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東京都における老衰死亡率の年代的観察

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(東女医大誌 第30巻 第12号頁3035一 3042me和35年12月)

東京都における老衰死亡率の年代的観察

東京女子医科大学衛生学教室(主任 吉岡博人教授)

石  川

イシ   カワ

トオル

(受 付  昭 禾035年9月1 日)

        工 緒   言

 近年医学の著しい発展に伴ない,伝染性疾患による死 亡,乳幼児の死亡率等は著減したが,老人性疾患は増加

し次第に注目されるにいたった1)。著者は,1955年のわ が国「老衰」死亡率が全;死因中第3位2)の高:率を示し,

なお多くの問題を含む重要な死因であると考えて,本邦 老衰死亡率の研究第1〜3報3・4・5)に,明治32年から昭和 30年までの年代的推移を男女別,肩県別に報告した。ま た「老衰」訂正死亡率が,大正9年以後つねに全国第1 位である秋田県6)につき観察し,その結果秋田県は全国 的に老入人口が少なく,しかも「老衰」死亡の死因名を 多く用い,また全国一の短命県であることを指摘した。

 今回は,東京都の「老衰」死亡の年代的観察を行なっ たので報告する。

      丑 資料および研究方法  1 資料

 「老衰」死亡数および人口は, 本邦老衰死亡率の研究 第1報3)と同様に,明治32,36,41,大正2,7,9,14,

日召禾05,10,15,22,25,30年につき資料を使用した0  2 研究方法

 1) 訂正死亡率   第1報3)と同様5  2)訂正死亡率の性比   第1報3)と同様。

 3)年令階級別死亡率   第2報4)と同様。

 4) r老年者老衰死亡率」

  第1幸授3)と1同様。

 5) 「老人人口比率」

  第1報3)と同様0  6)「死因比率」

  秋田県における老衰死亡率の年代的観察6)と同様Q 第1表 男女別「老衰」訂正死亡率ならびに「老年者老衰死亡率」 全国,東京都

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年次別     \…_

明  治 32年

    36     41 大  正 2年

     7      9

    14

昭  和 5 年

    le     15     22     25     30

訂正死亡率(人口10万対)

99. 1 97. 4 92. 2 81. 0 104. 7 130. 1 117. 1 138. 8 117. 1 130. 5 119. 7 77. 0 60. 8

122. 1 11e. 6 168. 2 91. 4 128. 7 126. 4 111. 6 132. 7 no. s 124. 3 1e6. 4 69. 2 57. 7

東  京  都

84. 4 89. 3 73. 5 58. 7 72. 2 116. 8 112. e 99. 0 96. 6

128. 8 83. 4

110. 0 105. 3 97. 9 73. 4 108. 3 116. 7 93. 1 89. 1 95. 6

99. 1

72 O

「老年者老衰死亡率」 (人口1万対)

男 女

135. 6 137. 6 119. 6 106. 1 139, 3 147. 3 134. 0 147. 3 139. 9 142. 4 125. 3 82. 2

166. 6 161. 5 158. 7 133. 6 186. 1 169. 9 163. 7 170. 1 164. 9 171. 0 140. 4 97. 2

東  京  都

男 女

115. 6 114. 0 95. 7 75. 0 97. 3 106. 1 108. 7 95. 4 93. 2 106. 0 101. 8 63. 9

150. 7 148. 1 141. 4 107. 5 161. 8 134. 6 119. 4 113. 2 121. 1 エ25.7 109. 3

81. 2

T6ru ISIKA VVA (Departrnent of Hygjene, Tokyo Women s Medical College): An observation en secular changes of the death−rates from senility in Tokyo.

