博 士 ( 工 学 ) 宮 脇健 太 郎
学 位 論 文 題 名
焼 却 灰 埋 立 地 に お け る 硫 酸 塩 還 元 反 応 に よ る 重 金 属 固 定 に 関 す る 基 礎 的 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
埋 立地 への 搬入 物が 焼 却灰 主体 とな りつっある現在、埋立 地からの重金属溶出による環 境 汚 染ボ テン シャ ルは 高 く、 かっ 長期 的にわたって存在する 。そのため、重金属流出を抑 制 す るた めの 不溶 化プ ロ セス の検 討が 必要となっている。重 金属を埋立地内に固定する機 構 と して は、 吸着 ,沈 殿 生成 が主 であ ると考えられるが、そ の中では硫化物としての固定 が 不 可欠 であ る。 また 焼 却灰 は硫 酸塩 を 多く 含有 する こと か らも、硫酸塩還元菌(SRB)に よ る 硫化 物生 成が 、重 金 属固 定プ ロセ スとして期待できる。 本研究では、微生物活動及び 重 金 属溶 出に 重要 であ る 埋立 地内 のp‖中 性化 機構 に つい て検 討した後、焼却灰埋立地で の 硫 酸塩 還元 反応 の可 能 性を 基礎 的に 研究する、っまり焼却 灰溶出液中での実験を行い、
さ らに埋立地条件に近いカラム 充填層での実験を行った。 以下に本研究の内容をまとめる。
第1章で は 、埋 立地 から の重 金 属汚 染ポ テン シヤ ル ,埋 立地 での重金属の挙動及び重金 属 の 硫 化 物 固 定 の 重 要 性 を 述 ぺ 、 本 研 究 の 目 的 及 び 意 義 を 述 ぺ た 。 第2章で は 、焼 却灰 埋立 地内 汚 水のpH中 性化 機構 を 検討 する ため 、 焼却 灰に おけ るC02 の 吸 収 量 とpH低 下 の 関 係を 探 るこ とか ら、 埋立 地 内のpl低 下はC02が主 要因 で ある こと を 確認し、またそのCOzが大気 濃度レベル(O.03%)であ っても、p‖は中性域に達すること を 示した。
第3章で は 、本 研究 での 各種 分 析方 法を 示し 、試 料 とし て用 いた8施 設の 焼却 灰 につい て 特 性比 較を 行っ た。 硫 酸塩 還元 の重 要な要因のーっである 焼却灰からの硫酸イオン溶出 量 は 、pH依存 性を 持ち 、 含有 量と 溶出 最には相関がみられ、 中性域では含有量の30‑‑‑50%
が 溶 出し た。 また 、TOC溶 出量 に つい て、 熱灼 減最 と 溶出 するTOCには 高い 相関 が 見られ た 。 硫化 物と 反応 する 金 属量 把握 のた めに焼却灰の硫化物吸 収量を調べたところ、灰中の 硫 酸 塩の ほと んど が硫 酸 塩還 元に より 硫 化物 とな らな けれ ば 全金 属類 は硫 化で き ないこ と が わか った 。た だし 、 埋立 地内 では 上部からも硫酸塩が供 給されるため、このバランス は それほど重要ではなぃと考え られる。最後に焼却灰埋立地内でのホ゛ー9ンヶ゛調査のSRB存 在 数 の垂 直分 布に つい て 検討 し、 焼苅J灰 層に おい て もSRBが 存在 する こと を確 認 した。
第4章で は 、炭 酸中 和を おこ な った 焼却 灰溶 出液 ( 固液 比.lg/10ml.)でのSRBの環境因 子 と反応特性にっいて検討した (1施設灰のみ)。硫酸塩還 元にはf氏いORP(−300mV程度)
が 必 要で ある が、 焼却 灰 溶出 液中 でも 微 生物 活動 によ りORPがSRBの至 適域 まで 下 がるこ と が 確か めら れた 。ま た 、環 境因 子のpH.温 度,ORPにつ いて は、焼却灰炭酸溶出液中の 反 応 にお いて も既往のSRB研究(自 然界中及び排水処理プロセ ス)とほぼ同じ結果を得た。
