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日越間ビジネス通訳における職業規範

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Academic year: 2021

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(1)

博士学位論文(東京外国語大学)

Doctoral Thesis (Tokyo University of Foreign Studies)

氏 名 チャン・ティ・ミー 学位の種類 博士(学術)

学位記番号 博甲第294号 学位授与の日付 2020年4月22日 学位授与大学 東京外国語大学 博 士 学 位 論 文 題

日越間ビジネス通訳における職業規範

Name TRAN THI MY

Name of Degree Doctor of Philosophy (Humanities) Degree Number Ko-no. 294

Date April 22, 2020

Grantor Tokyo University of Foreign Studies, JAPAN Title of Doctoral

Thesis

PROFESSIONAL NORMS IN JAPANESE – VIETNAMESE BUSINESS INTERPRETING

(2)

日越間ビジネス通訳における職業規範

チャン・ティ・ミー

(3)

博士論文

日越間ビジネス通訳における職業規範

チャン・ティ・ミー

東京外国語大学大学院総合国際学研究科 博士後期課程言語文化専攻

PROFESSIONAL NORMS IN

JAPANESE – VIETNAMESE BUSINESS INTERPRETING

Tran Thi My Doctoral Thesis

Graduate School of Global Studies

Tokyo University of Foreign Studies

(4)

目次

1章 序 ……….1

1.1 本研究の背景 ……….1

1.2 本研究の目的 ……….3

1.3 本研究の意義 ……….4

1.4 本論文の構成 ……….5

2章 分析に用いる概念 ……….6

2.1通訳の定義 ……….6

2.2通訳の分類 ……….7

2.2.1方式による分類 ……….7

2.2.2分野・活動の場面による分類 ……….7

2.3規範の概念 ……….9

2.3.1規範の辞典上の定義 ……….9

2.3.2通訳翻訳研究における規範の定義 ……….9

3章 先行研究 ..……….12

3.1翻訳規範モデル ..……….12

3.1.1 Toury(1995)による翻訳規範モデル ..……….12

3.1.2 Chesterman(1997)による翻訳規範モデル ..……….14

3.2翻訳規範を抽出するためのデータ源 ..……….15

3.3翻訳規範の記述に有効な装置 ..……….17

3.3.1 Catford(1965)とPopoviĉ(1976)による翻訳シフト ..……….17

3.3.2 Chesterman(1997)による翻訳ストラテジー ..……….18

3.4翻訳規範に関する先行研究 ..……….23

3.5通訳規範に関する先行研究 ..……….25

3.6本研究の位置づけ ..……….28

4章 研究方法 ..……….30

4.1インタビュー・データ ..……….30

4.1.1インタビューの方法 ..……….30

4.1.2インフォーマントの情報 ..……….31

4.1.3インタビュー・データの分析手法 ..……….33

4.2シミュレーション・データ ..……….33

4.2.1シミュレーションの場面設定 ..……….33

4.2.2シナリオの作成とシミュレーション実施の流れ ..……….36

4.2.3シミュレーション・データの分析方法 ..……….39

5章 インタビュー・データの分析結果 ..……….42

5.1コーディングの信頼性 ..……….42

(5)

5.2.1「入念な仕事ぶり」 ..……….46

5.2.2「権力行使の自制」 ..……….48

5.2.3「依頼者を裏切らない立場」 ..……….50

5.3コミュニケーション規範意識 ..……….55

5.3.1「コミュニケーションの流れの円滑化」 ..……….55

5.3.2「相互理解の促進」 ..……….57

5.3.3「良き人間関係の構築・維持」 ..……….58

5.4関係規範意識:「意味的類似性優先」 ..……….64

5.5小括 ..……….66

6章 シミュレーション・データの分析結果 ..……….68

6.1責任規範 ..……….68

6.1.1「入念な仕事ぶり」の検証 ..……….68

6.1.2「権力行使の自制」の検証 ..……….75

6.1.3「依頼者を裏切らない立場」の検証 ..……….83

6.2コミュニケーション規範 ..……….98

6.2.1「コミュニケーションの流れの円滑化」の検証 ..……….98

6.2.2「相互理解の促進」の検証 ……….110

6.2.3「良き人間関係の構築・維持」の検証 ……….127

6.3関係規範:「意味的類似性優先」の検証 ……….138

6.4小括 ……….141

7章 考察 ……….143

7.1通訳特有のストラテジーと作業 ……….143

7.2 G1直訳の件数が少ない要因 ……….147

7.3規範同士の相互作用的な関係 ……….158

7.4規範抽出のデータ源としての訳出と訳出以外のテクスト ……….160

8章 結論 ……….163

8.1本研究のまとめ ……….163

8.2本研究の限界、今後の課題と展望 ……….165

参考文献 ……….169

図・表の一覧 ……….175

謝辞 ……….177

巻末資料 ……….179

I.インタビュー・データ分析ワークシート ……….181

通訳者Aのインタビュー・データ ……….181

通訳者Bのインタビュー・データ ……….184

通訳者Cのインタビュー・データ ……….188

通訳者Dのインタビュー・データ ……….190

(6)

通訳者Fのインタビュー・データ ……….195

通訳者Gのインタビュー・データ ……….198

通訳者Hのインタビュー・データ ……….200

通訳者Iのインタビュー・データ ……….202

通訳者Jのインタビュー・データ ……….206

通訳者Kのインタビュー・データ ……….208

II.シミュレーション・データ分析ワークシート ……….211

通訳者Aのシミュレーション・データ ……….211

通訳者Bのシミュレーション・データ ……….267

通訳者Cのシミュレーション・データ ……….313

通訳者Dのシミュレーション・データ ……….387

通訳者Eのシミュレーション・データ ……….437

通訳者Fのシミュレーション・データ ……….516

通訳者Gのシミュレーション・データ ……….574

通訳者Hのシミュレーション・データ ……….622

通訳者Iのシミュレーション・データ ……….673

通訳者Jのシミュレーション・データ ……….740

通訳者Kのシミュレーション・データ ……….803

III.シナリオ作成用の資料 ……….857

ロールプレイカード ……….857

セラー役の会社概要 ……….862

セラー役とバイヤー役の名刺 ……….864

IV.シナリオ ……….865

場面①のシナリオ ……….865

場面②のシナリオ ……….883

(7)

1

章 序 1.1 本 研 究 の 背 景

ベ ト ナ ム が チ ャ イ ナ ・ プ ラ ス ・ ワ ン の 最 有 力 候 補 と し て 脚 光 を 集 め る に つ れ て 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 の 需 要 が 一 層 高 ま っ て き て い る 。 日 本 貿 易 振 興 機 構

(Japan External Trade Organization, JETRO) が 実 施 し た 2018 年 度 日 本 企 業 の 海 外 事 業 展 開 に 関 す る 調 査 結 果 に よ る と 、 海 外 拠 点 の 所 在 国 ・ 地 域 ラ ン キ ン グ で は 、ベ ト ナ ム は 中 国 、タ イ 、米 国 に 次 ぎ 4 位 に 浮 上 し た( 日 本 貿 易 振 興 機 構 2019: 5)。ま た 、「 現 在 、海 外 に 拠 点 が あ り 、今 後 さ ら に 拡 大 を 図 る 」と 回 答 し た 企 業 の う ち 、 拡 大 を 図 る 国 ・ 地 域 に つ い て は 、 ベ ト ナ ム の 比 率 が 35.5%で 、 中 国 に 次 ぎ 2 位 と な っ た ( 日 本 貿 易 振 興 機 構 2019:20) 。

Ngô(2013:163)に よ る と 、ベ ト ナ ム に お け る 日 本 語 専 攻 大 学 卒 業 生 の 進 路 調 査 に 回 答 し た 287 名 の う ち 、106 名 (33% ) が 通 訳 者 ・ 翻 訳 者 と し て 働 い て い る と 答 え 、 「 通 訳 者 ・ 翻 訳 者 」 は 日 本 語 専 攻 大 学 卒 業 生 の 進 路 先 で 1 位 と な っ た 。

1. ベ ト ナ ム に お け る 日 本 語 専 攻 大 学 卒 業 生 の 進 路 先

出 典 :Ngô(2013:163) 図 2

し か し 、 日 本 と ベ ト ナ ム の 両 国 に お い て 日 越 通 訳 者 養 成 シ ス テ ム は 整 備 さ れ て お ら ず 、 専 門 的 な 通 訳 訓 練 を 受 け て い な い 通 訳 者 が 多 い 。 筆 者 も そ の 一 人 で

41

106 104 43

22 2

0 20 40 60 80 100 120

その他 通訳者・翻訳者 事務員 講師・研究員 経営者 ツアーガイド

(8)

あ る 。筆 者 は 2008 年 よ り フ リ ー ラ ン ス 日 越 通 訳 者 と し て 従 事 し 始 め た が 、次 第 に ビ ジ ネ ス 通 訳 者 と し て 何 が 正 し い か 、 何 が 間 違 っ て い る か 、 指 針 が な い の か を 悩 む よ う に な っ た 。 ベ ト ナ ム に お い て 政 府 機 関 や 協 会 な ど に よ り 制 定 さ れ た 翻 訳 者 ・ 通 訳 者 に 関 す る 倫 理 規 定 、 ガ イ ド ラ イ ン が 存 在 し て い な い た め 、 当 初 は 海 外 の 機 関 に よ る 倫 理 規 定 、 ガ イ ド ラ イ ン を 、 さ ら に 規 定 や 原 則 な ど か ら の 逸 脱 行 為 に 関 す る 文 献 を 読 ん だ 。 し か し 、 筆 者 の 悩 み が 解 消 さ れ な い ま ま 、 新 た な 疑 問 が 出 て き た 。

