研 究 ノ ー ト
マ ン デ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル に お け る 政 策 効 果
佐 久 間 敬
は じ め に
マ ンデ ル 〔7〕 と フ レ ミ ング 〔3〕 は,ケ イ ンズ 的 な マ ク ロ ・モ デ ル に資 本 移 動 性 を導 入 して マ ク ロ分 析 を展 開 した。 この マ ンデ ル コフ レ ミン グ ・モ デ ル に よ る と資 本 移 動 が 完 全 な場 合 に は,財 政 政 策 は無 効,金 融 政 策 の み が 有 効 と い う結 論 が導 か れ る。 こ の よ う な極 端 な結 論 が 導 出 され るマ ンデ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル で は あ る が,今 日に お い て も大 き な影 響 を もって い る。 この 小 論 の 目的 は,マ ンデ ル=フ レ ミン グ ・モ デ ル の特 徴 を 明確 に し,政 策 効 果 につ い て 検 討 す る こ とで あ る 。
1.マ ン デ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル
マ ンデ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル は 次 の よ う な仮 定 が な さ れ る1)。
(1)小 国 の 仮 定
(2)資 本 移 動 の 完 全 性
(3)為 替 レ ー トの 静 学 的 予 想 (4)物価 水 準 の 一 定
使 用 さ れ る 記 号 の 意 味 は 次 の と お りで あ る 。Y=国 民 純 生 産,π=自 国 通 貨 建 て の 為 替 レ ー ト,πe=予 想 為 替 レ ー ト,r=自 国 利 子 率,r*・=外 国 利 子 率, M=貨 幣 供 給 量 。
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消 費 関 数 を C=C(Y)0<CY<1 と し,投 資 関 数 を
1=1(r)1・<0 と す る 。 貿 易 収 支 を
B;B(Y,π)BY<0,Bπ>0
で 表 わ し,政 府 支 出 をGと す れ ば,財 市 場 の 均 衡 条 件 は Y=C(Y)十1(r)十G十B(Y,π)
で 示 す こ とが で き る 。 貨 幣 に 関 す る 需 要 関 数 を
Md=L(Y,r)LY>0,Lr<0
とす れ ば,貨 幣 市 場 の 均 衡 条 件 は M・=L(Y,r)
で 示 す こ とが で き る 。
資 本 移 動 が 完 全 で,両 国 の 債 権 が 完 全 代 替 で あ れ ば,金 利 裁 定 式 は
πe一 π
r・=r*十
π
れば
r=r*
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
で あ らわ され る。 現 行 為 替 レー トが今 後 も持 続 す る とい う静 学 的 予 想 を仮 定 す(8)
と な る 。 し た が っ て,マ ン デ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル は次 の よ う に ま と め る こ と が で き る2)。
Y=C(Y)十1(r)十G十B(Y,π) M=L(Y,r)
r=r*
財市場の均衡条件 貨幣市場の均衡条件 金利裁定式
II.財 政 ・金 融 政 策 の 効 果
マ ンデ ル=フ レ ミ ング ・モ デ ル を用 い て,変 動 相 場 制 にお け る財 政 政 策 と金 融 政 策 の効 果 を検 討 し よ う3)。
政 府 支 出 の拡 大 は,総 需 要 の増 加 を もた ら し,国 内純 生 産 は増 加 す る。 こ の た め 貨 幣 需 要 が増 加 し,貨 幣 供 給 量 が 一 定 な の で,自 国利 子 率 は上 昇 す る。 こ の 自国利 子 率 の 上 昇 に よ り資 本 が 流 入 し,為 替 レー トの 自国通 貨 高 とな る。 こ の た め純 輸 出 は減 少 す る。 こ の減 少 は 自国 利 子 率 が外 国利 子 率 に等 し くな る ま で続 く。 この た め 国 内純 生 産 は以 前 の 水準 に戻 る。
貨 幣供 給 量 の増 加 は,自 国利 子 率 を低 下 させ,資 本 の流 出 が生 じ,為 替 レー トの 自国 通 貨 安 と な る。 この ため 純 輸 出 が増 加 し,総 需 要 が拡 大 し,国 内純 生 産 の増 加 を もた らす 。 この結 果 貨 幣 需 要 が 拡 大 し,自 国 利 子 率 を上 昇 させ る。
この 上昇 は 自国利 子 率 が も との 水 準 に戻る まで 続 く。
以 上 の 効 果 につ い て,図 を用 い て説 明 しよ う4)。(8)式 を(4)式お よ び(6)式に代 入 す る と
YニC(Y)十1(r*)十G十B(Y,π)(9) M==L(Y,r*)㈹
とな る。
(9)式 を満 すYと πの 組 合 せ の 直 線 をXX線 と よぶ 。 πの 上 昇(為 替 レー トの 自国通貨安)は 純 輸 出 を拡 大 させ,Yの 増 加 とな るの で,tXX線 は右 上 りとな る 。
㈹ 式 を満 すYと πの組 合 せ の 直 線 をLL線 と よぶ 。 貨 幣 供 給 量 が 一 定 で あ り, 貨 幣 需 要 が π に依 存 しな い の で,LL線 は垂 直 とな る。
政 府 支 出 の拡 大 は,XX線 を右 方 に シ フ トさせ,均 衡 点 はEか らE'に 移 る。
πは下 落 す るがYに は変化 が な い こ とが わ か る(図1参 照)。
貨 幣供 給 量 の増 加 は,LL線 を右 方 に シ フ トさせ,均 衡 点 をEか らE"点 と な り,Yと πは増 加 す る(図2参 照)。
