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食用菊中ガン細胞増殖抑制物質の単離と同定

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(1)

食用菊中ガン細胞増殖抑制物質の単離と同定

著者 若生 豊, 谷川 晶彦

著者別名 WAKO Yutaka, TANIKAWA Masahiko

雑誌名 八戸工業大学異分野融合科学研究所紀要

2

ページ 43‑49

URL http://id.nii.ac.jp/1078/00002410/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

 

  

.谷 │1  晶

 

PuriFication and structural analysis of substances in edible chrysanthemum flo、 vers that suppress the

gro、

vth of]玉

L‑60 human leuke■

a cells

Yutakaヽ VAKO*Ⅳ 【

asahiko′rANIKAヽ

VA**

Abstract

A large number of data frOni epide■ liologic and rodent studies has demonstrated thatingestion of vegetables and fruits is occasiona■ y beneicial for reduction of cancer risks in humans  Thus,chemoprevention with food phyto‐

chenュ icals including Hlinor dietary ingredients (food factors)is currently regarded as one of the ne都 ′  important scientinc Fields  Recently、 、 ア e found that the extract of chrysanthemum have anticancer erect as strong as that of tea navonOid  ln this paper郡 ァ e demonstrated the isolation and structural analysis of anticancer active substance from methanol extract of chrysanthemum  Potent cell gro、 vth suppressive compound designated Dl Mras isolated as major active component of chrysanthemuHュ by successively chromatography on open column packed郡 /ith ODS resin, and on 2 step reverse― phase l■ PLC in aヽ ′

Iightysil RP‑18 column and a TSKge1 0DS‑80Ts column  The compound

of Dl inhibits the proliferation of HL‑60 cen distincdy(G150'193  μ

g/ml) Examination by TOF―

ふ IS yielded a molecular、、 ア eight of 539 1144 with a cheHュ ical composition C25H24012Na  By using lH,13c,Nふ yIR郡/e have identiFied 3,5‑di―

o―

catteoylquinic acid as one of suppressive components on the gro、 、 ア th of HL‑60 ce■

Key wordsi ChemOprevention,Anticancer etfect,Chrysanthemum,Flavonoid,Phytoche■

lical

1. は じ め に

現在我が国は世界一 の長寿国 となった。 しか し ,人 口 の高齢化が進 むのに従 い 1981年 以降ガ ンが死 因の一位 を占めるようになっている。かつてない高齢化社会 を迎 える日本 に とってガ ン対策 は国民的課題 と言 えよう。ガ ン対策 は予防・ 診断・治療 の三本柱か らな り ,現 在後 の 二者の分野 はかな り進歩 し ,ガ ン患者の半分以上 は五年 以上 の生存が可能 になった。 ところが ,ガ ンの予防に関

しては学問的にも実際的 にもまだ まだ未熟 の段階 にある といわざるをえない。

30年

ほ ど前 まではガ ンは予防の対 象 とはな らない疾病であろうとの考 え方が支配的であつ た。 しか し様々な疫学研究が進 め られ ,ガ ン発症 と生活 習慣 の間に相関が見出され るようにな り

これ らを改善 す ることで リスクを低下で きるのではないか と考 えられ るようにな り ,国 立ガ ンセンターか らは生活改善の指針 となる「ガ ン予防 12ヶ 条」も提唱 されている。一方 ,予

防キ 勿質 を積極的に投与 。摂取す ることによるガ ンの発生 お よび進行 の阻止 を目的 とした取 り組 み も始 め られてい る。すでに数種 の医薬品がガ ン予防薬 として認可 されて いるものの ,予 防の対象 としてはガン切除後 の再発予防 に限 られ

,副

作用 も大 き く健常者へ適応可能 な ものは未

平成 15年

12月 26日

受理 ホ生物環境化学工学科・教授

料 大学院工学研究科機械システムエ学専攻博士前期課程・

2年

だない。 また ,食 物因子 には発ガンリスクを増大す るも のが発見 される と同時 に予防の可能性が示 されるもの も 多数報告 されている。 とくに植物成分 の研究 に注 目が集