ピ ン カ ー ト ン(1996/2004)に よ る と 、オ ー ス ト ラ リ ア で は 、通 訳 者 は 言 語 変 換 作 業 の み を 行 い 、 そ れ 以 外 の こ と は し な い よ う に オ ー ス ト ラ リ ア 翻 訳 ・ 通 訳 資 格 認 定 機 関 (National Accreditation Authority for Translators and Interpreters, NAATI)が 規 定 し て い る が 、商 業 理 念 に支 配さ れ る ビ ジ ネ ス 通 訳 に NAATI の 規 定 を そ の ま ま適 用で き な い こ と が 認識さ れ 始 め た と い う ( ピ ン カ ー ト ン 1996/2004:145-147)。椎名・平高(2006)に よ る と 、ビ ジ ネ ス 通 訳 者 は常に依 頼者 が 何 を 要求し て い る か を判 断し 、依 頼者 の円 滑なコ ミ ュ ニ ケー ション を 実 現 す る た め に 、助言 、進 行役な ど 通 訳 業務以 外 の領域 で の対 処も 行 っ て い る(椎 名・平高 2006:17-18)。ま た 、ビ ジ ネ ス 通 訳 の依 頼者側は 、通 訳 者 に 正確 性の み な ら ず 、状 況に応 じて説 明を加え た り 、 訳 を追 加し た り 、削 除し た り す る こ と 、 す なわち柔 軟 性も求め 、 通 訳 者 に対す る付 加 価 値 サー ビ ス の 要求が 拡 大 し つ つ あ る と述 べて い る (椎名 ・平高 2006:22-23) 。

一般的 に は 、 逸 脱 行 為 は非と さ れ 、 制裁や処 罰な ど の否定 的 なサンクション が与え ら れ る 。 し か し 、 倫 理 規 定 か ら 逸 脱 し た に も か かわら ず 、 通 訳 の 実務者 か ら も 通 訳 の利 用者 か ら も支 持さ れ 、承認 や賞 賛な ど の肯定 的 なサンクション が与え ら れ る 行 為 が あ る の は なぜだろう 。既存 の 倫 理 規 定 や ガ イ ド ラ イ ン 以 外 に 、 ビ ジ ネ ス 通 訳 者 は 業務を遂行 す る際に遵 守し て い る 指 針 は あ る の か 。 ベ ト ナ ム を はじめ 、 多くの 国 で は充実 し た 訓 練 を 受 け ず に 、 倫 理 規 定 に も 国家 基 準 に も縛ら れ る こ と なくビ ジ ネ ス 通 訳 の 現場で活 躍し て い る 通 訳 者 が 大勢い る 。 そ の よ う な 通 訳 者 も 何 ら か の 指 針 に沿っ て 行動し て い る の で は な い だろう か 。 そ う い う 疑 問 を抱え な が ら 、 通 訳 理論に 関 す る 文 献 を 読 み漁っ て い た時に 、 Gideon Toury の 「 翻 訳 規範(translation norms) 」 の概念 に つ い て 言及す る 文 献 に 出 会 っ た 。Toury は 翻 訳 規範を 「 何 が 正 し い か 間 違 っ て い る か 、 何 が適 切か

(9)

不 適 切か に つ い て 、 あ るコ ミ ュ ニティ 内で共有 さ れ て い る 一般的 な価 値や志 向 で あ り 、特定 の状 況に と っ て適正 で適 用 可 能な 行 為 の 指 針 (Toury 1978:83-84 筆 者 訳 ) 」 と 定義し 、 規範と は記 述 分 析の範 疇で あ り 、 規範と い う 言葉か ら連 想さ れ る よ う な 、分 析者 や 研 究 者 が望ま し い と考え る 規 定 的 な選 択 肢の 集合で は な い と強調 し て い る 。 倫 理 規 定 が 存 在 し て い る に も か かわら ず 逸 脱 行 為 を 行 う 通 訳 者 の 行動も 、 ベ ト ナ ム の よ う に 倫 理 規 定 や ガ イ ド ラ イ ン が 制 定 さ れ な い 状 況の も と で活 躍し て い る 通 訳 者 の 行動も 、 倫 理 規 定 や ガ イ ド ラ イ ン な ど で は なく、ひと え に 規範を 研 究 す る こ と に よ っ て説 明で き る と考え た 。こ の よ う に 、 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 規範の 実態を 解明し て いく 必要性を感 じ、 本 研 究 に着 手す る こ と に し た 。

1.2 本 研 究 の目的

本 研 究 で は 、 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 に お け る職業 規範の 実態を明ら か に す る こ と に よ り 、 日 越 通 訳 者 養 成 プログ ラ ム 開発研 究 や ビ ジ ネ ス 通 訳 に特 化す る 倫 理 規 定 や ガ イ ド ラ イ ン の策定 に対し て検 討の素 材、 機 会 を提 供す る こ と を目的 と す る 。

Toury(1978:91)は 、規範は 訳 出 そ の も の(textual)お よび訳 出 以 外 の テク ス ト (extra-textual) と い う 2 つ のデー タ源か ら抽出 で き る と し て い る 。河原

(2015:5-7)は 、規範に は意 識・無 意 識両方の領域 が含ま れ 、規範に 従 お う と す る心的 作用は 「 規範 意 識」 と し て 定 位 で き る と し て い る 。

筆 者 は河原 (2015) と同 じ 立 場に立ち 、 イ ン タ ビュー ・デー タ か ら は意 識の 領域 し か分 析・考 察で き な い た め 、 通 訳 者 の 回 答 の み扱う場 合、職業 規範 意 識 し か明ら か に さ れ な い と考え る 。 ま た 、職業 規範 意 識が 通 訳 中 に 実 現 さ れ な い 可 能 性も あ る こ と か ら 、 通 訳 者 が 訳 出 の際に も職業 規範 意 識を遵 守す る こ と が 検 証さ れ な い限り 、職業 規範と し て 定 位 で き な い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、半構 造 化イ ン タ ビュー お よび通 訳場 面の シミ ュ レー ション を 行 い 、 訳 出 以 外 の テク ス ト で あ る イ ン タ ビュー ・デー タ か ら 通 訳 者 の 規範 意 識を抽出 し た う え で 、 そ の 規範 意 識は 通 訳 者 に よ る 訳 出 に ど の よ う に反 映さ れ て い る か を シミ ュ レー シ ョン ・デー タ で検 証し 、 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 に お け る職業 規範の 実態を 解明す る 。

(10)

1.3 本 研 究 の意 義

Toury の 翻 訳 規範の概念 を 通 訳 研 究への援 用 可 能 性お よびそ の意 義は Shlesinger(1989)に よ り取り 上げら れ て い る 。Shlesinger(1989)以降に Harris

(1990) 、Schjoldager(1995) や Gile(1999) な ど が発 表さ れ 、 通 訳 規範に 関 す る 研 究 の 成 果 が徐 々に蓄 積さ れ て い る 。し か し 、Gile(1999:98)に お い て 規 範研 究 が 「 通 訳 研 究 に お い て無 視さ れ て い る 要因(a neglected factor in interpreting research)」だ と 指摘し て い る よ う に 、こ れ ま で の 通 訳 規範の 研 究 は 英語 と の 言 語 間 の放 送通 訳 、 会議通 訳 が 中心で あ り 、英語 以 外 の 言 語 間 で ビ ジ ネ ス 通 訳 に着 目し た 研 究 は極め て少な い 。 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 を対 象と し た 通 訳 規範の 研 究 は皆 無に等し い 。

Toury(1978)は 、翻 訳 規範を 訳 出 そ の も の(textual)お よび訳 出 以 外 の テク ス ト (extra-textual) と い う 2 つ のデー タ源か ら抽出 で き る と し て い る (Toury 1978:91)。そ し て 、Toury(1995)は こ の 2つ のデー タ源に は根本 的 な 違 い が あ る と い う 。前者 は 規範に支 配さ れ た 行 為 の プロ ダ クト で あ る た め 、 こ れ を検 討す る こ と で「 行動の 規 則性(regularity of behaviour)」の傾 向が分か り 、翻 訳 者 が採 用し た プロ セス お よびそ こ に 作用し て い る 規範を 指 し示す こ と が で き る と し て い る 。 一方、 後 者 は社会 文化的 シ ス テ ム の 中 で そ の イ ン フォーマン ト が 果 た す役 割を宣 伝す る内 容に な っ て い る可 能 性が あ り 、見 方が偏っ て い る こ と も 多 い た め 、慎 重に扱う必要 が あ る と も述 べて い る (Toury 1995:65) 。 筆 者 は 、 イ ン タ ビュー な ど に お け る 通 訳 ・ 翻 訳 者 の自 己 申 告か ら抽出 さ れ る 規範 意 識と 実際の 訳 出 に見ら れ る 規範と は必ず し も 一致し て い る と は限ら な い と考え て い る 。 し か し 、 こ れ ま で の 通 訳 規範の 研 究 は主に 訳 出 以 外 の テクス ト をデー タ源と し た も の で あ り 、 訳 出 テクス ト と 訳 出 以 外 の テクス ト の 両方を扱う 研 究 が な い 。

本 研 究 に よ っ て 、 こ れ ま で 研 究 さ れ て い な い 日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 に お け る職 業 規範が明ら か に さ れ る と と も に 、 規範研 究 に お け るデー タ源と し て 訳 出 そ の も の お よび訳 出 以 外 の テクス ト の 両方を活 用す る こ と の重要性が 認識さ れ る き っ か け に な る と考え る 。 さ ら に 、将 来的 に は 通 訳 者 の 養 成 プログ ラ ム 開発研 究 や ビ ジ ネ ス 通 訳分 野 独 自の 倫 理 規 定 や ガ イ ド ラ イ ン の 制 定 に も 大 きく 貢献 で き る と考え る 。

(11)

