• 検索結果がありません。

博士(農学)水垣 滋 学位論文題名

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博士(農学)水垣 滋 学位論文題名"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

     博士(農学)水垣   滋 学位論文題名

放射性物質を用いた流域細粒土砂の 堆積履歴の解析に関する研究

学位論文内容の要旨

  高度経済成長期以降の急激な流域地表撹乱に伴い、流域管理手法構築のための流域細粒土 砂動態の解明が急務となってきた。しかし、細粒土砂動態の解明には長期的モ二夕リング観 測を必要とすること、また既往の土砂堆積履歴解析は粗粒土砂堆積を主対象としたものであ ることから、流域細粒土砂流出実態の把握が困難視されてきた。一方、近年、土壌微細粒子 に吸 着さ れる 放射 性降 下物セ シウム(137Cs)や天然放射陛鉛(210Pb)が細粒土砂移動現象の トレーサーとして注目されはじめたが、流域土砂堆積履歴の解析手法としては未構築である。

そこで本論文で|ま、流域土砂流出のなかでも未解明である細粒土砂の堆積現象を研究対象と し、放射性物質を用いた細粒土砂堆積履歴解析手法の構築とこれによる流域土砂流出機構解 明を目的とした。,

  第I章では研究方法について述べた。137Cs(半減期30.2年)tま1960年代の大気核実験に より生成され降下(1963年に最大、その後急減)し、地表の土壌微細粒子に特異吸着・集積 することから、堆積土層の137Cs濃度深度分布解析を行い、1963年表土の判別とこれ以降近 40年間における土砂流出履歴を推測した。また、210Pb(半減期22.3年)はその崩壊過程で 大気から一定の割合で降下し、土壌微細粒子や有機物に強く吸着され地表に集積することか ら、 堆積 土層 の210Pb濃 度深 度分布を解析し、半減期減衰曲線から過去100年間における平 均堆積速度と、流域の浸食による土砂流出履歴の解明を行った。,これら放射陸物質による長 期間の土砂堆積履歴の判別解析手法ならびにその有効性について、モニタリングによる現在 的土砂流出の観測結果および樹木年代学的方法による近過去の土砂流出履歴解析結果にもと づぃて、総合的検討を行った。本研究の対象流域としては、1960年〜1970年代の大規模開発 による流域水土流出機構の改変に伴う湿原への急速な細粒土砂堆積が指摘されていること、

細粒土砂堆積地形が人為的撹乱を受けずに保存されていること、また流域形状・土地利用状 況から流域細粒土砂流出情報が明確であることなどから、流域末端部に釧路湿原が位置する 釧路川水系久著呂川を設定した。

  第H章では、流域から湿原への現在的な細粒土砂流出実態を把握するために、水文・河床 変動モ二夕リングを行い、縦断的な流量・浮遊砂濃度の定点(4箇所)観測結果及び河床縦 横断形の経時測量結果について検討した。その結果、比流送土砂量からみて中流域が最大の 土砂供給源であること、湿原流入部(排水路区間)で出水時に溢水氾濫をおこしていること が明らかとなった。中流域の土砂供給形態について検討したところ、凍結融解期の河岸・河

(2)

床 浸食による 細粒土砂 供給様式が認められた。とくに中流域の河床浸食は流路直線化・急勾 配 化によるも ので、水 土流出機構の人為改変が流域浸食面積の増大をもたらしたものと考え られた。

  第III章では、樹木年代学的手法による近過去の流域細粒土砂流出履歴の把握を試みた。樹 木 の土砂堆積 作用に対 する生理的反応が年輪情報として蓄積されることを利用した樹木年代 学 的手法を用 いて、流 域からの土砂流出履歴調査を行った。その結果、ヤナギ類一斉林の形 成年代か゛ら1981年出水による新堆積地形成,(1981年表土)が、そしてヤナギ樹幹の土砂埋 没 部位の不定 根年輪数 の深度分 布から1981年 以降1996年ま でに数回 の大規模出 水氾濫によ る 堆積表土が 確認され た。この樹木年代学的手法により、流域の人為改変後の浸食情報が湿 原 内に断続的 な土砂堆 積履歴(最大年平均堆積速度4.1cm/y)として記録されていることが明 らかとなった。

