博 士 ( 理 学 ) 齋 藤 誠 治
学 位 論 文 題 名
局 所 的 な 地 質 構 造 が 地 震 動 に 及 ぽ す 影 響 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
観測される地震動の特性や,地震被害と観測点近傍の地質状況の間に,深い関わりがあ ることは日本では昔から経験的に知られていたが,1980年代になって,いくっかの大地 震による地震災害を契機として,あらためて表層地質が地震動に及ぼす影響の重要性が指 摘されてきた.
このような背景のもとに地震防災上の観点から,定量的な地盤増幅特性fサイトレスポ ンス)の評価が求められるようになり,ESG(Effect of Surface Geology)研究が精力的 に行なわれるようになってきた.これと共に,より質の高い地震記録を得るために,広帯 域・広ダイナミックレンジの地震計が開発され,強震動観測網の整備が進められてきた,
このような中,強震動観測網の発展と共に,以前には観測されなかったような特異な強 震動が観測され,新たな議論をよんでいる.例えば,ノースリッジ地震でタルザナで記録 された1.8gの大加速度記録や,本研究で解析の対象とする観測点OTBの約1.6gの大加 速度記録もそのーつである.
近年になって今までにない大加速度の記録が得られているのは,観測計器の性能の上 昇や観測点網の整備が進み震源近傍での観測が可能となったこともも理由の1つである が,北海道南西沖地震(本研究)とノースリッジ地震の両者とも,観測点近傍の地盤特性
(サイトレスポンス)の影響が示唆されており,このような局所強震動ともいうべき大加 速度の発生要因を明らかにすることが,現在の地震工学上の緊急の課題となっている,
我々が観測する地震動は,震源の特性,伝搬経路の特性,観測点近傍の地盤特性の3つ の影響を含んでいる.観測された地震記録からサイスミックモーメントやストレスド口ッ プ等の震源情報を抽出するためには,伝搬経路の非弾性による減衰効果や,観測点近傍の 地下構造の影響を評価し,取り除く必要がある.逆に,地盤の振動特性を知るためには,
観測された地震動の特性の要因が,震源の特性によるものか,それとも観測点近傍の影響 がどのようでなものであるのかを明らかにする必要がある.
1999年7月12日,北海道南西沖を震源とする1993年北海道南西沖地震( M7.8)が発 生した.その直後から,北海道大学理学部,東京大学地震研究所,京都大学防災研究所の 3機関が緊急に合同余震観測網を展開した.本観測の当初の目的は震源の情報を得るため であったので,観測点は,1.余震域を包囲するように,かつ,2.表層地質が地震動に 及ぽす影響が小さいと考えられる点であることを条件に探したが,緊急のことでもあり,
全観測点でこの条件を十分に満たした場所を探すのは困難であった.余震域が海であるこ ともあり,震源の十分近くとは,いえないが奥尻島の2点を含む全8観測点が設置され た.
8月8日,最大余震(MJMA=ニ6.3)が本震の余震域から東に外れた地域で発生し,新た な余震域を形成した.この余震域は,余震観測網のほぽ中央に位置し,各点の観測期間の 違い もあり,多くの観測点で 記録されたのは,この地域で 発生した9地震である.
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観 測 点OTBで は , 最 大 余 震 で 最 大 加速 度 が 約1.6gの 強 震動 を 記 録 し た.OTBで は,
周 波 数4Hz付 近 のス ペ ク ト ル が 卓越 す る 特異な サイト レス ポンス を有し ている ことが , 最 大 余 震と そ の 他の 余震の 波形か ら予 想され ,1.6gの 大加速 度もサ イトレ スポ ンスと 密 接 な 関 係が あ る と 考 えら れ る .OTBに お けるサ イトレ スポ ンスの 要因を 明らか にする た めに ,以下 の観 測と解 析を行 なった ,
観 測され た強震 動記録 から, 震源 の特性 ,伝搬 経路の 影響 及ぴ観測点近傍のサイトレス ポン スの影 響を 分離す るため ,イン バー ジョン を行な った, 結果;求められたソーススペ ク ト ル は, 最 大 余 震 を除 き , ほ ぼCy2モ デルに 一致す る. 最大余 震がU2モ デル と整合 的 でな いのは ,複 雑な震 源過程 のため であ る.
イ ン バ ー ジ ョ ン で 求 め られ たOTBのサ イ ト レ ス ボン ス は ,OTB周 辺 で 行 なっ た 小 地 震 観 測 ,PS検 層 , 微動 観 測 の 解 析結 果 と 比 較 され た ,OTB観 測 点 は 小 さい 岬 の 上 に あ り, 予想さ れる サイ卜 レスポ ンスの 要因 は,1.表層堆積物影響,2.地形効果.3.構造物 との 相互作 用.4.地 盤の 非線形 効果で ある.
小 地震を 岬の基 部と岬 の上で 観測 しスペ クトル 比をと るこ とで岬の地震応答が調べられ た . こ の結 果 , イ ン パー ジ ョ ン で 得ら れ たOTBのサイ トレ スポン スは, 岬の地 震応答 に 対応 してい るこ とが分 かった .また ,岬 内でも サイト レスポ ンスが大きく変化しているこ と が 示 され た . 次 に ,PS検 層 の 結果 得 られ たS波速度 構造 をもと に,表 層の理 論伝達 関 数 が 計 算 さ れ , 小 地 震 の ス ペ クト ル 比 と 比 較さ れ た . そ の結 果 ,OTBの 数10mの 範 囲 で サ イ トレ ス ポ ン ス が大 き く 変 化 して い ること が示さ れ. また,OTBの サイト レスポ ン ス の 要 因 に 地 盤 と 構 造 物 と の 相互 作 用 が 大 きく 寄 与 し て いる 可 能 性 が 示唆 さ れ た , 構 造物の 屋内外 の微動 観測と モデ ル計算 に依り ,相互 作用 の影響が評価された.その結 果 ,OTBの サ イ トレ ス ポ ン ス の 主た る 原 因は, 表層堆 積物 の影響 と,地 盤と構 造物の 相 互作 用であ るこ とが示 された .最後 に, 地形効 果と, 非線形 効果について検討がなされ,
影響 は大き くな いもの その存 在の可 能性 が示唆 された .