1.4 本論文 の 構 成

本論文 は 8章か ら 構 成 さ れ て い る 。 第 1 章で は 、 本 研 究 の 背 景 、目的 、意 義 を述 べた の ち 、 本論文 の 構 成 を示す 。続 く第 2章で は 、 本論文 に お い て分 析に 用い る概念 を説 明す る 。第 3 章で は 、Toury(1995)と Chesterman(1997)の 翻 訳 規範 モ デ ルの内 容、 規範を抽出 す る た め に利 用 可 能なデー タ源、 規範の記 述 に 有効な装 置に つ い て述 べ、 翻 訳 規範お よび通 訳 規範に 関 す る 先 行 研 究 を概 観 し た う え で 、 本 研 究 の 位置 づけ を示す 。 第 4章で は 、 イ ン タ ビュー ・デー タ お よびシミ ュ レー ション ・デー タ の収集 ・分 析の方 法を詳 述す る 。 第 5 章で は イ ン タ ビュー ・デー タ の分 析結 果 を 、 第 6 章で は シミ ュ レー ション ・デー タ の分 析結 果 を示す 。 第 7 章で は 、 イ ン タ ビュー ・デー タ お よびシミ ュ レー ション ・ デー タ の分 析か ら導き 出 さ れ た 結 果 を 振 り返り 、考 察す る 。 第 8章で は 、 結論 を述 べた う え で 、 本 研 究 の限 界、 今 後 の課 題と 展望に つ い て 言及す る 。

(12)

2

章 分 析 に 用 い る 概 念

本章で は 、 本論文 に お い て用い る主要 な概念 に つ い て説 明す る 。逐次 通 訳 、 ビ ジ ネ ス 通 訳 は 、同 時通 訳 、 会議通 訳 と 比べて 一般的 に馴染み が なく、 ど の よ う な場 面で ど の よ う な方式が採 用さ れ る か が あ ま り知ら れ て い な い 。 ま た 、 通 訳 翻 訳 研 究 に お け る 「 規範」 の概念 は 一般的 に用い ら れ る 定義、 いわゆる辞典 上 の 定義と異な っ て い る 。 通 訳 の 定義と分類、 通 訳 翻 訳 研 究 に お け る 「 規範」 の概念 に対す る 理 解 を深め る こ と が 、 本 研 究 の 問題設定 を 理 解 す る う え で必要 だ と考え ら れ る 。 そ の た め 、 本章で は 、 翻 訳 と 通 訳 の 定義を提 示し た う え で 、 通 訳 の分類を紹 介し 、 規範の辞典 上 の 定義と 通 訳 翻 訳 研 究 に お け る 規範の 定義 と の差 異に つ い て説 明す る 。

2.1 通 訳 の 定義

Pöchhacker(2004) は 翻 訳 と 通 訳 を 以下の 通 り 定義し て い る 。

Translation is an activity consisting (mainly) in the production of utterance (texts) which are presumed to have a similar meaning and/or effect as previously existing utterances in another language and culture( 翻 訳 と は 、 (主に )別の 言 語 や 文 化に お い て す で に 存 在 し て い た発話( テクス ト )と 、類 似し た意味お よび/ ま た は効果 を持つ と推定 さ れ る発話の産出 で 構 成 さ れ る活 動で あ る ).

(Pöchhacker 2004:12 筆 者 訳 ) Interpreting is a form of Tranlation in which a first and final rendition in another language is produced on the basis of a one-time presentation of an utterance in source language( 通 訳 と は 、 翻 訳 の 一形態で あ り 、別の 言 語 で の 最 初 に し て 最 後 の 訳 が起点 言 語 に お け る発話の 一 回限り の提 示に基 づい て産出 さ れ る 活 動で あ る ).

(Pöchhacker 2004:11 筆 者 訳 )

こ の よ う に 、 通 訳 は 翻 訳 の 一形態と し て捉え ら れ て い る が 、話し 言葉(音 声 言 語 と手話言 語 ) の 翻 訳 で あ る 点 お よび 1 回限り提 示さ れ た起点 言 語 (Source Language, SL)で のメ ッセー ジ を直ち に目標言 語(Target Language, TL)に 訳 す 、

(13)

す なわち 「即時 性」 と い う特徴が あ る 点 に よ っ て書き 言葉(書記言 語 ) の 翻 訳 と区 別さ れ る (鳥 飼 2013:2) 。

2.2 通 訳 の分類

以下で は 、方式と分 野・活 動の場 面に よ る 通 訳 の分類を説 明す る 。

2.2.1 方式に よ る分類

通 訳 は方式に よ っ て 、逐次 通 訳 、同 時通 訳 、 リレー 通 訳 、サイ ト ・ ト ラ ン ス レー ション とウィスパー 通 訳 の 5 つ に分類さ れ て い る 。

逐次 通 訳 (consecutive interpreting) と は話し手の話を区切っ て 、 一区切りご と に順次 通 訳 し て いく 方式で あ り 、あ らゆる 通 訳 の 中 の基本 で あ る(小 松 2015: 3) 。

同 時通 訳(simultaneous interpreting)と は 通 訳 者 が 通 訳ブー ス と呼 ばれ る 、仕 切ら れ た小 部 屋に入り 、ヘ ッドホン を か け て話し手の話を聞き 、3~10 秒 ほど 遅れ て 訳 出 を 行 い 、無線あ る い は 有線の送信装 置を 通 し て聞き手に伝え る方式 で あ る (小 松 2015:3) 。

リレー 通 訳 (relayed interpreting) と は SL か ら TL に直 接通 訳 す る の で は な く、他の共通 言 語 に 訳 さ れ た も の か ら リレー し て 通 訳 す る方式で あ る (小 松 2015:4) 。

サイ ト・ト ラ ン スレー ション(sight translation)と は話し手が あ ら かじめ用 意 さ れ た 原稿を 読 み 、 通 訳 者 が 事前に 原稿を入手し 、準備 し た う え で 通 訳 に臨む 方式で あ る (小 松 2015:4) 。

ウィスパー 通 訳(whispered interpreting)と は同 時通 訳 の 一種で あ る が 、通 訳 者 は 通 訳ブー ス に入ら ず に 、聞き手の近くに 位置し 、聞き手の耳に さ さ やく

(whisper) よ う に 通 訳 す る方式で あ る (小 松 2015:5) 。

2.2.2 分 野・活 動の場 面に よ る分類

通 訳 は分 野・活 動の場 面に よ っ て 、 会議通 訳 、 ビ ジ ネ ス 通 訳 、コ ミ ュ ニティ 通 訳 、放 送通 訳 、法廷通 訳 と手話通 訳 の 6 つ に分類さ れ て い る 。

(14)

会議通 訳(conference interpreting)は 国際会議、外交 交 渉、シ ンポジウム 、セ ミナ ー 、講 演会 な ど で使用さ れ る 最 も 本 格 的 な 通 訳 の形態で あ る 。 通 訳 の方式 と し て は同 時通 訳 が 多 い が 、逐次 通 訳 、サイ ト ・ ト ラ ン スレー ション な ど も含 ま れ る (小 松 2015:5) 。

ビ ジ ネ ス 通 訳(business interpreting)は 一般的 に は ビ ジ ネ ス 関連の 通 訳 で あ る が 、特に民間 企 業 の枠内で 行われ る 通 訳 を 指 す(小 松 2015:6)。通 訳 の方式と し て 、社 内に お け る常設 ブー ス や ワ イヤレス 受信機 を用い た同 時通 訳 や 、 通 訳 を必要 と す る 人数が少な い場 合のウィスパリ ン グ 通 訳 は増え て き た が 、逐次 通 訳 は依然と し て 最 も 多く行われ て い る 。

コ ミ ュ ニティ通 訳(community interpreting)は医 療、福 祉、教 育な ど公共 サー ビ ス の面に お け る 通 訳 を 指 す (小 松 2015:6) 。 通 訳 の方式は逐次 通 訳 がほと ん ど で あ る 。

放 送通 訳 (media interpreting/broadcast interpreting) は テレビ や ラ ジ オ放 送で 行われ る 通 訳 を 指 す 。 通 訳 の方式と し て は 、 通常の同 時通 訳 に加え 、 事前に録 画を 何 回 か見て か ら 通 訳 す る と い う 「時差同通 」 が あ る (小 松 2015:7) 。

法廷通 訳(court interpreting)は法廷や そ れ に 関連し た状 況で 行われ る 通 訳 を 指 す 。警察や拘置所 で の 通 訳 も含め て 「司法通 訳 」 と呼 ばれ る こ と も あ る 。 通 訳 の方式と し て は 、通常 逐次 通 訳 だ が 、同 時で 行われ る こ と も あ る(小 松 2015: 7) 。

手話通 訳 (sign language interpreting) は手話言 語 と音 声言 語 と の 間 で 行われ る 通 訳 を 指 す (鳥 飼 2013:55) 。

以 上 、 翻 訳 、 通 訳 の 定義お よび通 訳 の方式と分 野・活 動の場 面に よ る分類を 説 明し た 。 本論文 で は 、 「 通 訳 」 「 翻 訳 」 「 ビ ジ ネ ス 通 訳 」 や 「逐次 通 訳 」 に 加え 、 以下の用語 も頻 繁に登場す る の で 、 そ の 定義を記す 。

【 話し手】、【 聞き手】

通 訳 者 を介す るコ ミ ュ ニ ケー ション で は 、 通 訳 者 は話を聞く 方に も話す 方に も な る が 、 本論文 で は 、 通 訳 者 が聞き取る発言 の主を 「話し手」 、 通 訳 者 が聞き取っ た発言 を別の 言 語 で伝え る相手を 「聞き手」 と呼 ぶ。

【会話当 事 者】

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聞き手と話し手の こ と を 指 し 、 通 訳 者 を含ま な い 。