  第IV章 では 、1963年 表土指 標となる 放射性物 質137Csを用い て1960年代以 降(過去40年 間 )の細粒土 砂堆積厚 と流域浸 食形態の 推定を試 みた。137Cs降下量は1963年に最大を示し そ の後急減し 、未撹乱 土壌表面 に集積す ることか ら、堆積土層の137Cs濃度深度分布解析に よ って1963年表土 の判別及 び1963年以降 の浸食に よる流出 履歴を推 測した。そ の結果、森 林 未撹乱土壌 表層に高 濃度の137Csが 検出され たが、土 砂生産源(河岸斜面崩壊地崖錐及び 中 流域河床基質)からは検出されなかった。 また湿原堆積土層の137Cs深度分布には森林土 壌 表層と同程 度の濃度 を示すピ ークが深 部にあら われ、そ の上層の137Cs濃 度は1オーダー 程 度低い値で あった。 以上のこ とから、137Csピーク層 は1963年堆積土砂表土と判別され、

そ の深度分布 形の解析 によって流域裸地斜面の継続・断続的浸食による土砂供給様式が推測 さ れた。また 、1963年以降 の年平均 堆積速度 は最大で6.2cm/yと推定され、大規模な流域浸 食 の可能性が 示唆され た。とく に1963年及び1981年の堆積 土砂表土 から求めた1963〜1981 年 の 年平 均 堆 積速 度 は8.2cm/yとなり 、流域の 人為改変 と北海道 に広域災 害をもたら した 1981年出水が土砂堆積に大きく影響していたことが確認された。

  第V章では、天 然放射性 物質210Pbを用 いてより 長期間の 土砂堆積 履歴の把握 を試みた。

い ま流域起源210Pb濃度を一 定と仮定し、さらに粒径組成及び有機物含有率の210Pb濃度に対 す る影響を除 去するこ とにより 、氾濫堆 積土層に おける210Pb濃度深度分布について検討し た 。その結果 、過去60年 の土砂堆積速度を推定することが可能となった。すなわち、推定さ れ た年平均堆 積速度は 、1940年代から1960年代の流域改変前は0.14crn/y丶1975〜1981年の 人為改変期には8.9cm/y、そして人為改変後の1981年以降は2.0cnl/yとなった。また、210Pb 法 による年代 測定結果 が137Cs法及び 樹木年代 学的手法 による結果と極めてよく一致するこ と が明らかと なった。 このような土砂堆積速度の変化は、自然及び人為による流域浸食面積 の時系列変化を示していると考えられた。

  第W章では、137Cs及 び210Pbによる 氾濫堆積 土砂の堆 積履歴解析が有効であること、及び 137Csと210Pbを併用した 細粒土砂の氾濫堆積履歴解析によって高精度の流域浸食情報を得取 できることが明らかになったことから、放射性物質を用いた堆積履歴解析結果にもとづしヽて、

流 域の土地利 用開発と 河道改変が細粒土砂流出に与える影響について総合考察を加えた。流 域 土地利用開 発とそれ に伴う自然河川の河道直線化・人工水路造成は、浸食面積の増大にと も なって、下 流ヘ大量 の土砂を流送・氾濫堆積させ、人為改変以前にくらべて10倍以上の堆 積 速度をもた らしたこ と、また、とくに改変直後にこの改変インバクトが甚大に現出したこ

(3)

となどが明らかとなった。すなわち、流域末端部における細粒土砂氾濫堆積履歴には流域の 水土流出機構の時系列変化が敏感に反映されることを示しており、本方法が流域の細粒土砂 流出履歴を推定する極めて有効なものであるといえる。この方法を用いることにより、流域 細粒土砂の堆積履歴解明の可能性が明らかになるとともに、これがさらに流域土砂流出機構 解明への展開に連なることが期待される。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