まり

,1990年

か ら 1993年 にか けて は米国国立癌研究所

(NCI)に

よる大規模 な研究が実施 された (デ ザイナーズ フー ド計画

)。

この研究 は非常 に多数の物質 を抽出 し ,そ れ らの薬理 。生理機能 を調べ るきっかけ とな り

,引

き続

き数多 くの食品成分がそのガ ン予防効果の可能性 につい て精力的な検討が展開されている。残念 なが ら現在 ,食

品由来の成分がある明確な証拠 をもってガ ンを予防 した とい う研究例 はまだない。 しか し

,多

くの研究者 はガン

予防効果 を有す る物質 は存在す るもの と予測 してい る。

そのような物質 は健常者が ,副 作用な く継続 して長期 に

摂取可能 な ものであ り ,ガ ン予防において重要な発見 と

なる。食品 によるガ ン予防の可能性 を立証す るためには

ヒ トを対象 とした介入試験が重要で

これ までの研究で

見出されて きた物質の中か らとくに可能性のあるものが

選 ばれ ,介 入試験 による多 くの検討プログラムが進行 し

ている。 それ とともに ,新 たな構造や作用機序 を持つガ

ン予防物質 の発見 も重要 と考 えられ る。本研究では食用

菊花弁 中 に未知 のガ ン細胞増殖抑制活性 を見 出 したの

で ,食 品のガン予防の可台

Z陛

に関す る考察の手がか りを

求 める目的か ら

,そ

の構造・ 作用機序の解明 を試みた。

(3)

八戸工業大学異分野融合研究所紀要 第 2巻 第 1号

2.実験材料 。方法

2.1 

試験試料

キ ク

 (Chrysanthemum:Compositae chrysanthe mum morifolium),シ

ュ ンギク (Garland chrysanthe‐

mum:Compositae chrysanthemum coronatium),ニ

ニ ク

(Garlic:Lnaceae allium sat市 um), 

リ ン ゴ

(Apple:Rosaceae malus domestica),ホ

ウ レ ン ソウ

(Spinach: chenOpodiaceae spinacia oleracea) 

/ソ (Perilla:Lamiacea perilla frutescens)を 試験試料 とし て用 い,市販 の もの を準備 した。 これ らはホモ ジナイズ した後

80%メ

タ ノール で抽 出 し

,ろ

液 を減圧 濃縮 した。

凍 結乾 燥後,水また はエ タノール にそれ ぞれ再溶解 し試 験 試料 とした。

2.2 

ガ ン細胞増殖抑制活性試験

ガン細胞増殖子r日制活性評価 には東北大学細胞資源セン ターよ り供 与 され た

,ヒ

ト前 骨 髄 性 白血 病 (Periph, bloodpremyelocytic leukemia)由 来細胞 の

HL 60を

いた。培地 は

RPMI‑1640培

(GIBCO)に

10%牛胎児

血清(FBS),5%抗生物質 を添加 した ものを用いた。培 養 は炭酸ガスイ ンキュベーター

(CPD 170,ヒ

ラサワ)│こ

37°

C,5%C02の存在下で行 った。増殖抑制活性評価 は新本等1)の方法 に従 った。始 めに細胞 を3〜4日 間前培 養 し対数増殖期 の細胞 を準備する。この細胞 を濃度20×

104cel1/mlに調製 し,増殖抑制活性評価 に使用 した。96 穴 マイクロカルチャープ レー トに細胞 を

100 

μlず つ分 注 し

,こ

れ に試験 試料 を10 μlずつ終 濃 度 が5〜

1,000

μ

g/mlに

なるように加 え培養 を行い

,翌

日か ら5日 間細 胞 の増殖経過 を観測 した。生細胞数の計測 はMTT法 より行い,培養液の吸光値 より求 めた。測定 には新規 テ ト ラ ブ リ ウ ム 塩