【依 頼者】

通 訳 者 の雇い主を 指 す 。依 頼者 は 多くの場 合、 会話当 事 者 と し て 出席す る が 、 展示会 や 商談会 な ど依 頼者 で あ る主催者 は 通 訳 を必要 と す る場に い な い場 合も あ る 。

【関係者全 員 】

通 訳 者 を含む 通 訳 行 為 に 関係す る全て の 人 を 指 す 。

2.3 規範の概念

本節で は 、規範の辞典 上 の 定義お よび通 訳 翻 訳 研 究 に お け る 定義を説 明す る 。

2.3.1 規範の辞典 上 の 定義

『 広 辞 苑 第 7 版 』に よ る と 、「 規範」と は「①の り 。てほん 。模範。②〔 哲 学〕の っ と るべき 規 則 。判 断・評価ま た は 行 為 な ど の 拠 るべき手本 ・基 準。 」 で あ る 。ま た 、Longman Dictionary of Contemporary English(6th ed.)に よ る と 、

“norms”と は“generally accepted standards of social behaviour”と あ る よ う に 、 一般 的 に 認 め ら れ て い る社会 的 行動の基 準の こ と で あ る 。 い ず れ の辞典 上 の 定義も 規範が 規 定性の 高 い概念 だ と捉え て い る 。

『社会 学小 辞典』で は 、 規範は 「社会 や 集団に お い て 、 成員の社会 的 行 為 に 一 定 の拘 束を加え て 規 整 す る 規 則 一般を意味し て い る 」 と 定義さ れ て い る よ う に 、 規範の 規 定性に加え 、拘 束性に つ い て も 言及し て い る 。

2.3.2 通 訳 翻 訳 研 究 に お け る 規範の 定義

翻 訳 規範(translation norms) の概念 は 、Gideon Toury に よ っ て 最 初 に提起さ れ た 。Toury は 学 問 と し て の 翻 訳 通 訳 学 の確 立に 最 も貢献 し た 学 者 の 一 人 と し て知ら れ て い る 。Toury は 翻 訳 規範を 「 何 が 正 し い か 間 違 っ て い る か 、 何 が適 切か不 適 切か に つ い て 、 あ るコ ミ ュ ニティ 内で共有 さ れ て い る 一般的 な価 値や 志 向で あ り 、特定 の状 況に と っ て適正 で適 用 可 能な 行 為 の 指 針 (Toury 1978:

83-84 筆 者 訳 ) 」 と 定義し 、 翻 訳 行 為 を 「 規範が 規 制 す る 行 為 (norm-governed activity) (Toury 1995:56 筆 者 訳 ) 」 と し て い る 。

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な お 、Toury(1995:67)は 翻 訳 者 の 行動が完 全に体 系的 で あ る こ と は期 待で き な い た め 、 規範は階層 的 な概念 で あ る と主張し て い る 。Toury(1978, 1980)

が提案し た三 階層モ デ ルで は 、 「 規範」 は 「能力 (competence) 」 と 「運用

(performance) 」 の 中 間レベルで あ る 。「能力 」 は特定 の 文脈で 翻 訳 者 が採 用 で き る選 択 肢を 研 究 者 が リ ス ト アップ す る も の で あ る 。 「運用」 は 翻 訳 者 が 現 実 の場 面で 実際に採 用す る選 択 肢の 集合の こ と で あ る 。 そ し て 「 規範」 は こ う し た 「運用」 の選 択 肢の 中 で も 、特定 の社会 的 ・歴 史的 文脈の も と で 翻 訳 者 が よく 採 用す る選 択 肢の 集合の こ と で あ る 。 ま た 、Toury が常に強調 し て き た の は 、 規範と は記 述 分 析の範 疇で あ り 、 規範と い う 言葉か ら連 想さ れ る よ う な 、 分 析者 や 研 究 者 が望ま し い と考え る 規 定 的 な選 択 肢の 集合で は な い と い う こ と で あ る (Baker 2001:163-164 藤 濤訳 2013:142-143) 。

規範が形成 さ れ る過 程に つ い て Toury(1998:14-17) は 、 あ る 行 為 が適 切で あ る か ど う か が社会 の 中 で交 渉(negotiation) さ れ る こ と に よ っ て合 意

(agreement)が形成 さ れ 、さ ら に 、合 意さ れ た 行 為 が慣 例(convention)に な る と 、 い か に そ の 行 為 を 行 うべき か の基 準・ 指標と な る 規範が 構築さ れ る と述 べ て い る 。 通 訳 規範の形成過 程に 関 し て は Toury 自身も 、 規範の概念 を用い てバ イ リ ン ガルの 人 間 が 通 訳 者 に な る課程を説 明し て い る 。Toury に よ れば、 正式 な 通 訳 訓 練 を 受 け て い な いバイ リ ン ガルが自 分の 通 訳 行 為 に対し て 、話し手、 聞き手、仕事 の依 頼者 な ど か ら フィー ドバ ックを 受 け た場 合、 そ の フィー ドバ ックこ そ が そ の場で 何 が適 切か不 適 切か を示す 規範と な り 、 そ れ を内在化す る こ と に よ っ て 通 訳 者 と し て 機能し 認知さ れ る よ う に な る(Toury 1995:248-250)。

Toury に よ る 翻 訳 規範の概念 が登場す る前ま で の 翻 訳 研 究 で は 、目標テクス ト (Target Text, TT) よ り起点 テクス ト (Source Text, ST) の方が優位 な 地 位 に あ る と さ れ 、STと 比較し な が ら 、TTで等 価(equivalence)が ど の よ う に達成 さ れ て い る の か 、STの形態や情 報な ど を い か に損なわず に TTに再現 で き る か を 論 じる 研 究 が 多くあ っ た 。Toury に よ る 翻 訳 規範の概念 で は 、ST と TT の 間 に は既に等 価が 実 現 し て い る と想定 さ れ 、STと TTが等 価で あ る か否か を 問わず 、 想定 さ れ た等 価が ど の よ う に 実 現 さ れ て い る の か 、意思 決定 を引き 出 し た概念 と そ れ を 制約し た 要因は 何 か 、な ど の 究明に焦点 を 当 て た 。こ の よ う に 、Toury の 翻 訳 規範の概念 は根本 的 に ST よ り TTを優先 す る も の で あ り 、そ の こ と に よ

(17)

っ て等 価に代わる 翻 訳 研 究 の 有効な用語 と な る こ と が で き た (Hermans 1995:

217) 。

(18)

3

章 先 行 研 究

周 知さ れ て い る 翻 訳 規範 モ デ ルに は 、Toury(1995)と Chesterman(1997)の 2つ が あ る 。本章で は 、ま ず こ の 2 つ の 翻 訳 規範 モ デ ルの内 容を説 明し て か ら 、 規範を抽出 す る た め に利 用 可 能なデー タ源、 規範の記 述に 有効な装 置に つ い て 述 べる 。そ し て 、翻 訳 規範お よび通 訳 規範に 関 す る 先 行 研 究 を概 観し た う え で 、 本 研 究 の 位置 づけ を述 べて いく。

3.1 翻 訳 規範 モ デ ル

代表的 な 翻 訳 規範 モ デ ルと し て Toury(1995) と Chesterman(1997) が挙げ ら れ る 。

3.1.1 Toury(1995) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ル

Toury に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルは Toury(1978)の論文 に お い て 初 め て発 表さ れ 、 修正 を経て Toury(1995)の「Descriptive Translation Studies and beyond」と い う 書 籍に お け るモ デ ルが完成版と し て知ら れ て い る 。

Toury(1995)は 、翻 訳 プロ セス の段 階 ごと に異な る種 類の 規範が 作用し て い る と考え 、翻 訳 の 規範を 初期規範(initial norms)、予備 的 規範(preliminary norms)、

運用規範(operational norms) の 3 つ に分け て い る 。

a) 初期規範は 、ST で 実 現 さ れ て い る 規範に 従 う か 、目標文化・ 言 語 の 規範 に 従 う か と い う基本 的 な選 択に 関わる 。ST の 規範に 従 えば、TT は適 切

(adequate)な も の に な る 。一方、目標文化・ 言 語 の 規範に 従 えば、TTは 受容 可 能(acceptable)な も の に な る 。そ し て 、翻 訳 の適 切 性と 受容 性は 1 つ の連 続体の 両極で あ る 。 な お 、 翻 訳 に よ る シ フ ト (SL と TL と の 「ズ レ」)は 、義 務的 で あ れ非 義 務的 で あ れ 、必然的 で あ り 、規範に支 配さ れ る「 翻 訳 の真の普 遍性」で あ る 。そ の た め 、い か な る 翻 訳 で あ れ 、完 全に 適 切な 翻 訳 あ る い は完 全に 受容 可 能な 翻 訳 は な い(Toury 1995:57 筆 者 訳 )。

b)予備 的 規範に は 、翻 訳 政策(translation policy)と 翻 訳 の直 接性(directness of translation) が あ る 。 翻 訳 政策と は 、特定 の 言 語 、 文化、時代や著者 な ど ST の選 択に 関わる 要因の こ と で あ る 。 翻 訳 の直 接性と は 、 翻 訳 が媒 介

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言 語 を経て 行われ る か ど う か 、重訳 が 認 め ら れ る か ど う か に 関わる も の で あ る (Toury 1995:58 筆 者 訳 ) 。

c)運用規範に は 、基質的 規範(matricial norms) と テクス ト ・ 言 語 的 規範

(textual-linguistic norms) が あ る 。基質的 規範と は 、 テクス ト の 構 成 、 テ クス ト の 中 で 翻 訳 さ れ る分量、大幅な削 除な ど に よ る区分の 変更に 関わる も の で あ る 。 テクス ト ・ 言 語 的 規範と は 、ST を部分的 に置き 換 え た り す る た め の 、 語彙 項目や句、 文体的特徴な ど TTの 言 語 的素 材の選 択に 関わ る も の で あ る (Toury 1995:58-59 筆 者 訳 ) 。

