• 検索結果がありません。

称賛・叱責と学習適応性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "称賛・叱責と学習適応性"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

称賛・叱責と学習適応性

著者 玉瀬 耕治, 藤田 正

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

18

ページ 143‑152

発行年 1982‑03‑23

その他のタイトル Parents' Praise―Reproof and Children's Academic Adjustment

URL http://hdl.handle.net/10105/6517

(2)

称賛・叱責と学習適応性*

玉瀬耕治・藤田 正**

      (心理学教室)

 称賛と叱責の問題について、われわれは実験室的研究から示唆された類型に従って、親の態度 を分類し、子どもの諸特性との関係を検討してきた(藤田、1980;玉瀬、1979.1981)。 これ らの研究から、少はくとも小学生の年齢段階では、よくほめよく叱るRW型と、よくほめるがあ まり叱らないRN型の家庭の子どもの方が、よく叱るがあまりほめないNW型の家庭の子どもよ りも種々の特性において、より望ましい状態にあることが示唆された。

 本研究の1つの目的は、簡単な質問で測定されたこれまでの研究での親の称賛・叱責類型が、

より詳細な質問による具体的な親の称賛・ロヒ責行為とうまく合致しているかどうかを調べること である。実際に、どんなことでほめられたり叱られたりしているかについては、玉瀬(1978)が

自由記述方式で資料を収集した際の結果を参考にして質問項目を作成した。

 本研究のもう1つの目的は、称賛・叱責と学習適応性(AA I)との関係を検討することであ る。従来の研究から、RW型とR N型がNW型の家庭の子どもよりも得点が高くなることが予想 される。ここでは特に、学習態度、学習技術、学習環境、および精神・身体の健康の各領域のう ち、どの領域においてその傾向が著しいかが問題にされる。

 本研究の主な資料は、奈良県山間部において収集されたものであり、平地部または全国平均と の比較もあわせて行われた。

方       法

 調査対象  奈良県吉野郡十津川村の小学校3校の児童172名(山間部)と、奈良県磯城醐11 西町の小学校1校の児童397名(平地部)、合計569名が用いられた。平地部の児童については、

称賛・叱責調査のみを行った。表1は、これらの調査対象者の内訳を示したものであ乱

表1 調査対象の人数

山 閲 部 平 地 部

4年 5年 6年 2年 4年 6年

男児 27 26 25 73 75 60 女児 34 34 26 75 65 49

合計  61 60 51 148 140 109

* Parents I Praise−Reproof and ChildrenIs Academic Adjustment

**Koji Tamase and Tadashi Fujita(Departm㎝t of Psychology,Nara University of  Education,Nara)

一143一

(3)

 調査内容  ω学習適応性検査(新AA I,AcademIc Ad」ustment Inventory)辰野(1979)

