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博士(工学)渡辺千明 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)渡辺千明 学位論文題名

大規模な地震災害時における全国レベルでの      後方支援則に関する研究

学位論文内容の要旨

本 論 文 は 、 大 規 模 な 地 震 災 害 時 に お け る 全 国 を 一 単 位 と し た 自 治 体 に よる 被災 自治 体 支援 の実 施 を 提 案 す る も の で ある 。我 が 国の 防災 対策 の基 本 は、 被災 自治 体 の「 自助 努力 」に よ る対 応で あ る 。 し か し 、1995年 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 の 例 で も 明 ら か な よ う に 、 大 規模 かつ 広域 災 害は 単一 自 治 体 の 範 囲 内 で は 収ま らず 、 応急 活動 の全 てを 被 災自 治体 が行 う こと は不 可能 であ る 。ま た、

被 災 地 域 全 体 を 把 握 し、 場当 た り的 対応 では なく 、 復旧 ・復 興シ ナ リオ のも とビ ジョ ン をも って 対 応 す る 総 合 調 整 機 能が 必要 不 可欠 であ るこ とも 明 らか とな った 。 そこ で本 論文 では 、 全国 を一 単 位 と し て 把 握 し 、 被害 の無 い 地域 から 緊急 対応 資 源を 効率 的に 投 入・ 配分 する 方策 、 すな わち 後方支援の方法を 一防災対策として提案するも のである。

本 論 文 は 、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 後 の 全 国 の 自 治 体 に よ る 被 災 地 支 援 の 実 態分 析を アン ケ ート 調査 と 文 献 調 査 に よ っ て 、ま た現 在 の自 治体 状況 の解 析 を統 計資 料を 用 いて 行い 、そ れら を もと に、

次 の 大 規 模 災 害 時 へ の実 用化 に 向け て後 方支 援則 の 数式 化を 行っ て いる 。さ らに この 後 方支 援則 を用いたシュミレ ーションにより、マグニチュードと被害量・支援量の関係や圏域と支援依存度の関係を 明らかにしている 。また、全国規模で被災自治体の支援を行うことが事前準備に重きをおく従来の防災対 策に比して、迅速 かつ組織的・効率的な対策で あることを示している。さ らに、全国レベルでの社会資 源の把握と分配を 基本としており、その応用と して地震災害に限らず他の 大規模災害にも適応可能とな ることを示唆して いる。以下に各章の要約を記 す。

筮! 童 では 、本 研究 の背 景 とこ れま での 自治 体 の被 災地 対応 の問題点を整理 し、本研究の目的と意 義 を 明 示 し て い る 。 ま た 、 本 研 究 の 手 順 と 本 論 文 の 構 成 ・ 概 要 を 述 べ て い る 。 筮呈 童 では 、地震防災 における後方支援の役割に関 して整理・分析を行ってい る。支援を提供する内 容により、人的支援 ・物的支援・施設供与・経済支援に分類し、発災から復興に至る各時期において必要 となる支援内容の整 理を行っている。また自治 体問の支援の動因を、要請・事前協定・独自決定に分類 し、その長所と短所に関して整理している。さらに、支援主体を自治体・企業・NPOに分類し、阪神・淡路 大震 災 前後 の各主体の 対応や問題点の整理を行って いる。最後に以上の整理・ 分析をふまえて、相互 支援の必要性を述ベ 、問題提起している。

筮量 童 では 、1995年 阪神 ・ 淡路 大震 災に おけ る 被災 地支 援の 実態調査・文献 整理の結果を示してい る。実態調査では、 都道府県と市町村という2種 類の支援主体に分けて、支 援実施側の実態を分析して     ―1067―

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いる 。その 結果、 都道府 県は専 門職員 の派遣 や市町 村間の調整に重要を役割があることを明らかにして いる 。また 市町村 では、 自治体 の規模 や被災 地から の距離が支援実施率に関わっていることを明らかに して いる。また、平常時の交流や過去に受けた支援の経験が、支援実施率に影響することも明らかにして いる 。一方 、被支 援側の 報告書 や統計 資料を 分析す ることにより、地域的あるいは時間的に支援の過不 足が 存在したことを明らかにしている。これらの実態分析を通して、阪神・淡路大震災における被災地へ の後方支援の評価と今後の課題の整理を行っている。

筮堊 童では 、自治 体が後 方支援 を行う 際に必 要とな る各種資源、すなわち要員(人的資源).物資(物 的資 源).施設(施設資源)の保有状況を統計資料を用いて整理している。この結果、多くの資源が規模 の大きな自治体に偏っており、市を中心とした支援を考えることが有効であることを指摘している。また、