以下の 図 2は Toury(1995) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルを 図式化し た も の で あ る 。

2. Toury(1995:57-59) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ル

翻 訳 を取り巻く環 境 翻 訳 プロ セス 中

初期規範に お け る 翻 訳 の適 切 性 − 受容 性の連 続体

予備的規範

翻訳政策 翻訳の直接性

運用規範

基質的規範策 テクスト・

言語的規範 初期規範

適切な翻訳 受容可能な翻訳

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3.1.2 Chesterman(1997) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ル

Chesterman に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルは 、Chesterman(1993) の論文 に お い て 初 め て発 表さ れ 、修正 を経て Chesterman(1997) の 「Memes of Translation: The spread of ideas in translation theory」 と い う書 籍に お け るモ デ ルが完成版と し て 知ら れ て い る 。

Chesterman(1997) は Toury に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルを踏 襲し な が ら 、期 待規 範(expectancy norms) お よび 職業 規範(professional norms) と い う 2 つ の 上 位 規範か ら 成 り立っ て い る 翻 訳 規範 モ デ ルを提案し て い る 。期 待規範は 翻 訳 プロ ダ クト が ど の よ う な も の で あ るべき か と い う 翻 訳 の 受 け手の期 待の 集合で あ る 。 職業 規範は 、期 待規範を満 足させる目的 で 翻 訳 者 が用い る ス ト ラ テ ジ ー を含む 翻 訳 プロ セス に 関係す る 規範で あ り 、期 待規範に よ っ て 規 定 さ れ る 。

職業 規範は さ ら に責 任規範(accountability norms)、コ ミ ュ ニ ケー ション 規範

(communication norms) 、 関係規範(relation norms) の 3つ に分け ら れ る 。

a)責 任規範は 翻 訳 者 と し て の 倫 理 に 関わる も の で あ り 、翻 訳 者 が 原 作 者 、翻 訳 の依 頼者 、想定 読 者 、翻 訳 者自身お よびそ の他の 関係者全 員に対し て忠 誠心の 要求(demands of loyalty) が満た さ れ る よ う に 行動すべき だ と い う も の で あ る (Chesterman 1997:68 筆 者 訳 ) 。

b)コ ミ ュ ニ ケー ション 規範は社会 的 な も の で あ り 、 翻 訳 者 が他人 の意図 の メデ ィエー タ ー お よび 自 分 自身のコ ミ ュ ニ ケー タ ー の 両方を含むコ ミ ュ ニ ケー ション 専 門家と し て状 況に応 じて全て の 関係者 間 のコ ミ ュ ニ ケー ション を 最適 化す る た め に 行動すべき だ と い う も の で あ る (Chesterman 1997:69 筆 者 訳 ) 。

c) 関係規範は 言 語 的 な も の で あ り 、 翻 訳 者 が STと TT の 間 に適 切な 関係が 確 立さ れ 、維持さ れ る よ う に 行動すべき だ と い う も の で あ る(Chesterman 1997:69-70筆 者 訳 ) 。

以下の 図 3は Chesterman(1997) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルを 図式化し た も の で あ る 。

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3. Chesterman199764-70) に よ る 翻 訳 規範 モ デ ル

期 待規範

規 定

Toury(1995) の 翻 訳 規範 モ デ ルに対し て Hermans(1999) は 、「適 切 性」 と

「 受容 性」 と い う用語 が評価的 な含み が あ り 、混 乱を招くと 指摘し 、 初期規範 を 「適 切 性」 お よび「 受容 性」 の二者択一 と み な す の は 生産的 で な い と主張し た う え で 、 翻 訳 を社会 文化的活 動だ と捉え る な ら 、 翻 訳 規範を単一 の軸に沿っ て選 択 さ れ る も の と し て概念化す る こ と に意味が な い と批判し て い る

(Hermans 1999:76-77)。Munday(2001)は Chesterman(1997)のモ デ ルが Toury

(1995) のモ デ ルに な い領域 も網 羅し て い る た め 、 翻 訳 の プロ セス と プロ ダ ク ト の全面的 な記 述に役に立つ と評価し て い る (Munday 2001:119) 。

Hermans(1999) お よび Munday(2001) の批 評を踏ま え て 、 本 研 究 で は 、 Chesterman(1997)のモ デ ルに お け る「 翻 訳 」を「 通 訳 」と置き 換 え た う え で 、 分 析の枠 組み と す る 。 た だ し 、 通 訳 の 受 け手の期 待か ら な っ て い る期 待規範を 抽出 す る な ら 、 イ ン フォーマン ト と し て 通 訳 者 よ り 通 訳 の 受 け手の方が妥当 だ と考え ら れ る 。 そ の た め 、 通 訳 者 を イ ン フォーマン ト と す る 本 研 究 で は 、期 待 規範を扱 わず 、職業 規範の み に絞る 。

3.2 翻 訳 規範を抽出 す る た め のデー タ源

Toury(1978:91)は 次 の 2 つ のデー タ源か ら 翻 訳 規範を抽出 で き る と し て い る 。

職業規範

責任規範 コミュニケーション

規範 関係規範

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a)textual: 翻 訳 そ の も の

b)extra-textual:翻 訳 行 為 に 関わる 翻 訳 者 、編集 者 、出版者 、評論 家ら の発 言 や 翻 訳 理論、批 評な ど 翻 訳 以 外 の テクス ト

Toury(1995)は 、こ の 2 つ のデー タ源に は根本 的 な 違 い が あ る と い う 。前者 は 規範に支 配さ れ た 行 為 の プロ ダ クト で あ る た め 、 こ れ を検 討す る こ と で 「 行 動の 規 則性(regularity of behaviour)」の傾 向が分か り 、翻 訳 者 が採 用し た プロ セス お よびそ こ に 作用し て い る 規範を 指 し示す こ と が で き る 。 一方、 後 者 は社 会 的 ・ 文化的 シ ス テ ム の 中 で そ の イ ン フォーマン ト が 果 た す役 割を宣 伝す る内 容に な っ て い る可 能 性が あ り 、見 方が偏っ て い る こ と も 多 い た め 、慎 重に扱う 必要 が あ る と も述 べて い る(Toury 1995:65)。前者 に 関 し て 、Shlesinger(1989: 112-114) は 通 訳 規範を抽出 す る た め にコーパス を 構築す る こ と の困 難さ や そ のコーパス の代表 性な ど 通 訳 規範の 研 究 に 関わる方 法 論的 な課 題が あ る と主張 し て い る 。後 者 に 関 し て 、Gile(1999:100)は 規範研 究 が必ず し も 大量のコー パス に依存 す る必要 が な い と主張し 、 翻 訳 以 外 の テクス ト の重要性を強調 し て い る 。Munday(2001:152)は 、後 者 の 言説が 翻 訳 実践の顕 著な表れ で あ り 、少 なくと も 翻 訳 に 関わる 人々が 何 を し な け ればな ら な い と考え て い る か が分か る と論 じて い る 。

日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 に お け る職業 規範を抽出 す る た め に 、 通 訳 を介し た 現場 で の 会話(textual) と そ れ 以 外 の テクス ト (extra-textual) の 両方をデー タ源と し て用い る こ と が望ま し い 。 し か し 、 実際問題と し て ビ ジ ネ ス の 現場で の 会話 に は 機密 情 報が 多く、許可を得て収集 す る こ と は極め て困 難で あ る 。そ の た め 、 本 研 究 で は 、textual のデー タ を収集 す る た め に 、 ビ ジ ネ ス場 面の シミ ュ レー シ ョン (詳細は 第 4 章 研 究方 法 4.2 シミ ュ レー ション ・デー タ の 研 究方 法を参 照さ れ た い )を 、extra-textual のデー タ を収集 す る た め に 、日 越 間 ビ ジ ネ ス 通 訳 者 に イ ン タ ビュー (詳細は 第 4 章 研 究方 法 4.1 イ ン タ ビュー ・デー タ の 研 究 方 法を参 照さ れ た い ) を 行 い 、 訳 出 と 訳 出 以 外 の テクス ト の 両方をデー タ源と し て用い る 。な お 、河原(2015:5-7)に よ る と 、規範に は意 識・無 意 識両方の 領域 が含ま れ 、 規範に 従 お う と す る心的 作用は 「 規範 意 識」 と し て 定 位 で き る と 指摘し て い る 。ゆえ に 、 イ ン タ ビュー ・デー タ か ら は意 識の領域 し か分 析・

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考 察で き な い と考え ら れ る た め 、 本論文 で は 、 イ ン タ ビュー ・デー タ の分 析・ 考 察に よ っ て見ら れ る 規範の カ テゴリ ー の こ と を 指 す た め に 、 「 規範 意 識」 と い う用語 を使用す る 。

3.3 翻 訳 規範の記 述に 有効な装 置

3.3.1 Catford1965) と Popoviĉ1976) に よ る 翻 訳 シ フ ト

翻 訳 規範の抽出方 法に つ い て 、Toury(1995:36-39, 102) は ST と TT を 比 較し 、シ フ ト(shifts)を見出 し 、そ こ か ら 規範を抽出 す る方 法を提案し て い る 。 翻 訳 シ フ ト を 最 初 に提唱し た の は Catford(1965)で あ る 。Catford(1965)は 翻 訳 シ フ ト を 「STを TTに 翻 訳 す る時に起き る小さ な 言 語 的 変化で あ る 」 と 定 義し 、シ フ ト をレベルの シ フ ト(level shift)お よびカ テゴリ ー の シ フ ト(category shift) の 2 種 類に 大別し て い る (Catford 1965:73-82 筆 者 訳 ) 。

a)レベルの シ フ ト は 一方の 言 語 で は 文法で表現 さ れ 、他方の 言 語 で は 語彙 に よ っ て表現 さ れ る も の を 指 す 。

b) カ テゴリ ー の シ フ ト は さ ら に 4 種 類に分け ら れ る 。

①構造的 シ フ ト(structural shift):最 も 一般的 な も の で あ り 、ほと ん ど の場 合は 文法構造の シ フ ト を 指 す 。

