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心臓疾患死亡率に関する一考察 : 東京都における死亡率の推移について

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心臓疾患死亡率に関する一考察

一一

結椏sにおける死亡牽の推移について一

東京女子医科大学衛生学教室(主任吉岡博人教授)

安 樂 城 元

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(受付 昭和32年9月2日)

1 緒 言 近年わが国国民死因の主因となった心臓疾患死 亡について注目し,著者はさきに本邦心臓疾患死 亡率について,その年代的推移を明らかにすべく 研究を行い,その結果種々なる知見を得た1)∼11)。 その得た知見のうちの一つとして,府県別死亡 率について三二県別死亡率の年代的推移を究明す ることよって二三の興味ある傾向を見出した7)。 すなわち各府県によって本疾患死亡率の年代的推 移において,その傾向により上昇型,静止型およ び下向型に大別することができるものと老えられ る7)。以上の三型のうち,⊥二型,静止型はしばら くおき,下向型についてみると,東京,神奈川, 京都,大阪,兵庫等の大都会をふくむ諸府県がこ の現象をしめし,明治年代において高率をしめし たこれら府県が,その後減率傾向をしめして推移 したことを観察し得た7)。吉岡・諸岡ユ2)も昔は断 然都市の心臓病死亡が農村より高率であると述 べ,また石井ユ5)も明治年代においては東京,京 都,大阪,兵庫の府県に高く,明治年代に死亡率 が高かった地域はその後減少傾向が強いと,同様 な報告をしている。 著者は以上の諸点に注目し,今回は上記の大都 会をふくむ諸府県のうち,わが国の首都である東 京都を下向型をしめした代表として,その年代的 推移について,とくに人口構成を考慮に入れた訂 正死亡率を算出し,これを主として究明してみ た。 H 資料および研究方法 資料:明治31年,明治36年,明治41年,大正2年 入口静態統計 大正9年,大正14年,昭和5年,昭和10年,昭和 22年,昭和25年 国勢調査報告 明治32年∼昭和18年,昭和22年・・v昭和25年 人口動態統計 研究方法:明治32年,36年,41年,大正2年,9 年,14年および昭和5年,10年,22年,25年の10隔年 の各年度について,全国総数,男女別ならびに東京都 総数,男女別のそれぞれの粗死亡率および訂正死亡率 を算出し,これに加え上記各年度における全国および 東京都の性別年令別特殊死亡率を算出し観察した(但 し,明治32年は明治31年末人口を用いた)。

皿 研究結果

1. 総数の観察 三一1に上記10ケ年の各年度における男女総数 の粗死亡率ならびに訂正死亡率を,全国わよび東 表一1 心臓疾患死亡率(入口10万対) 全国・東京都(男女総数)

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Hajime ARAKI (Dept. of Hygiene, Tokyo Women’s Med. Coll.) : An observation on the death−rates of heart disease. 一Secular changes of the death−rates in Tokyo (1899xv1950)一

(2)