(2)

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         4       二日

第1図 男女別「老衰」訂正死亡率の年次的推移(人口10万対)  全国,東京都  7)「老年者死因比率」

  秋田県6)の観察と同様。

         皿 研究結果  1 訂正死亡率

 第1表,第1図に東京都の「老衰」訂正死亡率(人口 10万対)の年次的推移を,全国のそれとともに示す。全 国と東京都の年次的経過はよく似ているが,男子は昭 和22,25年,女子は昭和25年に東京都が全国より高率と なり,他は全国の方が高率である。

 東京都男子は,明治32年の84.4から大正2年の全年代 最低値58.7に低下し,以後は大正9年まで上昇し,昭和 22年まで高率を持続する。昭和22年は全年代最高値で 128.8となり,昭和25年には急低下して83.4となる。女 子は,明泊32年の110.0から大正2年まで低下し,以後 上昇して大正9年には全年代最高値116.7となる。それ から昭和22年まで大体90〜100の聞を保ち,昭和25年に 全年代最低値72.0と低下する。東京都の男女を比較する

と,明泊32年から大正7年目で女子が男子より高率で,

大正g年以後は逆に男子が女子より高率となる。

 全国の場合は,男女ともに明治32年から大正2年に低 下し,以後ヒ訳し,大正9年かち昭和22年までは大体高 率を保ち,昭和25年に急低下する。男女ともに昭和・5年 が全年代最高値で,最低値は昭和30年,ついで昭和25年

である。男女の率の関係は,東京都と同様で亙る。

 東京都の訂正死亡率を,全府県の高率のものからみる と,明治32年は男子30位,女子29位,大正9年は男子31 位,女子34位,昭和10年は男子44位,女子41位と次第に 下位になったが,戦後の昭和25年は男子15位,女子18位

と上昇した。

 2 訂正死亡率の性比

 第2衷,第2図により訂正死亡率性比の年次的推移を 第2表 「老衰」訂正死亡率の性比

(男子訂正死亡率/女子訂正死亡率)×100      全国,東京都

三一遡{全国 東京都

明 治 32年

    36     41 大 正  2年     7     9

   14

昭 和  5年 目   10     15     22     25     30

81. 1 88. 0 85. 2 88. 6

8Z 3 102. 9 104. 9 104. 5 105. 9 105. 0 112. 4 111. 2 1e5. 4

76. 7 84. 8 75. 0 79. 9 66. 6 100. 0 120. 2 111. 0 100. 9

工30.0 115. 9

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第2図

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「老衰」訂正死亡率の性比の年次的推移

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全国,東京都

(3)

示す。

 東京都は大正7年まで100以下で,大正9年から100 以土を示す。大正7年が全年代最低値の66.6,昭和22年 が全年代最高値の130.0である。

全国は,昭和32年の最低値から大正7年まで100以下 で,大正9年以後は100以上となり,昭和22年は最:高値

となる。

全国と東京都を比較すると,年次経過はよく似ている

が,三傑32年から大正9年まで東京都が全国より低率 で,大正14年以衝煉京都の方が高率を持続する。すな わち東京都は,訂正死亡率が大正9年を境として,大正

7年以前は女子高率,大正9年以後は男子高率の男女死 亡率の逆転が全国より箸しかつた。

 3 年令階級別死亡率

 第3図に明潰36年から昭和25年まで「老衰」の男女 別,年令階級別死亡率(人口10万対)を示す。

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第3図 男女別,年令階級別「老衰」死亡率(人目10万対)の年次的推移  全国,東京都

(4)

 全国と東京都を男女別に比較すると,東京都が全国よ り高率は,60才代で明潰36,41年の男女および大正9年 と昭和25年の女子,70才代では昭和22年の男女と昭和25 年の男子,80才以上では昭和25年の男女である。他はす べて東京都男子は全国男子より,東京都女子は全国女子

より低率を示す。

 年次的推移をみると,全国,東京都ともに60才代は明 治から昭和戦前まで大差なく,戦後に急低下する。70才

代と80才以上は,明治から大正中期まで低率であったの が,大正9年以後から昭和戦前までやや高率を保ち,戦 後に急低下する。また昭和25年は,各年令階級ともに死 亡率が減少したのに,50才代の「老衰」死亡が昭和22,

25年にわずかながら認められる。

 4 「老年者老衰死亡率」

 第1表,第4図によって「老年者老衰死亡率」(人口 1:万慰)をみる。

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第4図 男女別「老年者老衰死亡率」ならびに「老人人口露塵」の年次的推移  全国,東京都