②クラ ス の シ フ ト (class shift) :品 詞の シ フ ト を 指 す 。

③ラ ンクの シ フ ト (rank shift): ラ ンク( 文 、節、句、 語群、単語 、形 態 素と い う階層 的 言 語単位 ) の シ フ ト を 指 す 。

④ 体 系内シ フ ト (intra-system shift) :SL と TL が対 応す る体 系で あ る に も か かわら ず 、TTに お い て非 対 応の 言葉を選ぶよ う な場 合を 指 す 。

Catford(1965) は 、 翻 訳 研 究 の科学 的 ア プロー チ を 初 め て意 識し た 研 究 と し て評価さ れ て い る が 、 言 語 テクス ト の み に焦点 を 当 て 、 機能・状 況・ 文化な ど のコ ミ ュ ニ ケー ション 行 為 と し て の 翻 訳 の特徴を等閑視し て い る 点 、分 析例が 自ら 作例し た 理想 化さ れ た テクス ト を対 象に し て い る 点 で Henry(1984) や河 原 (2014) な ど に批判さ れ て い る 。

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Popoviĉ(1976)は 、文 学 翻 訳 に お け る シ フ ト を引き起こ す 原因に着 目し 、個 人 的 シ フ ト (individual shifts) お よび本質的 シ フ ト (constitutive shifts) の 2つ に分類し て い る 。

a)個人 的 シ フ ト は 、翻 訳 者自身の表現 ス タ イルや個人 語(idiolect)に よ り発 生 す る シ フ ト を 指 す (Popoviĉ 1976:16筆 者 訳 ) 。

b) 本質的 シ フ ト は 、2 つ の 言 語 、2 つ の詩、2 つ の 文体の差 異よ り発生 し 、 翻 訳 す る 以 上避け ら れ な い シ フ ト を 指 す (Popoviĉ 1976:16筆 者 訳 ) 。

3.3.2 Chesterman1997) に よ る 翻 訳 ス ト ラ テ ジ ー

Chesterman(1997) は 翻 訳 ス ト ラ テ ジ ー を 「 翻 訳 者 が 規範に 従 お う と す る方 法で あ る 。注意すべき な の は 、 そ れ は等 価を 実 現 す る た め の も の で は なく、単 に 翻 訳 者 が 最善のバー ジョン だ と考え る 翻 訳 に す る た め の方 法で あ る 」 と 定義 し て い る (Chesterman 1997:88筆 者 訳 ) 。Chesterman(1997) は 翻 訳 ス ト ラ テ ジ ー を統語論的・文法的 ス ト ラ テ ジ ー(syntactic/grammatical strategies, G)、意 味論的 ス ト ラ テ ジ ー(semantic strategies, S)と 語用 論的 ス ト ラ テ ジ ー(pragmatic strategies, Pr)の 3つ に 大別し た う え で 、さ ら に 30種 類に分け て い る(Chesterman 1997:92-112 筆 者 訳 ) 。

1. Chesterman(1997:92-112) に よ る 翻 訳 ス ト ラ テ ジ ー の分類 1)統語論的 ・ 文法的 ス ト ラ テ ジ ー (syntactic/grammatical strategies, G)

G1 直訳 (literal translation) TT が 最 大 で ST の形 式に近い が 、文法的 に 正 し い こ と を 指 す 。

G2 借用(loan, calque) 想定 読 者 に と っ て馴染み の な い ST の 構造と 単一 の 語彙 単位 の借用の 両方を 指 す 。 G3 転位 (transposition) 形容詞か ら 名詞へ、ま た は形容詞か ら副詞へ

な ど 、単語 の品 詞の 変更を 指 す 。

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G4 ユニット の シ フ ト

(unit shift)

ST に お け るユニット (形態 素、単語 、句、 節、 文 、段落) が TT に お い て異な るユニッ ト に 翻 訳 さ れ る こ と を 指 す 。

G5 句構造の 変更(phrase structure change)

名詞 句に お け る数、定性と修飾、ま た は動詞 句に お け る 人称、時制 、ム ー ド を含む 、句レ ベルで の 変更を 指 す 。

G6 節構造の 変更(clause structure change)

節の 構 成 要素(主語(S)、動詞(V)、目的 語 (O) 、 補 語 (C) 、副詞 類(A) ) の並べ 替え 、能 動 態か ら 受動 態 へ、不定動詞か ら 定 動詞へ、自 動詞か ら他動詞へな ど 、構 成句か ら見た節構造の 変更を 指 す 。

G7 文 構造の 変更(sentence structure change)

主節と 従属節と の 関係、従属節の種 類な ど 文 構造の 変更を 指 す 。

G8 結束性の 変更

(cohesion change)

テクス ト内の 指示、省 略、代用、代名詞化、 繰り返し 、ま た は様々なコネクタ ー の使用に 関 す る 変更を 指 す 。

G9 レベルの シ フ ト

(level shift)

特定 の項目の表現モー ド が あ るレベル(音 韻、形態、統語 、語彙)か ら他のレベルに シ フ ト す る こ と を 指 す 。

G10 ス キ ーマの 変更

(scheme change)

対句法、反復法、頭 韻法、拍節的 リズム な ど 、 翻 訳 者 がレト リックス キ ーマの 翻 訳 に組み 入れ た 変更を 指 す 。

2)意味論的 ス ト ラ テ ジ ー (semantic strategies, S)

S1 同 義語 (synonym) 翻 訳 者 が 、繰り返し を 回避す る た め な ど の目 的 で 、STに お け る単語 、ま た は句の直訳 で は なく、そ れ と同 義語 、あ る い は そ れ に近い同 義語 を選 択す る こ と を 指 す 。

S2 反 義語 (antonym) 翻 訳 者 が反 義語 を選 択し 、こ れ を否定 要素と 組合せる こ と を 指 す 。

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S3 上下(包 摂) 関係

(hyponymy)

上 位 語 か ら下位 語へ、下位 語 か ら 上 位 語へ、 同 じ上 位 語 の下位 語 X か ら下位 語 Yへな ど 、 下位 語 ・ 上 位 語 関係内の シ フ ト を 指 す 。 S4 逆意(converses) 売る・買う な ど 、2 つ の相反す る観点 か ら同

一 の 事項を表現 す る動詞構 文 の使用を 指 す 。 S5 抽 象の 度合い の 変更

(abstraction change)

抽 象的 か ら よ り具体的へ、ま た は具体的 か ら よ り抽 象的へな ど 、異な る抽 象の 度合い を選 択す る こ と を 指 す 。

S6 分布の 変更

(distribution change)

同一 の意味成分の分布を よ り 多くの項目( 拡 張)、ま た は よ り少な い項目(圧 縮)に 変更 す る こ と を 指 す 。

S7 強調 の 変更

(emphasis change)

強調 、 ま た は テ ーマ別の焦点 を追 加、減少、 あ る い は 変更す る こ と を 指 す 。

S8 言 い 換 え (paraphrase) 語彙素 レベルの意味成分を節 全 体な ど 上 位 ユニット の 語用 論的 な意味の た め に無 視す る こ と を 指 す 。

S9 比喩の 変更

(trope change)

翻 訳 者 が 比喩の 翻 訳 に組み入れ た 変更を 指 す 。

S10 そ の他の意味論的 変更

(other semantic changes)

物理 的 な感覚、 ま た は厳密な方 向の 変更な ど 、他の様々な種 類の 変 調 を含む 。

3) 語用 論的 ス ト ラ テ ジ ー (pragmatic strategies, Pr)

Pr1 文化フィ ルタ ー

(cultural filtering)

ST に お け る項目、特に固有 文化に 関係す る 項目を TTの 規範を遵 守す る た め に 、TTに お い て 文化的 、ま た は 機能的等 価の項目に 翻 訳 す る こ と を 指 す 。

Pr2 明 示 性の 変更

(explicitness change)

TTを よ り明 示的(明 示 化)、ま た は よ り暗示 的(暗示 化)に す る た め の 変更を 指 す 。明 示 化と は 翻 訳 者 が推論 可 能な情 報を TTに お い

(27)

て明 示的 に追 加す る方 法で あ る 。こ こ で い う 情 報は ST に お い て暗示的 に留め ら れ て い る も の で あ る 。

Pr3 情 報の 変更

(information change)

TTと は 関係が あ る が 、STに は 存 在 し な い と 見な さ れ る 新 し い(推論 不 可 能な )情 報の追 加、 ま た は無関係だ と見な さ れ る ST に お け る情 報の省 略の 両方を 指 す 。

Pr4 対人 関係の 変更

(interpersonal change)

フォーマ ルさ のレベル、感情の 度合い 、関与 の 度合い や 専 門用語 のレベルな ど テクス ト

/原 作 者 と 読 者 と の 関係の 変更を引き起こ す も の の全て を 指 す 。

Pr5 言 語 行 為 の 変更

(illocutionary change /change of speech act)

言 語 行 為 の 変更は常に他の ス ト ラ テ ジ ー と 連結 さ れ て い る 。例えば、動詞の ム ー ド を直 説 法か ら命 令法 への 変更は陳述か ら 要請へ の 変更も引き起こ す 。

Pr6 一貫性の 変更

(coherence change)

