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博 士 ( 理 学 ) 齊 藤

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 齊 藤    伸

     学位論文題名

Studies on the Structural Characteristics ofaNovel     Tandem Repeat DNA − Binding Domain , STPR      (夕ンデムリピートを有する新規DNA 結合ドメインSTPR の      立体構造特性に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    FMBP1蛋白質(fibroin‑modulator‑binding protein1)は絹蛋白質フィブロインの転写制 御因子のーっであり、フアブロイン遺伝子の転写開始点の上流領域およびイントロン領域 に 存 在 す るDNA配 列(ATNTWTNTA) に 特 異 的 に 結 合 す る。FMBP1は218ア ミノ 酸 残 基 から成る蛋白質であり、そのC末端側(99・190a.a.)にDNA結合ドメインSTPR(scoreand threeaminoacidpeptiderepeりを有する。STPRは極めて相同性の高い4本のりピート(R1、 R2、R3、R4) がタン デムに連 結するこ とで一 次配列を 構成す る。興味 深いこ とにSTPR は真核生物に広く保存されており、進化上、重要な役割をしていることが予想されるが立 体構造 に関する 報告は 皆無である。そこで本研究ではSTPRの立体構造に関する特性を解 析すること、およびDNA結合様式を解析することを目的とした。

    初 めにSTPR全 長(R1‐R4)の1H―15NHSQCスペクト ルをDNA非結合 状態゜DNA結合 状態のニ状態で測定した。しかし何れもピークの重なりが甚だしく、トn偲を用いてSTPR 全長の 立体構造 決定は 困難であ ることが わかっ た。そこでSTPR全長を構成する4本のり ピート (R1、R2、R3、R4)を切り離し、ペプチドレベルで立体構造解析を行った。その 結果、4本のペプチドは同様な立体構造を持ち1本の短いaヘリックス(3・10aIa.)とラン ダムコ イルから 形成さ れることがわかった。またこの短いQヘリックスは2つの分子内相 互作用(塩橋とN‐cappingbox)により安定化されていることが分かった。次に4本のペプ チド(R1、R2、R3、R4)とSTPR全長 (R1_R4) の関係 を調べる ためCDを 用いて解析し た。そ の結果、4本の ペプチ ドの平均 スペク トルはSTPR全長のスペクトルと重なった。

また4本 の ペプ チ ド とSTPR全長は 良く似 た非協同 的な熱 変性曲線 を示し た。以上 から STPR全長の 中で4本のり ピートは 相互作 用せずに 独立に運動していること、STPR全長の 立体構造は決定した4本のペプチドの立体構造を繋ぎ合わせたものに近似していることが 示唆された。

    続 いてSTPR全 長 とDNAの結 合 比 を決 定 す るた め、DNA滴定実験 を行い 、ゲルシ フ トア ッ セ イ 、プ ル ダウ ンアッセ イにて 評価した 。その 結果、STPR全 長はDNAに対し て 川で 結 合 す るこ と が分 かった。 ここでDNA結合 状態に おけるSTPR全 長の立 体構造に つ い て 解 析 す る た め 、DNA非結 合 状 態、DNA結合 状 態 のニ 状 態 でSTPR全 長 のCDス ペ ク トル を 比 較 した 。 その 結果、DNAとの 結合に伴 いSTPR全長 のへりッ クス含 量が31%か ら76% ま で増 大 す ること が分かっ た。ま たCDを用い た熱変 性実験か ら、DNA非結合 時 に観 察 さ れ たSTPR全 長の非 協同的 な熱変性 曲線は、DNAと の結合に 伴い協 同的な曲 線 へと変 化するこ とが分 かった。さらにトリプシン消化酵素を用いた限定分解実験から、

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STPR全 長はDNA非 結 合 状態 で は 消化 酵 素 によ り 全て分解 されるの に対し 、DNA結 合状 態ではSTPR全長が 消化酵素 に強く抵 抗する ことが分 かった 。以上よ りSTPR全長は特異 的DNAと結合す ること で立体構 造変化 が著しく 誘導され、ヘリックス含量のより多いり ジット で球状な 立体構 造を形成 するこ とが示唆 された。さらにDNAの立体構造を強く反 映 する 近 紫 外領 域 のCDスペ クトル 測定から 、複合 体形成時 、蛋白質 のみな らずDNAに も立体構造変化が誘導されることがわかった。