 東京都男子は,明治32年の全年代最高ma 115. 6から次 第に低下し,大正2年に75eOの谷となる。大正9,14年 および昭和15,22年に高率を示し2峰の山を作る。昭和 25年は全年代最低値63,9と急低下する。女子は,開治32 年の150.7から大正2年に107.5とやや低−下し,大正7年 に全年代最高値161. 8となる。以後134.6〜109,3と昭和 22年まで大体水平値を保ち,昭和25年に全年代最低値 81.2と急低下する。全年代つねに女子が男子より高率で

ある。

 全国の男子は,明治32年から大正2年に低下し,大正 9年と昭和5年に最高の2峰の山を作り,昭和25年には 急に最低値となる。女子は,明泊32年から大正2年に低 下し,大正7年に最高値となり,昭和25年は急に最低値

となる。全年代女子が男子より高率である。

 全国と東京都を比較すると,男女とも全年代つねに全 国の:方が高率である。男子は明治時代と昭和25年,女子 は明治と大正初期と昭和25年に東京都と全国の差が小と なる。

 東京都の「老年老老衰死亡率」を,全府県のうち高率 のものからみると,明浩32年男子30位,女子29位,大正

9年からは低下して男子43位,女子40位,昭和10年は男 女ともに全国最低の46位,昭和25年は男子40位,女子37 位である。明治32年は訂正死亡率と同様な順位である が,大正9年以後は全国的に最下位に近い。

 5 「老人人口此率」

第3表,第4図にて「老人人口比率」 (千分比)をみ る。全国,東京都ともに女子が男子より高率で,男女と もに東京都が全国より低率である。

第3表 男女別「老入人口比率」

   全国,東京都

(千分比)

地区別除 国陣京都

「軸く堕1男

明治 32年   36   41

大正  2 年    7    9

  14

昭和 5 年   ユ0

  15   22   25   30

75. 7 76. 5 80. 1 84. 0 83. 5 74. 1 72. 2 65. 9 65. 8 68. 5 67. 2 69. 5 73. 8

88. 9 88. 5 90. 2 93. 5 93. 5 90. 1 83. 8 82. 3 82. 7 86. 4 82. 2 84. 3 87. 4

70. 9 71. 1 74. 9 58. 1

8L 2

45. 5 36. 5 35. 7 36. 2 39. 2 44. 8 48. 6 51. 5

87. 3 85. 4 86. 6 70. 7 90. 2 64. 8 52. 7 52. 1 51. 7 55. 0 59. 0 61. 2 63. 2

 全国の「老人入口比率」は,明治以来あまり率の激変 はない6東京都は男女とも大正2年にやや低率となり,

大正9〜昭和15年は著しく低下し,昭和22年からやや上 昇の傾向を示す。東京都の全年代最高値は男女ともに大

(5)

正7年で,男子81. 2,女子90.2であり,最低値は男子昭 和5年の35.7,女子昭和10年の51.7である。全国と比較 すると,明治から大正9年まで大体全国の率に近く,大 正9年から全国より著しく低下して,昭和戦後にやや上 昇の傾向を示すが全国より低率である。

 東京都を全府県の高率なものからみると,明治32年は 男女ともに28位,大正9年は男子46位,女子45位,昭和 10,25年は男女ともに46位で全国最下位である。既報の 秋田県6)の揚合は,全国で41〜45位で,「老衰」死亡率

を訂正すると著しく訂正死亡率を上昇させる主因となっ たが,東京都は老人人口が秋田県より少ないのに,訂正 死亡率は高率を示さない。この点から老えると,東京都 は全国的に老入入口が少なく,また「老衰」死亡も他府 県より真に少ないと老えられる。

 6    「死因上ヒ率」

 第4表,第5図によって全年令層における全死因死亡 数に対する,「老衰」死亡の割合(百万比)をみる。

 東京都男子は,明治36年と大正7年に小さな山を示す が,大体明治32年の2.7から大正9年の全年代最:低値2.0 まで低下し,以後は上昇をつづけ,昭和30年は全年代最 高値4.2となる。女子も大体男子と同様な傾向で,大正