が作成したもので、3・4年月は次の7つの下位テスト、それぞれ15項目ずつ、合計105項目か

らなっている。

①勉強の態度:自分からやる気をだし、進んで勉強しているか。計画的に勉強しているか。

②授業のうけ方:積極的に授業をうけ、それを生かすようにしているか。テストをじょうず にうけ、それを学力増進に役立てているか。

③勉強の技術:能率的に本を読み、ノートを活用しているか。じょうずな覚え方、考え方を

しているか。

④家庭環境:家庭の物理的環境を活用しているか。家庭の雰囲気を勉強に役立たせているか。

⑤学校環境:学校の環境を積極的に活用しようとしているか。勉強に望ましい友人関係であ

るか。

⑥心の健康:自分のことは積極的に自分でするか。不安が大きいかどうか。

⑦からだの健康:神経過敏の程度、身体が健康であるかどうか。

 5・6年月は次の15の下位テスト、それぞれユO項目ずつ150項目からなっている。

以下に示す下位テストは、学習態度(A〜C)、学習技術(D〜F)、学習環境(G〜J)およ び精神・身体の健康(K〜O)の4つにまとめられている・

 A 勉強の意欲:自分からやる気を出し、進んで勉強しているか。

 B 勉強の計画:計画的に勉強しているか。

 C 授業のうけ方:積極的に授業をうけ、それを生かすようにしているか・

 D 本の読み方・ノートのとり方:能率的に本を読み、ノートを活用しているか。

 E 覚え方・考え方:じょうずな覚え方、考え方をしているか。

 F テストのうけ方:テストをじょうずにうけ、それを学力増進に役立たせているか。

 G 家庭の物的環境:家庭の物的環境を活用しているか。

 H 家庭の心理的環境:家庭の雰囲気を勉強に役立たせているか。

 I 学校の環境:学校の環境を積極的に活用しようとしているか。

 J 友人関係:勉強に望ましい友人関係であるか。

 K 自主的態度:自分のことは積極的に自分でするか。

 L 根気強さ:ねばり強く最後までやりとおすか。

 M 不安傾向:不安が大きいかどうか。

 N 神経質の徴候:神経過敏の程度はどうか。

 ○ 身体的環境:身体が健康であるかどうか。

 12〕称賛・叱責の調査  親の称賛・叱貢の類型を調べるために、次の質問を行った。

  あなたのお母(父)さんは、次のうちどれですか。

   1.よくほめよくしかる 2.よくほめるがあまりしからない    3.よくしかるがあまりほめない 4.ほめもしかりもしない

称賛・叱責の具体的内容については表2のような質問を行った。これらの項目は、今回新たに

(4)

作成したものである。項目1から8までは、称賛に関する項目であり、項目9から16までは、叱 責に関する項目である。項目の設定にあたっては、玉瀬(1978)の自由記述方式で得られた結果 や、学生の意見を参考にした。実施に際しては、まず初めに母親について類型と具体的内容を調 査し、次に父親について同順に調査した。類型の4つの選択肢、および具体的内容の各項目に対 する3つの選択肢(よくある、ときどきある、あまりない)は、プリントして配布し、もっとも あてはまるものにマルをつけさせた。

表2 称賛・叱責の質問項目

これは学校の成績とは関係ありません。つぎのしつもんに思ったとおり答えてください。

      答え方(よくある ときどきある あまりない)

1.

2.

3.

4.

5.

6.

7.

8.

9.

10.

l1.

12.

13.

14.

15.

16.

あなたは、学校で良い成績をとってきたとき、お母(父)さんにほめられることがありま

すか。

あなたは、お使いをしたとき、お母(父)さんにほめられることがありますか。

あなたは、家でよく勉強したとき、お母(父)さんにほめられることがありますか。

あなたは、目分のことを自分でしたとき、お母(父)さんにほめられることがありますか。

あなたは、家のそうじを手伝ったとき、お母(父)さんにほめられることがありますか。

あなたは、家に帰って宿題をすぐにすませたとき、お母(父)さんにほめられることがあ りますか。

あなたは、ごはんのあとかたづけを手伝ったとき、お母(父)さんにほめられることがあ りますか。

あなたは、だれかに親切にしたときに、お母(父)さんにほめられることがありますか。

あなたは、宿題をしなかったとき、お母(父)さんにしかられることがありますか。

あなたは、朝ねぽうをしたとき、お母(父)さんにしかられることがありますか。

あなたは、テレビばかり見ていたとき、お母(父)さんにしかられることがありますか。

あなたは、しせいが悪いとき、お母(父)さんにしかられることがありますか。

あなたは、家の中でけんかをしたりあばれたりしたとき、お母1父)さんにしかられるこ とがありますか。

あなたは、外で遊んでいて、おそくなってしまったとき、お母(父)さんにしかられるこ とがありますか。

あなたは、お使いをたのまれたとき、ぐずぐずしていて、お母(父)さんにしかられるこ とがありますか。

あなたは、学校で悪い成績をとってきたとき、お母(父)さんにしかられることがありま

すか。

実施  調査は、昭和56年10月に筆者らと心理学専攻学生によって行われた。

一川5一

(5)

結 果 と 考 察

 称資・叱責の薫型  後の分析の都合上、類型については、山間部では5,6年生一平地部で は6年生を対象にした。表3は、親の称賛・叱責の類型別人数と%を示したものであり、図1は、

男女を込みにした割合(%)について図示したものである。図1からわかるように、全体的によく ほめよく叱るRW型がもっとも多いといえる。RW型に次いで、母親では、よく叱るがあまりほ めないNW型が多く、父親ではよくほめるがあまり叱らないR N型が多くなっている。山間部に 比べて平地部では、母親のR W型がかなり多いのが目立っている。これらの傾向は、従来の結果(

