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シラン系表面含浸材の含浸層の改質効果の評価

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Academic year: 2022

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シラン系表面含浸材の含浸層の改質効果の評価

金沢工業大学大学院    正会員    ○堀田  穣  デーロス・ジャパン    非正会員    久保田  憲

金沢工業大学    正会員      宮里  心一

1.目的  

  近年,コンクリート構造物の予防保全などを目的とし た維持管理技術の一つとしてけい酸塩系ならびにシラン 系表面含浸材が注目を集めている。

ここでシラン系表面含浸材は,コンクリート表層に水 および塩分等の劣化要因物質の浸透を妨げる含浸層を形 成し,耐久性を向上させる効果が認められている 1)。し かしながら,実環境下に供用されるコンクリート構造物 の場合,紫外線およびスケーリング等によりコンクリー ト表層部が経年劣化し,含浸層の性能が損なわれる可能 性が考えられる。このことから,含浸層の性能ならびに 長期耐久性を明らかにする必要性があり,そのためには 含浸層の物質透過に対する抵抗性について検討を行うこ とが重要であると考えられる。

以上を踏まえ本研究では,シラン系表面含浸材の含浸 層の性能を,含浸層の深さとその深さ方向における比抵 抗および吸水率により評価した。

2.実験手順  2.1  供試体概要 

供試体は,表1に示す配合のモルタルを用い,φ50×10 0mmのモールドに打設後,材齢7日目に脱型し,材齢28 日目まで気中(温度 20±3℃,湿度 40±10%)にて養生 した。その後,供試体の打設面に表2 に示すシラン系表 面含浸材を塗布して28日間にわたり気中にて静置した。

比抵抗および吸水率の評価を行う供試体については,

含浸材塗布後28日目以降に,含浸材塗布面から鉛直方向

に0,2,4,6,および8mmの深さまでサンダーを用い

て切削した。また比較のため,シラン系表面含浸材を塗 布していないブランク供試体においても,2および8mm の深さまでサンダーで切削し,比抵抗および吸水率を評 価した。なお供試体の数は,各試験の水準ごとに3 体と した。

2.2  含浸層の深さの測定 

  含浸材塗布後28日目に円柱供試体を割裂にて2分割

したのち,約1 分間水に浸漬し目視により撥水が確認出 来る深さを求め,これを含浸層の深さとした。なお含浸 層の深さの計測は,供試体の中央と中央から両側へ15mm ずらした位置の計3か所をノギスにて測定した。

2.3  比抵抗の測定 

  図1 に示すように切削した円柱供試体の含浸材塗布面 とその対面にφ50mm の銅板に湿ったティッシュを巻い たものを電極として取り付け,周波数応答解析装置によ

り周波数10kHzの交流による電気抵抗を求めた。そして

電気抵抗を,供試体の断面積や電極間の距離などから比 抵抗に換算2)した。

2.4  吸水率の測定 

  切削した円柱供試体の含浸材塗布面を除く全ての面を エポキシ樹脂で塗布した後,含浸材塗布面が底になるよ うに3日間にわたり水中に浸漬させ吸水試験を行い,JS

CE-K571-2005を参考に吸水率を算出した。なお水頭の高

さは,含浸材塗布面から約10mmとした。

     

         

       

図 1  電気抵抗の測定の概略図   キーワード  シラン系表面含浸材,含浸層,比抵抗,吸水率 

  連絡先      〒924-0838  石川県白山市八束穂3-1  地域防災環境科学研究所  TEL076-248-1100 表 1  モルタルの配合  W/C

(%)

Air

(%) S/C 単位量(kg/m3

W C S

55 4 3 261 474 1422

表 2  シラン系表面含浸材 

主成分 塗布量

(g/m2) 名称 濃度(%)

アルキルアルコキシシラン 98.5±0.5 350

周波数応答解析装置

リード線

万力で固定

絶縁した木板 濡れティッシュを巻いた銅板

供試体 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

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Ⅴ‑013

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3.実験結果 

3.1  含浸層の深さ 

図2 にシラン系表面含浸材の個々の供試体の全測点に おける含浸層の深さとその平均値を示す。供試体の平均 値ごとに比較すると,約9.0mmとほぼ同等となった。し かしながら,全測定点における値を比べると最大値は 10mm程度,最小値は8mm程度と約2mmの差が生じた。

このことから,比抵抗および吸水率を評価した供試体に おいて,確実に含浸層が形成している深さ範囲は8mm未 満であると考えられる。

3.2  比抵抗および吸水率 

  図3および図4にシラン系表面含浸材の切削深さと比 抵抗および吸水率の関係を示す。含浸材供試体において 切削深さが6mm以内の場合には,比抵抗はブランク供試

体の約4倍の1.4kΩ・m程度,吸水率はブランク供試体

の約3%の0.06%程度となり,いずれも高い改質効果が認

められた。なお供試体ごとの値にばらつきが少なく,比 抵抗,吸水率ともに一定の値が求まる傾向が認められた。

  切削深さが8mmの場合においては,供試体ごとにおけ る値にばらつきが認められ,比抵抗では含浸材供試体 3 体中2 体においてブランク供試体と同等の値に低下し,

吸水率においてもブランク供試体よりも低いものの増加 が認められた。これは3.1に記したように,8mmを超え た深さ範囲においては含浸層が形成してない部分が存在 すること,また含浸層が形成していても層が薄く,電気 および吸水に対して十分に抵抗することができないこと によるものと考えられる。

これらのことからシラン系表面含浸材の含浸層は,表 層部において劣化が生じたとしても,劣化していない含 浸層の厚みが十分にある場合(本研究においては3mm程 度)は,電気抵抗性および吸水抵抗性は顕著に低下しな い可能性が高いといえる。

  以上より本研究に用いた評価方法において,含浸層の 深さごとにおける電気抵抗性および吸水抵抗性を確認す ることができ,含浸層が損失した場合においては低下し た性能を定量的に評価することができた。

4.まとめ 

①シラン系表面含浸材の含浸層の深さごとにおける電気 抵抗性および吸水抵抗性を定量的評価できた。

②劣化による含浸層の損失が生じたとしても,含浸層の 厚みが十分にある場合は,電気抵抗性および吸水抵抗 性は顕著に低下することはないと考えられる。

                                                                   

参考文献 

1) 森井 直治,久保田 憲,林 承燦,宮里 心一:シラ ン系表面含浸材の性能評価に関する研究,コンクリ ート工学年次論文集,Vol.32,No.1,pp.1625-1630,2010 2) 鹿島 孝之,河野 広隆,渡辺 博志,田中 良樹:コ

ンクリートの電気抵抗による耐久性評価の基礎的研 究,コンクリート工学年次論文集,Vol.21,No.2,

pp.895-900,1999 7 8 9 10 11

含浸層の深さ(mm)

1点目 2点目 3点目

4点目 5点目 6点目

No.1 No.2 No.3

(8.9) (9.0) (9.1)

平均値

図 2  各供試体における含浸層の深さと平均値

図 4  吸水率と切削深さの関係

   :含浸材(個別)

点線:含浸材(平均)

×   :ブランク(個別) 実線:ブランク(平均)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

吸水率(%)

0      2    4    6    8    10 表面からの切削深さ(mm)

図 3  比抵抗と切削深さの関係

○   :含浸材(個別)

点線:含浸材(平均)

×   :ブランク(個別) 実線:ブランク(平均)

0.0 0.4 0.8 1.2 1.6

比抵抗(kΩ・m)

0 0     2 4 6 8 2    4    6    8 10   10 表面からの切削深さ(mm)

土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

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参照

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