7年に小さな出を作るが,明治32年の4.8から次第に低 下し,大正2,9,14年は全年代最低値の3,5を示し,そ の後次第に上昇して昭和30年は全年代最高値8.3とな

る。

 全国は,男女とも大正9年まで次第に低下し,それか ら昭和戦前まで次第に上昇する。昭和22,25年とやや低 下し,昭和30年は最高値に上昇する。全国,東京都とも に全年代つねに女子が男子より高率である。

 全国と東京都を比較すると,全国は昭和22から昭和25

第4表 男女別(「死因比率」ならびに「老年者死因比率」 (百分比) 全国,東京都

\      比率別

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  年次別

明 治 32 年     36     41 大 正  2 年     7     9     14 昭 和 5 年     10

   15    22    25    30

「死 率」

4. 7

4.9 4.6 4.5 4.4

4. 2

4.6 5.2

5. 3 5. 8

5.4 5.0 6.4

7. 0 7. 1 6. 8 6. 4 6. 5

6.0

6. 9 7. 9 8. 4

9.4

8. 5

7.9 11. 0

:東 京 都

2. 7 3. 0 2. 4 2. 1 2. 3 2. 0 2. 2 2. 4 2. 5 3, 3 3. 7 3. 6 4. 2

4. 8

4. 8

4.3

3. 5 4. 4 3, 5 3. 5 4. 1

4.9

5. 8

5. 9 6. 3 8. 3

「老年者死因比率」

男t女

13. 0 18. 3 18. 2 17. 2 17. 5 17. 5 17. 5 24. 8 エ9.0 19. 0 17. 4 13. 3 13. 0

19. 4 25. 2 26. 0 24. 4 25. 7 25. 1 25. 5 27. 1 28. 1 28. 3 24. 9 19. 2 20. 0

東 京  都

8. 7

14. 7 13. 4 11. 7 12. 5 11. 7 12. 3 12. 0 12. 6 14. 0 16. 4 11. 4

14. 6 20. 1 20. 9 18. 0 21. 5 18. 8 18. 6 18. 9 21. 8 21. 9 22. 8 17. 3

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第5図 男女別「死因比率」ならびに「老年者死因比率」の年次的推移(百分比) 全国,東京都

(6)

年へと低下した傾斜を示すが,東京都の揚合はみられな い。このことから全国の場合は,昭和25年に「老衰」死 亡の診断決定方針が変更された7)ことが影響して,昭和 25年に他死因による死亡の減少とともに「老衰」死亡も 減少したことが知られる。しかし東京都の場合は,訂正 死亡率および「老年老老衰死亡率」は昭和25年に急低下

したが,「死因比率」は戦後の減少がみられないので,

東京都は「老衰」死亡の戦後減少にくらべて,他死因に よる死亡の減少の方が薯しかつたことを示す。大沢8)に よって,東京都における「老衰」死亡の「死因比率」を みると,昭和8年から16年へ,昭和22年から28年へと次 第に上昇し,今回の成績と大体一致する。

 7 「老年者死因比率」

 第4表,第5図にて60才以上の全死因死亡数に対す る,「老衰」死亡の割合(百分比)をみる。

 東京都は全年代つねに全国より低率で,東京都,全国 ともに男子より女子が高率である。全国昭和5年男子の 著しい高率以外は,男女ともに東京都と全国の年次経過 は大体一致するQ

 東京都の年次経過をみると,明治32年の全年代最低値 男子8.7,女子14.6から明野36年に急上昇し,その後は 大体水平値を保つが,男子は昭和15年から上昇して昭和 22年に全年代最高値16.4となり,25年に11.4と急低下す

る。女子は昭和10,15,22年と次第に上昇して昭和22年 に全年代最高値22.8となり,25年は急低下して17.3とな る。東京都の「老年老死因比率」は「死因比率」の場合 と異なり,昭和25年に低下をみる。このことから60才以 上における「老衰」死亡は,他の老入病による死亡に比

し戦後低下したことが知られる。

         Iv 考   按

 「老衰」死亡の死因名は一つの概念であって,確たる 臨床診断が困難9)10)であるので,「老衰」死亡を死亡診 断書に記載するにあたり,時代により,地:方により異な った傾向を持ち,統計上それが表われてくることが考え られる。

