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緊張材に炭素繊維を用いたプレキャスト PC 床版の健全性調査

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Academic year: 2022

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緊張材に炭素繊維を用いたプレキャスト PC 床版の健全性調査

港湾PC構造物研究会 正会員 ○村井 伸康 港湾PC構造物研究会 正会員 中山 良直 港湾PC構造物研究会 正会員 網野 貴彦

(一財)沿岸技術研究センター 正会員 由井 陸粋

1.はじめに

岸壁,防波堤,桟橋などのコンクリート港湾施設は,塩分雰囲気にあり,外部からの塩分の浸透による内部 鋼材の腐食が進行するなど,非常に厳しい環境に置かれている.また,高度経済成長期に集中的に整備された ことなどから,今後,劣化の進行による安全性の低下や補修補強費用の増大が懸念され,耐久性を高める材料 の開発が切望される.このような背景の中,平成4年度の旧運輸省第四港湾建設局管轄の北九州港葛葉地区に おける岸壁改良工事の一部において,緊張材に炭素繊維を用いたプレキャストPC床版(以下,CFRP床版と 略す.)が試験的に採用された.このCFRP床版は,炭素繊維緊張材を用いてプレテンション方式で製作され た3枚のCFRP床版を,現場において,炭素繊維緊張材を用いたポストテンション方式で連結し,場所打ちコ ンクリートと一体化して合成床版としたものである.また,この床版は,施工から5年経過した時点で,目視 による外観調査を行い,施工から10年を迎えた時点においては,目視および赤外線カメラによる外観調査を 行っているが,ひび割れ等の変状は確認されていない.今回は,施工から20年が経過したので,目視調査に 加え,載荷試験等を行い,健全性の確認を行った.

2.建設 20 年後の RC 床版取替えについて

北九州港葛葉地区桟橋は,直杭式横桟橋構造で,昭和40 年から41年にかけて施工されたものである.当初は現場打 ちのRC床版であったが,建設20年後には,梁および床版 のコンクリートのひび割れ,鉄筋腐食および鋼管杭の腐食 により,更新する必要があった.

平成2年度から4年度にかけて,梁の断面修復と,床版 の更新を行った.床版は,プレキャスト RC 床版とし,先 に述べたように,一部において CFRP 床版を試験的に採用 した.このCFRP床版に用いた炭素繊維緊張材は,炭素繊 維を多数束ね,それを樹脂により結合させ棒状に成形した 複合材料である.図-1に桟橋の構造概要,図-2に床版構 造概要,図-3にCFRP床版構造を示す。

キーワード CFRP,緊張材,桟橋,劣化,維持管理,調査

連絡先 〒104-8215 東京都中央区晴海 2 丁目 5 番 24 号 (株)ピーエス三菱 技術本部 TEL03-6385-8052

4700

3800

98.5 38.

4100

5000

場所打ち部

FRP床版部

目地コンクリート D19(SD345)

スパイラルCFCC CFCCより線φ12.5

CFCCより線φ12.5 グリットCFCC

(定着端のみ)

CFRP 床版部

図-3 CFRP 床版構造図

L.W.L. 0.00

φ=700mm

CFRP床版 t=120mm 鋼管杭

+3.85 H.W.L. +1.30

1.5 5.0 5.0 4.0

図-1 桟橋の構造概要図

図-2 床版構造概要図

プレキャストRC 現場打ち CFRP

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑557‑

Ⅴ‑279

(2)

3.調査概要と結果 3.1 目視調査

(1)調査概要

平成4年度の改良工事から10年後の平成15年(10年 前)に,前回のCFRP床版劣化調査が行われた.今回の調 査は,改修工事から20年が経過して,前回調査時と同程 度の健全性を保っているか,あるいは変状が生じているか を比較検証することが目的である.CFRP床版の1区画に,

簡易足場を設置して近接目視を行った.

(2)調査結果

施工から 20 年後の CFRP 床版の下面の状況は,写真- 1のように,10 年前と同様,ひび割れの発生や錆汁の滲 出等はなかった.建設から20年が経過しても健全であっ た.

3.2 載荷試験

(1)調査概要

本載荷試験は,重荷重の載荷による実構造物の変位や ひずみを計測し,解析値と比較することで,CFRP床版 上面と場所打ち部との接合面の剥離などの内部劣化を,

間接的に推定することが目的である.事前解析では,載 荷荷重190kNにおける床版中央の鉛直変位は0.20mmで あり,引張応力度は,長手方向で1.59N/mm2,短手方向 で1.49N/mm2であった.

(2)調査結果

CFRP床版の中央部にアウトリガーが位置するようク レーンを据付け,荷重の除荷・再載荷を数回繰返し,床 版中央の鉛直変位およびひずみ値の履歴を記録した.

CFRP 床版の中央部で計測した荷重-変位履歴図を図-4に示す.試験で得られた測定値は,鉛直変位が平均 約0.23mm,ひずみが短手方向,長手方向ともに約55μ程度,応力度換算で1.8N/mm2との結果となった.ま た,履歴曲線も概ね線形の挙動を示した.

今回,載荷試験結果と解析値に大きなかい離はなく,CFRP床版の内部ひび割れや場所打ち床版との剥離な どの内部劣化は生じていないと判断できる.

4.おわりに

今回の調査では,改良工事後20年が経過したCFRP床版の目視調査,載荷試験を行った.目視調査では,

CFRP床版本体の下面にはひび割れ等の変状は無く,載荷試験においては,CFRP床版の剛性低下は確認され なかった.以上より,緊張材に炭素繊維を用いたプレキャストPC床版の長期にわたる有用性を確認すること ができたと考える.

謝辞

本調査は,(一財)沿岸技術研究センターと港湾 PC 構造物研究会の共同研究として実施したものである.

調査の実施にあたり助言を頂いた,東京工業大学の大即信明教授,西田孝弘助教に心より御礼申し上げます.

また,調査にご協力を頂いた,国土交通省 九州地方整備局 北九州港湾・空港整備事務所,北九州市 港湾 空港局港営部 港湾事務所,(独)港湾空港技術研究所および施設周辺の企業の方々に厚く御礼申し上げます.

写真-1 CFRP 床版下面の状況

0  50  100  150  200 

0.00 0.10 0.20 0.30

載荷荷重(kN)

鉛直変位(mm) 図-4 荷重-変位曲線

(今回)

(10年前)

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

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参照

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