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機能的距離の性質について : 府県間人口移動を例 に

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(1)

機能的距離の性質について : 府県間人口移動を例

著者 神谷 浩夫

雑誌名 人文地理

巻 33

号 1

ページ 55‑61

発行年 1981‑02‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/9778

(2)

人文地理第33巻第1号(1981)

機能的距離のI性質について

-府県間人口移動を例に-

神谷浩夫

機能的距離とは「各灸の地点のn個の特徴を n次元空間上に表わした時に,二地点間を隔

てる距離(ifeachnode,snpropertiesare mappedinan-dimensionalspace,itispossibleto computeameasureofthedistanceseparatingany twonodessuchthatitreflectstheneteffectof nodalpropertiesupontheirprosperitytointer‐

act.)」と定義されている。BrownandHorton

3)

の他にもPittsI土,グラフ理論による地域の

4)

結合かlう機能的距離を算出している。O1sson は,二つの地域の間に介在する単位地域の数

を機能的距離と定義している。このように,

BrownandHortonの機能的距離の定義はは っきりとしておらず,その概念も確固とはして

いないと思われる。そのため,本研究では機能

的距離の定義を以下に述べる3つの性質をもつ

距離とする。その性質とは,(1)直接的移動と間 接的移動の両方を考慮し,(2)空間的位置関係は

全く示しておらず,(3)非対称な点である。

機能的距離は,マルコフ連鎖モデルから求め られる平均第一到達時間を用いる。この距離に ついて述べる前に,マルコフ連鎖モデルの特徴 であるマルコフ性について述べる必要がある。

1研究の概要

本研究の目的は,マルコフ連鎖モデルから求

められる機能的距離は,どのような性質をもっ ているのかを考察することにある。機能的距離

は,従来,地域区分の手法としてしばしば用い

1)

られてきている力:,その距離としての性質につ

いては十分考察されてきたとは言いがたい。筆 者は府県間の人口移動をデータとして用い,求

められた機能的距離がどのような意味をもつの かを,従来の研究と比較しつつ検討した。その

結果,次のような結論を得た。(1)各府県の機能 的距離は,発地の県からふた各交の県への距離

を比較するとぎ,非常に似通ったパターンをも つ。このことは,日本全国が全体として-つの システムを形成し,サブシステムをもたないこ とを示している。(2)東・西日本の情報圏構造が

認められ,この構造は,同一次元上の対極に現

れる。

2機能的距離の性質

機能的距離には,従来さまざまな定義が与え

2)

られている。BrownandHortonによれI王,

1)Bmwn,L、A、,J・OdlandandR・GGolledge,‘Migration,FunctionalDistanceandUrbanHierarchy,,Ebo"・

Geog1P、46,1970,pp、472-8.

Brown,L、A,andJ・Holmes,‘TheDeliminationofFunctionalRegions,NodalRegionsandUrbanHierarchy

byFundionalDistanceApproach,,〃卿γ,q/R2gSci,11-1,1971,pp.57-72.

森川洋「結節地域・機能地域の分析手法一中国地方を例として-」,人文地理30-1,1978,17-38頁。

2)Brown,L、A,andF.E,Horton,‘FunctionalDistance;AnOperationalApproach,,GeoglP.A〃aDsis、2,1970.

pp,76-83.特にp、761.14-1.17.

3)Pitts,F,R、,‘AGraphTheoreticApproachtoHistoricalGeography,,ThePm/bssfo'zaJGeogmZPheγ17,1965,

ppl5-20.

4)O1sson,G、,‘Distanceandhumaninteraction;Amigtationstudy,,G2097分q/fsAaAmzaJ2γ47,Ser.B、-1,1965,

pp、3-43.