 著者の成績によると,東京都の60才以上の老人人ロは 全国一少なくて,60才以上の年令層における「老年老老 衰死亡率」は全国的に著しく少なく,また60才以上の年 令層における「老年者死因比率」をみても他府県より著 しく等値である。これらのことから,東京都の60才以上 の老人に「老衰」死亡の死因名を用うることが,他府県 に比して倶しく少ないことが知られる。

 訂正死亡率についてみると,年次的経過は明治から大 正初期までの比較的低率を持続する時期と,大正中期か ら昭和22年までの高率を持続する時期と,昭和25年の急 激な低下の時期と3特徴を有する。昭和25年に死亡率が 急低下することは,訂正死亡率,年令階級別死亡率,

「老年者老衰死亡率」のいずれにもみられる。昭和25年

は22年より老人が増加したのに,「老衰」死亡率が減少 したのは,「老衰」死亡の死因名を昭和25年からなるべ く用いないようになった7)ことが,東京都の揚超にも影 響したと卜えられる。一方,全年令層を含む「死因此 率」からみると,昭和25年に上昇傾向を持つが,このこ

とは60才以下の他の死因による死亡が,「老衰」死亡に 比し急減したことを示すものである。

 昭和25年にあまり減少しなかったと思われる老人病に ついて,ご,三文献を参照してみる。昭和30年の東京都 の死因順位8)2)第1位は「中枢神経系の血管損傷」で,

金11)による東京都の死亡率は昭和22年に急低下し,25年 にやや上昇する。おなじく死因第2位の「悪性新生物」

について,中村12)によると昭和22年に死亡率低下し,25 年に急上昇する。同様に死因第3位の「心臓の痴§、」に ついて安楽城13)によると,昭和25年に死亡率は増加の傾 向にあるとされる。以上から東京都の3死因ともに昭和 22年に死亡率が低下したものが,25年に増加の傾向にあ

り,著者の「老衰」死亡率は昭和22年に上昇し,25年に急 低下したことと全く反対の関係にあることが知られる。

 M.W. ThewlisのGeriatr三cs14)では,:老人の死因に ついて臨床診断と剖検診断との間に約45%の相違が認め

られるとされる。臨床的の「老衰」死亡が剖検円いかに 異なるかについて,浴風園のこの点に関する研究15)をみ ると,関の臨床診断からみた老年老の死因統計は昭和2

〜25年について,著者の「老衰」死亡に相当すると思わ れる「不明の死因」は死因順位第7位で,全死因の約 7.4%である。一方60才以上の剖検例について,関,:豊 倉16)の昭和20〜30年の統計によると,死因順位第8位に

「老衰および症状診断不適当」が1。6%認めちれ,両国の 間に約5.8%の差がみられた。著老の東京都の「老年者 死因死率」は,昭和5〜25年について男子11.4〜16.4%,

女子17.3〜22.8%となり,全国的に「老衰」死亡の少な い東京でも,相当高率に「老衰」死亡の死因名が用いら れていることがわかる。

 東京都の寿命について,水島ら17)18)19)の0才平均余命 を全国的に長命の方からみると,昭和1〜31年で大体4〜

26位,62才の平均余命は30〜43位である。東京都の0才 余命は比較的優秀であるが,62才以上の:老人については:

余り長命の方ではない。

         V 総   括

 東京都の「老衰」死亡につき,明溜2年から昭和30年 までの成績を総括すると次のごとくである。

 1 訂正死亡率

 年次経過は大体全国のそれと似ているが,男子の昭和 22,25年,女子の昭和25年以外はすべて全国の方が高率 である。死亡率は男女ともにほぼ同様な推移を示し,明 治32年から大正2年に低下し,大正9年から昭和22年ま で高率を持続し,昭和25年に急低下する。全年代最高画

(7)