一貫性の 変更は テクス ト内の情 報の論理 的 な配 置を 指 す こ と で 結束性の 変更と区 別す る 。

Pr7 部分的 翻 訳

(partial translation)

音 声転 写、要約翻 訳 や 要 点 翻 訳 な ど テクス ト 全 体で は なく、 一部の み の 翻 訳 の全て を 指 す 。

Pr8 可 視 性の 変更

(visibility change)

翻 訳 者 の 脚注、括 弧書き のコメン ト や注釈の 追 記な ど 、原 作 者 、ま た は 翻 訳 者 の「 存 在感」 を 高 め る こ と を 指 す 。

Pr9 翻 訳編集

(transediting)

極め て下手な ST の場 合な ど 、 翻 訳 者 が根本 的 な再 編集 を 行わな け ればな ら な い時、こ れ ま で述 べて き た ス ト ラ テ ジ ー に よ っ て網 羅 さ れ る 変更の種 類よ り も全 体的 なレベルで の思い切っ た並べ替え 、書き 換 え を含む 。

(28)

Pr10 そ の他の 語用 論的 変更

(other pragmatic changes)

テクス ト のレイ アウト や方言 の選 択な ど を 含む 。

Catford(1965) お よび Popoviĉ(1976) に よ る 翻 訳 シ フ ト の分類に 比べ、 Chesterman(1997) に よ る 翻 訳 ス ト ラ テ ジ ー は 、 言 語 テクス ト の み な ら ず 、 機 能・状 況・文化な ど のコ ミ ュ ニ ケー ション 行 為 と し て の 翻 訳 の特徴も考慮さ れ 、 精 緻か つ明 確な分類で あ り 、規範の記 述に 有効で あ る 。し か し 、Chesterman(1997) に よ る ス ト ラ テ ジ ー を そ の ま ま分 析の装 置と し て 日 本 語 と ベ ト ナ ム 語 と の組合 せを扱う 通 訳 研 究 に用い る こ と に 、検 討すべき 事項が 4つ あ る 。

第 一 に 、Chesterman(1997)は 、G1 直訳 を統語論的 ・ 文法的 ス ト ラ テ ジ ー の グルー プ に分類し な が ら 、 「 一部の 翻 訳 理論に お い て 、直訳 はデフォ ルト値の ス テ ー タ ス を持っ て お り 、 翻 訳 者 が直訳 か ら 逸 脱 す る必要 が あ る の は 何 ら か の 理由で直訳 が う まくい か な い場 合に限る(Chesterman 1997:94 筆 者 訳 )」と 解 説し て い る 。こ の見解 か ら 、他の グルー プ に分類さ れ た ス ト ラ テ ジ ー で も G1直 訳 か ら の 逸 脱 で あ る と い う 点 で共通 し て い る と い え る 。 新崎(2010) は元の発 言 を忠実 に 訳 し 、 何 も足さ ず 、引か ず 、 変 え な い と い う 原 則 を 「不変 ・不介 入 原 則 」 と呼び、 こ の 原 則 が英国 、北米 、 オ ー ス ト ラ リ ア に お い て 会議通 訳 、法 廷通 訳 、コ ミ ュ ニティ通 訳 、医 療通 訳 の各分 野に共通 し 、 理想的 な 通 訳基 準だ と さ れ て き た と い う ( 新崎 2010:11) 。 本 研 究 で は 、Chesterman(1997:94) と 新崎(2010:11) を統合し 、G1 直訳 を 「TT が非文法的 に な ら な い限り 、 何 も足さ ず 、引か ず 、変 え な い よ う に 最 大 で忠実 に ST を TT に 翻 訳 す る こ と 」と 再定義し 、分 析に用い る 。

第二に 、3 つ の グルー プ は統語論、意味論、 語用 論と い う異な る 3 つ の分 野 に よ っ て分類さ れ て い る た め 、 研 究 の目的 に よ っ て 3 つ の グルー プ か ら 1 つ だ け用い る こ と が可 能で あ る 。

第三に 、 言 語 構造か ら み れば、 ベ ト ナ ム 語 は孤立語 で あ り 、 語彙が 文 中 で 変 形す る こ と なく、 そ れぞれ が独 立し て並ぶこ と に よ っ て 文 を形成 す る 。 一方、 日 本 語 は膠着語 で あ り 、自 立語 の 語幹に接 辞が つ い た り 、自 立語同士を付属語 が つ なげた り す る こ と で 文 を 構 成 す る 。 ベ ト ナ ム 語 と 日 本 語 と の 間 に 大 き な相

(29)

違 点 が あ る た め 、 日 本 語 と ベ ト ナ ム 語 と の 通 訳 に お い て 文法的 変化が必然的 に 起き る 。

第四に 、 翻 訳 と 比べ、 通 訳 は 作 業 に許さ れ る時間 が短い た め 、 通 訳 者 は意味 論的 な 変化をじっくり 1つ ず つ検 討す る可 能 性が極め て低い 。

上記の 4 つ の 事項を検 討し た 結 果 、本 研 究 で は 、規範を記 述す る装 置と し て 、 再定義し た G1 直訳 と Chesterman(1997) に よ る Pr1~Pr10 を用い る 。 ま た 、 Pr2 明 示 性の 変更に は明 示 化と暗示 化、Pr3 情 報の 変更に は情 報の追 加と情 報の 省 略の相反す る 2つ の種 類が含ま れ て い る 。本 研 究 で は 、便 宜上 、明 示 化を Pr2a、 暗示 化を Pr2b、情 報の追 加を Pr3a、情 報の省 略を Pr3b と い う記号を用い区 別 す る 。

3.4 翻 訳 規範に 関 す る 先 行 研 究

Toury(1978)が提唱し た 翻 訳 規範の概念 を応 用し た 研 究 は 、翻 訳 テクス ト と 翻 訳 以 外 の テクス ト の ど ち ら をデー タ源に す る か に よ り 大別さ れ る 。

翻 訳 テクス ト を主要 なデー タ源と し て い る 研 究 は Toury(1995)、Munday(2001) と佐藤(2005) が挙げら れ る 。

Toury(1995)が 行 っ た 一連の 事例研 究 の 中 に 、ヘ ブラ イ 語 を TTと す る等位 結合句(conjoint phrases/binominals)に 関 す る 研 究 が あ る 。等位 結合句と は 1つ の単位 と し て 機能す るほぼ同 義語 のペア の こ と で あ る 。Toury はヘ ブラ イ 語へ の 翻 訳 テクス ト に お け る こ の よ う な 語句の数がヘ ブラ イ 語 の テクス ト よ り も 多 くな り が ち で あ り 、 新 しく作 ら れ た等位 結合句や自由な組合せの等位 結合句が 含ま れ る と述 べて い る (Toury 1995:105) 。Toury は 、 ま た等位 結合句の頻 繁 な使用、 と りわけ ST の単一 の 語彙 項目を等位 結合句に 翻 訳 す る こ と が 、 「若 い か 、 そ う で な け れば「弱い 」 シ ス テ ムへの 翻 訳 の普 遍的特 性(a universal of translation into systems which are young, or otherwise ‘weak’) 」 を示す と論 じ、 将 来様々な 言 語 と 文化を対 象と し た 研 究 で検 証さ れ るべき 一般 化の可 能 性を提 起し て い る (Toury 1995:111 筆 者 訳 ) 。

Munday(2001:121-124)は 、J. K. Rowling に よ るハリ ー ・ポ ッタ ー ・ シ リ ー ズ第 1作 と そ の イ タ リ ア 語 訳 と スペイ ン 語 訳 を 事例研 究 の テクス ト と し 、Toury の方 法 論に倣い 、登場人物の 名前と魔法魔 術学校に 関 す る 事柄の 名称が 2 つ の

(30)

TTに お い て い か に処理 さ れ て い る か を 調 査 し 、2 つ の 翻 訳 に は異な っ た 規範が 作用し て い る と 結論 付け た 。スペイ ン 語 訳 で は 、TTの 読 者 に と っ て発音し にく い 言葉に な っ た り 、暗示を 理 解 で き なくな っ た り す る可 能 性が あ っ て も 、ST重 視の 翻 訳方略が採ら れ て お り 、英語 原 文 の 語彙 項目が保持さ れ て い る 。 一方、 イ タ リ ア 語 訳 で は 、TT重 視の 翻 訳方略が採ら れ て お り 、多くの 名前が 変更さ れ てユーモラ ス な音のパタ ー ン や 言葉遊び、暗示が 新 た に創造さ れ て い る 。

佐藤(2005)は 、社会 や 文化が求め る 翻 訳像が 翻 訳 規範で あ る と し た う え で 、 ア イルラ ン ド の詩人・劇作家で あ る W. B. イェイツが戯 曲化し た At the Hawk’s Well の 日 本 語 訳四編を題 材に 、翻 訳 規範の概念 を援 用し な が ら 、英文 学 研 究 と い う 1つ のコン テクス ト を設定 し て明治以降の 日 本 の 翻 訳 の流れ を追っ た 。 そ の 結 果 、明治か ら 大 正 ま で は 原 文への忠実 を求め る 翻 訳 規範が確定 さ れ た が 、 大 正 か ら昭 和初期ま で は そ れ と異な る 翻 訳姿勢が表れ た こ と が明ら か と な っ た 。 ま た 、戦後 か ら昭 和後期ま で は英文 学 研 究 制 度 の再 編成 が な さ れ 、明治—大 正

—昭 和初期ま で の 研 究 制 度 の発展 と同 等の も の を再び経験し た と 結論と し て挙 げた 。

翻 訳 以 外 の テクス ト を主要 なデー タ源と し て い る 研 究 は古野(2002)、水野 (2007)と佐藤(2008)が挙げら れ る 。古野(2002)、水野(2007)と佐藤(2008)