藤田、1980;玉瀬、1979)とかなりよく一致している。

       表3 親の称賛・叱責の類型別人数と%

R W      R N NW      N N 人数  %  人数  %  人数  %  人数  %

   男児 母親   女児    男児 父親   女児

27    55,1     2     4.1

27    46.6    16    27−6 15    34.1     7    15.9

18   31.0    19    32.8

14   28.6   6   12.2

8138 712.l

11    25−0    11    25−0

10   17.2   11  19−O

   男児 母親   女児    男児    女児父親

41   68−3    4    67

35    71,4     4     8.2

31    52.5    12    20.3

18  38−3   13   27.7

15  25.0      0 10  2α4      0

12   20.3        68

919.1  149

RW:よくほめよく叱る、RN:よくほめるが叱らない NW:よく叱るがほめない、NN1ほめも吃りもしない

0     10     20     30     40     50     60     70     80     90    100一矧

母親 山間部

父親

母親 平地部

父親

     RW         RN     NW   NN

RW:よくほめよく叱る、RN:よくほめるが叱らない NW:よく叱るがほめない、NN ほめも吃りもしない

図1 親の称賛・叱責の類型

(6)

 表3で、男女差に注目してみると、山間部では、女児に対して両親ともにR N型が多く、男児 にはNW型が多くなっている。すなわち、女児にはほめることが多く、それに比べて男児には叱 ることが多いといえる。一方、平地部では、男児と女児に対する称賛・叱責の違いはあまりみら

れない。

 称資・叱責の類型と得点の関係  称賛・叱責の具体的内容を示す項目への反応を、2点(よ くある)、1点(ときどきある)、または0.点(あまりない)で採点し、各類型ごとに称賛得点 および叱責得点を算出した。それぞれの得点の可能な分布は、0点から16点までである。

表4−1は、山間部における称賛得点(R)と叱責得点(W)の平均と標準偏差を示したもので ある。また、表4−2は、平地部におけるそれぞれの値を示したものである。これらの表で、ゴ チック体で示されている部分は、類型のRまたはWに相当する値であり、それ以外はNに相当す る値である。1つの例外(山間部母親男児R N群のW)を除いて、ゴチック体の数値がそれ以外 の数値よりも高い値になっていることがわかる。これらの結果は、子どもたちが4つの選択肢の 中から主観的、直接的に親の類型を判定した場合と、具体的行動の評定を通してより客観的、間 接的に判定された場合がかなりよく対応していることを示唆している。例外となった部分につい ては、人数が2人であり、偶然的な結果とみなされる。

表4−1 類型ごとの称賛得点(R)および叱責得点(W)(山間部、5・6年)

母   親 男 児      女 児 類型  R    W    R   W

父   親 男 児      女 児 R    W    R    W

RW 7.8(3.9) 74(2⑧ 8−8(3.O) 5.7(2.6) 6・6(3.6) 7.7(2.8) 6.9(3.1) 6.3(28)

RN 8.5(3.5) 8.O(2.O) 9.0(4.2) 4.9(3.3) 5.1(3.1) 4.3(2−8) 6.5(3.7) 3.4(1.7)

NW 53(28) 8ム(3.2) 4.8(2.5) 6.8(2,5) 1.9(2.2) 8一(3.7) 2.0(2.3) 6.1(3.2)

NN 1.8(2.O) 5.O(2.8) 4.7(3.O) 3.8(2.3) 2.6(3.9) 3.2(1.8) 2.3(1.8) 3.1(2.2)

カッコ内はSD

表4−2 類型ごとの称賛得点(R)および叱責得点(W) (平地部、6年)

母   親 男 児      女 児

父   親 男 児      女 児

類型RWRWRWRW 7.7(3.7) 9.5(3.0) 8.2(3.5) 9.0(3.1) 5.4(3.6) 7.0(3.8) 64(3−6) 54(2.8)R    W RN 7,8(34) 5.3(2,7) 、9.0(25) 5.O(3.7) 6.2(4.8) 3.8(1.9) 6,5(3.3) 4.1(1.6)

NW 3.6(3−8)10.9(2.1) 3−8(3,3) 9.1(3.O) 2.6(2.O) 8.0(4.4) 3.4(2.6) 6.9(2.2)

NN  一         一    一  1.5(1.5) 2−8(1.9) I4(1.7) 2.7(24)

カッコ内はSD 山1〃一

(7)