WST‑8[2(2‑Methoxy 4 nitro‐

phenyl)‑3‑(4‑nitrophenyl)‑5‑(2,4‑disulfophenyl)―

2H―

tetra zolium,monosodium salt]を

採用 した

Cell

counting kit 8(DO」

INDO)を

用いた。培養液の

450 nm

の吸光値 はマイ クロプ レー トリーダー

(MPR― A41,東

ソー)で測定 した。抑制能力 はガ ン細胞 の増殖 を50%抑

制す るときの濃度 (GIsO),お よび

100%抑

制す るときの 濃度

(TGI)に

より評価 した①

2.3 

活‖生物質の分離・ 精製

凍結乾燥 した菊抽出物か ら逆相系のオープンカラムお よびHPLCを用い活性成分の分離・精製 を行 った。逆相 シ リカ樹脂

(LP 60C18,和

光純薬製)を 50×

110 mmの

カラムに充填 し,水―メタノールーギ酸

(41:38:1)の

溶離液 にて平衡化 した。菊の凍結乾燥試料 を溶離液 に溶 解 してカラムに乗せ流速

l m1/minで

逆相分離 した。溶 出液 を

9 mlず

っフラクションコレクターにて分取 した。

高速液体 クロマ トグラフィーは

LC‑10シ

ステム

(島

製作所製

)を

使 用 した。カ ラム はODS系Mightysil

RP‑18(10× 250 mm,関

東化学)および

,TSKge1 0DS―

80Ts(4.6×

250 mm,東

ソー)を用いた。精製 は

2液

によ る濃度勾配溶出にて行い,A液02%ギ酸溶液,B液 メタノールーアセ トニ トリルー水混合液

(919:2)と

た。A液 :B液

(72:28)で 30分

間保持 した後,B液 度 を

10分

間で

28%か

70%ま

で直線 的 に上昇 させ溶 出 を行 った。流速 はそれ ぞれ

3m1/minお

よび

0.7m1/

minと

した。

2.4 

構造解析

質量分析 は

TOF― MS(QSTAR Mass spectrometer, Applied Biosystems)を

用 い実施 した。標 準 物 質 は

dioctyl phthalate(m/z 3912842), recerpine(m/z

609.2806)を 用 いた。イオ ン化法 は

electrOn spray ioniza‐

tion(ESI)法

に よる posit市

e ion modeで

預」定 した。

Hぉょび13c核磁 気 共 鳴分光 分 析

(以

NMRと

)は AVANCE DRX‑400 spectrOmeter(Brucker)を

用 い

CD30D(重

アセ トン

)溶

媒 中で測定 を実施 した。標 準物 質 は

Tetramethylsilane(TMS)を

用 いた。

2.5 

電気泳動 によるDNA断片化観察

DNA断片 化 の観 察 は電 気 泳 動 に よ リア ポ トー シス ア ッセイキ ッ トテス トワコー l不日光純薬

)を

用 い行 った。

被 験 試料 で処理 した細胞 1〜 100×104個を遠心

(800× g)

に よ り集 め,そ れ を PrOtein Digestion Enzyme Solution で細 胞 溶 解 した後,核DNAを 抽 出 した。 イ ソプ ロパ ノール を加 えてDNAを沈殿 させ 回収 し

,エ

タ ノール で 洗 浄 の後電気泳動用 のサ ンプル とした。

1.5%ア

ガ ロース ゲ ル の 各 ウェル にDNAサ ン プ ル

10 

μlと

Loading

Burer 2  μlを 入 れ,TAE緩衝 液 中で

100V,40分

間泳 動 をお こな った。泳 動 後

,エ

ナ ジ ウム ブ ロマ イ ドに よ り

DNAの染 色 を行 な い,UVト ラ ン ス イ ル ミネーター

(Kodak製

)上 で検 出波長 を

312 nmと

,観

察 を行 なっ

た。

2.6 

細胞の顕微鏡観察

被験試料で処理 した細胞 は トリパ ンブルーで死細胞 を 染 色 し形 態 学 的 変 化 を倒 立 型 培 養 顕 微 鏡 (IX70,

OLYMPUS)にて観察 した。

3.結果 と考察

3.1 

食品のガ ン細胞増殖抑制活性

これ までガ ン予防の可能性が示唆 されている野菜類,

および本県の代表的果実である リンゴの抽出物のガン細 胞増殖抑制活性 を食用菊花弁 のそれ と比較 した

(表 1)。

ニ ンニ クのガ ン細胞増殖 を

50%抑

制 す る濃度 で あ る G150は 45 μ

g/mlと

測定 され強い抑制活性 を示 した。ニ

‑ 44 ‑―

(4)

Chrysanthemum

Garland chrysanthemum Apple

Garlic

Spinach

Peri■ a

ガン予防の可能性が示唆される食品お よび食用キク 抽出物のガン細胞

HL 60に

対する増殖抑制活性

Sample

G150(μ g/ml)TGI(μ g/ml) 345 315

ND

74

ND

5,714

増殖活性 の詳細 について は未 だ不明の点 が多 い ことか ら ,本 研究では活性成分の特定 とガン細胞への作用 につ いて検討 を行 った。

3.2 HPLCに よる増殖抑制成分の検討

デザイナーズフー ド計画 においては ,疫 学的 に抗ガ ン 作用の可能性が考 えられ る食品についてそれ らの成分が 精力的 に調査 され多数 の化合物 の構造が明 らか にされ た。野菜・ 果実類 の活性成分 としては環状構造 と多数の 水酸基 をその特徴 とす るポ リフェノール類がその多 くを 占めている。図 1に 今回ガ ン細胞増殖抑制活性 を測定 し

