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博士(薬学)阿部 洋 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(薬学)阿部   洋 学位論文題名

立体選択的アノメリックラジカル反応:

C .グリコシド型アデノホスチンA の合成 及びアノマー効果に基づく立体抑制とその解析

学位論文内容の要旨

  clグリ コシ ド 結合 は、 化 学的 及ぴ 酵 素的に安定であ ることから、天然のO‑グリコシド結合 の 安 定 等価 体と し ての 機能 を 果た すこ と が期待され、そ の利用が注目されて いる。著者は、こ の よ うに興味深いc一グリコシド 結合のラジカル反 応による立体選択 的構築について研究を行った。

c‐グリコ シド類の合成法は種 々報告されている が、アノマ一位ラ ジカル反応を経るc一グリコシ ル 化 は中 性条 件 下行 なえ る こと や比 較 的保護基の制限 がない等の利点があ る。加えて、他の 方 法 に よる 合成 の 困難 な a‑c.グ リコ シ ド型ジサッカラ イドを選択的に合成 できる利点がある 。   本 論文 では 、 まず 第1部 でシ リ ルケ ター ル を用 いる 分 子内 ラジカル反応 を鍵段階とするC‑グ リ コ シド 型ア デ ノホ スチ ンAの 合 成に つい て 述べ る。 続 いて 、第2部で 分 子間 アノ マ―位ラ ジ カ ル 反応 にお け るア ノマ ー 効果 に基 づ くIxI及 ぴp‐選 択的なcIグリコシル 化について述ぺる 。

I.C‑Z!2ヨ2ピ 型ZえZ杢丕圭Z△Q盒成

  細胞内セカン ドメッセンジャー であるIPユは、細 胞内Ca2゛放出物質として重要であるが、1993 年高 橋 らに より 単 離さ れた ァ デノ ホス チ ンAは 、IP3の約l0〜  100倍強 い活性を示し、そ の構 造と 活 性に 興味 が もた れて いる。 当研究室では、そ の構造活性相関を探 る目的で、これま でに 数種 のIP3レ セプ ター リ ガン ドを 設 計し 、合 成 して きた。その結果から 、次のことが示唆 され た。1)a‑D‑グル コー ス 構造 は、IP3のmyo‑イノシト ール部の良いmimicとなる。2)アデニ ン塩 基が活性を増強 する。3) 0‑グリ コシド結合をcIグリコシド結合に変換しても活性は保持される。

今回 、 著者 は、 こ れま での 知 見を 基に ア デノ ホス チンAの安定等価体と なることが期待さ れる ア デノ ホ スチ シAcIグリ コ シド 型ア ナ ログ(4)及 びそ の ウラ シル 類 縁体(5)を 設計 し 、そ の合 成を叶画した。

  目的とする4は(3 a,l a)‑C‑グリコシド結合を 有し、その結合の立 体選択的な構築が合成上 の鍵 と なる と考 え られ た。 著 者は 、目 的 とす る4を 、グルコースユニッ トとフラノースユ ニツ トを シ リル ケタ ー ルテ ザー で結合 させた化合物5Iの 分子内ラジカル環化 反応による立体選 択的 なcIグ リコ シド の 構築 後、VorbrOggen法によるアデ ニン塩基の導入、リ ン酸化を経て合成 でき ると考えた。

  グ ル コー スユ ニ ット をBuLi存在 下、 ま ずジ メチ ル ジク 口口 シ ラン と、 続いてフラノー スユ ニ ット と 反応 させ る こと によ り51を 合成 し た。 その も のを 単離 せ ず、BU3SnH/AIBNによ るラ ジカル反応に付 した後シリル基を 除去したところ、 予想したように望みとする(3 鴎1 a)‑Clグ リコ シ ド体 を主 生 成物 とし て 収率50%で 得る こ とが できた。続いて、Vorbruggen法により 、ア デニ ン 塩基 、あ る いは ウラ シル塩 基を導入し、ホス ホロアミダイト法に よるトリス亜リン 酸化 を経て、目的と する4及 び5を合成 することができた 。

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(2)

  アデ ノホ スチンA、IP3、 合成し た4及び5のIP3レセ プター に対するIP3結合阻害活性(1C苅)及 びCa2゛放 出活性(ECso)を 評価し た。4及び5のICm値 はそれ ぞれ4.9 nM,IO,9 nMとJなり、4及 び5はア デ ノホ スチンA (ICso 1.3 nM)より 低いも ののIP3 (ICso 16 nM)よ りも高 いIP3レセ プ タ 一 親和 性 を 示 し た。 ま た 、4及び5のECsoは そ れ ぞれ77 nM,378 nMと なり 、特に4は ア デノ ホスチ ンA (ECju=14.7 nM)より 低いもののIP3 (EC30=177 nM)より高いCaz゛放出活性を示 し た 。C. グリ コシド 型アデ ノホ スチンA (4)は 、IP3より も高いCa2+放出 活性を 保持し 、且つ アデ ノホス チンAより もイ 匕学的 或は生 物学的 に安定 と考 えられ ること から、 アデノホスチンA の安 定等価 体と して機 能する ことが 期待で きる 。