発災 以前の 不均衡 の是正 や社会 資本の 充実が 必要で あることも指摘している。また資料の分析を行うこ とに よって 、自治 体人口 を基準 に資源 量を求 める算 定式を作成している。これを震災時の実態を報告し た 被 災 地資 料 と 照 らし 合 わ せ 、災 害 時 下 に提 供 可 能となる 支援可 能量の 算出基 準を作 成して いる。

筮 ! 童 で は、3章 の 支 援 実態 分 析 の 結果 と 、4章 の 災 害時 下 の 支 援可 能 量 算 出基 準 を 統 合し 、 次 の 大規 模地震 災害に 対して 実用化 を目指 し、支 援則の 数式化を 行って いる。 支援則 は、支 援実施 時に強 制カ は働か ず、各 自治体 の自主 的判断 に任さ れた場 合のもの(=自主支援則)と、全国レベルで支援実 施を 行うと して強 制カが 働いた 場合のもの(=統一支援則)の2っに分類している。いずれの支援則も、

支 援 内 容 や 支 援 実 施 側 の 自 治 体 人 口 ・ 被 災 地 か ら の 距離 に よ っ て規 定 さ れ るも の と し てい る 。   簸 垈童で は、まず 災害時 相互応 援協定 の締結 状況の 分析を 行い、 同一県内 や近隣 自治体 との締 結が 主であったことから全国を9つの圏域(北海道・東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州)に区分し てい る。地 震発生 場所や その周 辺の人 口密度 の高低 によって被害量は異なるとして、各圏域において人 口密 度の高 い場所 と低い 場所で の地震 発生を 想定し ている。 想定地 震と支 援項目ごとに、5章で求めた 2支 援則を用 いて支 援必要 量と支 援可能 量の算 出を行 い、地 震のマグ ニチュ ードと被害量・支援量の関 係、 圏域と 支援依 存度の 関係に ついて 考察を 行って いる。その結果、どの地震においても人口密度の高 い場 所での 地震の 方が低 い場所 での地 震より も多く の支援量を必要とするが、支援必要量はどの圏域で 発生するかによって大きく異なることを明らかにしている。また全てのマグニチュードに対して支援必要量 を支 援可能 量が満 たすと は限ら ず、地 震規模 が大き い場合には、自治体による全国レベルの支援を行っ ても 支援必要量を賄いきれない可能性があることを示している。さらに、支援項目によっては支援必要量 を圏域内で賄いきれない状況にあり、他の圏域より支援依存度が大きいことを示している。以上のことから、

現 行 の 災害 時 相 互 応援 協 定 の 締結 状 況 で は次 の 大 規模地震 災害に は再び 阪神・ 淡路大 震災の ように 支 援 必 要量 に 過 不 足を 来 た す 可能 性 が 高 く、 本 研 究が提案 する全 国レベ ルでの 後方支 援則の 活用が 重要であることを示している。

  釜ヱ童では、本研究を総括し、各章の成果を要約している。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

鏡 味 洋 史 小 林 英 嗣 佐 藤 馨 一 岡 田 成 幸

学 位 論 文 題 名

大規模な地震災害時における全国レベルでの      後方支援則に関する 研究

我 が 国 の 防 災 対 策 の 基 本 は 、 被 災 自 治 体 の 「 自 助 努 力 」 に よ る 対 応 で あ る 。 し か し 、1995年 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 の 例 で も 明 ら か な よ う に 、 大 規 模 か つ 広 域 災 害 は 単 一 自 治 体 の 範 囲 内 で は 収 ま ら ず 、 応 急 活 動 の 全 て を 被 災 自 治 体 が 行 う こ と は 不 可 能 で あ り 、 全 国 レ ベ ル で の 後 方 支 援 が 必 要 不 可 欠 で あ る 。

  本 論 文 は 、 大 規 模 な 地 震 災 害 時 に お け る 対 応 に 韜 い て 、 全 国 を 一 単 位 と し て 把 握 し 、 被 害 の 無 い 地 域 か ら 緊 急 対 応 資 源 を 効 率 的 に 投 入 ・ 配 分 す る 方 策 、 す な わ ち 後 方 支 援 の 方 法 を 一 防 災 対 策 と し て 提 示 し て い る 。 ま ず 、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 後 の 全 国 の 自 治 体 に よ る 被 災 地 支 援 の 実 態 分 析 を ア ン ケ ー ト 調 査 と 文 献 調 査 に よ っ て 、 ま た 現 在 の 自 治 体 の 防 災 資 源 の 状 況 を 統 計 資 料 を 用 い て 分 析 し 、 そ れ ら を も と に 、 次 の 大 規 模 災 害 時 へ の 実 用 化 に 向 け た 後 方 支 援 則 の 数 式 化 を 行 っ た 。 さ ら に こ の 後 方 支 援 則 を 用 い 内 陸 地 震 を 対 象 と し た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ り 、 想 定 地 震 の マ グ ニ チ ュ ー ド と 被 害 量 ・ 支 援 量 の 関 係 や 圏 域 と 支 援 依 存 度 の 関 係 を 明 ら か に し た 。 ま た 、 全 国 規 模 で 被 災 自 治 体 の 支 援 を 行 う こ と が 、 事 前 準 備 に 重 き を お く 従 来 の 防 災 対 策 に 比 し て 、 迅 速 か つ 組 織 的 ・ 効 率 的 な 対 策 で あ る こ と を 示 し た 。 そ の 概 要 は 以 下 に 記 す 通 り で あ る 。