0   5   10  15  20  25  30  35  40

Remttn航

徹山

)

ガ ン予防の可能性が示唆 され る食 品お よび食 用 キク抽 出物 のフォ トダイオー ドアレイによる高速液体 クロマ

トグラフィーパ ター ン

(a:キ

ク ,b:シ ュンギク ,c:ニ ンニ ク

,d:リ

ンゴ,e:

ホウレンソウ

,f:シ

)

108 120 5,142 45 2,125 1,734

GIs。

:ガ ン細胞の増殖 を

50%抑

制するときの試料濃度

TGI:ガン細胞の増殖を

100%抑

制するときの濃度

ンニクはデザイナーズフー ド計画 において最 も高いガ ン 予防効果 の可能性 を有す る食 品 と位置付 けられてい る。

エ ンニクには多数の有効成分が存在 し ,多 くは含硫化合 物でア リルスル フィ ド類であ り ,ガ ン細胞増殖抑制活性 成分 もこれ らの一連の化合物 に由来す るもの と考 えられ る。 キク花弁抽 出物 (G150;108 μ g/ml)と シュンギク抽 出物 (G150;120 μ g/ml)は 同程度 の G150を 示 し

,ニ

ンニ

クに次 ぐ強い有意 な活性 を持つ ことが確認 された。 これ らの植物 は十字架植物でクロロゲ ン酸類が抗酸化活性 な どの活性成分 として知 られている。今回見出 しているキ ク抽出物 中の抑制活性 もクロロゲ ン酸類 による可能性が 考 えられた。一方 リンゴ抽 出物 の増殖抑制活性 はこれ ら の抽出物 と比べ

1〜

2オ ーダー低 い値であった。

しか し

これ ら食品の活性 は治療 に用い られ る抗ガ ン 剤の抑制活性 に比べ る と ,数 オーダー低 い値である。抗 ガ ン剤の顕著 な効果の多 くは

,そ

れ らが直接細胞 の遺伝 子 を攻撃 して障害 を引 き起 こす ことによる。マイ トマイ シン

CはDNA塩

基 の間 に入 り塩基 と結合 す る こ とに より

DNA鎖

を架橋す る。ブレオマイシンは

DNA鎖

を 切 る。 これ らの影響 は甚大で細胞 は死減 し ,ガ ン細胞以 外の正常細胞へ も多大 な影響 を及 ばす ことか ら強い副作 用 を示す結果 となっている。それでは ,抗 ガ ン剤 より遥 かに微弱な活性 しか持たない食品成分がガ ン発症 の予防 効果 を示 し得 る可合

Z陛

があるかが課題である。ガ ン発症 に至 るまでには幾つかのステ ップが想定 されている。遺 伝子へ変異が蓄積 し ,変 異 した細胞がガ ン化す る。変異 を生 じた細胞 は頻繁 に発生す るが

,そ

の際生体 は発ガ ン を回避す る二つの防御機能 を発揮 しガン化 を防止 してい る。変異細胞 を正常細胞へ修復 し直す働 きか けと ,逆

変異の進んだ細胞へ は積極的な死 を誘導す る

l動

きかけで あ る。 この ような意 図 を持 って計 画 に従 った死 はアポ トーシス死 と呼 ばれ死 に至 るス トラテジーには複数の類 型が存在す る。 ここで取 り上 げたガ ン予防効果が考 えら れている食品成分 にはこのアポ トーシス死誘導活性が認 め られている。従 って活性 は微弱ではあるが ,ガ ン化の 抑制 に介在す るアポ トーシス死 を誘導す ることより食 品 のガン予防の可台〕隆を説明す る活性 メカニズムの一候補 として検討が進行 している。食用キク抽出物 のガ ン細胞

280

b

ヽ 8 目 督 0 く

d

280

‑ 45 ‑―

(5)