各 穐 栄養 基質 の添 加に よ り今 回の 実験 で 反応 したSRBは乳 酸資 化性(不完全酸化)である こ と が確 かめ られ た。 そ して 、灰 溶出 液 中の 硫酸 塩還 元反 応 におけるTOCの影響はきわめ て 大 きく 、反 応の 制限 因 子で あっ た。TOC成分 の変 化 から 推定 すると、本実験においては
ー 494―
他 の 徹 生 物 活 動 に よ るTOC消 費 も 大 き く 結 局SRBが 利 用 で きるTOCは全TOCの約1/4であ った 。高 濃度 溶出 液 実験 にお いて 、溶 出 液濃 度が高いほどORP低下が遅れたが、これは好 気性 や通 性嫌 気性 細 菌の 増殖 が遅 れる た めと 推測 され た 。な おORPがSRB至適域に達する とす ぐに 、硫 酸塩 還 元が 進行 した 。高 濃 度溶 出液のORP低下遅 延の原因として考えられる 塩濃 度及 び重 金属 濃 度に つい て添 加実 験 を行 ったところ、高 塩濃度ではORP低下が遅れた が、55日 程度 で硫 酸 塩還 元が 進ん だ。 ま た重 金属 添加 で はわ ずか な影 響しかなかった。
第5章で は 、実 際の 焼却 灰 が多 種多 様で ある こ とか ら、8施 設の 焼却 灰溶出液(炭酸中 和 ) 中 の 硫 酸 塩 還 元 の 起 き る 条 件 に っ い て 検 討 し た 。 得 られ た結 果 は、 溶出 液TOCが 200mg/L以 上あ る場 合 硫酸 塩還 元が はっ き りと 認め られ 、ORPがSRB至適 域に 達 する のに 必要な日数はあまり変わらな かった。糖の減少と酢酸生 成に伴ってORPが減少するこ とが、
すぺ ての 焼却 灰溶 出 液中でみられ た。どの施設の焼却灰溶出液 においても、反応の進行と とも に酢 酸蓄 積が お こり、利用可 能な有機物が無くなり硫酸塩 還元反応が停止したように 見られる。しかし、少数のサ ン7.ルにおいて酢酸資化性硫酸塩還元と見られる反応がおこっ た。 反応 にお ける 植 種の影響につ いて調査したところ、菌種が 豊富で活性が高い下水汚泥 植種 のほ うが 、土 壌 植種の場合よ りも早く,大きく硫酸塩還元 反応が起こった。以上の検 討か ら焼 却灰 溶出 液 中で 確実 に進 行す る と考 えら れる 硫 酸塩 還元 反応 は主に乳酸不完全 資化性であるといえた。
第6章で は 、実 際の 埋立 地 条件 によ り近 い灰 充填カラムを用 いて実験を行った。カラム 実験 は2種 類 の方 法で 行っ た 。6.1節 の実 験は 灰カラムと土カ ラムを直列に接続し灰カラ ム上部から降雨を与えること により埋立地内での焼却灰 と土壌(覆士,底部)を模擬して実 験し た。6.2節の 実 験は硫酸塩還 元反応が充分活性化した焼却 灰層においてどの程度の硫 酸塩還元能力(硫化物生成能 力)があるか4施設の灰を充 填したカラムを用い、上部 からは それぞれの焼却灰溶出液(炭 酸中和)を供給し確かめた 。6.1節の実験では、pH中性 でTOC が 数lOOmg/L程 度以 上 存在 すれ ぱ30日程 度 で硫 酸塩 還元 反応 が 起こ るこ とが わ かっ た。
ただ し硫 酸塩 還元 が 生じるまでに 多くの硫酸イオンが流出して しまったため、硫化物への 転化 率は 低か った 。 また 炭酸 中和 して い ない 灰充填カラムに おいてはp‖が高くて硫酸塩 還元 反応 は起 こら な かったが、そ れに接続した土充填カラムで は反応が起こった。6.2節 では 、供 給液TOCが高 いカ ラ ムで は早 期にORP低下 がみ ら れ硫 酸塩 還元 反応が進行し、流 入硫 酸イ オン の約90%が減 少 した 。最 大硫 酸塩 還元速度を求め たところ、ほば100〜 200 g−SO./(d.m3−layer)となった。TOCの低い場合ORP低下は遅く、硫酸塩還元が進行しても 硫酸 イオ ン減 少量 は 少な かっ た。 