-55-

(3)

人文地理第33巻第1号(1981)

56

マルコフ性とは,ある時点tから次の時点(t+

Dへと変化する確率は,時点tにおける状態に のゑ依存する性質である。この性質は,数学的 簡明さを与えるが,以下に述べるようなさまざ まな制約を課する。

マルコフ過程から求められた平均第一到達時 間(MeanFirstPassageTime)は,ある状態(地点)

から別の状態(地点)までに到達するのに要する 平均的な時間であるから,これは,時間距離の 一種と考えられるであろう。BrownandHorton は,こうして求められた機能的距離の特徴とし て,以下のものをあげている。すなわち,(1)直 接的移動(結びつき)と間接的移動(結びつき)の 両方を考慮し,(2)その移動(結びつき)の大きさ は相対的(確率的)であり,(3)非対称性をもつ点

などである。

第一の直接的移動と間接的移動の両方を考慮 に入れた距離であるという特徴は,これまでの 距離が間接的な結びつきを無視してきた点から ゑてユニークである。しかし,問題がないわけ ではない。たとえば,人口移動の例について考 えて承る。A地点→B地点への移動とB地点→

C地点への移動が存在すれば,A地点→C地点 への移動が存在するとマルコフモデルでは見な される。StephensonI土,こうしプこ見方に疑問5)

を投げかけている。すなわち,現実の移動は,

前の状態仁のゑ依存しているわけではなく,む しろ,いくつかの移動チャンネルが数多く集ま ったものと考える方が妥当ではないかと,彼は 指摘している。言い換えれば,A地点→B地点 へと移動した人が,B地点→C地点へと移動を しようとする場合には,その人がB地点→C地 点へ移動する確率は,Bの状態における推移確 率にのゑ従うのではなく,Aの状態にも依存す ると考えられるかもしれない。具体的には,就 業機会を求めて徳島→大阪の移動を行なった人 が次の段階で移動を行なう際に,現実には,大

阪→奈良へと住宅を求める移動が行なわれたと

する。この大阪→奈良への移動を行なう確率は,

大阪の母集団の推移確率に従うと考えるよりも,

それ以前の状態,つまり徳島から移動を始めた ことにも影響を受けるだろう。確かに,この指

摘は十分考えられる。しかしながら,たとえば,

人口移動に伴って,ある情報が伝達されると想 定し,この情報が推移確率に従って移動すると 仮定する。すると,A地点→B地点の移動流に よって情報が伝達され,Aからの情報をうけた Bは,B地点→C地点への移動流によって情報 をCに伝達する。その場合には,Aから伝達さ

れた情報を,Bはすばやく集団内に均等に共有

することを暗黙裡に仮定している。それゆえ,

実際の移動主体がマルコフ性を満たすとは考え にくいが,(1)移動主体に伴い情報が伝達され,

(2)新しい集団(地域)に受け入れられた情報は

すぐにその集団内に等しく共有される,ことの 2点を仮定することによってマルーフ性は肯定 されうるであろう。具体例として以下でとりあ

げる人口移動の場合にも,求められた機能的距 離は,人口移動に要する時間というよりも,人

口移動に伴って伝達される情報の時間距離を示 すと考える方が,このマルコフ性の条件に合致 すると思われる。それゆえ,具体的な分析中で は,機能的距離を情報伝達の時間的距離として 取り扱ってゆくこととする。

第二の点(移動の大きさの相対性)は,機能的 距離の相対的大きさを考えることによって,地 点間の階層性と相互の結びつきを示す結節地域

が明らかになることを意味している。たとえば,

中心地の階層システム内の上位階層のU地点と その下位の階層のL地点があるとする。当然上 位階層のU地点は,L地点よりも空間的により 広い範囲の移動を伴い,その移動の全体量も多 いはずである。それゆえ,たとえU地点からL 地点への移動量とその反流のL地点からU地点 5)Stephenson,L、A,‘OnFunctionRegionsandIndirectFlows',Geogr.A〃αDsis・6,1974,pp・383-85.

-56-.

