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博 士 ( 農 学 ) 清 水 真 理 子 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 清 水 真 理 子

学 位 論 文 題 名

堆 肥 施 与 が 経 年 採 草 地 に お け る 温 室 効 果 ガ ス 収 支 に 与 え る 影 響

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

1. 背 景 と 日 的

  膨 大 な 輸 入 飼 料 に 依 存 し た 我 が 国の 畜産 では , 過剰 な家 畜ふ ん尿 が 発生 し, 水質 汚濁 の 原 因 に も な っ て い る た め , そ の 有 効利 用が 重要 で ある 。家 畜生 産を 支 える 草地 は, 不耕 起 で 管 理 さ れ , 一 般 作 物 に 比 べ 植 物 体 の 地 下 部 炭 素(C)が 大 きい こと か ら, 畑地 より 土壌 有 機 炭 素(SOC)を 集 積 す る 。 草 地 へ の 堆 肥 施 与 は ,SOC集 積 を 促 進 さ せ る が , メ タ ン(CH4) や 亜 酸 化 窒 素(N20)の吸 収発 生に も 影響 を与 える 。 .本 研究 では ,最 適 な草 地管 理を 確立 す る た め に , 草 地 の 施 肥 管 理 が 温 室 効 果 ガ ス ( 二 酸 化 炭 素(C02),CH4,N20)‥ 収 支 に与 え る 影 響 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。

2. 調 査 地 . と 方 法

  北 海 道 新 ひ だ か 静 内 の り ー ド カ ナ リ グ ラ ス 採 草 地 で ,2005年4月 か ら2008年5月 ま で の 3年 間 , 調 査を おこ なっ た 。対 象草 地に 化 学肥 料の みを 施与 し た化 学肥 料区 ,堆 肥 と化 学肥 料 を 併 用 し た 堆 肥 区 , 無 施 肥 区 を 設定 し た。 堆肥 区で は, 肉 牛バ ーク 堆肥 を連 用 し, 堆肥 施 与 量 は 一 般 農 家 が 実 行 可 能 で あ り, 堆 肥か らの 年間 カリ ウ ム放 出量 が牧 草の カ リウ ム要 求 量 を 超 え な いレ ベル とし て,2005年 から2008年ま で それ ぞれ44,43,44,46 Mg FM ha‑1 (5.8,6.0,7.7,8.0 MgCha")と し た 。 各 処 理 区 で , 純 生 態 系 生 産(NEP)と ,NEPに 堆 肥 投 入 に よ るC搬 入 を 加 え 収 穫 に よ るC搬 出 を 差 し 引 い た 純 生 物 相 生 産(NBP)を 求 め た 。 NEPの 測 定 に は , 純 一 次 生 産 量(NPP)と 有 機 物 分 解 の 差 か らNEPを 求 め る 生 態 学 的 手 法 と , 乱 流 変 動 量 を 直 接 測 定 す る 渦 相 関 法 を 用 い た 。CH4とN20発 生 の 測 定 に は , ク ロ ー ズ ド チ ャ ン バ ー 法 を 用 い た 。

3.生態 学的手法による採草地の炭素 収支の測定

  施 肥 管 理 が 採 草 地 のC動 態 とC収 支 に 与 え る 影 響 を 明 ら か に す る た め , 生 態 学 的 手 法 に よ りC収 支 を 測 定 し た 。 地 下 部 現 存 量 の 季 節 変 化 が 明 ら か で な か っ た た め ,NEPは , 地 上 部 純 一 次 生 産 量(」 蝋PP) か ら 土 壌 有 機物 分 解と 堆肥 分解 を 差し 引い て求 めら れ た。NEPの 3年聞平 均(士標準偏差)は,化学肥料区,堆肥区,無施肥区それぞれ111土1.O,一2.7士2.7,

‐1.2士013MgCh1ザ1で あ っ た 。 い ず れ の 区 に お い て も , 収 穫 に よ るC搬 出 はNEPを 上 回 っ た。NBPの3年間 平均 (士 標 準偏 差) は, 化学 肥 料区 ,堆 肥区 ,無 施 肥区 それぞれ ・3.7士 0.4,‐O.5土1.4,_3.9土O.1MgCh.lザ1で,堆肥の投入に より圃場へのC固定もしくはC放 出の減少 が認められた。

  春 (3月 上 旬 か ら6月 下 旬 ) に は 植 物 体 地 下 部 由 来 のC02発 生が 増加 す るこ とが 観測 さ れ た 。こ れは 生 きた 根の 呼吸 の 増加 か, 枯死 根の 分 解に 由来 する と推 察 され た。春のC(冫2発 生 の 増 加 が 生 き た 根 の 呼 吸 の 増 加 に 由来 した とし て も, 枯死 根に 由来 し たと して も, そ れ ら は 植 物 が 吸 収 し たCに 由 来 す る も の で ,NEPに 影 響 し な い と 考 え ら れ た 。