は男子昭和22年の128.8,女子大正9年の116.7であり,

最低値は男子大正2年の58.7,女子昭和25年の72.0とな る。男女を比較すると,全国と同様に大正7年までは女 子が高率で,大正9年以後は男子が高率である。

 全府県の高率のものからみると,東京都は明治32年男 子30位,女子29位,大正9年男子31位,女子34位,昭和 10年男子44位,女子41位と次第に二一Fするが,昭和25年 に男子15位,女子18位と上昇した。

 2 訂正死亡率の性比

 大正7年まで100以下で,大正9年以後は100以上であ るが,全国より東京都の方が:大正9年を境とする男女の 率の逆転が著しい。東京都の全年代最低値は,大正7年 の66,6,最高値は昭和22年の130。0である。

 3 年令階級別死亡率

 東京都は男女ともに各年令階級において全国より低率 の年が多い。年次経過をみると,60才代は明治,大正,

昭和戦前と大差なく,昭和25年に急低下する。70才代と 80才以上は明治と大正初期に低率で,大正9〜昭和戦前 は高率で,戦後に低下する。また昭和22年にわずかなが

ら50才代の「老衰」死亡が認められる。

 4 「老年者老衰死亡率」

 東京都男子は明治32年の全年代最高値115.6から:大正 2年に低下し,大正9,14年および昭和15,22年に2峰 の山を作りt昭和25年に全年代最低値63.9と急低下す る。女子は明治32年から大正2年にやや低下し,大正7 年は全年代最:高値161.8と上昇し,以後は昭和22年まで 高率をつづけ,昭和25年に全年代最低値81.2と急低下す

る。また全年代つねに女子が男子より高率である。東京 都の年次経過は,全年代つねに全国の方が東京都より高 率で,男女ともに明治時代と昭和25年に東京都と全国の 差が小となるQ

 全府県のうち高率のものからみると,東京都は萌治32 年男子30位,女子29位,大正9年男子43位,女子40位,

昭和10年は男女ともに46位,昭和25年男子40位,女子37 位である。

 5 「老人入戸比率」

 女子は男子より高率であり,男女ともに東京都は全国 より低率である。

 東京都は男女ともに明治32年から大正2年にやや低率 となり,大正9〜昭和15年まで著しく低下し,昭和22年 からやや上昇の傾向を示すがなお全国より低率である。

全国と比較すると,大正9年まで大体全国の率に近く,

大正9年から全国より著しく低下して,昭和戦後にやや.

上昇の傾向を示す。全年代最高値は男女ともに大正7年 で男子81.2,女子90。2であり,最:低値は男子昭和5年の 35.7,女子昭和10年の51.7である。

 全府県のうち高率のものからみると,東京都は明治32 年は男女ともに28位,大正9年男子46位,女子45位,昭 和10,25年は男女ともに全国最下位の46位である。

 6 「死因比率」

 東京都は女子が全年代つねに男子より高率である。年 次経過は男女ともに大体において明治32年から大正中期 まで次第に低下し,その後は昭和30年まで上昇をつづけ る。全年代最高値は男女ともに昭和30年で男子4.2,女 子8.3であり,最低値は男子大正9年の2.0,女子大正 2,9,14年の3.5である。全国は戦後に一度「死因比 率」の低下をみたが,東京都の場合はみられない。すな わち東京都は,戦後の他死因による死亡の減少が,「老 衰」死亡の減少程度にくらべて著しかったことを示す。

 7 「老年老死因比率」

 東京都は全年代つねに全国より低率で,年次経過は全 国男子の昭和5年の高率以外は大体全国と一致する。ま た女子は男子より高率である。

 東京都は全年代最低値の明治32年(男子8,7,女子 14. 6)から36年に急上昇し,以後は大きな変動なく,昭 和22年は全年代最高値(男子16,4,女子22.8)となり,

昭和25年は男女ともに低下し男子11.4,女子17.3とな る。昭和25年の60才以上における「老衰」死亡は,他の 老人病による死亡よりも減少したことを示す。

 三筆に当り,終始御懇切なる御指導,御校閲を賜わり ました吉岡博人教授ならびに諸岡妙子助教授に深く感謝 の意を表します。

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石川徹:東女医大誌302221(昭35)

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石川徹:東女医大誌502246(昭35)

石川町:東女医大誌30(昭35)

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参照

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