これ ら のカ ラム 実験 に 共通 して 、溶 出液中反応同様に TOCが 反応 に 大き な影 響を も った 。ま た、 カラ ム実験では溶出 液中と異なり反応の活性が 高い 場へ 有機 栄養 と 硫酸イオンが 供給されるため、多くの硫酸 イオンが減少した。これら のこ とか ら、 埋立 地 の底 部に おい て硫 酸 塩還 元が 進行 し た場 合、 長期 にわたり上部から TOC及び硫酸イオンの供給が あると、十分に硫化物蓄積層 が形成されると思われる。 また、
中間 覆士 等に 土壌 を 用いている埋 立地では、焼却灰層での硫酸 塩還元が少ない場合に、重 要な役割を土壌が担う可能性 がある。
以 上の よう に、 都 市ごみ焼却灰 埋立地における硫酸塩還元に よる硫化物生成について基 礎的 に検 討し た。 こ れにより、埋 立地における重金属固定に対 し微生物的硫酸塩還元反応 が有 効で ある こと を 示し、埋立地 が重金属流出による環境汚染 源とならないための管理方 法及び埋立地における重金属 流出抑制を行うための埋立 工法に対する基礎的なテ゛ータとし て有益な知見を与えた。
− ・495―
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
焼却灰埋立地における硫酸塩還元反応による 重金属固定に関する基礎的研究
廃棄 物の 焼却 処理 が多 く採 用さ れる にっ れて 、埋立地に搬入される廃棄物に占める焼却 残渣の 比率 が増 加し 、埋 立地 内に 蓄積 され る重 金属による環境汚染が心配されるようにな った。焼却残渣中に含まれる硫酸塩を硫酸塩還元菌( SRB )の作用により.重金属を硫化物とし て固定できないかと考え、この研究を展開している。その主な結果は次の点に要約できる。
1 ) 焼却 灰は アル カリ性が強く微生物が増殖できる環境にないが、灰中の有機物分解反応 や 空 気 か ら の 拡 散 侵 入 に よ っ て 供 給 さ れ る 炭 酸 ガ ス に よ っ て 簡 単 に 中 和 で き る 。 2 ) 焼却 灰中 の硫 酸イオン溶出量は低pH ほど大きくなり、中性では含有量の約半分が溶出 す る 。 ま た 、 焼 却 灰 埋 立 地 内 の ポ ー リ ン グ 調 査 に よ り SRB の 存 在 を 確 か め て い る 。 3 )炭酸中和した焼却灰溶出液を用いたバッチ式実験でSRB による硫酸塩還元反応における pH ,温度,ORP などの環境因子の影響を検討している。
4 ) 炭酸 中和 焼却 灰溶出液中の硫酸塩還元反応の制限因予はTOC であり、溶出液中のTOC 濃 度が200mg/L 以 上で あるとき硫酸塩還元反応がはっきり認められるが、それ以下では酸化還 元電位 が低 下す る過 程で大部分のTOC が消貲されてしまい硫酸塩還元最はわずかである。ま た、この反応は、通常兒られる乳酸不完全資化反応である。
5 )カラム内に焼却灰を充填し不飽和で水を流す流通式尖験においても、溶出TOC 濃度の低 いカラ ムと pH の 高い 灰の カラ ムを 除い て硫 酸塩 還元反応が起こったが、反応が活発になる までに 火部 分の TOC や硫酸イオンが流出してしまい反応卒は商くなかった。そこで、上流か ら灰溶 fH 液 が流 下し てくるような状況を校したカラム実験を行い、十分なTOC が供給される 場合には大きな硫酸塩還元能カを発揮することを明らかにした。
これ を要 する に、 著者 は、 焼却 灰主 体の 埋立 地における硫酸塩還元反応による重金属固 定につ いて 基礎 的な 新知 見を 得た もの であ り、 環境工学並びに廃棄物処分工学に貢献する ところ大なるものがある。
よ っ て 著 者 は 、 北 海 道大 学博 士( 工学) の学 位を 授与 され る資 格あ るも のと 認め る。
― 496―