新谷 長谷川 中村 山田

学 位 論 文 題 名

    融 周一 太士     孝

放射性物質を用いた流域細粒土砂の    堆 積 履 歴 の 解 析 に 関 す る 研 究

  本 論 文 は 、 図47、 表4、 写 真5を 含 む 総 頁 数127の 和 文 論 文 で あ り 、 他 に 参 考 論 文3編 が 添 え ら れ て い る 。

  近 年 の 急 激 な 流 域 改 変 に 伴 い 、 流 域 管 理 手 法 構 築 の た め の 細 粒 土 砂 動 態の 解 明 が急 務 と な っ て き た が 、 こ の た め 長 期 的 モ 二 夕 リ ン グ 観 測 手 法 と と も に 、 流 域 細 粒 土砂 堆 積 の履 歴 解 析 手 法 の 開 発 が 求 め ら れ て き た 。 本 論 文 は 、 流 域 土 砂 流 出 の な か で も 未 解明 で あ る細 粒 土 砂 堆 積 現 象 を 取 り 上 げ 、 放 射 性 物 質 を 用 い た 土 砂 堆 積 履 歴 解 析 手 法 の 構 築を 目 的 とし た も の で あ る 。

  第I章 で は 、 研 究 方 法 に つ い て 述 べ て い る 。 土 壌 微 細 粒 子 に 吸 着 ・ 地 表 集 積 (1963年 に 最 大 、 そ の 後 急 減 ) す る 放 射 性 物 質 セ シ ウ ム‑137( 以下  ̄ ℃s:1960年 代大 気 核 実験 由 来 、 半 減 期30.2年 ) の 堆 積 土 層 濃 度 深 度 分 布 解 析 に よ る1963年 表 土 の 判 別 と 過 去40年 間 の 流 域 土 砂 流 出 履 歴 と 、 ま た 同 様 に 土 壌 微 細 粒 子 に 吸 着 ・ 地 表 集 積 す る 天然 放 射 性物 質 鉛‑210( 以 下210Pb: 半 減 期22.3年 ) の 堆 積 土 層 濃 度 深 度 分 布 解 析 に よ る 過 去100年 間 の 平 均 堆 積 速 度 に も と づ い た 流 域 土 砂 流 出 履 歴 の 解 明 方 法 を 論 じ て い る 。 ま たこ れ ら 放射 性 物 質 に よ る 長 期 間 の 土 砂 堆 積 履 歴 解 析 の 有 効 性 に つ い て 、 モ 二 夕 リ ン グ に よる 現 在 的土 砂 流 出 観 測 結 果 お よ び 樹 木 年 代 学 的 方 法 に よ る 過 去 の 解 析 結 果 と の 照 合 に 基 づい た 総 合的 検 討 を 行 う こ と と し て い る 。 そ し て 研 究 対 象 流 域 と し て は 、 流 域 改 変 (1960〜1970年 代 ) に 伴 う 釧 路 湿 原 へ の 急 速 な 土 砂 流 出 実 態 と 土 砂 堆 積 地 形 の 保 存 状 況 、 お よ び流 域 情 報の 蓄 積 状 況 な ど か ら 、 釧 路 川 水 系 久 著 呂 川 流 域 を 設 定 し た こ と を 述 べ て い る 。   第II章 で は 、 水 文 ・ 河 床 変 動 モ 二 夕 リ ン グ ( 流 量 ・ 浮 遊 砂 濃 度 の 縦 断 的 な 定 点観 測 及 ぴ

(5)

河床縦横断形の経時観測)結果について検討し、氾濫原中流域が最大の土砂供給源であっ て、細粒土砂の凍結融解期における河岸・河床浸食による供給と湿原流入部(排水路区 間)での溢水氾濫による現在的土砂流出様式を確認している。