こ こで,財 政 政 策 と金 融 政 策 の効 果 につ い て 数 学 的 に確 認 して お こ う。(9)式 と㈹ 式 を全 微 分 す る こ とに よ り
CY十BY‑1B.dY‑dG
=⑳ LYOdπdM
が得 られ る。⑳ 式 よ り,財 政 ・金融 政 策 の効 果 はつ ぎの よ う に な る。財 政 政 策 の効 果 は,dM==Oを 代 入 す る こ とに よ り
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0
π
図1
Y 0
π
図2
Y
dY ・=O dG
dπ1 =一<O dGBπ と な る 。
金 融 政 策 の 効 果 は,dG=0を 代 入 す る こ と に よ り dY1 =>O
dMLY
dπCY‑1十BY=>O dM‑‑LyBπ と な る 。
以 上 の こ と か ら,マ ンデ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル に お い て は,金 融 政 策 は 有 効 で あ る が,財 政 政 策 は 効 果 が な い と の 結 論(い わ ゆ る 「マ ンデ ル ー フ レ ミング 命 題5)」)が え ら れ た 。
皿.為 替 レ ー ト予 想 の 導 入
為 替 レー トの予 想 が 導 入 され た場 合 に マ ンデ ル=フ レ ミン グ命 題 が 成 立 す る
か ど うか検 討 して み よ う6)。
予 想 為 替 レ ー トは現 在 の為 替 レー トの 関 数 で あ り,予 想 の弾 力 性 は短 期 的 に は1よ り小 で あ る と仮 定 す る。 こ の こ と に よ り,π が 上 昇 す れ ばrが 低 下 す る こ と に な る7)。
為 替 レー ト予 想 が 導 入 され た場 合 に は,XX線 とLL線 の傾 きが 変化 す る。
XX線 は前 よ り平 坦 に な る。 そ の 理 由 は,π の 上 昇 が純 輸 出 の増 加 を もた らす と同時 にrの 下 落 に よ る投 資 の増 大 が 加 わ るか らで あ る。
LL線 は右 下 り とな る。 そ の 理 由 は,π の 上 昇 がrを 下 落 させ,貨 幣 需 要 の 増 加 を もた らす の で,貨 幣 供 給 量 が 一 定 の も とで はYの 減 少 が 貨 幣 市場 に均 衡
を もた らす か らで あ る。
こ こで,XX線 とLL線 を用 い て財 政 政 策 と金 融 政 策 の 効 果 をみ て み よ う。
政 府 支 出 の 拡 大 は,XX線 を右 方 に シ フ トさせ,Yの 増 加 と πの 下 落 を もた らす(図3参 照)。
貨 幣供 給 量 の増 加 は,LL線 を右 方 に シ フ トさせ,Yの 増 加 と πの上 昇 を も た らす(図4参 照)。
0
π
図3
Y 0
π
図4
Y
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以 上 か ら明 らか な よ うに,為 替 レー ト予 想 を導 入 した場 合 に は マ ンデ ル=フ レ ミ ング命 題 は成 立 しな くな る8)。
注
1)マ ン デ ル=フ レ ミ ン グ ・モ デ ル の 詳 細 な 説 明 は 奥 村 〔8〕,久 保 田 〔5〕 を 参 照 。 2)こ の モ デ ル は 基 本 的 に はMundell〔7〕 に よ っ て い る が,マ ン デ ル=フ レ ミ ン グ ・
モ デ ル と よ ば れ る 。 こ の よ う な 定 式 化 はDornbusch〔1〕 を 参 照 。 資 本 移 動 が 不 完 全 な 場 合 に は(8)式 の か わ り に,
B(Y,π)十K(r)=0
が 加 わ る 。 た だ しK(r>は フ ロ ー と し て の 資 本 流 入 で あ る 。 こ の 式 の 意 味 は B(Y,π)=‑K(r)
と書 き か え る こ と に よ り明 ら か に な る 。 す な わ ち,左 辺 は 純 輸 出 で あ る か ら,資 本 の 純 流 入 で あ り,右 辺 は 負 の 資 本 流 入 で あ る か ら 資 本 流 出 で あ る 。 し た が っ て,為 替 レ ー ト決 定 の フ ロ ー ア プ ロ ー チ で あ る こ と が わ か る(詳 し く は 鬼 塚 〔9〕,須 田 〔10〕
を 参 照)。
3)Dornbusch=Fischer〔2〕,深 尾 〔4〕 を 参 照 。 4)奥 村 〔8〕 を 参 照 。
5)久 保 田 〔5〕 を 参 照 。
6)Dornbusch〔1〕,奥 村 〔8〕 を 参 照 。 7)仮 定 は 次 の よ う な 数 式 で あ ら わ せ る 。
π・=f(π)
dπeπ
た だ し0≦ 一 一 くl
dπ πe
この式 を πで微分す る と
慕 一f十1[誓 ÷‑1]<・
と な り,π の 上 昇 はrの 低 下 と な る こ と が わ か る(奥 村 〔8〕 を 参 照)。
8)Rodriguez〔6〕 ら は,長 期 に お け る 財 政 ・金 融 政 策 の 効 果 を 分 析 し た 。 こ の 場 合 に も マ ン デ ル ー フ レ ミ ン グ 命 題 は 成 立 し な い 。
参 考 文 献
〔1〕Dornbusch,R.,ExchangeRateExpectationsandMonetaryPolicy,」 碗 γπαJof InternationalEconomics,Vol.84,1976.
〔2〕Dornbusch,R.andS.Fischer,Macroecnomics(4thed.),McGraw‑Hill,1987.(廣
松 毅 訳 『マ ク ロ 経 済 学(上)(下)』 マ グ ロ ウ ヒ ル,1989年)。