  第 1章 は 序 章 で あ り 、 論 文 の 目 的 ・ 意 義 、 構 成 ・ 概 要 を 述 べ た 。   第2章 で は 、 地 震 防 災 に お け る 後 方 支 援 の 役 割 に 関 し て 整 理 ・ 分 析 を 行 っ た 。 支 援 を 人 的 支 援 ・ 物 的 支 援 ・ 施 設 供 与 ・ 経 済 支 援 に 分 類 し 、 発 災 か ら 復 興 に 至 る 各 時 期 に 韜 い て 必 要 と な る 支 援 内 容 の 整 理 を 行 っ た 。 ま た 自 治 体 問 の 支 援 の動 機を 、要 請・

事 前 協 定 ・ 独 自 決 定 に 分 類 し 問 題 点 の 整 理 を 行 っ た 。

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章 では 、

1995

年阪 神 ・ 淡路 大 震 災に おける 被災地支 援の実態 調査・文 献整理 の 結果を示 した。都 道府県は 専門職員 の派遣や市町村問の調整に重要な役割があり、

市 町 村 では 自 治体の規 模や被災地 からの距 離が支援 実施率に 関わって いること を明 ら か に した 。 一方、被 支援側の報 告書や統 計資料の 分析より 、地域的 あるいは 時間 的に支援の過不足が存在したことを明らかにした。

  

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章 では 、 自 治体 が 後方 支 援 を行 う 際に 必要とな る各種資 源、すな わち要員 ・ 物 資 ・ 施設 の 保有状況 を統計資料 を用いて 整理した 。この結 果、多く の資源が 規模 の 大 き な自 治 体に偏っ ており、市 を中心と した支援 が有効で あること を指摘し 、自 治体人口を基準に資源量を求める算定式を作成した。

  

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章 では 、

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章 の支 援 実 態分 析 の 結果 と、

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章の災害 時下の支 援可能量 算出基準 を 統 合 し、 支 援則の数 式化を行っ た。支援 則は、支 援実施時 に強制カ は働かず 、各 自 治 体 の自 主 的判断に 任された場 合と、全 国レベル で支援実 施を行う として強 制カ が 働 い た場 合 の

2

っに 区 分 し、 支 援 内容 や 支援実施 側の自治 体人口・ 被災地か らの 距離によって規定されるものとした。

  

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章 では 、 災 害時 相 互応 援 協 定の 締 結状 況 の 分析 か ら全 国 を

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つ の圏 域(北海 道・東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州)に区分し、想定される地震と支 援 項目ごと に、5 章で 求めた

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支 援則を用いて支援必要量と支援可能量の算出を行い、

地 震 の マグ ニ チュード と被害量・ 支援量の 関係、圏 域と支援 依存度の 関係につ いて 考 察 を 行っ た 。その結 果、支援必 要量はど の圏域で 発生する かによっ て大きく 異な り 、 支 援項 目 によって は支援必要 量を圏域 内で賄い きれない 状況にあ り、他の 圏域 か ら の 支援 依 存度が大 きいことを 具体的に 示した。 以上のこ とから、 現行の災 害時 相 互応援協 定の締結 状況では 、次の大 規模地震災害には再び阪神・淡路大震災のよう に 支 援 必要 量 に過不足 を来たす可 能性が高 く、本研 究が提案 する全国 レベルで の後 方支援則の活用が重要であることを示した。

  

第7 章は結論であり、各章の成果を取りまとめて述べた。

  

こ れを要す るに、著 者は、大 規模地震災 害時の全 国レベル での後方 支援のあ り方 を 阪神・淡 路大震災 における 実態、自治 体の防災 資源の保 有状況、 地震発生 危険度 を 踏まえ提 案したも のであり 、地域防災 計画学、 地震防災 学に対し て貢献す るとこ ろ大な るものが ある。

  

よって 著者は、 北海道大 学博士(工学)の学位を授与される資格ある者と認める。

参照

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