44 京都についてしめした。また図心1は表一1を図 にしめしたものである。 IOQ 巌、。 憲. 奮 率 面 谷・・ 冨加 g 尊 3。 10 o ・・{=鑓鷺

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二一1 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国・東京都(男女総数) 図表によって,東京都の死亡率の年代的推移を 全国と比較しつつ観察してみる。まず全国におけ る推移は,年次を経るにしたがい粗および訂正死 亡率.ともに漸次上昇する傾向をしめしている。す なわ「・ち昭和25年は明治32年より粗死亡率にわいて は人口10万に対し16.7(65.0(昭和25年)一48.3 (明治32年目)だけ上昇し,訂正死亡率においては 18.5(63.9(昭和25年)一45.4(明治32年))だけ 上昇している5)。 これを東京都についてみると,粗および訂正死 亡率ともに死亡曲線は明治32年を最高とし,大正 年代を経て昭和年代初期にいたる茸で年次ととも に著明に下向をレめしてい.6 ’。近年においてはや や漸増する傾向をレめしているが,しかし明治32 年と昭和25年の死亡率を比較すると,粗死亡率で は43.6(94二4(明治32年)=’50.8(昭和25年)),訂 正死亡率においても27.0(87:8(明治32年)一60.8 (昭和2S年))”のごとぐ明らかに昭和年代における 死亡率は明治年代にくらべ著しぐ低下している。 すなわち以上の点より,図にしめすごとく漸次上 昇する全国の死亡曲線と,下向傾向を.オめした東 京都の死亡曲線は,ほぼ大正中期において交叉す るi現i象をしめした。 つぎに各年度の東京都訂正犀亡率が各都道府県 訂正死亡率中において占める順位をみるべく,表 一■に明治36年,:大正2年,昭和10年ならびに昭 和25年の各年度の順位および全国ならびに東京都 死亡率を,明治,大正,昭和(戦前)および昭和 (戦後)の各年代を代表して表示した。 面一・Hによってしめすごとく,明治年代の明治 36年においては東京都は全府県中第2位の高位に あり,かつまた全国死亡率よりもはるかに高率を しめしている。年代が大正となり大正2年になる とその順位は明治年代にくらべ低下し,.第13位を 占めるにいたった。しかし明治年代と同様に全国 死亡率にくらべるといまだ高率をしめしている。 きらに年代が進み,昭和に入り戦前の昭和10年に なると,東京都死亡率順位は著明に低下し,全府 県中わずかに4府県をのこすのみの第42位で,ほ とんど最下位近くまでに下向している。またはじ めて全国死亡率よりも低率をしめした。戦後の昭 和25年になると,戦前の昭和10年に比してその順 位はやや上昇するも,やはり第32位で全麻県の約 %の低位にあり,かつまた東京都死亡率は全国死 亡率より低率となっている。 かくのごとく,東京都死亡率の各府県死亡率中 占める順位は,明治,:大正,昭和と年代の推移と ともに明らかに下向していること,ならびに近年 になると全国死亡率よりも低率となっていること を襯察し得た。 2.男女別による観察 東京都における男女別特殊死亡率を訂正死亡率 を主として,全国男女別特殊死亡率と比較しつつ 観察してみる。 表一皿は全国男女別わよび東京都男女別の粗死 亡率ならびに訂正死亡率を表にしめしたものであ 、るQ 1)男子について 図一■は表一皿中の男子の死亡率についてのみ 図に.しめしたものである6 図にしめすごとく,全国,東京都の各々の死亡 率の推移は総数の揚合とほとんど同様な曲線をえ 一7・52.一

(3)

表一皿 心臓疾患死亡率(人口10万対)全国男子・女子:東京都男子・女子 ミヨト._ \ご 、一. xx・

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明 治 32年 36 41 大 正 2 年 9

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47. 7 49. 0 55. 6 54. 1 58. 0 61. 6 55. 3 57. 4 61. 9 64. 9 45. 7 47. 1 54. 0 51.0 55. 9 64. 2 58. 7 61.2 66. 0 68. 9 48. 8 52. 3 62. 7 61. 7 66. 0 66. 4 61. 1 57. 8 62. 4 65. 1 45. 6 48. 8 55. 7 59. 8 62. 2 63. 1 58. 4 55. 1 59. 7 60. 3 99. 0 77. 4 81.2 53. 9 50. 2 44. 7 39. 2 42. 8 46. 4 50. 6 94. 0 69. 9 77. 6 61. 1 63. 3 61. 5 56. 9 60. 6 58. 3 67. 9 89. 8 86. 4 86. 7 58. 7 56. 9 53. 8 44. 3 43. 3 44. 5 49. 7 82. 5 78. 7 80. 3 62. 3 56. 4 62. 4 45. 7 51.1 47.8 56.6 i .一し がいている。すなわち年代とともに漸次上昇する 全国男子の粗わよび訂正死亡率死亡曲線と6),明 治32年を最高とし,以後昭和初期にいたるまで著 明に下向傾向をしめした東京都男子粗・訂正両死 亡曲線の交叉現象である。

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図一H 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国・東京都(男子) また画にしめすごとく,東京都においては粗死 亡率の下向現象が訂正死亡率より著明で,昭和年 代における両者死亡率の差が増大している。なお 粗および訂正両死亡曲線とも昭和5年を最:低と し,近年になるにつれやや上昇する傾向をしめし てはいるが,しかし明治32年と昭和25年の死亡率 を比較すると,粗死亡率においては48.4(99.0(明 治32年)一50.6(昭和25年)),訂正死亡率において も26.1(94.0(明治32年)一67.9(昭和25年))と 昭和25年は明治32年より著明に低下している。 つぎに各年度の粗死亡率と訂正死亡率の関係を みると,全国については先に発表せるごとく観察 せる10力年のうち,大正9年までの前半の5力年 は粗死亡率が訂正死亡率より高く,大正14年以降