は 日 本 に お け る 翻 訳 規範に つ い て考 察を 行 い 、 翻 訳 規範の 変化を社会状 況や 文 学状 況か ら説 明し て い る 。

古野(2002)は 、Toury の 初期規範に あ る adequacy(適 切 性)と acceptability

( 受容 性) を論 述の枠 組み と し 、 翻 訳 関係者 が書い た 翻 訳 に 関 す る 本 や記事 、 訳 者 あ と が き な ど を 調 査 し た 。そ の 結 果 、日 本 に お け る 外 国 文 献 の 翻 訳 が 1950 年代、1960 年代に は ST を重 視す る 翻 訳 が 行 なわれ て い た が 、1970 年代か ら は 原 文 の 一字一句に こ だわる よ り も 、TTの 日 本 語 が 以前よ り重要視さ れ る よ う に な っ た と報告し て い る 。

水野(2007) は 、Toury の い う適 切な 翻 訳 (adequate translation) と 受容 可 能 な 翻 訳 (acceptable translation) を 「直訳 」 と 「意訳 」 に置き 換 え 、 翻 訳 者 や批 評家、小説 家な ど の 翻 訳 に 関 す る 言説を明治中期以降第二次 大戦直前の時期ま で辿っ て検 討し た 。 結論と し て 、 そ の 間直訳 的 翻 訳方略が優位 の 翻 訳 規範で あ

(31)

り続け 、 こ の 翻 訳 規範に 従 っ て 翻 訳 さ れ た西 欧の 文 学 作品の 翻 訳 が近 代日 本 文 学 の形成 と発展 に 大 き な影 響を及ぼし た と述 べて い る 。

佐藤(2008) は 、Toury に よ る 3 つ の 規範の う ち 、運用規範を考 察の対 象と せず 、 初期規範お よび予備 的 規範を応 用し 、英文 学 翻 訳 ・英文 学 研 究 ・社会思 潮と い う三者 の 関係を考 察し よ う と試み た 。佐藤(2008)に よ れば、昭 和 20 年 代の 翻 訳 規範は 、戦前の 「 原 文への忠実 さ ・精確さ対翻 訳 の創造 性・芸 術性」 と い う 翻 訳 規範を めぐる交 渉と 、30 年代に登場し てくる「 研 究 の た め の 翻 訳 対 一般読 者 の た め の 翻 訳 」 の交 渉と い う 、 ま っ たく異な る 翻 訳 規範の交 渉の隙間 に 位置し 、厳密な 「忠実 さ ・精確さ 」に加え て 、主 観的 な「共 感」と い う 新 た な内 容を含む よ う に な っ た 。

3.5 通 訳 規範に 関 す る 先 行 研 究

Toury の 規範 概念 の 通 訳 研 究への援 用 可 能 性お よびそ の意 義は 、Shlesinger

(1989) に よ り 最 初 に取り 上げら れ た 。 そ の 後 に発 表さ れ た 通 訳 規範に 関 す る 研 究 は 、Harris(1990) 、Schjoldager(1995) や Wang(2012) な ど が挙げら れ る 。

Shlesinger(1989) は 、 「Research into the nature and role of norms in translation had led to new ways of looking at some of the key concepts associated with translation and with translation studies( 翻 訳 に お け る 規範の性質と役 割に 関 す る 研 究 は 、翻 訳 と 翻 訳 研 究 に 関連す る重要 な概念 に対す る 新 し い見 方を も た ら し た ) 」 と述 べ、規範研 究 の意 義を強調 し て い る(Shlesinger 1989:111 筆 者 訳 )。ま た 、翻 訳 規範の概念 を 通 訳 研 究へ 援 用す る こ と を呼びか け な が ら 、場の設定 、録 音の 許可な ど 通 訳 規範を抽出 す る た め にコーパス を 構築す る こ と の困 難さ や そ のコ ーパス の代表 性な ど 通 訳 規範の 研 究 に 関わる方 法 論的 な課 題を 指摘し て い る

(Shlesinger 1989:112-114) 。

Harris(1990) は 、Shlesinger(1989) に よ る 通 訳 規範研 究 の呼びか けへの返 答 と し て 、 プロの 通 訳 vs.ナ チュラルな 通 訳 、 会議通 訳 vs.放 送通 訳 、 通 訳 者 養 成方針 に お け る西 ヨーロッ パ vs.オ タ ワ 大 学 、 翻 訳 vs.通 訳 と い う 4 つ の二 項対 立を挙げて論 述を 進 め た 。Harris(1990)に よ る と 、一 人称の使用を徹 底す る と と も に 、話し手の考え と表現態度 を可 能な限り 大幅な省 略をせず に 、 通 訳 者自

(32)

身の考え や表現 を混ぜ 合 わせず に 、 正確に再現 す る と い う 「 正直な代弁者

(honest spokesperson) 」 が プロの 通 訳 者 の基本 的 か つ普 遍的 な 規範で あ る

(Harris 1990:118) 。

Schjoldager(1995) は 、 シミ ュ レー ション に よ りデンマーク語 ・英語 のコー パス を 構築し 、特定 の 文化的項目に対す る 通 訳 者 の処理 の仕方か ら 初期規範の 抽出 を試み た 。ST と TT を 比較し た 結 果 、 通 訳 者 は な るべ く ST で 実 現 さ れ て い る 規範に 従 っ て い る が 、「 文脈上 も っ と も ら し い 何 か を 言 う こ と が で き れば、 STに お け る 問題の項目と は明ら か に無関係な こ と を 言 う こ と が許さ れ る 」と い う同 時通 訳特有 の 規範も 存 在 し て い る と い う (Schjoldager 1995:84) 。

Wang(2012)は 、テレビ で放 送さ れ た 中 国 の首相記者 会見よ り 中英通 訳 のデ ー タ を収集 し 、STと TTを 比較し た 結 果 、追 加(Addition)、縮小(Reduction) と訂正(Correction)と い う三つ の カ テゴリ ー に お い て シ フ ト を見出 し た 。そ れ ぞれ の シ フ ト に対し て 出 現頻度 な ど 定量分 析を 行 っ た 結 果 、ST と TT の 関係に 関わる 規範と し て適 切 性の 規範(the norm of adequacy) 、論理 的 関係に お け る 明 示 化の 規範(the norm of explicitation in logic relations)、情 報の内 容に お け る 特異性の 規範(the norm of specificity in information content) 、意味に お け る明 示 性の 規範(the norm of explicitness in meaning) と い う 4 つ の 規範が同定 さ れ た と述 べた 。

日 本 語 と他の 言 語 の組合せを対 象と し た 通 訳 規範の 先 行 研 究 は 、瀧本(2006)、

鳥 飼(2007)、平塚(2015)と飯 田(2016)が あ る 。こ の 中 で Chesterman(1997)

に よ る 翻 訳 規範 モ デ ルを援 用し た 研 究 は 、瀧本(2006)と平塚(2015)で あ る 。 瀧本(2006)は 、英語母語話者 4名 、日 本 語母語話者 3 名 、計 7名 の NAATI 認 定 通 訳 者 に半構造 化イ ン タ ビュー を 行 い 、 オ ー ス ト ラ リ ア 通 訳 者 ・ 翻 訳 者 協 会 (AUSIT) の 倫 理 規 定 に お け る 「公平 性」 お よび「 正確 性」 と ビ ジ ネ ス 通 訳 者 の 行動と の 関連を考 察し た 。 結論と し て 、 ビ ジ ネ ス 通 訳 者 は常に依 頼者 が 何 を求め て い る か を 的確に判 断し 、 結 果 的 に は 倫 理 規 定 に反す る こ と に な っ て も 依 頼者 の期 待に応え る よ う な 行動を 行 い 、Chesterman(1997) の い う期 待規範 と矛 盾が な い と報告し て い る 。

鳥 飼(2007) は 、 日 本 の同 時通 訳 のパイ オニア 5 名 の オ ー ラルヒス ト リ ー か ら 通 訳 者 の役 割を分 析し た が 、通 訳 規範に つ い て も 言及し て い る 。鳥 飼(2007)

図 3. Chesterman ( 1997 : 64-70 ) に よ る 翻 訳 規 範 モ デ ル 期 待 規 範                                     規 定 Toury( 1995 ) の 翻 訳 規 範 モ デ ル に 対 し て Hermans( 1999 ) は 、「 適 切 性 」 と 「 受 容 性 」 と い う 用 語 が 評 価 的 な 含 み が あ り 、 混 乱 を 招 く と 指 摘 し 、 初 期 規 範 を 「 適 切 性 」 お よ
図 4 . 本 研 究 の 位 置 づ け
表 2.  イ ン フ ォ ー マ ン ト の 情 報 通 訳 者 経 験 年 数 通 訳 雇 用 形 態 主 な 経 験 業 務 分 野 日 本 滞 在 年 数 A  9  フ リ ー ラ ン ス 環 境 、 医 療 施 設 視 察 、 出 版 7  B  10  フ リ ー ラ ン ス 環 境 、 建 設 、 金 融     8.5  C  6.5  企 業 内 IT 、 広 告 、 輸 出 入 4  D  10  フ リ ー ラ ン ス 医 療 機 材 の 販 売 、 環 境 、 建 設 4  E
図 ・ 表 の 一 覧 図 の 一 覧 図 1  ベ ト ナ ム に お け る 日 本 語 専 攻 大 学 卒 業 生 の 進 路 先 ..……….1  図 2  Toury ( 1995 : 57-59 ) に よ る 翻 訳 規 範 モ デ ル .………13  図 3  Chesterman ( 1997: 64-70) に よ る 翻 訳 規 範 モ デ ル .………15  図 4  本 研 究 の 位 置 づ け .………29  図 5  売 り 込 み 場 面 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン

参照

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