_`jil

(4)

機能的距離の性質について(神谷) 57

す距離行列,bはマルコフ連鎖モデルによって 求められた機能的距離行列とする。前者の場合 には,当然第1図aのように位置関係を確定す ることができる。しかし,後者の場合には不可 能である。けれども第1表bをある図形の軸上 への投影と考えることによって,二次元空間上 に表すことが可能である(第1図b)。しかし,

こうした投影の考え方も,次元数が増えるに従 い表現が複雑となり,同時に可能な配置の数屯 増え,確定することは困難になる。それゆえ,

以下の具体的な事例の分析についても,一般に 用いられているように,機能的距離行列を行ご

と,列ごとに分けて行なった。

への移動量が同じ大きさであっても,各々の全 体に占める割合は,L地点全体の移動量のうち に占めるL地点からU地点への移動の方がU地 点に占めるU地点からL地点への移動の割合よ

りも大きくなるだろう。式で示せば,

PDL>ら、

ただし

Mbz=MhUかつ〃か.>MZ.

またPUz=Mbz/M6.,BU=M五U/M力.

推移確率は,こうした行和ZPガノを1.とすj=1 る確率で表わされるプヒニめ,これをもとにして得 られる機能的距離も,相対的な規模の影響を最 初から含んでいることを意味する。

第三の特徴(機能的距離の非対称性)は,第二 の点と深い関係をもっている。われわれが機能 的距離をユークリッド空間上に表現できないの は,この非対称性のためである。次の第1表a,

bのような距離行列が与えられているとする。

第1表aはユークリッド空間上で対称性を満た

第1表仮想的な距離行列

3具体的事例

機能的距離の具体的な例として用いたのは都 道府県間の人口移動データである。

マルコフ連鎖モデルから平均第一到達時間を 求めるために用いるデータは,その条件として 閉システムを形成するものでなければならない。

なぜならば,平均第一到達時間とは,発地から 着地に到達する時間(ステップ数)の平均である ため,半開システムではその意味があいまいに なる。従来の研究では,この点が見逃されてき たように思われる。平均第一到達時間を求める

_|ABC

ABC 034 305 450 ABC ABC 132 211 341

Xc

第1図仮想的距離行列の二i火元平面上への表現

-57-

(5)

W、

:『ツ!

人文地理第33巻第1号(1981)

58

場合,この条件が満たされない,つまり開シス

テムの場合には,平均第一到達時間の計算に歪 承が生じるであろう。

上記の条件をおおむね満たす資料として,府 県間の人口移動量を用いた。計算手11項は,以下6)

に述べる通りである。まず,府県間の人口移動 のOD行列を推移確率に変換する。これは,OD 行列の各行の要素Mijをその行の行和軍雌ノ で割れば得iうれる。この推移確率行列Pの極限 行列Aを求めたのち,

Ⅲ=(I-z+czg)、

を計算することによって,平均第一到達時間が 得られる。ただしZは単位行列,Z=(1-(P7)

-A))-1,Cはすべての要素が1の行列,Dは Aの行ベクトルαの要素の逆数(1/αj)である 対角行列,Zagはzの対角行列である。この場 合,OD行列の対角要素,すなわち白県内での 滞留人口を考慮すべきか問題があるが,ここで は対角要素を0として求めた。参考のために,

対角要素に滞留人口を含めた機能的距離を算出 してふたが,その全体的なパターンは,対角要 素をOとしプt二場合と変わらなかった。8)

上記の手順によって求められた46×46の機 能的距離行列のうち,京都の行と列を例として 第2表に示した。階層性を示すものとして,平 均第一到達時間の対角要素である平均帰着時間 が用いIうれているので,これも表に加えた。さ9)

らに,京都についての機能的距離を基準化した

値をも示した。BrownandHortonや森荒ljL,

Zスコアの形に機能的距離を標準化している。

しかしここでは,基準化は次のような方法で行

なった。すなわち列ごとの最小値を1.とし

(つまりある他県からまつ先にその県に到達した時 間をLとし),それからさらにその着地に到達 するまでに,他の県からは何ステップ要するか という形で求めた。このようにして求めた理由 は,平均第一到達時間という,もともとの意味 をできるかぎり損わないようにするためである。