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図一皿畿心臓疾患死亡率く人口10万対)東京都(男子)

(4)

46 の後半の5力点は逆に訂正死亡率が粗死亡率より1 高率となっている6)。これを東京都男子について みるべく粗・訂正両死亡率の関係を図一皿に棒図 ≡養にしめした。 図にしめすごとく,朗治32年,36年,41年の観 察せる期聞のうち前期の明治年代の3力年はいず れも訂正死亡率は粗死亡率より低率であるが1大 正2年以降の7力年の各年度はいずれも逆に訂正 死亡率は粗死亡率より高率となっている。 この現象を裏づけるべく,心臓疾患が老人性疾 患として,主として高年層を侵すことよりみて, 各年度の老入層における人口構成について考慮 し,東京都における男女別40才以上の年令構成千 分比を算出し,表一IVにしめした。これによって 男子についてみると,東京都における各年度の40 才以上年令構成千分比は,訂正死亡率算出に用い たる昭和5年度全国40才以上千分比250にくらべ ると,明治32年,36年,41年の3三年はいずれも 東京都男子の方が高く,大正2年以降の7力年は いずれも低率をしめしていることからみて,各年 度における粗および訂正死亡率の関係において前 記のようなi現象をしめしたものと考えられる。 表一IV 年令構成千分比(40才以土)の比較 :東京都 loo

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図一IV 心臓疾患死亡率(人口10万対) 全国・東京都(女子) 明 治32年 36 41

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10 22 25 291 281 283 231 204 191 189 189 245 235 294 282 282 227 252 209 205 202 240 237 爾昭和5年度全人口の40才以上標準人P千分比 は250である。 2)女子について 図一IVに全国ならびに東京都のそれぞれの女子 の粗および訂正死亡率の年代的推移を図示した。 前掲せる表一一皿ならびに図一IVによって,東京 都女子死亡率を全国女子死亡率と比較しっっ襯察 してみる6図表にしめしたごとく,女子において もほぼ総数,1男子と同様な状態をしめしている。 すなわち全国女子における徐々に上昇傾向をしめ す粗および訂正死亡率死亡曲線と6),明治32年を 最高として年次とともに下向傾向をしめした東京 都女子の粗および訂正死亡率死亡曲線が大正初期 において交叉現象をしめしていることである。 なお東京都女子においても,昭和初期において 最低死亡率をしめし,近年においてはやや上昇す る傾向をしめしているが,しかし明治32年と昭和 25年の死亡率を比べると,粗死亡率においては 40.1(89.8(明治32年)一49.7(昭和25年)),訂正 死亡率においては25. 9(82.5(明治32年)一56.6 (昭和25年))にて,いずれも昭和25年は明治32年 より著明に低下している。 各年度の粗死亡率と訂正死亡率の関係について みると,全国女子においては先に発表せるごと く,全国男子とことなり各年度いずれも訂正死亡 率は粗死亡率より低率をしめしている6)。 これを東京都女子についてみるべく,両者死亡 率の関係を俸図表で図一Vにしめした。すなわち 観察せる期闇の前期の明治32年,36年,41年の明 治年代の各年度,ならびに大正9年の計4三年に おいて訂正死亡率は粗死亡:率より低率をしめす も,:大正2年および大正14年以降の各年度は逆に 訂正死亡率は粗死亡率より高率をしめしている。 この現象について,前掲せる表一IVのうち女子 における各年度40才以上年令構成千分比を参照し っっ考察してみる。すなわち各年度について標準 人口千分比250と比較すると,明治32年,36年, 41年および大正9年の4力年はいずれも高率をし めし,他は低率ををしめしている。かくのごとき 一754一

(5)

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図一V 心臓疾患死亡率(人口10万対)東京都(女子) 状態により前述せる現象をしめしたものと考えら れる。 3)男女の比較について 東京都男女死亡率を比較するため図一Wに男女 の粗および訂正死亡率の年代的推移をしめした。 図示するように男女死亡曲線はほぼ同様な傾向 をしめしている。男女とも明治32年間最:高とし, 以後昭和初期の昭和5年にいたるまで下向をつづ け,近年になりやや上昇する傾向をみせている。 しかし昭和25年は明治32年より死亡率は男女とも 著明に低率となっている。 図一VIならびに前掲せる表一皿によって,各年 度の男女死亡率を比較すると明治,大正両年代に おいては明治32年の粗・訂正両死亡率,大正9年 の訂正死亡率のみ男子が女子より高率で,他の各 年度はすべて女子が男子より高率となっている。 しかし年代が昭和に入ると粗死亡率においては昭 和5年,昭和ユ0年は依然として女子が男子よ.り高 IO tt’ pa 薩s。 患,。 葬 華‘.

