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浸透性無機質剤によるコンクリートの表面改質効果について

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Academic year: 2022

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(1)

浸透性無機質剤によるコンクリートの表面改質効果について

西松建設㈱企画技術部 正会員 西田徳行・藤井利侑

日本

RCG㈱

冨田 豊・峰 直治

1.はじめに

コンクリート構造物の維持管理の重要性は,広く認識されつつある.コンクリート構造物の劣化要因とし ては,アルカリ骨材反応や骨材中の塩化物イオンなどコンクリートに内存する因子の他,物質移動の影響に よる中性化,塩分浸透,化学的浸食,凍害など因子がある.後者の物質移動よる劣化抑制にはコンクリート 表面の被覆や表面部の改質技術があり,長寿命化を目指した補修材料・工法に関する研究が進められている.

本書では,最近開発したナトリウム・カリウムシリケートを主成分にしたコンクリート表面改質剤とセラ ミックコーティング剤を用いたコンクリート表面改質工法の概要と改質効果について報告する.

2.工法概要

本工法の特徴は,主成分のナトリウム・カリウムシリケートをコン クリート(表面下 190mm 程度)に浸透させることであり,施工後にクラ ックが発生した場合でも,水によりコンクリート内部の水酸化カルシ ウムと本改質剤が反応し,防水・劣化防止保護層を形成するクラック 自己補修が可能である.また,常温硬化型セラミックコーティング剤 と組み合わせて使用することで,結露防止,防カビ・抗菌,静電気防止 などの効果を発揮する.本工法では,防水・劣化防止効果を長期間発 揮できるため,高耐久なコンクリート構造物とライフサイクルコスト の低減が実現できると考える.施工フローを図‐1 に,改質剤の屋上 床面への塗布状況を写真‐1に示す.

START

下地処理

(コンクリート面洗浄、等)

コンクリート表面改質剤の 吹付けまたは塗布

結露防止,静電気防止 防カビ・抗菌,等

セラミックコーティング剤 の塗布

END NO

YES 低水圧による浸透散水

低水圧による定着浸透散水 と塗布面のデッキブラシ擦洗い

乾燥(夏:30分,冬:2時間程度)

乾燥(4~24時間程度)

乾燥(4~24時間程度)

コンクリート表面改質剤の 吹付けまたは塗布

図‐1 施工フロー図

①下地処理:コンクリート面を洗浄(高圧散水等で,油汚れ,埃,レイタ ンス等を除去)し,ジャンカなど大きな欠陥は必要に応じて補修する.

②コンクリート表面改質剤の吹付けまたは塗布:改質剤原液を水で 2 倍に希釈して,コンクリート表面に均一に吹付けまたは塗布する.

塗布後は,塗布面を乾燥(目安: 夏期は 30 分,冬期は 2 時間)させる.

③浸透散水:散水用ホースで充分な量を低圧で 1m2当り 0.5~10 ㍑程 度散水する.

④コンクリート表面改質剤の吹付けまたは塗布:4~24 時間後に 2 倍 希釈の改質剤を再度,塗布する.

⑤定着浸透散水:2 回目の塗布後,数時間~24 時間以内(定着後)に,

さらに低圧散水を行い,デッキブラシ等で塗布面を擦り洗いする.

⑥セラミックコーティング剤の塗布:コンクリート面の結露防止,静 電気防止,防カビ・抗菌が必要な場合は,セラミックコーティング 剤を塗布する.

3.コンクリートの表面改質・防水剤比較と試験結果 (1) 改質・防水剤の比較

コンクリートの表面改質・防水剤として,代表的な材料の特徴を比較 写真‐1 屋上床面への塗布状況 したものを表‐1に示す.本改質剤は,浸透性で無機質のケイ酸ナトリウムとケイ酸カリウムを主成分とした キーワード コンクリート,表面改質,無機材料,耐久性,浸透性

連絡先 〒105-8401 東京都港区虎ノ門1-20-10 西松建設(株)企画技術部企画技術課 TEL:03-3502-0377 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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表‐1 コンクリート表面改質・防水剤の比較

改質(防水)剤 長所 短所 備考

エポキシ系 コンクリートのひび割れ注入剤等に使用さ

れる. 紫外線に弱く,柔軟性に欠ける. 有機系バインダー使用.

ラテックス系 表面に塗布することで,コンクリートのひび

割れを防ぐ. 気温の変化,塩素に弱い. 有機系バインダー使用.

塩素化ゴム系 比較的湿度に強い. 紫外線に弱く,経時的に汚れ易くなる. 有機系バインダー使用.