Zスコアに変換した場合,もとのデータのもつ 時間的な差異の絶対的な大きさが消えてしまう 難点がある。元来,平均第一到達時間は,行ご

とにも列ごとにも比較可能なはずである。それ ゆえ,このようにして基準化した値は,最初に いずれかの発地からある着地の県に到着した時 間を1.とすると,その他の発地からの移動が 到達するには,さらにそれよりどれほど多くの 時間が要するかを示していることになる。

全体的なパターンは,平均帰着時間を見るこ とで把握できる。一般に,機能的距離の大きさ は,行ごとに比較してふた時よりも,列ごとに 比較した時の方が,より似通った値をとる。す なわち,発地の県からゑた機能距離の方が,着 地から承た機能距離よりも,よく似たパターン を示す。平均帰着時間は,東京・神奈川・大阪

・埼玉・千葉・愛知・福岡・兵庫・北海道・静 岡・茨城の順に大きい。特徴的なことは,東京 周辺の県が上位に位置している点である。東京 周辺の県は東京からの(空間的)距離が小さく,

東京を発地とする人口移動量全体に占める,こ れらの県に向かう移動者の比率が相対的に高い ために,このような結果になったと思われる。

石)11の分析でも明らかなように,隣接性や距離10)

6)総理府統計局編姓民基本台帳人口移動報告』昭和50年度版による。ただし,ここでは結果は報告されていないが,

昭和30年度との比較も行なったため,沖縄県は省いた。

7)証明は,安田三郎・海野道郎『社会統計学』第二版,丸善,1977,289-295頁を参照。

8)滞留人口=(その県の人口-県外への移動人口)として求めた。滞留人口を含めた場合亨Mj=(その県の人口)と

なる。ただしMBJはf県からj県への移動者数。また,Hfの値はすべての府県について,0.95以上となる。したが って求められた平均第一到達時間Tzjは対角要素Tidの象が小さく他の要素は,滞留人口を含めない場合に比ぺ,非 常に大きな値となる。

9)森川洋,1978,注1)など。

10)石川義孝「戦後における国内人口移動」,地理評51-6,1978,433-50頁。

-58-

(6)

11口

機能的距離の性質について(神谷) 59

゜神奈川・埼玉・千葉の順で機能的距離は小さ く,これは平均帰着時間とほぼ同様の傾向であ る。これに対して京都への機能的距離は,滋賀

・福井・奈良・大阪・鳥取の順に小さい。こう した二つの異った機能的距離のパターンは,す べての府県について同様にふられる。上述した ように,こうした非対称の距離行列を同時に取 り扱う方法を,われわれは今のところもたない。

それゆえ,森蹄試ゑているように,機能的距

離行列に対して,主成分分析を行ごとと列ごと

第3表列についての主成分得点 第2表機能的距離行列の一部

鷲櫛|議縢|蕊

41.7 88.7 100.2 56.0 126.7

75866

■■■■■ 34444 11111

北海道青森 岩手宮城 秋田

6.1 12.5 13.5 12.9 9.9 50.4 51.2 51.5 51.3 51.3 42.5 92.2 105.0 60.1 129.8

138.5 72.7 45.6 78.8 94.3 14.7 14.8 14.5 14.6 14.4 11.8 10.2 7.3 9.0 10.6

形島城木馬

山福茨栃群

51.4 51.5 51.2 51.3 51.1 141.7

76.2 48.3 81.9 97.3

08866-208

0000雪9 U皿皿一ね蛆弱肥卯

J・爪■【‐】。、‐Jロ【U【H】Ru弘一肛蛆皿卯師一肥鮖顔肌匝

第3成分 0.023 -0.087 -0.087 -0.106

-0.072 第2成分

0.099

-0.016

-0.058

-0.085

-0.004 第1成分

-0.905 -0.821 -0.815 -0.834

-0.871

道森手城田

北青岩宮秋

402-76

果野一亀岡知重普 54280

92980 81815 70884 01000 ■●●●● 00000 ’一一一一69534 38971 00000 0●●●0 00000 ’’’一一形島城木馬 39433 62995 89888