八戸工業大学異分野融合研究所紀要 第 2巻 第 1号

た食 品抽 出物 の高速液体 クロマ トグ ラフィー

(HPLC)分

析 結果 を示 した。このHPLC分析 で は複 数波長 を同時 に 測定 で きるフォ トダイォー ドア レイに よ り 240,260,280,

300,320 nmの 5波

長 の同時観察 を行 った。クロロゲ ン酸 類 化合物 は野菜類 に広 く分布 してお り

,キ

ク花弁

,シ

ンギ ク抽 出物(図 la,b)の流 出時間が

25分

まで に出現 す るピー ク は標準物質 の クロロゲ ン酸 の ピー ク波長パ ター ン と良 く一致 しこれ らの成分が クロロゲ ン酸類 で あ る こ とが示唆 された。しか しキク花弁抽 出物 で み られ る

25分

以 降 の ピー クはクロロゲ ン酸 のそれ とは波長パ ター ンが 異 な った。 ホ ウ レン ソウ

,シ

ソ抽 出物 の主要 な ピー クに はクロロゲ ン酸類似 の もの は認 め られ なか った。 エ ンニ ク抽 出物 で は何 れ の ピー ク にお い て もそ の紫 外 吸収 域

,280 nmよ

り短 く

240 nm付

近 に極大 吸収 が あ り

,ア

リル スル フ ィ ド類 の特徴 を示 してい る。 また リンゴ抽 出 物 の ピー クはタ ンニ ン類 のポ リフェノール に よる もの と 思 わ れ る。

キ ク抽 出物 には流 出時 間が

25分

まで に出現 す る成 分 とそれ以降 の成分 に大別 され る。 データ は示 さないが各 主要 ピー クについてガ ン細胞増殖抑制活性 の予備 的検討 に よ り流 出時間が

25分

まで に出現 す る ピー ク に顕 著 な 活性 のあ る ことが判 明 し以後 これ らの中か ら活性成分 の 分離精製 を試 みた。

3.3 

分離 。精製 と構造解析

逆相樹脂

LP‑60C18の

オープ ンカラム に よる菊抽 出 物 の分離結果 を図

2へ

示す。ここでは先のHPLCで観察

した流出時間が

25分

までに出現 す る成分が

4つ

の ピー

10

70

Fraction numbcr

図 2  キク抽 出物 の逆相樹脂

LP‑60C18ク

ロマ トグラフィー による分離 プロフィール と分取画分

表 2  キク抽 出の逆相樹脂

LP 60C18に

よる分離 画分 のガ ン細胞増殖抑制活性

Sample   G150(μ

g/ml)  TGI(μ g/ml)

Φ﹁〇

100 48 38 16 18

03 86 D 56 55 4 l N

Φ

4132636

5391144 391.2842

350      400        450        500        550

Z(arnu)

単離精製試料DlのTOF―

MSス

ペク トル

10        20        30 Rettntion time(min)

単 離精 製 試料Dlの

HPLCパ

ター ン

609.2806

40

一 のΦやド目

0

‑ 46 ‑

600

(6)

m . 咆 卜 引 ︱

︹ ロ

〇 卜

〇 代 叶 ω . い 卜 0 . 嘲 叶

'  NI″

  ЧЧ

N形

160

120      80

Chemical shin(ppm)

単離精製試料

Dlの 13c NMRス

ペク トル

40

単離精製試料

Dlの

化学構造

ほぼ完全 に一致 し単離化合物 はイ ソクロロゲ ン酸 と推定 ,その構造 を図

6に

示 した。13c NMR(δ

):74.6(C―

1),38.0(C‑2),72.0(C‑3),70.4(C‑4),72.3(C‑5),36.2 (C‑6),176.3(C‑7)(quinic acid); 167.0,167.3(C‑1/),

116.7,116.7(C‑2′ ),146.2,146.5(C‑3′ ),128.1,128.2(C―

4/),115.5,115.6(C‑5り

,148.9,149.0(C‑7′

),116.1(C―

8′

),122.8,122.9(C‑9/)(careOyl groups).