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4.採草地の窒素収支とNz0発生

  春のC02増加 が生き た根の呼 吸と枯 死根の分 解のい ずれに由来しても,NEPには影響し ない と考えら れたが ,それらがN収支に与える影響は異なる。もし生きた根の呼吸であれ ば,N収支 には関 係しない が,枯死根の分解であれば,C02発生時に無機態Nを放出する。

そ こ で, 採 草 地のN収支を 求め, 春のC02増加の 由来を検 討した。 さらに ,N収 支とN20 発生の関係も比較した。春のC02増加を枯死体分解に由来すると仮定し,植物枯死体分解,

土壌 有機物分 解,堆 肥分解に よるC02発生量 をそれぞ れのC:N比で除 し,無 機化N量とし た。 無機化N量,N降下 物量,化 学肥料 施肥量の 和を全 無機態N供給量 とし, 植物体地上 部N吸収量と比較したところ,有意な正の相関を示した。植物枯死体由来の無機化N量は,

全無機態N供給量の18〜 23%を占め,植物生長にとって重要な供給源のひとっであること が示 された。 っまり ,春のC02発生の増加は,生きた根の呼吸ではなく枯死根の分解に由 来していたと考えられた。

  3年間の年 間N20発生量は 年次間 に有意な 差は認め られず,平均(士標準偏差)は化学 肥料区,堆肥区,無施肥区,裸地区それぞれ214土0.9,3.5土1.4,0.7士0.1,314士0.8kgNha  1 yr1であった。化学肥料区,堆肥区,裸地区の問には有意差は認められなかったが、これら の区 は無施肥 区より5%水 準で有意 に大き かった。 季節積 算N20発 生量は ,全無機態N供 給量 よりも余 剰N量(全無 機態N供給量と植物体地上部N吸収量の差)と強い相関を示し,

余剰Nに対 するN20発生係 数は1.20% と算出さ れた。 この発生係数は降水量の増加ととも に 増 加 し た 。 余 剰Nを 減 ら す こ と が , N20発 生 を 抑 制 す る と 推 察 さ れ た 。 5.C収支測定手法の比較

  C収支測定手法の比較のため,対象草地において生態学的手法,渦相関法,.SOC変化量 の測 定によっ てC収支を求め,比較,検証した。全ての手法で,堆肥区は化学肥料区より 大き く,その 差は生 態学的手 法で3.9 MgCha‑l yf1,渦 相関法で5.6MgChIlザ1,SOC変 化量 で5.4MgCh11yf1であっ た。し かし,そ れぞれのC収支の値は手法間で異なり,生態 学的手法によるC収支(化学肥料区,堆肥区それぞれの2年平均う.6,013MgChオlrl1)は,

渦相関法によるC収支(化学肥料区,堆肥区それぞれ2年平均0,1,5.6MgCha・lザ1)より 2.6〜5.9MgChlrl小さかっ たが,SOC変化 量(化 学肥料区 ,堆肥区 それぞ れの2年平均 一4.3,113MgCh11ザ1) とは近い値を示した。このことから,渦相関法によるNEPの推定 の過大評価の可能性が考えられた。

6.採草地のCII4発生

  施肥管理が草地のCH4吸収発生に与える影響を明らかにするため,対象草地においてCH4 発生 量を測定 した。CH4発生 量は2007年 で有意に 大きかったがゅく0.05),処理区間で有 意な差は認められず,3年間のCH4発生量の平均(士標準偏差)は化学肥料区,堆肥区,無 施肥区それぞれ13土2.6,0.1士0.2,1.5土2.4 kgCha‑l yr"であった。したがって,本調査地 で は , 施 肥 管 理 は CH4吸 収 発 生 量 に 影 響 を 与 え な か っ た と 判 断 さ れ た 。 7.施肥管理が採草地の温室効果ガス収支に与える影響

  施 肥管 理 がC02,CH4,N20に与える 影響を 総合的に 評価する ため,C02,CH4,N20の 放射強制カを考慮した係数をそれぞれ1,25,298として,対象草地の地球温暖化指数(GWP) を 算出した 。C02収支には ,生態学 的手法 によるNBPを用 いた。GWPは化 学肥料区,堆肥 区 ,無施肥 区それ ぞれ14.9,3.6,14.5Mg C02 eq halザ1となった。GWPへの寄与はC02 が 最も大き く,堆 肥区では 堆肥によ るC導入で圃 場のC消耗が 抑制され たため ,GWPが最 も 小さかっ た。た だし,堆 肥区のN20放出 量は化学 肥料区より1.3〜1,6倍大きかった。

8.結論

  採草地ーの堆肥の施与は,土壌のC消耗を抑制し,地球温暖化への負荷を減少させた。

し か し , 堆 肥 の 施 与 は N20発 生 を 促 進 し , そ の 抑 制 は 今 後 の 課 題 で あ る 。

‑ 112

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学位論文審査の要旨 主査   教授   波多野隆介 副査   教授   長谷川周一 副査    教授    平 野高司