0●●●● 00000 ’一一一一

山福茨栃群

【]

、‐】曰J白】曰

割阪→塵宙 58256 34218 00000

s●●●● 00000 一一一一

85109 70602 01013

●●●●● 00000 一一一一

02949 65662 99998

●●●●● 00000 ’’一一一

埼玉千葉

襄※嚢

Ⅱ】

232.8 179.4 75.3 46.9 79.8 8.6 10.3 9.5 11.0 11.4 21.6 20.0 7.0 10.2 10.2 45.3 46.2 47.0 47.7 48.0 鳥取島根

屡舅

山ロ

232.9 180.7 75.3 47.7 81.0

0.233 0.174 0.173 0.062 0.188 0.688

0.645 0.742 0.107 0.316

山川井梨野 0.045

0.057 0.299 0.794 0.732

富石福山長

195.2 127.2 104.5 189.3 25.6 9.7 10.1 10.2 11.9 9.8 15.0 16.5 12.2 10.3 10.2

徳島香川

鬘:

46.4 46.8 46.9 46.5 48.6 196.2 129.0 104.8 189.6 26.9

0.471 0.254 0.478 0.269 0.024 0.588

0.252 0.449 0.514 0.384

阜岡知重賀

0.334 0.744 0.359 0.627 0.706

岐静愛三滋

38888

56714’8

土戸氏詣炉大吉[

0.098 0.189 0.229 0.157 0.127 0.346

0.129 0.063 0.197 0.247 0.787

0.921 0.948 0.883 0.835

都阪庫良山

京大兵奈和

88

、C

D〔

0.286 0.277 0.382 0.281 0.093 0.039

0.063 0.098 0.218 0.302

取根山島ロ

0.582 0.598 0.845 0.731 0.768

鳥島岡広山

FD.:機能的距離

要因が府県間人口移動の大きな要因としてあげ られており,一般的にも,重力タイプの距離減

少関数が人口移動に対して良好にあてはまると

されている。それゆえ,隣接している県のもつ 機能的距離のパターンは,隣接していない,空 間的により遠くの県のもつ機能的距離のパター

ンよりも類似している。

京都の例を糸ると,京都からは,東京・大阪’

0.496 0.511 0.499 0.491 0.438 0.100

0.071 0.055 0.123 0.481

島川媛知岡

0.671 0.617 0.700 0.676 0.641

徳香愛高福

0.480 0.472 0.533 0.451 0.419 0.421

0.389 0.333 0.305 0.210

賀崎本分崎

0.615 0.665 0.722 0.743 0.737

佐長熊大宮

トイ

0.383 0.169

鹿児島10.747

-59-

(7)

人文地理第33巻第1号(1981)

60

にはやや高い正の得点をもち,中国・四国の各 県にはやや高い負の得点をもつ。しかし,全般 的に解釈は困難である。解釈の困難さの理由を 推測すると,おそらく,機能的距離自体がかな り抽象度の高い距離であることに原因があると 思われる。なぜなら,機能的距離はきびしい数 学的な仮定から導き出されたものであり,この 距離を既存の社会現象に照らしあわせるには,

より堅固な論理的整合性を必要とする。上記の 結果|ま,しかしながら,斎野・東が指摘してい12)

る人口移動の「東日本圏」・「西日本圏」に対応 する,府県間人口移動によって伝達される情報 の圏構造を示唆している。ただし,本研究の場 合,「東日本圏」・「西日本圏」は独立した次元 としてではなく,同一次元上の両極に対置され るものとして認められた。

に分けて行なった(第3表)。

行ごと(発地の県ごと)に見た機能的距離の相 立間のオ目関は,非常に高い値を示し,発地から11)

