博士(薬学)刔 学萱 学位論文題名
固定化単層リポソームカラムを用いた生体分析及び ク ロ マト グ ラ フイ ー によ る 酵 素反 応 の 解析
学位論文内容の要旨
庄盡;:リポソームは生体膜のモデルとして、薬物、蛋白質、ベプチドなどの生理活性物質と 細胞膜の相互作用の研究によく使われている。いままで、平衡透析法、沈殿法、ろ過法など が典型的な手法として使われている。固定化リポソームカラムクロマトグラフイー(ILC)は新 規手法として近年開発された。この方法は、リポソームを担体(例えぱ、ゲル)に固定化し て、得られたりポソーム固定化ゲルをクロマトグラフイーのカラム充填材として使用する。ILC 法は次の5つの特徴がある:1)薬物、ペプチドと膜の相互作用を定量化するのが可能である。
2)高い再現性3)保持時間を精密に測定することによって、弱い反応の検知も可能である。4) 実験条件の制御、例えぱ、pH、温度、イオン強度などの制御が容易である。5)自動化とオン ライン測定が可能である。・そこで、ILC法は特に生体関連の分析技術として大きな期待が寄せ ら れ てお り 、 この 技 術 を利 用 し たい ろ いろな アプリケ ーショ ンが注目 されてい る。
本研 究では 、アビジンービオチン間の特異結合を利用して、サイズの均一な単層膜 リボソームを固相(ゲル)に固定化した。固定化単層膜リポソームでは、固定化量が高く、
1年以上の長期保存が可能であるなど安定性に優れており、信頼性の高い完全なりン脂質膜 を提供出来ることから、生化学的な分析や生物工学的応用において使用することが可能であ る。ILC法を用いて、以下の研究を試みた。生体膜への薬物吸収の予測、生体分子と生体膜の 相互作用の分析、セシサーのためのシグナル増幅とその応用。
鐘墨と窒塞.
.1.ILC法による薬物ー膜相互作用の分析.
アビ ジンー ビオチン問の特異結合によって、サイズの異なる単層膜リポソームをゲ ルに固定化した。固定化単層膜リポソームでは、固定化量が高く、安定性に優れており、信 頼性の高い完全な膜が得られた。クロマトグラフイーの結果より、リポソーム固定化カラム を使用することによって、薬物分子の固相における保持時間はりポソームフリーのカラムよ り大幅に延長することが分った。薬物の膜への分配係数(KLM)は薬物の保持体積から測定した。
膜分配係数(KLM)に対して、リポソームのサイズ、構造(単層或いは多層)、表面電荷、膜流動 性、温度の影響につぃくて調べた。文献値と比較した結果、負に荷電したりポソームもしくは コレステロールを混合したりポソームを使用する場合、ILCによって、薬物と膜の相互作用を
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解 析で き るこ とを 示し た。 本 研究 では 、種 々の よ く知 られている薬物を対象 とし、卵ホスフ ァチジ ルコリン(EPC):ホスファチジルセリン(PS):ホスファチジルエタノールアミン(EPE): コレス テロール(cholesterol)(5:1:2:2モル比)で構成され るりポソーム固定化カラムによ り 分析 を 行っ た; 薬物 のlog KLM値 はCaco‑2細 胞へ の透 過 性と 非常 に良 く相 関 することが明 ら かと な った 。さ らに 、log KLM値とヒトの経口薬 物吸収量の関係から、logKLM値が薬物の受 動 的な 細 胞吸 収の 予測 に使 用 できることが示され た。従って、ILC法は創薬に おける初期段階 の 莫大 な数の化合物を スクリーニングする必要があ る場合に非常に有用である と考えられる。
2.ILC法を用いた脂質陽イオン一膜 相互作用の熱力学的解析
脂 溶 性 脂 質 陽 イ オ ン ― ト リ フ ェ ニ ル ホ ス ニ ウ ム 同 族 体 の 固 定 化リ ポソ ー ムヘ の分 配 係 数をILC法に よっ て 解析 した 。脂溶性脂質陽イオ ゾ・の膜内の滞留時間は分 子の疎水性の増 加 によ っ て増 大す るこ とが 解 った 。こ れは 、脂 溶 性脂 質陽イオンがりポソー ム膜の疎水性部 分 に分 配 して いる こと を意 味 して いる 。こ の陽 イ オン とりポソーム膜の相互 作用に対する陽 イ オン の 濃度 、流 速、 ゲル の 種類の影響について 調べた。得られた熱力学的量AHo、ASo、AGo に 対し て 、解 析し た結 果、 陽 イオ ンの 疎水 性を 増 大す ると、AG゜は減少して 、AHo、ASoは増 大 する 。 これ は陽 イオ ンの り ポソ ーム 膜へ の分 配 過程 はエントロピー制御過 程であることを 暗示し ている。
3.溶質 ―脂質膜の相互作用の螢光 オンライン分析
蛍 光 物 質 ( カ ル セ イ ン ) を 内 包 し た り ポ ソ ー ム をILCに 用 い て 、 溶 質 分 子 ( 薬 物 、 蛋 白質 、 陽イ オン 、ベ プチ ド )と りポ ソー ム膜 の 相互 作用によって、膜の構 造に影響し内包 さ れた 螢光分子が漏出 する。その漏出蛍光をオンラ イン蛍光検出装置で計測し た。その結果、
薬 物一 膜 、陽 イオ ン一 膜間 の 相互 作用 に対 する 蛍 光漏 出量とlogKLM間の線形 関係が見出され た 。疎 水 性陽 イオ ン、 両性 化 合物 、合 成ペ プチ ド の膜 透過性は分子の保持時 間の増大という 結 果か ら も明 らか であ った 。 部分 変性 され たカ ル ボニ ック アン ヒ ドラ ーゼCAB)を用いた場 合 、ク ロ マト グラ フイ ー上 の 滞留 が検 知で きな い 大き な蛍光漏出が観察され た。このことか ら 、蛋 白 質一 膜の 弱い 相互 作 用で もオ ンラ イン 螢 光漏 出分析によって明瞭に 観察できること が わか った。これは部 分変性蛋白質の性質に関して 、重要な情報が提供できる と考えられる。
