奈良教育大学学術リポジトリNEAR
称賛・叱責と知能および学業成績の関係
著者 玉瀬 耕治
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 19
ページ 125‑130
発行年 1983‑03‑23
その他のタイトル The Effects of Parents' Praise‑Reproof on Children's Intelligence and Academic
Achievement )
URL http://hdl.handle.net/10105/6556
称賛・叱責と知能および学業成績の関係*
玉 瀬 耕 治州
(心理学教室)
これまでの研究で、われわれは、子どもからみた親の称賛・叱責の類型を簡単な質問によって とらえ、それらの類型と子どもの種々の特性との関係について分析してきた(玉瀬,1979a,ユ979b,
1981;玉瀬・藤田,ユ982)。その結果、親がよくほめよく叱るRW型かよくほめるがあまり叱ら ないR N型の場合の方が、よく叱るがあまりほめないNW型の場合よりも、学習意欲などの学力 向上要因がすぐれていることが示された。また、親と子の親密度が高い場合の方が、それが低い 場合よりも上に述べた傾向が強いことも示唆された。
しかし、親の称賛・叱責と子どもの知能や学業成績との関係については、まだ十分調べられて いない。本研究は、これらの関係を明らかにするために行われたものである。称賛・叱責類型の 出現頻度については、従来の研究で次のような傾向が見られる。両親ともRW型(よくほめよく 叱る)がもっとも多く、NN型(ほめも吃りもしない)がもっとも少ない。母親では、RW型に 次いでNW型(よく叱るがあまりほめない)が多く、R N型(よくほめるがあまり叱らない)が それに次ぐ。父親では、RN型とNW型がほぼ同程度である。玉瀬・藤田(1982)によって、こ れらの類型は称賛・叱責をより具体的な場面でとらえた場合とも一致することが示された。また、
称賛の量は学年が進むにつれて減少し、逆に叱責の量は学年とともに増加する傾向がみられた(
母親のみ)。 したがって、同じRW型であっても、子どもが2年生の場合と6年生の場合では、
称賛・叱責の量はかなり異なると考えられる。
称賛・叱責の類型と知能および学業成績の関係を調べる際にも、低学年児と高学年児で同じ傾 向がみられるかどうかは興味のある問題である。
方 法
調査対象 奈良県磯城郡川西町の小学校の児童397名が調査対象として用いられた。これら の児童は、玉瀬・藤圧1(ユ982)の調査対象者と同一であり、そこで得られた両親の称賛・叱貢の 類型と別に得られた知能得点および学業成績との関係が分析された。各類型ごとの人数は、表1 および表2に示されている。NN型は人数が少ないので除外されている。
調査内容 ω称賛・叱責の調査 両親の称賛・叱責の類型を調べるために、次の質問を行
った。
*The Effects of Parents Praise−Reproof on Chi1dren s Inte11igence and Academic
Achievement)
**Koii Tamase(Department of Psychology,Nara University of Education,Nara)
あなたのお母(父)さんは、次のうちどれですか。
且.よくほめよくしかる 2.よくほめるがあまりしからない 3.よくしかるがあまりほめない 4.ほめもしかりもしない
これらの質問および選択肢は印刷して配布し、もっともあてはまるものにマルをつけさせた。
12〕知能検査 京大N X知能検査が用いられた。2年生には京大N X7−9,4年生と6年生には 京大N X8−12が用いられた。本研究では、それらの偏差値について集計した。
13〕学業成績 1学期末の4教科(国語、算数、社会、理科)の成績からその平均値を算出し
た。
実施 称賛・叱責の調査および知能検査は、昭和56年10月に行われた。
結 果 と 考 察
称賛・叱責と知能 表1は、両親の称賛・叱責類型別に各学年における男女をこみにした児 童の平均知能偏差値および標準偏差を示したものである。また、図1および図2はこれらの平均 値について図示したものである。母親の類型別平均値(図ユ)について3(類型)x3(学年)
の分散分析を行ったところ、学年の主効果のみが5%水準で有意となり(F=3.42,〃=2と37工)、
類型の主効果および類型と学年の交互作用は有意にはならなかった(ともにF<1)。各群の人 数が異なるので個々の平均値について、さらに亡検定したところ、R W群については2年生と6 年生の間で1%水準の有意差がみられた(ε=5.49,〃=143)。これらの結果を参考にして図1 をみると、2年生ではR W群が他の2群に比べてもっとも偏差値が高いが、逆に6年生ではもっ とも低くなっていることが注目される。
表1 称賛・叱責の類型別知能偏差値
2 年 4 年 6 年
RW RN NW RW RN NW RW RN NW
ア 5−5.0353.O05L59 53.3151.1352.07 48.2649,505L24 母親 S刀 7,20 7,47 8,81 9,62 7.82 ユO.26 8,19 7,89 7.71
M 7ユ 32 34 89 16 29 76 8 25
ア 53.8153.9853.19 52.4152−8353.20 47.8850.8450−90 父親 SD 8.ユ8 7,08 8,28 9,55 9,75 8,78 8,08 6,98 8.72
jV 47 50 31 63 40 30 49 25 21
RW:よくほめよく叱る、RN:よくほめるがあまり叱らない NW:よく叱るがあまりほめない
父親の類型別平均値(図2)について同様の分散分析を行ったところ、学年の主効果のみが1
%水準で有意となり(F二5.78,〃=2と347),類型の主効果および類型と学年の交互作用は有 意にはならなかった(ともにF<1)。 しかし、個々の平均値についてさらにε検定したところ、
一126一
56 55 。54 平 53
均
知52 能51
偏 50
差49 48 値
47 46 45
一 ■・・
6 5
n図工
56 55
54 53
甲均
52 知
ムヒ 51
月ヒ