3.4 

キク花弁 由来 イツク ロロゲ ン酸のガ ン細胞増殖抑 制活性 とアポ トーシス誘導能

キク花弁中の主要な活性成分の 1つ はイソクロロゲ ン クに分離 され

A〜

D画 分 とした。各画分のガ ン細胞増殖

抑制活性 を表

2へ

示す。主要な成分である D画 分の

G150

は 16  μ

g/mlと

最 も強い活性 を示 した。 B,C画 分の活性 は D画 分 よ り弱 く (G150'48 μ

g/m卜

38  μ

g/ml),最

初 に溶 出され る

A画

分 に活性 は認 め られなかった。以後 D

画分か ら活性成分 の精製 を目指す こととした。 D画 分 を 回収 し HPLCに よ り逆相系カラム Mightysil RP 18を 用い精製 した後 ,引 き続 き

TSKge1 0DS‑80Tsで 2回

目 の精製 を行 い活性成分 を単離 した (図 3)。

単離 した活性成分 は構造検討のため東京理科大学の菅 原教授へ送付 し ,質 量分析 と核磁気共鳴による解析 を依 頼 した。質量分析 は TOF― MSに より行 ない

,そ

のスペ ク トルチャー トを図 4に 示す。分子 イオ ンピークの質量数 は

539.1144の

値 を示 し

,そ

れ よ り可能 な組成式 として C25H24012が 推定 された。 これが クロロゲ ン酸類縁化合 物 とする場合 その化合物 はクロロゲ ン酸へ さ らに もう 1 つ の caffeoyl基 の 加 わった

3,5‑′

ゲ ー

o―catteoylquinic acid(イ

ソクロロゲ ン酸

)の

可能性が強 く示唆 された。核 磁気共鳴スペ ク トルの解析結果 は M.Kodama等 劾の報 告 しているイ ソクロロゲ ン酸 スペ ク トルデータ (phyto―

chemistry 47,371373,1998)と 比較 し検討 を行 った。重 水素化 アセ トン中の

lHお

よび 13cの データを

,ヒ

較 した

(図 5)。 以下 に示す

13c NMRケ

ミカル シフ ト値

(び)は

‑47 ‑―

(7)

八戸工業大学異分野融合研究所紀要 第 2巻 第 1号

1

a b o d e f g h i

(A)       (B)

単離精製試料Dlの HL 60細胞に対するアポ トーシス誘導作用

(A)Dl(1)お

よびクロロゲン酸 (2)処理細胞の位相差顕微鏡像

(B)DNAの断片化作用

a:対

,b,c,d:マイ トマイシン

C(0̲02,0,05,0̲lμ

g/ml),e,f,g:ク ロロゲン酸(25,40,50 μg/ml),h,i,j:試 料 Dl(10,25,45  μ

g/ml)

2

酸であることが推定 された。イ ソクロロゲ ン酸 とクロロ ゲ ン酸の活性 を比較 した結果,それぞれ G150は

19・

g/

mlお

よび

19.9μ g/mlと

ほ とん ど変 わ らない値 で あ り, イ ソクロロゲ ン酸 で

1つ

増 えてい る

careoyl基

は活′l生

へ影響 を及 ばしていない。培地 にイソクロロゲン酸 を加 え培養 した

HL 60細

胞 の形態変化 を位相差顕微鏡で観 察 した。イソクロロゲ ン酸

73.4μ M(39.6μ g/ml),72h

処理 した

HL‑60細

胞 の顕微鏡象 を図

7.(A)1へ

示す。 ト リパ ンブルーで染色 された死細胞が多数観察 され,死 胞 の中に複数の細胞塊へ分裂 した像が観察 されアポ トー シス死 の特徴が認 め られた。図

7.(A)2ヘ

クロロゲ ン酸 と同様 の条件で処理 した細胞像 を示す。 これ らの像 とイ ソクロロゲ ン酸処理細胞 の像の比較では相違 は認 め られ ,同様 の形態変化が示 されている。 また

,ア

ポ トーシ ス死 はクロマチ ンDNAの断裂が特徴であ り,電気泳動 によるDNA断片化の検討 を行 い結果 を図

6に

示す。イ ソクロロゲ ン酸処理細胞 のDNAの電気泳動像で は低分 子化 したDNAが原点 か らフロ ン ト方 向へ連続 的 な帯

(ラダー)を形成 しクロマチンDNAの断片化が確認 され た。 クロロゲン酸類 を含 むシュンギク抽出物お よびタン ニ ン類のポ リフェノール類 を含む リンゴ抽出物で処理 し た細胞 のDNAも同様 のラダーが観察 されたが,抗ガ ン 剤 のマイ トマイ シンCで処理 した細胞 のDNAは帯 の 形成が薄 く,断片化の程度が より進行 した像 を示 し,食