4. 蛍 光 物 質 内 包し たILCに おけ るホ スホ リ バー ゼAユ(PIAエ ) によ る蛍 光オ ン ライ ン検 出 PLA2のり ン脂 質の 加水 分 解作 用を 調べ るた め に本 実験 ではILCを用 いて 、PLA2の触媒作 用 によ る 膜漏 出に つい て調 べ た。 少量 のPLA2を り ポソ ームカラムに投入し、 リポソームに内 包 され た 螢光 物質 の漏 出を オ ンラ イン 螢光 検出 装 置で 検出した。PLA2による 膜漏出はゲルの ポ アサ イズ、リポソー ムのサイズ、蛍光物質の濃度 に強く影響されることが解 った。LUV、TSK 或 いはSephacび1ゲ ル 、Ca2゛ 濃度 がlnMの 水溶 液の 条件 で 、PLA2に よる 膜漏 出 は最大値を示 し た 。 さ ら に 、PLA2の 応 用 例 と し て 、 抗PCB抗 体 を 用 い たPCBの 新 規検 出法 を 開発 した 。 本 検出 法 は、 ター グッ ト物 質 とPLA2一 ター ゲッ ト 物質 コンジュゲートの抗体 に対する競合的 結 合を 用 いる 。こ の競 合的 結 合を 行う 第1カラ ムと して 、抗PCBI―lgYを固定 化した抗体固定 化 カラ ム を作 製し た。 第2カラ ムと し て、 蛍光 物質 カル セ イを 封入 した りポ ソ ームを固定化 し たり ポ ソー ムカ ラム を作 製 した 。溶 出し たPLA2コン ジュゲートによってり ポソームが破壊 さ れ、 カルセインの漏 出が起こる。はじめにPLA2に3,4・ジクロロアニリンを 固定化したコン f
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ジュゲートを作製した。作製したコンジュゲートは野生型PLA2の約50%の活性を有していた。
このコンジュゲートを用い、種々濃度のPCB溶液の測定を行った。PCB濃度とカルセイ漏出 量の相関性を評価した結果、PCB検出限界はおよそ10ng/mlであり、既に報告されているPCB 一螢光物質コンジュゲートを用いた競合法と比較し、100倍高感度な検出が可能であった。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
加 茂 直 樹 原 島 秀 吉 井 関 健 宮 内 正 二
学 位 論 文 題 名
固 定化 単層リポソームカラムを用いた生体分析及び クロマトグラフイーによる酵素反応の 解析
薬 物 , 蛋 白 質 , ベ プ チ ド な ど の 生 理 活 性 物 質 と 細 胞 膜 との 相 互 作用 の 研 究 の際 に , 細 胞 膜 が 脂 質2分 子 膜 を 基 本 構 造 と す る こ と か ら , リ ポ ソ ー ム が モ デ ル 膜 と し て 頻 用 さ れ て い る . 相 互 作 用 の 研 究 方 法 と し て , い ま ま で , 平 衡 透 析 法 , 沈 澱 法 , 急 速 ろ 過 法 な ど が 用 い ら れ て い る . 近 年 , リ ポ ソ ー ム を ゲ ル に 包 括 し て カ ラ ム と し , ク 口 マ ト グ ラ フ の 技 法 を 用 い て , 相 互 作 用 を 測 定 す る 方 法 が 提 案 さ れ て い る . こ の 方 法 を 固 定 化 リ ポ ソ ー ム カ ラ ム ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー ( 工 mmobilized Liposome Chromatogピaphy, 工LC) と 申 請 者 は 呼 ん で い る . 工LC法 に は 種 々 の 長 所 を 有 する . そ れ ら は ,1) 相 互 作 用 の定 量 化 が容 易 ,2) 高 度 な再 現 性 ,3) 滞 在時 間 ( でetention time)の 精 度 の よ さ に 起 因 す る 弱 い 相 互 作 用 の 定 量 化 が 可 能 ,4) 実 験 条 件 の 制 御 が 容 易 ,5) 自 動 化 と オ ン ラ イ ン 測 定 が 可 能 等 で あ る , こ れ ら の 長 所 を 持 っ も のの , 従 来 は 単 に ゲ ル と り ポ ソ ー ム を 混 ぜ る だ け ( 包 括 法 ) で 作 製 さ れ , 安 定 性 に 欠 け , 上 記 の 潜 在 的 な 長 所 が 発 揮 出 来 て い な か っ た .
そ こ で , 申 請 者 は ア ピ ジ ン ー ピ オ チ ン 間 の 強 固 な 結 合 を 利 用 し て , サ イ ズ 均 一 の 単 層 膜 リ ポ ソ ー ム を ゲ ル に 固 定 化 す る 方 法 を 開 発 し た . 繰 り 返 し 使 用 し て も ,1年 間 も 安 定 し て 再 現 性 よ く 滞 在 時 間 測 定 で き るILCを 完 成 さ せ た . こ の エLCを 使 用 し て 以 下 に 述 べ る よ う な 研 究 を 展 開 し た .
1. エLC法 に よ る 薬 物 ― 膜 相 互 作 用