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図一V正心臓疾患死亡率(人口10万対)東京都 率をしめしているが,戦後の昭和22年,25年は逆: に男子が女子より高率となる。訂1E死亡率におい ては,昭和年代になると各年度とも明治,大正両 Me 即

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(6)

年代とは逆に男子か女子より高率をしめし,その 差は年次とともに増大する。すなわち戦後の昭和 22年,25年両年は粗および訂正死亡率ともに男子 が女子より高率となる。 以上のごとく東京都における心臓疾患死亡率は 大正末期までの過去において女子が男子より高率 をしめしていたが,昭和年代に入り近年において は逆に男子の死亡率が女子の死亡率を凌駕し,そ の差も増大する現象をしめしてきた14)。 3.性別年令別死亡率の観察 心臓疾患死亡は老人層における主要な死因とし て,各年代各年度における全国ならびに各府県の 男女とも本疾患死亡率は年令の増加とともに高率 となり,そのえがく死亡曲線は高年層になるにつ れて急激に上昇していることを観察し発表した 1)’“’7)o 東京都における性別年令別死亡率においても昏 年度とも同様な現i象.をしめしている。

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1.函rV肛,東京都における性別年令階級別心臓疾患死亡率の年代的推移(人口10万対) 一 756 一一一

(7)

図一Wは各年代の東京都性別年令別死亡率をみ るべく,明治36年,大正2年,昭和10年および昭 和25年の前年度の男子年令別死亡率を,明治,ナ 正,昭和(戦前)ならびに昭和(戦後)の各年代 の男女の代表として図にしめしたものである。 図示せるごとく,各年度とも本疾患が老人性疾 患としての特徴を明らかにあらわし,死亡率は年 令とともに高率となり,死亡曲線は老人層におい て著明に上昇している。 つぎに性別年令別死亡率の各年令階級における 死亡率について,年代的推移の関係的変化をみる べく図一冊に半対数図表にてしめした。図にしめ すように高年層における死亡率の推移はほとんど 水平か,ごくわずかに上昇をしめすが,50才以下 の若年層になると年度により若干の変化ぼしめす も,各年令階級の死亡曲線は年度のすすむととも に下向の傾向をしめしており,この年令階級の死 亡率の推移が全体としての死亡率の低下現象をし めしたものと考えられる。但し近年において若干 死亡率の上昇をみたるは,図のごとく60才以上の 高年層における死亡率のみが昭和25年において従 来の死亡率より著明に上昇をしめしており,この 老人層における死亡率の上昇が全体の死亡率に影 響せるものとおもわれる。この老人層における本 疾患死亡率の上昇は,近年心臓疾患死亡を含む老 人性疾患が国民死因の主因となっていることを裏 づけるものとして注目される。 なお男女年令別死亡率を比較すると,年度によ り若干の相異はあるも,各年度ともほぼ同様な状 態をしめし,20∼4G才の若年層においては女子が 男子より高率で,高年層になると逆に男子が女子 より高率となる現象をしめしており,各年度の全 国,ならびに各府県と同様な現象をしめしている ことを観察し得た1)∼7)。 IV 総 括 以上東京都における心臓疾患死亡率の年代的推 移について述べた。これを総括するとつぎのごと くである。 1.総数の観察 (a)年次とともに漸次上昇する傾向をしめす全 国の粗および訂正死亡率の両死亡曲線と,明治32 年を最高とし昭和初期にいたるまで著明に下向を しめした東京都の粗および訂正死亡率死亡曲線は 大正中期において交叉する。なお東京都死亡率は 最近になりやや上昇する傾向をしめす。 (b)東京都死亡率の全国各府県死亡率中に占め る順位は,明治,大正,昭和と年代の推移ととも に低位となり,また近年においては全国死亡率よ りも低位となっている。 2. 男女罵りによろ観察 1)男子について (a)年次的推移において上昇傾向をしめす全国 男子の粗および訂正死亡率死亡曲線と,明治32年 を最高とし昭和初期にいたるまで下向をしめした 東京都男子の粗および訂正死亡率両死亡曲線は総 数の場合と同じく交叉現象をしめしている。また 東京都男子も東京都総数と同じく死亡率は近年や や上昇している。 (b)明治年代の各年度はいずれも訂正死亡率は 粗死亡率より低率であるが,大正,昭和の各年代 各年度は逆に訂正死亡率は粗死亡率より高率とな っている。 2) :女子について (a)女予においても死亡率の推移は,総数,男 子とほぼ同様な状態をしφしている。すなわち上 昇傾向をしめす全国女子の粗および訂正死亡率死 亡曲線と,下向をしめした東京都女子の粗および 訂正死亡率死亡曲線が交叉をしめしている。東京 都女子においても死亡率は近年になりやや上昇を しめしている、, (b)各年度の粗死亡率と訂正死亡率の関係をみ ると,擬評せる10力年の年度のうち明治年代の3 力年の各年度,ならびに大正9年の計4力年にお いては訂正死亡率は粗死亡率より低率であるが, 大正2年および大正14年以降の各年度は逆に訂正 死亡率は粗死亡率より高率をしめしている。 3) 男女の比較について 各年代男女死亡率を比較すると,明治,大正両 年代を通じ,明治32年の粗・訂正両死亡率及び:大 正9年の訂正死亡率のみ男子が女子より高率で, 他の各年回は女子が男子より高率である。しかし 昭和年代になると粗死亡率においては初期の5 年,ユ0年は女子が男子より高いが,戦後になると 22年,25年両年とも逆に男子が女子より高率とな る。訂正死亡率においては昭和の各年度は明治, 大正とは逆に男子が女子より高率となる。 3.性別年令別死亡率の観察 (a)東京都においても全国および各府県と同様