II.互2立Lレ7Zヱニ効 墨tニ基至 く立盤 制御と 孟Q鰹抵

  ラジ カルC‑グ リコ シル化 の立体 選択性 は、 アノマ ー効果 の影響 を受け ると 考えら れる。上述 の分子内ラジカル環化反応では、目的とするd. C‑グリコシドが主生成物であったもののp.c.グ ルコ シドも 副生し た。こ のよう に立 体制御 が不完 全であ った のは、 アノマ 一効果 が期待したよ うに 十分有 効に作 用しな かった のが 一因と 推論し た。こ のよ うな経 緯から 、著者 は、アノメリ ック ラジカ ル反応 におけ るアノ マー 効果の 制御に ついて 興味 を持ち 、ピラ ノース ラジカル中間 体の 配座を'C4や4Cl型 に制御 するこ とに より、 アノマ ー効果 が増 強する ととも に作用 する方向 が規 定され 、従来 にない 高立体 選択 的なア ノメリ ックラ ジカ ル反応 を行な えるの ではないかと 考え 検言寸 するこ とにし た。

  著者 は、ま ず、こ の考 えをキ シロー ス誘導 体を基 質と して実 験的に 検証し た。 則ち、配座制 御 して い な い67、 環状ケ タール で4C| 型に制 御した69及び70、フェ ニルホ ウ酸 エステ ルで'C4 型に 制御し た71、及 び嵩 高い、TIPS基を 導入しIC」型に 制御 した72を 各々基 質と して用いて、

BujSnDによ る ラ ジ カ ル重 水 素 化 反 応 を行い 、各々 重水素 体を得 た。 配座制 御して いない67の 重 水素 化 の 選 択 性 は甜p比65:35と な ったの に対し 、4C,型基質69及び70はそれ ぞれa/p比97:3 と高 いa‐ 選択 性を示 した。 一方、IC』型 基質71及 び72の 重水素 化は、その選択性が完全に逆転 し、 それぞ れa/p比1:99と 高いpー選 択性を 示した 。以上 のよ うに、4C,型及ぴ|CJ型配座に制御 する ことに より、 アノメ リック ラジ カル反 応の立体選択性が劇的に変化し高いa‐及びD.選択性 を示 した。

  ラ ジ カ ル 基 質69及 び71か ら 生 じ る アノ メ リ ッ ク ラジ カ ル 中 間 体の 配 座 を 、 めinitio計算 (UHFB‑21G)に よ り解 析 し た と ころ 、69及 び71の ラ ジ カル 中 間 体 は 、そ れ ぞ れ4C,型 配 座IV 及ぴIC」型配 座VIを とるこ とが示 唆され た。

  以上 の実験 結果及 ぴ計 算結果 から、 いずれ の配座 にお いても アキシ ャル攻 撃が 優先されるの は 、ア キ シ ャ ル 方 向のp性 の 酸 素孤 立 電 子 対 と新 し く 形 成 され る結合 の反結 合性軌 道(a*)が 摂動 するこ と(速 度論的 アノマ ー効 果)が 可能に なるこ とか ら理解 できる 。っま り、本反応を 支 配 す る 要 因 は 種 々 の 立 体 的 要 因 で は な く 、 ア ノ マ 一 効 果 で あ る と 考 え ら れ る 。   こ の 配 座 制 御法 をBujSnCH2CH=CH2を 用 い る キ シロ ー ス の ラジカ ルC・グリ コシ ル化に 応用 したところ、 CI型基質69,70及ぴIC4型基質71,72において、各々甜p比91:9〜85:15及ぴI:99 と高 い僻及 ぴB.選択 性を示 した。 アノマ ー位 でのこ のよう な立体 選択的なラジカル反応は従来 報 告 さ れ て お ら ず 、 本 法 は 有 用 なcIグ リ コ シ ル 化 法 と し て の 利 用 が 期 待 さ れ る 。   さらに、この配座制御法を用いてグルコース類のラジカル重水素化を検討した。4Cエ型基質81, 82は、4C|型キ シロ ースと 同様に 、それ ぞれ 甜p比98:2と高 いa選 択性を示した。しかし、嵩高 いTIPS基 を 導 入 し |C4型に 制 御 し た83及 び85は、2位TIPS基 か ら の分 子 内 水 素 引き 抜 き が 進行 し、ア ノマー 位で直 接重水 素化 されな かった 。一方 、TIPS基 を導入し|C。型に制御し、且 つ5位にホ ルミ ル基を 有する87は、 重水素 化が進 行し甜p比O:100と 高いp選択 性を示 した。|q 型 グル コ ー ス に お ぃて は 、spユ 型 の5位メチ レン基83,84をsp2型 のホル ミル 基87に変 換する こと により 、1.5‐ ジア キシャ ル反発 が緩和 され、アノマー効果から有利なアキシャル攻撃が進 行し たもの と考え られる 。

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(3)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    松田    彰 副査    教 授    橋本俊一 副査、助教授    中島   誠 副査    助教授    周東   智

学 位 論 文 題 名

立体選択的アノメリックラジカル反応:

C ・グリコシド型アデノホスチン A の合成 及びアノマー効果に基づく立体抑制とその解析

  cl グリ コ シ ド結 合 は 化学 的及び酵 素的に 安定であ ること から、天 然のO‑ グ リコシ ド 結 合 の 安定 等 価 体と し ての機 能を果 たすこと が期待さ れ、そ の利用が 注目さ れて

′ い る 。 阿部 洋 は 、こ の ように 興味深 い CI グリコ シド結 合のラジ カル反応 による 立 体選択的構築について以下のような研究を行った。

!:垈 Z リ三2 ピ型Z 霊 Z 杢丞圭ン A の金成

     細胞内セ カンド メッセン ジャーであるIP ユは、細胞内 Ca2 ゛放出物質として重要で あ る が 、 1993 年高 橋 ら によ り 単 離さ れ た アデ ノ ホ スチ ン A は 、 IP ユ の約 10 ‑100 倍 強 い Ca2 ゛放出活 性を示 し、その 構造と 活性に興 味がもた れてい る。アデ ノホス チン A の 安 定 等 価 体 と な る こ と が 期 待さ れ る アデ ノ ホ スチ ン A の C ‐ グ リ コシ ド 型 アナ ログ及びそのウラシル類縁体を設計し、その合成を計画した。

     目的物は(3 a,l め―c ‐グリコシド結合を有し、その結合の立体選択的な構築が合 成 上 の 鍵 とな る と 考え ら れた。 種々検 討の結果 ,グルコ ースユ ニットと フラノ ース ユ ニ ッ ト をシ リ ル ケタ ー ルテザ ーで結 合させた 化合物の 分子内 ラジカル 環化反 応に よる立体選択的な(3 a,l a)‑C‑ グリコシド結合の構築に成功した。さらに、Vorbniggen 法 に よ る ア デ ニ ン 塩 基 の 導 入 、 リン 酸 化 を経 て ア デノ ホ ス チ ン A の cl グ リ コ シド 型 アナロ グの合成 を達成 した。同 様の方 法にてウ ラシル類縁体の合成にも成功した。

     これら合 成化合 物のIP3 レセプタ ーに対 するIP3 結合阻 害活性(IC50) 及びCa2 十放 出 活 性 (ECso) を 評 価 した 。 ア デノ ホ ス チン A の C ‐ グ リ コ シド 型 ア ナロ グ 及 びそ の

‑ 794

(4)

ウラシル類縁体のIC50 値はそれぞれ4.9 nM ,10 ,9nM となり、IP3 (ICso =16 nM) より も高いIP3 レセプター親和性を示した。またCa2 ゛放出の ECso はそれぞれ77 nM ,378 nM となり、特にアデノホスチンAC ‐グリコシド型アナログはIP3 (ECso =177 nM) より高 いCa2 十放出活性を示した。

     以上の結果は、C .グリコシド型アデノホスチンA (4) は、アデノホスチンA の 安定等価体として機能することを示唆する。

亘:霊2 立ルアノヱニ効墨!三基至≦立佳制御と量c 鰹柢

     ラジカルc ・グリコシル化の立体選択性は、アノマー効果の影響を受けると考え られる。上述の分子内ラジカル環化反応では、目的とする叫cl グリコシドが主生成 物であったもののp‑c‑ グリコシドも副生した。このように立体制御が不完全であっ たのは、アノマー効果が期待したように十分有効に作用しなかったのが一因と推論 した。このような経緯から、アノメリックラジカル反応におけるアノマー効果の制 御について興味を持ち、ピラノースラジカル中間体の配座を1C4 や4C1 型に制御する ことにより、アノマー効果が増強するとともに作用する方向が規定され、従来にな い高立体選択的なアノメリックラジカル反応を行なえるのではないかと考え検討し た。

     まず、配座制御したキシロース誘導体を基質として用いるアノマー位のラジカル 重水素化反応を行い、上記の推論を実験的に検証した。その結果、予想したように4C1 型及びlC 。型配座に制御することにより、アノメリックラジカル反応の立体選択性 が逆転し、高選択的にQ ‐あるいはp .側からの重水素化が進行することが分かった。

この結果をめinitio 計算 (UHF/3‑21G) により解析した。4C1 型及び1C4 型いずれの配 座においても、アキシャル方向のp 性の環内酸素孤立電子対と新しく形成される結 合の反結合性軌道(a*) が摂動すること(速度論的アノマー効果)が可能なために、

遷移状態が有利となるアキシャル攻撃が進行するが示唆された。っまり、本反応の 選択性を支配する要因は種々の立体的要因ではなく、アノマー効果であると考えら れる。

    BU3SnCH2CH=CH2 を用しゝるキシロースのラジカル C .グリコシル化に応用したと ころ、従来報告にない高立体選択的なc ・グリコシル化法を開発することに成功した。

     さらにグルコース類を基質とした場合でも、配座制御することにより、アノマー 位での高立体選択的重水素化及びC ‐グリコシル化が可能であることを明らかにした。

   以上の成果は、糖化学及びロュ関連の医薬化学に大いに寄与するもので、薬学博 士の学位を授与するに値するものと判断した。

‑ 795

参照

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