博 士 ( 理 学 ) 成 地 健 太 郎
学位 論文題名
High Level Expression of Bacterial GlycosyltransfraSeSand itSAppliCationtotheSyntheSeSof
GlyCOpeptideSandGlyCOSphingolipidS
(細菌由来糖転移酵素の高生産と糖ベプチド、糖脂質合成への利用)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
糖夕 ンバク質 、糖脂質は、細胞接着、シグ ナル伝達、免疫応答など様 々な生体反応に関与 してい る。糖夕ンバク質である〇‐結合型糖夕ンバク質は、〃―アセチルガラク卜サミンがセリ ン/ス レオニン残基に伐結合し、様 々な糖転移酵素の修飾を受けることで多様な糖鎖構造を提 示 する 。 中で もコ ア2型糖 鎖の 高発現は免疫 不全症や癌細胞の浸潤に関 与することが知られ てしゝ る。糖脂質は、両親媒性分子 で、全ての脊椎動物の細胞に存在し、糖転移酵素の修飾パ タ ーン により8つ のクラスに分類される。糖 夕ンパク、糖脂質において、 シアルルルイスX、 ル イスX、 ルイ スaなど の機 能 性糖 鎖形 成は 、ポ リ ラク トサミンを基盤 として起こることが 知られ ている。
生物 学的機能解明のために、糖ベ プチド、糖脂質の合成は化学合成(液相、固相)、あるい は 化学 合成と酵 素合成を組み合わせた方法で 行われてきた。特に糖ベプ チド合成においては マ イク 口ウェー ブ照射化での固相合成が注目 されている。糖は多数水酸 基を有する高極性物 質であ り、化学合成の際はその水酸 基の保護/脱保護が必要となる。また、糖鎖構築のための グ リコ シル化反 応においては立体制御の必要 がある。一方糖転移酵素を 用いた糖伸長では水 酸 基が 遊離のま まで、立体選択的にグリコシ ド結合を構築できることか ら近年注目されてい る 。し かしなが ら、高い活性を有する糖転移 酵素の調製が困難であるた め、限られた酵素し か利用 できないのが現状である。
ナイ セリア、 ヘリコバクター属などの病原 性グラム陰性菌は、その細 胞膜に糖鎖と脂質か ら 成る 複 合糖 脂質 リポ オリ ゴ 糖を産生する 。病原性細菌は末端糖鎖にシ アリルルイスX、ル イ スXなど のヒ ト糖 鎖 を模 倣す ることにより 、免疫監視機構から逃れる ことを可能にしてい る 。こ れら外膜 糖鎖の生合成には複数の糖転 移酵素が関与していること から、このような糖 転移酵 素の高生産は有用糖鎖の合成 に利用できると考えられる 。
本研 究では、 高い活性を有する糖転移酵素 源として細菌由来の糖転移 酵素に着目した。ヒ 卜 糖鎖 を模倣す るための糖転移酵素を大腸菌 で大量発現し、それら酵素 を糖ペプチド、糖脂 質の合 成に利用できなしゝかと考え 、研究を行った。
第一 章では、 これまでに明らかとなってい る糖夕ンバク、糖脂質の構 造と機能、糖ベプチ ド 、糖 脂質の合 成方法、そして細菌由来糖転 移酵素の性質と機能、そし て現在までの糖ペプ
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チド 、糖脂 質の合 成に ついて まとめ た。
第二 章 で は 、 グラ ム 陰 性 菌Neisseria meningitidis由来pi,3 ‑N‑アセ チルグ ルコ サミン 転移酵 素(LgtA)の 大 腸 菌 に お け る 大 量 発 現 と 特 異 性 解 析 、 そ し て そ の 酵 素 を ポ リ ラ ク 卜 サミ ン 含 有 糖 ア ミ ノ 酸 、 糖 ペ プ チ ド 、 糖 脂 質 合 成 に 利 用 し 、 構 築 し た 化 合 物 群 に 関 す る 詳細 な 構 造 解 析 に つ い て 述 べ た 。LgtAを 大 腸 菌 に て 発 現 さ せ 、 陰 イ オ ン 交 換 、 ゲ ル ろ 過 カ ラ ム に よ り 精製 を 行 い 、 従 来 よ り も7倍 の 活 性 を 有 す るLgtAを 調 製 し た 。 最 適 反 応 条 件 を 検 討 し た と こ ろ 従 来 の 至 適pH 7.0よ り も 、 ア ル カ リ 条 件pH 10.0に お い て 最 も活 性 が 高 い こ とを 明 ら か に した 。 Core2[GlcNAcpl+6(Gaipl+3)GalNAcal→ ] が ス レ オ ニ ン(Thr)あ る い は セ1丿 ン(Ser)に 結 合 し た 基 質 に 対 し てGlcNAc転 移 反 応 を 行 っ た と こ ろ 、 ア ミ ノ 酸 がSerの 時 の みGalか ら の 伸 長 を 確 認 し た 。 