学 位 論 文 題 名

堆肥施与が経年採草地における 温室効果ガス収支に与える影響

  本論文は10章からなり、図57、表35、引用文献219を含む138ベージの和文論文である。他に 参 考論文1編が添えられている 。

  膨大な輸入飼料に依存した我が国の畜産では,過剰な家畜ふん尿が発生し,水質汚濁の原因にも なっているため,その有効利用が重要である。家畜生産を支える草地への堆肥施与は,温室効果ガ スの吸収・発生に影響を与える。そこで本研究では,最適な草地管理を確立するために,草地の施 肥 管 理が 温室 効果 ガス(C02,CH4,N20)収支に与える影響を明らかにすることを目的とした。

  北海道新ひだか静内のりードカナルグラス 採草地で,2005年4月から2008年5月までの3年間,

調査をおこなった。対象草地に化学肥料のみを施与した化学肥料区,.堆肥と化学肥料を併用した堆 肥区,無施肥区を設定した。堆肥区では,肉牛パーク堆肥を連用し,堆肥施与量は一般農家が実行 可能であり,堆肥からの年間カリウム(K)放出量が牧草のK要求量を超えないレベルとして,2005 年から2008年までそれぞれ44〜46 Mg FM ha―1(5. 8〜8.0MgCha−1)とした。各処理区で,純生 態系生産(NEP)と ,NEPに堆肥投入による炭素(C)搬入を加え収穫によるC搬出を差し引いた純生 物相 生産(NBP)を求 めた 。NEPの 測 定に は, 純一次生産量(NPP)と有機物分解の差からNEPを求 める生態学的手法と,乱流変動量を直接測定する渦相関法を用いた。CH4とN20発生の測定には,

ク口ーズドチャンバー法を用いた。

  施肥管理が採草地のC動態とC収支に与える影響を明らかにするため,生態学的手法によりC収 支を測定した。地下部現存量の季節変化は認められなかったことから,NEPは,地上部純一次生産 量(ANPP)から土壌有機物分解と 堆肥分解を差し引いて求められた。NEPの3年間平均は,化学肥 料区,堆肥区,無施肥区それぞれ1.1,‑2.7,−1.2MgCha―lyr‑lであった。堆肥区でより大きな Cの 消耗が認められた。化学肥料区と堆肥区の収穫量に有意な差は認められなかったが,これらは 無施 肥 区よ り有 意に大きか った。NEPに,堆肥施与のC搬入と,収穫のC搬出を加えたNBPの3年 間平均は,化学肥料区,堆肥区,無施肥区それぞれ‑3.7,―0.5,‑3.9MgChaー1yr―1で,堆肥区で     ‑ 113一

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は 堆 肥 施 与 のC搬 入 が ,NEPで み ら れ た C消 耗 お よ び 収 穫 のC搬 出 を 補 っ て い た 。   採草 地の 窒素(N)収 支とN20発生を定量的に評価するため,草地における無機態N供給量を推 定した。植物枯死体分解,土壌有機物分解,堆肥分解によるC02発生量をそれぞれのC:N比で除し,

無 機化N量とした。無機化N量,N降下物量,化学肥料施肥量の和を全無機態N供給量とし,植物 体地上部N吸収量と比較したところ,有意な正の相関を示した。化学肥料区,堆肥区,無施肥区の 季 節積算N20発生量は,余 剰N量(全無機態N供給量と植物体地上部N吸収量の差)と強い相関を 示し,余剰Nに対するNz0発生係数は0.77%と算出された。この発生係数は降水量の増加とともに 増加した。余剰Nを減らすことが,N20発生を抑制すると推察された。

  C収支測定手法の比較のため,対象草 地において生態学的手法,渦相関法,土壌有機炭素(SOC) 変化量の測 定によってC収支を求め,比較,検証した。全ての手法で,堆肥区は化学肥料区より大 きかったが ,それぞれのC収支の値は手 法間で異なり,生態学的手法によるC収支は,渦相関法に よるC収支より2. 6〜5.9MgCha‑i yr−1小さかったが,sOc変化量とは近い値を示した。このこと から,渦相 関法によるNEPの推定の過大 評価の可能性が考えられた。

  施肥管理が草地のCH4吸収発生に与える影響を明らかにするため,対象草地においてCH4発生量 を測定した。CH4発生量は2007年で有意に大きかったが,処理区間で有意な差は認められなかった。

した がっ て, 本調 査地 では,施肥管理 はCH4吸収発生量に影響を与 えなかったと判断された。

  施肥管理がC02,CH4,N20に与える影響を総合的に評価するため,C02,CH4,N20の放射強制カを 考慮した係数をそれぞれ1,25,298として,対象草地の地球温暖化指数(GWP)を算出した。C02 収支には,生態学的手法によるNBPを用いた。GWPは化学肥料区,堆肥区,無施肥区でそれぞれ14.9, 3.6,14.5Mg C02 eq ha‑i yr―1となり,堆肥区では堆肥施与のC搬入で,圃場のC消耗が抑制され たためGWPが最も小さくなり,温暖化を抑制する効果がみられた。

  以上のように、本研究は、草地における要素放出速度に配慮した適切な堆肥施用は、収量を維持 し、温室効果ガス放出を抑制できることを示したものであり、関連学会等で高く評価されている。

よって、審査員一同は、清水真理子が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと 認めた。

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参照

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