ポリウレタン系 水,紫外線に強い. 湿った面には塗布できない. 有機系バインダー使用.

シロキサン系

低粘度の液体で,コンクリート細孔の表面部 分に炭化水素が形成され,水分の浸透を防 ぐ.浸透しやすい.

湿度の高いコンクリート,気温の変化,

紫外線に弱い.揮発しやすい.

ケイ素,酸素,水素の化合物 で,SiO 結合をもつものの総 称.有機系バインダー使用.

シラン系

低粘度の液体で,コンクリート細孔の表面部 分に炭化水素が形成され,水分の浸透を防 ぐ.揮発しにくい.

湿度の高いコンクリート,気温の変化,

紫外線に弱い.浸透しにくい.

SinH2n+2をもつ水素化ケイ素 の総称.有機系バインダー使用.

ケイ酸ナトリウム

カルシウムと反応することで,ケイ酸カルシ ウム水和物のゲルを形成する.通常のコンク リートに浸透し,防水効果が向上する.

ゲル化反応が早く,浸透性が小さい. 無機系バインダー使用.

ケ イ 酸 ナ ト リ ウ ム

/ケイ酸カリウム

コンクリート中のカルシウムと反応するこ とで,防水保護層を形成する.ケイ酸カリウ ムの添加により耐熱性が高い.

材料の製造工程が複雑 無機系バインダー使用.

もので,ケイ酸ナトリウムのみ を主成分としたものよりも耐熱 性が向上するとともにカルシウ ム分の溶出を抑え,安定した状 態を保持することができる.

表‐2 コンクリート表面改質の効果

試験項目 試験方法 含浸あり 含浸なし 考 察 備 考

透水試験 アウトプット式 0.04ml/h(平均値) 0.12ml/h(平均値) 1 時間当りの流出量(経過時間 360~384h) は,含浸あり試験体が 1/3 となった 凍結融解試験 JIS A 6204 88%(平均値) 84%(平均値) 含浸あり試験体は,含浸なし試験体より

も良い結果となった

300 サイクル時の 相対動弾性係数 塩分量 JCI-SC4 0.08%(平均値) 0.10%(平均値) 含浸あり試験体は,含浸なし試験体より

も良い結果となった

塩化物イオン浸透深さ 0.03mm(平均値) 0.40mm(平均値) 含 浸 あ り 試 験 体 は , 含 浸 な し 試 験 体 の 1/10 程度の値となった

表‐3 既設コンクリートの表面強度(セラミックコーティング剤)

試験結果

試験項目 単位

未加工面 加工面 評 価

シュミットハンマー強度 N/mm2 40.4 53.8 13.4N/mm2(33%)の強度増進 表面硬度 鉛筆硬度(H) 2~3 9 以上 表面硬度が 3 倍以上に増進

写真‐2 コア抜き状況 写真‐3 コーティング剤塗布状況 (2) 本工法の効果

本工法による効果として,表‐2 に表面改質剤 塗布後の透水試験,凍結融解試験,塩分量(全塩 分)及び塩化物イオン浸透深さ試験の結果を示す.

これより,改質剤を含浸させた供試体は,含浸な しの供試体に比べて透水量が 1/3,塩化物イオン 浸透深さが 1/10 と良くなったが,凍結融解及び塩 分量での改善効果は少なかった.表‐3 に,トン ネル内覆工コンクリートの補修に本工法を適用し

表‐4 既設コンクリートの圧縮強度(セラミックコーティング剤)

試験結果

未加工供試体 加工供試体 評 価

圧縮強度 41.3N/mm2 44.8N/mm2 3.5N/mm2(8.5%)の強度増進

た際の表面強度試験結果を示す.シュミットハンマー強度はセラミックコーティング剤を塗布することで 30%程度増す結果となった.さらに,約 70 年前に施工されたコンクリート橋脚部から採取したコア供試体(写 真‐2,3)に本工法を適用した場合の圧縮強度試験結果は,表‐4に示すように 8%程度増強した.

4.まとめ

限られた試験結果ではあるが,本工法を適用することでコンクリートの耐久性が向上することを幾つかの 試験結果から確認できた.今後,コンクリート表面部の強度増強が外部からの物質移動を伴う劣化現象にどの ように影響するかを明確にする必要があると考える.なお,浸透性のコンクリート表面改質剤を用いた試験方 法は確立されていないのが現状であり,試験方法の検討も含めてデータを蓄積して行くことが必要である.

土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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