こ の こ と か ら1分 岐 、 あ る い は2分 岐 ポ リ ラ ク ト サ ミ ン を 有 す る 糖 ア ミ ノ 酸 ビ ル デ ィ ン グ ブ 口 ッ ク を 得 る た め に 、Core2‑Serを出 発 原 料 と し、 ヒ ト 由 来 ガ ラク ト ー ス 転 移 酵 素(GalT)とLgtAに よ ル ラ ク ト サ ミ ン 伸 長 を 行 っ た 。 ラ ク ト サ ミ ン1単 位 伸 長 ご と に 精 製 し 、 伸 長 反 応 を 繰 り 返 し た 結 果 、1分岐 型6糖(78% ) 、8糖(82% )、10糖(36% ) 、2分 岐 型8糖
(16% ) 、10糖(86% )、12糖(90% )を有 する 糖アミ ノ酸の 合成に 成功 した。 しかし ながら 、糖ベ プ チ ド に 対 し て はLgtAは 全 く グ ル コ サ ミ ン を 転 移 し な か っ た 。 そ こ で 糖 ベ プ チ ド 合 成 にLgtA を 利 用 す る た め に 、 糖 ア ミ ノ 酸 上 で グ ル コ サ ミ ン を 伸 長 し 、 そ れ を ビ ル デ ィ ング ブ 口 ッ ク と し て 用 い る こ と に し た 。Core2のGlcNAcにGlc]NAcp1→3Galp1→4が 結 合 し た 糖 ア ミ ノ 酸 を マ イ ク ロ ウ ェ ー ブ 照 射 化 カ ッ プ リ ン グ す る こ と で 、 固 相 糖 ベ プ チ ド 合 成 に 利 用可 能 で あ る こ Iと が 解 っ た 。LgtA,GalTに よ る ラ ク ト サ ミ ン 伸 長 反応 を 糖 脂 質 の合 成 に 用 い る ため に 、 水 溶 性 ラ ク ト シ ル セ ラ ミ ド ミ ミ ッ ク ポ ル マ ー に 対 し て も 行 っ た 。 そ の 結 果 、L餌A,GalT反 応 共 に ほ ぼ 定 量 的 に 進 行 し 、 ラ ク ト サ ミ ン2単 位 の 伸 長 が 可 能 で あ っ た 。 以 上 に よ り 合 成 し た ポ リ ラ ク ト サ ミ ン 含 有 化 合 物 群 す べ て に 関 し てNMR解 析 に よ り 完 全 帰 属 に 成 功 し た 。 ま た 糖 ア ミノ 酸化合 物に関 して は詳細 なMALDI‐T()F汀OFMS解析も 行った 。
第三 章で は、グ ラム陰 性菌厩 !´をD施cfP′ガ′DH由来鋭1,3‐フコース転移酵素(FucT)の大腸菌 に よ る 大 量 発 現 と 精 製 、 そ し て ル イ スX構 造 を 有 す る 糖 ア ミ ノ 酸 、 糖 ベ プ チ ド 、 糖 脂 質 の 合 成 に 利 用 し 、 構 築 し た 化 合 物 群 に 関 す る 詳 細 な 構 造 解 析 に つ い て 述 べ た 。FucTを 大 腸 薗 に て 発 現 さ せ 、 二 ッ ケ ル キ レ ー ト カ ラ ム に て 精 製 後 、 透析 に よ りpH8.0か らpH10.0に 置 換 し 、 陰 イ オ ン 交 換 、 ゲ ル ろ 過 カ ラ ム に て 精 製 を 行 っ た 。 ア ル カ ル 条 件 下 濃 縮 す る こと で 、 中 性 条 件 下 で 見 ら れ た 沈 殿 は な く 、18mg/mLま で 濃 縮 可 能 で あ っ た 。 ま た 、 活 性 を 測 定 し た と こ ろ 16U/mL、 比 活 性2.8U/mgで あ っ た 。 以 上 に よ り 調 製 し たFucTの 転 移 能 を 評 価 す る た め に 、 第 二 章 で 述 べ た 方 法 に よ ル ラ ク ト サ ミ ン 構 造 を 有 す る 糖 ア ミ ノ 酸 、 糖 ベ プ チ ド、 糖 脂 質 ミ ミ ッ ク ポ リ マ ー を 調 製 し た 。 こ れ ら 基 質 に 対 し てFucTを 反 応 さ せ た と こ ろ 、90% 以 上の 高 収 率 で フ コ シ ル 化 さ れ た 化 合 物 を 得 た 。 し か し な が ら 、 反 応 し う る 糖 残 基 が 複 数 ある 場 合 に お い て は 構 造 を 見 分 け る こ と な く 、 全 て が フ コ シ ル 化 さ れ た 。 以 上 に よ り 合 成 し た ル イ スX構 造 を有 する化 合物群 に関 して詳 細な構 造解析 を行 った。