 称資構点と叱責構点の学年差 表5ば山間部における称賛得 点と叱責得点の学年差を示した

ものである。山間部の場合は中 高学年のみであるので、親の称 賛・叱責の与え方にあまり違い がみられない・それぞれの場合

について、学年差を検定したと ころ、母親一男児一RでF(2/

 妻5

男児

女児

学年ごとの称賛得点と叱責得点(山間部)

母  親      父 親

4年 5年 6年 4年 5年 6年

R  8−7 W  6.4

7.0   5.6   6.7   4.5   3.8 7.8   7.1   5.2   6,2   6.0

R8−88.96.66.45.64.4 W6.24.85.95.34.15.2

74)三3.73、母親一女児一Rで (2/87)=3.74となり、ともに5%水準で有意であった。それ 以外の場合については、いずれも有意差はみられなかった。

 図2一および図2−2は、平地部における学年ごとの称賛得点と叱責得点を図示したもので ある。ごく大雑把にみれば、称賛得点(R)は低学年で高く、学年とともに下降する傾向があり、

叱責得点(W)は、低学年で低く、学年とともに上昇する傾向がみられる。それぞれの場合につ いて検定を行ったところ、父親一男児一Wを除くすべての場合のF値は5%または1%水準で有 意であった。そこで、誤差項を用いてε検定を行い、有意であった部分については図中に@の表 示をした。2つの図から、女児への称賛得点(R)が、2年と4年でもっとも高く、6年で急下 降している点が注目される。

16

H

 12  11  10

 9  8

 7  6

 5  4

 3  2

 1

 0

O一.一一一一一一一一一一.一一へ、、

母親      \@

      \     男児W

@     ......×一一・x女児W     x..      \

   !  @  \   、・        O女児R   。          男児R

、・

2年     4年 図2−1

@は有意

6年 各群の称賛得点と叱責得点       (平地部)

16H  12  11

 10

 9

 8

圭7 貝6

得。

点。

 3  2

 1

 0

  .一.一一一一一一一一q O・一一        ・

      \@

、・

父親

 x、@

、・@・、   ・ 男児W     一、   女児R      \  女児W         男児R

@は有意

2年     4年     6年

図2−2 各群の称賛得点と叱責得点       (平地部)

(8)

 称賛・叱責の内容  次に、称賛・叱責の具体的内容のうちで、どの項目がより多く是認され ているかを調べるために、各項目ごとに2点(よくある)反応者の割合を調べた。表6−1は称 賛項目について、表6−2は叱責項目についての結果をそれぞれ示したものである。ここでの結 果は、父親または母親が不在である場合を除くすべての対象者について集計されている。反応率 の高いものを見やすくするために、30%以上の値についてはゴチック体で表示した。

 称賛項目に関しては、}良い成績をとってきたとき  (項目1)が圧倒的に多いといえる。そ れに次いで、I.お使いをしたとき皿12〕、}そうじを手伝ったとき (5〕、 .ごはんのあとかたづけを 手伝ったとき㍗71が多くなっている。平地部での反応の割合が高いのは、2年生を含んでいるた めかもしれない。

 叱責項目に関しては、1.家の中でけんかをしたりあばれたりしたとき (項目13)がもっとも 多い。次いで、 宿題をしなかったとき 19〕や. テレビばかり見ていたとき (11)が多くなって

いる。

表6−1 称賛項目における2点(よくある)反応者の割合(%)

項目番号   1   2   3   4   5   6   7   8      男児

山母親     女児      男児

部父親     女児

48,1    27,3    19,5

58−9   36,7   23,3

39,1    20,2    20,2

41,3   13.O   19.6

     男児  517      女児  52,9平母親

     男児  412      女児  4ω部父親

304  29.5 407  32,8

19,3    29,0

35,3  40過

18,2 14.4

]3.0 7.6

16,4 30,7

23,2 31.0

29.9

422

18,8 19.6

343

46,6 24,6 35.8

24,7 26,7 15,9 15.2

19,5 31.1 13.O 17.4

23,7     30,0

33,9  46,6 24,6    17,9 30■5  34−8

23,4 20.O 15,9 15.2 29,5 35−4 22,2 35.8

表6−2 叱責項目における2点(よくある)反応者の割合(彫)