    ここでaヘリックスを誘導する有機溶媒1,1,1―trifluoroethanol (TFE)を用いて、DNA結 合状態 におけるSTPR全長の 立体構造 の予測 を試みた 。初め に4本 のペプチ ド(Rl、R2、 R3、R4)に対してTFE滴 定を行い 、CDスペ クトルの 変化を 観察した 。その 結果、何れの ベプチ ドもTFE濃度の 増加に伴いへりックス含量が増加すること、そして比較的低いTFE 濃度(30‑40%)でへりックス含量が飽和に達することが分かった。また4本のペプチドの 飽 和ヘ リ ッ クス 含 量 の総 和 は 、DNA結合 状 態 におけ るSTPR全長(RI‑R4)のへ りック ス 含量と よく近似 するこ とが分か った。 そこでTFE濃度30%中にお ける4本のペプチドの 立体構 造をNMRにより 解析した 。その 結果、何 れのペプ チドもC末端 側方向 へのへりッ クスの伸張(3‑20 a.a.)が観察され、この伸張したへりックスは両親媒性の性質を示すこ とがわ かった。CD測定の 結果をもとに考察すると、複合体形成時に観察されるりジット で球状 なSTPR全長 の立体構 造は、物 理化学 的性質の良く似た4本の伸張ヘリックスがり ンカーにより連結されることで形成されると予想された。

    最 後にSTPR全 長の中 でDNAとの結合 に関与 している アミノ酸 残基を 特定する ため 変異体を作成し、ゲルシフトアッセイを行った。まず、先に同定したへりックス安定化因 子の塩 橋に注目 し、各 リピート の塩橋 を破壊す るようなSTPR全長の変異体を4つ作成し てDNA結 合能 を 評 価した 。その 結果、R3ま たはR4の 塩橋を破 壊した 変異体で は著しく DNA結 合 能が 欠 損 した 。 以 上か らSTPR全 長を 構 成する4本のり ピート は非常に よく似 た一次 配列を持 っにも かかわら ずDNA結合能に 関して異なる役割を果たしていることが 示 唆さ れ た 。次 にDNA結 合 能に 関 与 して い る ことが わかった りピー トの1つR3に注目 してこ の領域の アミノ 酸残基を .1っ ずっア ラニンに変えたSTPR全長の変異体を17個作 成 し、DNA結 合 能 を評価 した。 その結果 、DNA結 合に関 与してい ると思 われる6つのア ミノ酸残基を特定することが出来た。これらの6アミノ酸残基は伸張ヘリックスの片側の 面 に集 中 す るこ と から、 この領 域がR3にお けるDNAとの結 合面であ る可能 性が示唆 さ れた。 またヘリ ックス 誘導試薬TFE中 における 変異体の二次構造をCDで解析した結果、

R3の中央 に存在す るArg‑9がDNA結 合時に 誘導され るへり ックスの 伸張に 深く関与して いることがわかった。

    過去の 研究に おいてDNA非結合 状態で はフレキ シブル であるが 、DNA結合時にりジ ッ ドな へ り ック ス 構 造を 形 成 するDNA結 合 モ チーフ としてはbZIPやHLHが報告さ れて いる。 これらは 複合体 形成時にdimerを 形成する こと、 およびDNAの立体 構造がほとん ど変化 しないこ とが知 られてい る。本 研究から 解明され たSTPR全長 の特性 、すなわち DNAに 対 して1:1で 結合 し、複 合体形成 時にDNAの立体 構造変化 が観察 されるこ とを考 え ると 、STPR全 長は 典型的なDNA結 合モチー フと異 なる新規 モチー フを形成 すること が予想される。本研究では複合体形成時の立体構造を高分解能で決定することは出来なか っ たが 、 分 光学 的 手 法、 生 化 学的 手 法 からSTPR全長のDNA非結合 状態、DNA結合 状態 におけ る立体構 造特性 を明らか にした 。すなわ ちDNA非 結合状 態では4本の 短いへりッ クスが独立して運動しているということ、また複合体形成時、ヘリックス伸張が誘起され てりジットで球状な立体構造を形成することを明らかにした。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   河野敬一 副査   教授   出村   誠 副査   教授   田中   勲 副査   准教授   相沢智康

副査   教授   小布施力史(大学院生命科学院)

     学 位 論文 題 名

Studies on the Structural Characteristics ofaNovel     Tandem Repeat DNA ― Binding Domain , STPR      ( 夕 ンデ ム リピ ー トを 有す る 新規 DNA 結合 ド メイン STPR の      立 体 構造 特 性に 関 する 研究 )

博士学位論文審査等の結果について(報告)