ふた機能的距離の分布は,すべての府県に共通 したパターンをもつことが明らかとなった。そ して,この分布パターンは,単一の成分から成 ると見なされた。このことは,次のことを意味 していると思われる。すなわち,国内の人口移 動はいくつかのサブシステムから形成されてい るのではなく,全体として-つにまとまった単

〔注10〕

一のシステムを形成していることであるプ石Ⅱ|

が類型化しているように,大都市圏・非大都市 圏の圏内・圏間にはさまざまな移動が考えられ るが,これらは相互に複雑に絡承合っており,

直接流の糸でなく間接流をも含めた移動を考え ると,こうした複雑な移動システムは,すべて の発地に対してよく似た作用を及ぼす。その結 果,同一の機能距離パターンが生じるのであろ

う。

列ごと(着地の県ごと)について主成分分析を 行なった場合には,固有値1.0以上の6つの成 分が検出された。このうち寄与率の大きい上位 3つの成分を第3表に示した。第1の成分は,

大阪・兵庫が高く西日本で正,東京・神奈川が 最も小さく東日本全体で負となっている。それ ゆえ,この成分は東京・大阪を中心とする東・

西日本の圏構造を示すと思われる。得点の絶対 値の小さい県は,東西日本の中間地帯と言える。

第2の成分は,東・西の圏構造のどちらにも影 響をうけていることを示し,第1成分で中間地 帯と見なされた地域に得点が高い。北陸・東海 地方でやや大きい正の,北九州でやや大きな負 の得点をもつ。第3の成分は,九州と東海地方

4今後の課題

機能的距離の具体的な適用は,これまで地域 区分の手法として用いられることが多かった。

しかし,この機能的距離をコミュニケーション

・ネットワークを通じた情報伝達の容易さの尺 度として考えることによって,さらに適用の範 囲を広げることができるだろう。しかし,その 場合には,情報の発生量や情報の損失も考慮に 入れる必要があると思われる。

〔付記〕本稿は昭和53年度卒業論文の一部を加 筆訂正したものである。終始御指導をいただいた 名古屋大学文学部地理学教室の諸先生方に深く感 謝致します。

本稿中の計算はすべて名古屋大学大型計算機セ ンターのFACOM-M200を利用して行なった。

(名古屋大学・㈲

11)

12) 相関係数はすべて0.99以上で主成分分析を行なう必要はなかった。

斎野岳廊・東賢次「わが国における都道府j1iL問人口移動のlMi造とその変化」,地理評51-12,1978,864-75頁。

-60-

(8)

機能的距離の性質について(神谷) 61

OnthePropertiesofFunctionalDistance:AnExampleof

InterTrefectualMigrationinJapan

HirooKAMIYA

Thepurposeofthispaperistoconsiderthecharacteristicsoffunctionaldistance derivedfromMarkovchainmodeLSofarfunctionaldistancehasbeenusedasone ofthetoolsforregionalization,butitspropertiesasadistancehavenotbeendiscussed enoughTheauthorusesinter-prefectualmigrationdatainJapantoobtainthe distancereferringtoexistingliteratures・Beforeproceedingtheanalysis,wereview themathematicalpremlsesofMarkovmodelandtheirimplicationsforgeographical study・Thesearel)considerationofbothdirectandindirectflows,2)relativeamount ofsuchflowsand3)non-reflectivity・Undersuchconstraints,weshouldaPply

functionaldistanceapproach,

Asaresult,Japaneseinter-prectualfunctionaldistanceisrevealedtohavefonow‐

ingfeatures・First,eachprefecture'sfunctionaldistance,ascomparedeachother regardingorlglnorrow,hasquitesimilarpattern,whichimpliesthatJapanasa wholeconsistsofonlyonesystemandhasnosubsystemsSecondly,east-andwest-

Japaninformationreglonsareidentified・Thetworegionsaresituatedonopposite

po1esoncommondimensionintermsofprincipalcomponent.

-61-

参照

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