行 うアル ゴリズ ムを論 ずる もので ある。ここで は基礎 的なも のとし て等間 隔直 線アレ ーを対 象にし てい る。

  第2章 では , 等間 隔直線 アレー で得ら れる デ一夕 のモデ リング を行 う。こ こでは ,デー タの複 素表現 モデル を導い ている 。

  第3章 では , 等間 隔直線 アレー の場合 にお ける, 最大尤 度法に よる 音源方 位推定 問題の 定式化 を行っ ている 。アレ ーの形 状を 巧みに 利用す ること によ り,最 尤法の 評価基 準が, 多項式係数を パラメ一夕とした評価関数となり゛,方位推定値が多項式零点から容易に求まることを示している。

最終的 に最尤 音源方 位推定 問題 ほ,係 数に対 応する 実ベ クトル による 制約条 件なし の最適化問題 に帰着 されて いる。

  第4章 では , セ ン サ 素子 数 が 入 射 信号数 より1個だ け多い 場合 におい て,複 雑な非 線形 計算を 回避す る手法 を提案 してい る。 本手法 では最 適ベク トル が実対 称行列 の固有 ベクト ルで与えられ るため ,計算 量が少 ない。 実験 (シミ ュレー ション )に より, 本手法 が従来 の最尤 推定アルゴル ズ ム (APア ル ゴ リ ズ ム ) よ り 計 算 量 が 大 幅 に 少 な い ( 約1000分 の1) こ と が 示 さ れ た 。   第5章 では , ア レ ー 全体 を 「 入 射 信号数 十1」個の センサ 数の 複数サ ブアレ ーに分 割す ること により ,全セ ンサ数 の増加 が可 能であ りかっ 非線形 最適 化を回 避する 手法を 提案し ている。実験 によ り , 本 手 法がAPよ り 大幅 に 少 ない 計算 量で最 尤推定 値の近 似値 を与え ること が示さ れた。

  第6章 では , 固有 ベクト ル計算 の繰り 返し による 計算量 の少な い手 法を提 案して いる。 実験に よ り , 本 手 法 が5章 の 手 法 よ り 精 度 が 良 く ,APよ り 少 な い 計 算 量 ( 約1/100〜1/1000)で 最尤法 の近似 解を与 えるこ とが 示され た。

  第7章 では ,6章 の 手法 を 改 良 し ,正 確な最 尤音源 方位推 定値 を少な い計算 量で求 める 手法を 提 案 し て い る 。 実 験 に よ り , 本 手 法 がAPよ り 少 な い 計 算 量 ( 約1/10〜1/300)で 正 確な 最 尤推定 値を与 えるこ とが示 され た。

  第8章 では , 評価 関数の 勾配の 効率的 な計 算法を 示し, 勾配法 の中 で収束 性・効 率性が 最も優 れてい ると言 われる 準ニュ ート ン法を 適用し た推定 手法 を提案 してい る。実 験によ り,本手法が APよ り 少 な い 計 算 量 ( 約1/10‑‑1/100)で ,7章 の 手 法 に 比 べ 安 定に , 正 確 な 最 尤推 定 値 を与え ること が示さ れた。

  第9章 では , 時 変 方 位の 実 時 間 推 定 のた め に ,6章お よ び8章 の手法 それぞ れを適 応的 音源方 位推 定 ア ル ゴ リズム に拡張 してい る。 実験に より, これら2っ のアル ゴリズ ムの 有効性 が示さ れ ている 。

  最後に ,第10章で, これま での章 を総 括し, 本研究 の成果 にっい て要 約し, 今後に 残された課

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題にっいて述べている。

  以上のように本論文では,高分解能・高推定精度かつ計算量の少ない音源方位推定手法および 高性能な適応推定手法を提案し,多くの新知見を得ており,音響信号処理および電子工学に寄与 するところが大きい。よって著者は,博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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