  麟糸目昆虫のカイコは、成長の過程で大量の絹蛋白質を合成する。絹蛋白質はフィブロイ ン蛋白質とセリシン蛋白質な どから構成されるが、これらの蛋白質は特定の時期に特定の 器官でのみ発現することが可 能である。これは種々の転写制御因子により転写レベルで遺 伝子発現が制御されていることに起因する。転写制御因子FMBP―1

(fibroin−modulator−binding protein―1)は、フィブロイン遺伝子の転写調節配列 (ATNTWTNTA)に特異的に結合し、フアブロインの特異的発 現に強く関与していることが示 唆されている蛋白質である。FMBP―1は218アミノ酸残基から構成され、C末端側半分(99ー190 a.a.)に特徴的なDNA結合ドメインSTPRを持っ。STPRは 非常に良く似た23アミノ酸残基 から成るペプチド(Rl,R2,R3,R4)が4本直結し、計92ア ミノ酸残基から成るタンデムリ ピート構造(Rl−R4)を有する 。データベース検索の結果、STPRと同様の繰り返し構造が線 虫からヒトまで真核生物に広 く保存されていることが判明し、進化上、重要な機能を保持 していると予想されるが、立 体構造を含め詳細については未知であり、これまでほとんど 研究が行われていない。

本 論文 は、 真核 生物 に広く保存される新 規DNA結合ドメインSTPRの立 体構造特性につい て解析した初めての報告であ り、2っの章から構成されている。第一章は、DNA非結合状態 における立体構造について、 第二章ではDNA結合状態にお ける立体構造について言及し、

各 々、Biochemistry誌(2007)、Proteins誌(2008)に掲載済みである 。STPRはその特徴 的な一次配列によりDNA非結合状態、DNA結合状態のいずれにおいても良好なNMRスペクト ルを得ることが出来ず、立体 構造を高分解能で決定することが困難だった。しかしながら NMR・ 円偏 光二 色性(CD)などの分光学的手法と、ゲルシフトアッセイ(EMSA).プルダウ

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ンアッセイなどの生化学的手法を用いた解析により、著者はSTPR全長の立体構造特性にっ いて明らかにした。以下、本研究の成果を具体的に記述する。

  1つ 目は、DNA非結 合状態における立体構造特性の解明である。まずSTPRを構成する4本 のペプチドユニット(Rl,R2,R3,R4)の立体構造をNMRにより決定し、何れのユニットも短 いaヘリッ クスとラ ンダムコイルから構成されることを明らかにした。そしてこれらの口 ヘリックスは塩橋とN一Capping box相互作用により安定化されていることを発見した。次 にSTPR全 長(Rl−R4)の立 体構造 にっいてCDを用いて解析し、ヘリックス含量が低く(ヘ リックス含量:31%)、大部分がランダムコイルであること、STPR全長の立体構造はペプチ ド単位で決定されたユニットの立体構造を連結したものに近似していること、STPR全長の 中で各ペプチドユニットは相互作用することなく独立して運動していることを明らかにし た。最 後に変 具体を用 いた解析から、STPR全長を構成する4本のユニットは非常によく似 たー次配列と立体構造を有するにもかかわらず、DNA結合能に関して異なる役割を果たして いることを明らかにした。・

  2つ目は、DNA結合状態における立体構造特性の解明である。まずEMSAやプルダウンアッ セイの 結果、STPRは特異的DNAに 対して1対1のモル 比で結合 するこ とを特定した。次に CD解析か ら複合 体形成時、STPR全長およびDNAの両者に立体構造変化が誘導されること、

およびSTPR全長はaヘリ ックス に富んだ 立体構 造(ヘリ ックス含 量:76%)を形成するこ とを明らかにした。更に熱変性実験、限定分解実験、螢光プローブを用いた実験から、DNA 結合時、STPR全長はりジッドな球状のコンフォメーションを形成していることを明らかに した。 最後に 変異体を 用いた解析により、STPR全長の中でDNAとの結合に関与している相 互作用面を決定することに成功した。

真核生 物に広 く保存さ れるSTPRは 、2005年、 北大の滝谷重治氏らにより発見されたもの の、その機能に関してはDNA結合能を有するということ以外の詳細はわかっていなかった。

本研究の結果、DNA非結合状態とDNA結合状態の立体構造特性が解明されたことにより、こ れまで に報告 されてい る様々 なDNA結 合ドメイ ンとは異なる新規のDNA結合様式をSTPRが 有して いる可 能性を示 した。これを要するに、著者は、STPRのDNA認識機構の全容解明に 対し有用な知見を与えたものであり、更には、カイコフアブロイン遺伝子の転写制御機構 の解明に貢献するところ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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参照

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