項目番号   9   10  11  12  13  14  15  16

     男児  35.1

山母親     女児  21.1      男児  3〃

部父親     女児  14.1      男児  4ω

平母親     女児  312

     男児  30.0

部父親     女児  17.6

18,2    44−2    22,1    46,8 10,0    35■6      5,6    37.8

72    31,9    18,8    39.1

7,6    27,2     15,2    28.3 16,9    44,0    36,2 19,0    30,2    33,3 10,6    22,7    25.6 8−O    16,0    23.0

54,1 37,0 35,7

31f

15.6

14.5 6.5

20,3

18,5 19,3

14.4

1O.4

4.4 8.7 3.3

23,4

3,3

15.9

4.3

17,9    22.7 9.O  19,0

10.1    ・19−8

5,3  12.3

一149一

(9)

 称賛・叱買の類型と学習通応性  山間部5,6年生について、表3における親の類型別に学 習適応性検査(新AA I)の各下位テストごとの平均値を求めた。これらの値について、下位テス

トごとに分散分析を行ったところ、母親一男児、母親一女児、および父親一男児に関するものは いずれも有意にならず、わずかに父親一女児に関する若干の下位テストにおいて有意差がみられ た。すなわち、下位テストD(本の読み方ノートのとり方)、G(家庭の物的環境)、およびH

(家庭の心理的環境)の3つにおいて、F値が有意であった。これは、R W群またはR N群がN W群またはNN郡よりも、これらの項目に関して得点がより高いことを示している。

 表7は、各下位テストの得点を領域ごとに合計した値について、類型別に平均値を示したもの である。この表から、学習態度、学習■技術、および学習環境の3領域では、例外なしにRW群と

R N群の得点の方が、NW群とNN群の得点よりも高くなっていることがわかる。しかし、精神

・身体の健康の領域では、必ずしもそのような傾向は見られない。これらの結果から、吃りっぱ なしや、ほめも吃りもしない親の態度は、子どもが学習に取り組むための状態を悪くする可能性 を示唆しているといえよう。

表7 称賛・叱責の類型別学習適応性得点(山間部5・6年)

(M) 学習態度 学習技術 学習環境精神・身体の健康

  RW(27)

  RN(2)

男児  NW(14)

  NN(6)

32,4 40,0 25,2 23.0

26,8 31,0 22,7 13.8

49,4 52,0 45,9 42.3

64,3 69,0 61,4 60.3

母親   RW(27)

  R N(16)

女児

  NW(8)

  N N(7)

      RW(15)

      R N(7)

   男児       NW(11)

      N N(11)

父親      RW(18)

      R N(19)

   女児       NW(1O)

      NN(ll)

34,7 36,1 33,8 28.6 33,7 30,1 26,5 26.4 34,2 36,7 33,2 31.0

30,2 30,0 27,0 22.6 27,4 25,9 23.1 19.4 31.6

3α3

27,2 23.8

52,9 51,8 50,1 47.7 50−3 46,6 45,8 46,0 51,8 54,1 47,8 39.4

66,5 67,6 67,8 62.2 63,8 63,0 60,3 64.4 64,9 68,3 69−1 62,5

山間部と全国平均との学習適応性の比較  山間部の各学年で、男女を込みにした各下位テス トの平均と標準偏差を求め、それぞれについて全国平均との差をt検定した。4年生については、

}家庭環境 でこ.L間部(支=19.9)の方が全国平均(M=367、天=I8.5)よりも有意に得点が

(10)

高く(ε=2.47,P<.05)、 からだの健康 で山間部(ヌ=17.8)の方が全国平均(ヌ三19.O)

よりも低かった(ε一2.20,P<.05)。それ以外では有意差はみられず、全体として、山間部の 平均は、全国平均なみであった。

 表8は、5年生と6年生についての結果を示したものである。この表から、5年生では山間部 と全国平均との問にほとんど差がみられないが、6年生ではH不安傾向 を除いて、山間部の得 点がかなり低くなっていることがわかる。とりわけ、学習態度と学習技術に関して、すべての下 位テストで有意差がみられる点が注目される。また、H根気強さ の落ち込みについても注目す べきであろう。藤田・杉村(1981)は、山間部の児童の知能構造について調べ、高学年になるに 従って、全国標準との差が顕著になることを指摘している。このような、山間部の高学年におけ