品成分処理の電気泳動像 とは異 なっていた。

4.お わ り に

本研究ではキク花弁中にガン細胞増殖抑制活性 を見出

,そ

の主要 な活性成分の

1つ

について分離・ 精製 。構 造解析 を行 い,3,5″

o―

caFeoylquinic acid(イ ソクロ ロゲ ン酸)であることを明 らかにした。イソクロロゲ ン 酸 はシュンギクをはじめ,植物 に広 く存在する化合物で 新規 な ものでは無 く,ガン細胞増殖抑制活性や細胞死誘 導の特徴 もクロロゲ ン酸 とほぼ同一 と考 えられた。イ ソ クロロゲ ン酸 には顕著 な抗酸化活性

0や

抗 ウイルス活 性動な どが報告 されている。 クロロゲ ン酸やイ ソクロロ ゲ ン酸 のガ ン予防の可能性 に関す る臨床 的 な報告 は無 い。 しか し

,キ

ク花弁 に含 まれ るtriterpene diol類 がガ ン化の リスクを低減する抗 プロモーション活性 を示す こ とが明 らか にされてい る。。ガ ン予防の可能性 を推測す る場合,その効果がアポ トーシス死誘導能 によるのか,抗 酸化活性が体 内の酸化ス トレスを緩和 しこれ を介 した効 果 によるのか,全くほかの原因によるのかについては不 明である。 また抗酸化作用 は両刃の刃であ り,原理的に 酸化抑制 のみな らず条件 によっては酸化 を促進 させ る方 向へ も働 き得 る存在であることや

,フ

ラボノイ ドをはじ め とするポ リフェノール類 は体内への吸収効率が著 しく 低 い ことな どか ら,試験管内のガン細胞増殖抑制活性 の

みか らガ ン予防 を推測す ることはで きない。

食物 とガ ン予防に関す る疫学調査 はその食物 に予防物 質が含 まれ ることを示唆 してはいるか もしれないが

,そ

の食物 を代表す る物質がその原因物質か どうかに対 して

―‑ 48 ‑―

(8)

は ,何 らの根拠 を与 えるものではない。因果関係 の立証 は介入試験 (新 薬開発では臨床試験

)に

委ねるのが現在 最 も信頼で きる方法 といえよう。 これ は ,一 方のグルー プにだ け試験物質やサプ リメン トを投与 してその効果 を みる。一般の薬 の効果 を確かめるときに行われ る臨床試 験で採用 され るもので ,現 在 ,ガ ン予防が期待 され る幾 つかの食物や成分が試 されている。一方 ,食 物のガ ン予 防の可能性 については ,提 案 されている種々の作用メカ ニズムの評価や新たな作用メカニズムの発見 も重要な研 究分野である。新薬開発の分野ではゲノム創薬の取 り組 みが脚光 をあびている。 これ は ,従 来活性物質の側か ら 治療効果の追求 を行 うのに対 し ,遺 伝子 レベルで原因 を 解明 し原因の側か ら目的にあった物質 を追求す る手法で ある。 これ まで多数のガン予防に期待が寄せ られ る物質 が検討 されて きたがそれを全て前述の介入試験で試す こ

とは費用 と時間の面か ら不可能である。膨大 なガ ン予防 物質の候補 の評価 には予防の根拠 となる作用メカニズム 側か らの評価が有功ではないか と考 える。本実験で は新 規 な物質やメカニズムに繋がる発見 はなかったが ,多 く

の広範 な努力が このようなデーター作 りを支 えているも の と考 える。

  

活性成分 の構造解析 にあた り ,TOF― MSお よび

lHお

ょび

13c NMRの

分析 を実施 して頂 きました東京理科大 学理工学部菅原二三男教授 ,紙 透伸治博士 に深謝いた し

ます。

参 考 文 献

1)新

本洋士

:食

品機能研究法

,pp 275 278,光

淋 (2000).

2)M Kodoma,Hヽ

Vada,H Ota五

,et ali P物

サ οθ カゼ 物か 狗 ,47,371(1990

3)津

志田藤二郎

,鈴

木雅博 ,黒 木柾吉 :日 本食品工業学会 誌

,41,611(1994)

4)M Ukiya, T̲Akihisa, H Tokuda:(テ ′ %θ

2″

 L歩 チ ¢ 熔

,

177,7(2002)

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