第四 章は 第一章 から第 三章ま での総 括を 述べた 。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
High Level Expression of Bacterial Glycosyltransferases and its Application to the Syntheses of
Glycopeptides and Glycosphingolipids
(細菌由来糖転移酵素の高生産と糖ペプチド、糖脂質合成への利用)
糖 タ ン パ ク 、 糖 脂 質 な ど 複 合 糖 質 の 構 造 と その 機 能が 徐々 に解 明さ れ つっ ある 。そ の解 明 には 、糖 タ ンパ ク質 (糖 ペプ チ ド) 、糖 脂質 の 効率 的な 合成 法が 開 発さ れき たと いう 背景があ る 。 し か し な が ら 、 ポ リ ラ ク ト サ ミ ン 、 ル イ スX構 造 を 有 す る 複 合 糖 質 の効 率的 合成 法は 未 だ 確 立 し て お ら ず 、 今 後 の 発 展 が 待 た さ れ て い る 状 況 に あ る 。 本 論 文は 、2種の 異な る細 菌 由 来 糖 転 移 酵 素 の 大 量 発 現 系 を 確 立 し 、 こ の 酵素 を 用い た糖 鎖伸 長法 と 化学 合成 法を 組み 合 わ せ る こ と で 、 ポ リ ラ ク ト サ ミ ン 、 ル イ スX構 造 を 有 す る 糖 ア ミ ノ 酸 、 糖ペ プチ ド、 糖脂 質 の 網 羅 的 な 合 成 研 究 を 展 開 す る こ と に よ り 、 糖鎖 工 学、 糖鎖 生物 学上 の 有益 な知 見を 得た も ので多大な意義がある 。
ナ イ セ リ ア 、 ヘ リ コ バ ク タ ー 属 な ど の 病 原 性グ ラ ム陰 性菌 はそ の細 胞 外膜 にヒ ト模 倣糖 鎖 と 脂 質 か ら 成 る 複 合 糖 脂 質 リ ポ オ リ ゴ 糖 を 産 生す る 。こ れら 外膜 糖鎖 の 生合 成に は複 数の 糖 転 移 酵 素 が 関 与 し て い る こ と か ら 、 著 者 は こ れら の 糖転 移酵 素を 高生 産 でき れぱ 複合 糖質 合 成に利用できると考え 、M meningitidis由来のpi,3‐グルコサミン転移酵素(pl,3‑GlcNAcT)と〃.
pylor由来のal,3‐フ コース転移酵素(al,3‑FucT)それぞれに関して、既存の 生産法を改善するこ と に よ り 大 量 調 製 法を 確 立し た。pl,3‑GlcNAcTに 関 して 至適 条件 を詳 細 に検 討し た結 果、 驚 く こ と に ア ル カ リ 条 件 下 で 最 も 活 性 が 高 い と いう 新 規な 知見 を見 出し た 。こ の新 規性 質を 活 用す るこ と で、 長鎖 分岐 型ポ リ ラク トサ ミン 構 造を 有す る〇 ・結 合 型糖 アミ ノ酸 を効 率的に合 成 し た 。 こ の 酵 素 は 糖 ペ プ チ ド に は 直 接 糖 を 転移 し なか った こと から 、 著者 は糖 アミ ノ酸 上 で 糖 転 移 を 行 っ た 基 質 を 化 学 酵 素 的 に 調 製 し 、マ イ クロ ウェ ーブ 照射 固 相合 成に 利用 する こ と で ポ リ ラ ク ト サ ミ ン 含 有 糖 ペ プ チ ド 合 成 に 成功 し た。 さら に、 糖脂 質 ミミ ック ポリ マー 上 での ポリ ラ クト サミ ン伸 長に も 成功 した 。大 量 発現 したd1,3.FucTを上 記で合成したポリラク ト サ ミ ン 含 有 基 質 に 対 し て 作 用 さ せ た 結 果 、 糖ア ミ ノ酸 、糖 ペプ チド 、 糖脂 質の 全て にお い て90%以上の高収率で フコシル化が進行すること がわかった。
こ れ を 要 す る に 、著 者 は、2種の 細 菌由 来糖 転移 酵 素の 大量 発現 系の 確 立、 その ポリ ラク ト
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サミン、ルイスX 構造を有する複合糖質の効率的合成法への応用に関する新知見を得たもの であり 、糖鎖工学、糖鎖生物学の分野に対して貢献するところ大なるものがある。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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