る学習適応性や知能の落ち込みの原因について、今後さらに検討する必要があろう。

表8 山間部と全国平均との学習適応性得点の比較

領域   下位テスト

5 年

6 年

山間部 全国  f 山間部 全国  t      勉強の意欲   12.1

学習態度勉強の計画  11.3

     授業のうけ方   9.7

      本の読み方・ノート   9.7       のとり方

学習技術覚え方・考え方  8.1       テストのうけ方  9.7      家庭の物的環境  11,6      家庭の心理的環境  11.6

学習環境

     学校の環境   14.1

     友人関係    12.5       自主的態度      根気強さ

精神・身体

     不安傾向の 健 康      神経質の徴候

     身体的傾向

13−O 12.1 王2,3

13.2

148

11,8      10,8 12,4       10,6

10.3        &5

11.6     **      9.7

9.4        7.1 9.9        8.1

122

11,5 14.O 12.5

13,2 12,9 12−5 13,2

14.8

11.1 11,4 13,9 12.5

124

10.8 工2,9

12,8

14.5

11.9   * 12.2   舳 103   * 11.9   榊

9.6   榊 9.7   **

12.4   榊

122

14.O

12.7 13.O 12.7   **

工1.9   *

13.l

14.5

*Pく二.05、 ** 〕<.01

要       約

 本研究では、奈良県山間部の子どもを主な対象として、子どもからみた親の称賛・叱責の実態 と子どもの学習適応性について調べた。主な結果は次のとおりであった。

一151一

(11)

 ω親の称賛・叱責の類型では、両親ともによくほめよく叱るRW型がもっとも多く、次いで母 親ではよく叱るがあまりほめないNW型が多く、父親ではよくほめるがあまり叱らないRN型が 多かった。12〕称賛の内容では、. 良い成績をとってきたとき がもっとも多く、次いで}お使い と. そうじ 、}ごはんのあとかたずけ が多かった。叱責の内容では、 けんかをしたりあぱ れたり}がもっとも多く、次いで}宿題 と}テレビ であった一3)RW型とR N型の家庭の子 どもは、NW型とNN型(ほめも吃りもしない)の家庭の子どもに比べて学習適応性検査(新A A I)の学習態度、学習技術、および学習環境の得点が高く、より好ましい状態にあることが示 された。14〕学習適応性に関して、山間部の子どもは4年生と5年生では全国平均とほぼ同じ水準 であったが、6年生では劣る傾向がみられた。特に、学習態度および学習技術に関する面と、 気強さ が劣ることがわかった。

引  用  文  献

藤田 正 1980 へき地の小学生の学習動機 奈良教育大学教育研究所紀要 16,155−161.

藤田 正・杉村 健 1981 へき地児童の知能構造の発達的研究 奈良教育大学教育研究所紀   要17,161−168.

玉瀬耕治 1978 へき地におけるほめ方・叱り方に関する調査 奈良教育大学教育研究所紀要   14, 127−135.

玉瀬耕治 1979 へき地および都市における称賛・叱責の研究 奈良教育大学教育研究所紀要   15, 127−134.

玉瀬耕治 1981 親の称賛・叱責、親子の親密度、および子どもの学力向上要因 奈良教育大   学教育研究所紀要 17,107−H5.

辰野千寿 1979 新学習適応性検査手引 東京:日本図書文化協会

<付記〉 資料の収集にあたり、平谷小学校長 滝先生、三村小学校長 鎌塚先生、上野地小学 校長 大野先生、結崎小学校長 村田先生ならびに諸先生の御協力を得、資料の整理にあたり、

心理学専攻学生 葛城香代子、熊本恵子、畑山政治、笹川宏樹他の方々の御協力を得ました。記 して厚く感謝の意を表します。

参照

関連したドキュメント

世の中のすべての親の一番の願いは、子 どもが健やかに成長することだと思いま

自分の親のような親 子どもの自主性を育てる親 厳しくもあり優しい親 夫婦仲の良い親 仕事と両立ができる親 普通の親.

 音楽は古くから親しまれ,私たちの生活に密着したも

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

tiSOneと共にcOrtisODeを検出したことは,恰も 血漿中に少なくともこの場合COTtisOIleの即行

凧(たこ) ikanobori類 takO ikanobori類 父親の呼称 tjaN類 otottsaN 類 tjaN類 母親の呼称 kakaN類 okaN類 kakaN類

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図

目標を、子どもと教師のオリエンテーションでいくつかの文節に分け」、学習課題としている。例