   第III 章では、樹木年代学的手法による土砂流出履歴調査を行った結果、ヤナギ類一斉林 の形成年代から出水土砂堆積による1981 年表土を、そしてヤナギ不定根年輪数の深度分 布から1981 年以降数眉の堆積表土を判別している。この手法により、流域改変後におけ る過去20 年間の断続的な土砂堆積履歴(最大年平均堆積速度4.1cm/y) を明らかにしてい る。

   第IV 章では、放射性物質l ヨ7Cs を用いて1960 年代以降(過去40 年間)の細粒土砂堆積 厚と流域浸食形態の推定を試みている。まず森林未撹乱表土からは高濃度の13 ℃s が検出 される一方、土砂生産源(斜面崩壊地末端の崖錐及ぴ氾濫原中流域の河床・河岸)からは 検出されないことを確認している。ついで堆積土層の13 ℃ s 濃度深度分布解析を行った結 果、堆積土層の深部に森林未撹乱表土と同程度の濃度ビークが検出されたことから、この 13 ℃s 濃度ピーク層を1963 年堆積土砂表土と推定している。また1963 年以降の年平均堆積 速度が最大 6.2cm/y ( 1963 〜1981 年: 8.2cm/y) と推定するとともに、濃度深度分布形か ら流域改変と1981 年広域大規模出水が 1963 年以降の流域浸食による断続的土砂堆積の主 因であることを朗らかにしている。

   第V 章では、堆積土層における天然放射性物質 210Pb 濃度深度分布について検討した結 果、過去60 年間の土砂堆積速度は、流域改変前(1939 〜1975 年)は0.14cm/y 、改変期

( 1975 〜1981 年)には8.9cm/y 、そして改変後(1981 年以降)は2.Ocm/y と推定してい る。この210Pb 法による推定結果が13 ℃s 法及ぴ樹木年代学的手法による推定結果とよく一 致することから、本手法によって得られる土砂堆積速度の時系列変化が長期間の不連続的 流域浸食履歴を示すことを検証している。

   第VI 章では、13 ℃s 及び210Pb による土砂堆積履歴解析の有効性が確認されたことから、

両法の併用により長期間・高精度の流域浸食情報の取得が可能であること、流域改変によ る細粒土砂流出への影響については土砂堆積速度(改変以前の10 数倍に増大、とくに改 変直後に最大)を評価指標とし得ることなどの新知見を得ている。このように、流域末端 部における細粒土砂氾濫堆積履歴には水土流出機構の時系列変化が敏感に反映されること か ら 、 本 手 法 に よ る 流 域 土 砂 流 出 機 構 解 明 の 可 能 性 を 提 起 し て い る 。    以上のように本研究は、放射性物質による細粒土砂堆積履歴解析の有効性とともに本手 法による流域土砂流出機構解明の可能性を明らかにしたものであり、その成果は学術・応 用両面から高く評価される。よって審査員一同は、水垣滋が博士(農学)の学位を受ける 十分な資格があるものと認めた。

     ―123 ‑

参照

関連したドキュメント

   層序学や堆積学の分野では,近年になルェクソ冫グループが堆積体の広がりと境界に注

  4 段 式心 土混 層プ ラ ウの 牽引 抵抗の合計は38kN であった 。これは実用的な作業を行 うことが充 分 可能

土壌の酸緩衝が植物の酸緩衝に及ぽす影響:土壌系の△BC

  

   第

  

   本研究 は高 圧流体 をチゼ ル先端 のノズ ルか ら噴出 させて ,流体 の圧 カで土 壌を破壊するサブソ イラを 開発す ること を目 的とす る。こ のサプ ソイ

   サ クラマ スを含 む降海 型サケ 科魚類 は、海 水適応能 の発達 、体色 の銀自 化とぃ ったいわゆる銀 化 変態を 引き起 こした 後に降 海する。 一般に 、海産