(8)

50 な現象をしめし,各年度の男女とも本疾患が老人 性疾患の特徴をしめし,死亡曲線は老人層におい て著明に上昇している。 (b)各年令階級における死亡率の年代的推移 は,高年層ではほとんど水平か,ごくわずかに上 昇をしめし,50才以下の若年層では下向の傾向を しめしている。注目されることは60才以上の高年 層で昭和25年において著明に死亡率が上昇をしめ していることである。 (c)男女死亡率を比較すると,各年度ほぼ同様 な状態をしめし,若年層においては女子が男子よ り,高年層では逆に男子が女子より高率となる現 i象をしめしている。 稿を終るに臨み終始御懇切なる御指導,御校閲を賜 った吉岡博人教授,ならびに諸岡妙子助教授に謹んで 謝意を表す。 丈 献 1)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第1報 一昭和(戦後)における死亡率について一束京女 医大誌,25,156∼162(昭30) 2)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第H報 一昭和(戦前)における死亡率について一 東京女 医大誌,25,255∼264(昭30) 3)安楽域元:本邦心臓疾患死亡率の研究 黒黒報 一大正における死亡率について一 東京女医大誌, 26, 174∼182(日野31) 4)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第W報 明治における死亡率について一 策京女医大誌, 26, 306∼313 (日召31) 5)安楽城元:本郭心臓疾患死亡率の研究 第V報 一全国総数における死亡率の年代的推移について, 東京女医大誌,26,382∼386(昭31) 6)安楽城元:本邦心臓疾患死亡率の研究 第VI報 一全国男女別死亡率の年代的推移について一 東 京女医大誌,26,416・V423(昭31) 7)安楽城元:本邦心臓疾憲死亡率の研究 第W報 一府県別死亡率の年代的推移について一一東京女 医大誌,27,21∼32(昭32) 8)安楽城元:最近における死因分類別にみた心臓 疾患死亡に関する研究,東京女医大誌,27,171∼ 185 (日召32) 9)安楽城元:最近における府県別死因分類別心臓 疾患死亡に関する研究,東京女医大誌,27,247∼ 260(昭32) 10)安楽城元:戦前における死因分類別心臓疾患死 亡に関する研究,東京女医大誌,27,311∼336 (昭32) 11)安楽城元:職業別心臓疾患死亡に関する研究, 東京女医大誌,27,373∼382(昭32) 12)吉岡博人・諸岡妙子:本邦都榔別老年疾患死亡 率について,日本人口学会調車,2,50(昭29) 13)石井公明:心臓疾患死亡に関する統計学的研究, 生物統計学雑誌,2,159(昭29) 14)諸岡妙子こ生物統計学的にみに男女の差異につ いて,東京医大誌,24,81∼88(昭29) 一 758 一

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