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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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     博士(理学)阿部剛史      学位論文題名

Morphological and chemotaxonomlCStudieSOf 己ロ勿ワ ℃刀C 励      刀 な 】 り 〇 刀 ZC 口 andrelatedSpeCleS   ( Rhodophyta )      (紅藻ウラソゾ及び近縁種の形態学的及び成分分類学的研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  紅 藻 ソ ゾ 属 ( イ ギ ス 日 フ ジ マ ツ モ 科 ) は 世 界 中 の 熱 帯 か ら 温 帯 に か け て 広 く 分 布 し 、 150種 近 く 知 ら れ て い る 。 形 態 学 的 形 質 の 変 異 の 把 握 が 困 難 で 、 分 類 学 的 に 難 しい グ ル ー プ と さ れ て い る 。 本 属 植 物 は 特 異 な 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産物 を 生 成 す る こと が 知 ら れ 、有 機 化 学 者 に よ っ て 多 く の 化 合 物 が 報 告 さ れ て い る 。 こ れ ら の化 合 物 の 分 類 学的 意 義 を 明 らか に す る た め に 、 日 本 近 海 に 生 育 す る 種 の う ち 、Laurencia composita Yamadaキ ク ソ ゾ 、 厶 okamurae Yamadaミ ツ デ ソ ゾ 、L .japonens'is Abe et Nlasuclaニ ッ ボ ン ソ ゾ 、 及 び ム nipponica Yainadaウ ラ ソ ゾ の4種 に っ い て 、 天 然 藻 体 及 び 培 養 藻 体 を 用 い た 形 態 学 的 及 び 成分分 類学的 研究 を行い 、以下 に記述 する 事象を 明らか にした 。

  キ ク ソ ゾ と ミ ッ デ ソ ゾ は 外 観 が 互 い に 類 似 し て お り、 し ば し ば 混同 さ れ て き た。 し か し 両 者 は 、 分 枝 の 様 式 及 び 髄 層 細 胞 壁 の 半 月 状 肥 厚 の 多 寡 に基 づ き 、 形 態 的に 区 別 で き る。 両 者 は 生 育 環 境 、 特 に 乾 燥 に 対 す る 耐 性 に 違 い が 見 ら れ る 。両 者 は ま た 、 二次 代 謝 産 物 の違 い に よ っ て 明 瞭 に 区 別 す る こ と が で き る ( キ ク ソ ゾ は カ ミ グラ ン 型 セ ス キ テル ペ ノ イ ド を、 ミ ツ デ ソ ゾ は シ ク ロ ロ ー ラ ン 型 セ ス キ テ ル ペ ノ イ ド を 生 成 す る ) 。 キ ク ソ ゾ は 種 々 のC15ブ ロ モ エ ー テ ル の 前 駆 体 で あ るldllrCIlccnyneを 生 成 し 、 こ の こ とか ら 本 極 は 二 次代 謝 産 物 生 成に おいて 、ミッ デソ ゾより も派生 的であ る。

  こ れ ま で 他 種 と 混 同 さ れ て き た ソ ゾ 属 の1種 ニ ッ ポ ン ソ ゾ を 新 種 と し て 記 載 した 。 本 種 は 以 下 の 特 徴 を 持 つ 。1) 軸 は 直 立 し 円 柱 状 で 硬 い 軟 骨 質 、 小 盤 状 の 一 次 付 着 器 と 匍 匐枝 に 形 成 さ れ る 仮 根 状 の 二 次 的 付 着 器 を 持 つ 。2) 三 方 向 ヘ 分技 す る 。3)最 末 小 枝 及 びそ れ に 準 ず る 側 枝 は 、 向 軸 側 に 強 く 湾 曲 す る 。4) 不 定 枝 は 主 に 腋部 に 生 ず る 。5) 周 心 細 胞は 中 軸 細 胞 あ た り4個 形 成 さ れ る 。6) 皮 層 細 胞 間 に 縦 方 向 の 二 次 的 壁 孔 連 絡 を 持 つ 。7) 皮層 細 胞 最 外 層 は 枝 の 先 端 に お い て も 突 出 し な い 。8) 皮 層 細 胞 は 柵状 組 織 様 を 呈さ な い 。9)髄 層 細 胞 壁 に 多 数 の 半 月 状 肥 厚 を 持 つ 。IO)最 外 層 の 皮 層 細 胞 と 毛 状 枝 細 胞 は 、 細 胞 あ た り1個 の サ ク ラ ン ボ 小 体 を 持 っ 。11) 四 分 胞 子 嚢 の 配 列 は 平 行 型 。12)嚢 果 は 広 卵 形 で 、 下部 は 枝 の 組 織 に 半 ば 埋 没 す る 。1:3)不動 精 子 嚢 の 核は 先 端 に 位 置す る 。 本 種 は また 、 特 典 的 な二 次 代 謝 産 物 aplysiadiol、2,10一clibromo‑3−cliloroーa−c,llamigrene、laurenejlyllc'、jipoilellyneを生成 するこ とによ って も特徴 付けら れる。

  ウ ラ ソ ゾ に は 、 形 態 的 に は 区 別 で き な い が 化 学 成 分の 異 な る 、 多数 の 個 体 群 が見 出 さ れ て い る 。 各 個 体 群 は そ れ ぞ れ 特 有 の 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産物 に よ っ て 特 徴付 け ら れ 、 その 最 終 産 物 は カ ミ グ ラ ン型 セ ス キ テ ルベ ノ イ ド のprepair;if cnolとhaloclimuigre11e epoxi( |e、 C15ブ ロ モ エ ー テ ル のlaurenCill、laureatill、iSOprelaIJrefIICin、epilaura11ene、

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(2)

kumausalleneで あ る。 これ ら7種の 二次 代謝 産 物の 生成 は、 天然 藻体においても様々な 条 件下における 培養藻体においても維持され た。ブロモエーテルとテル ペノイドの予想される 生合成過程は 非常に異なり、これらの生合 成にかかわる酵素群もそれ ぞれ異なったものであ る と考 えら れる 。 まず 、テ ルベ ノイ ド のprepacif enol、ブ ロモエーテルのlaureatinを 生 成する各個体 群を選び、培養株を用いた交雑実験を行なった。I 1四分胞子体の分析結果は、

これらの酵素 にかかわる遺伝子が核ゲノムにあることを示唆した。正逆交雑により得られた、

胞子四分子を 含むFl配偶体の分析結果は、 テルベノイド及びブ口モエ ーテルの生合成にかか わるそれぞれ の遺伝子が、相同染色体の異 なる部位に存在し、減数分 裂時に分離することを 示唆した。得 られた多数のFエ配偶体のう,ち一個体のみ、両親由来の化学成分両方を生成する 例 が見 られ たが 、これはおそら く組み替えによるものと思わ れる。prepdcif cnolを生成 す る株とlaureatinを生成する株との交雑で 得られたFエ四分胞子体、お よびそれから得られた Fユ配偶体は、 両親由来の成分を生成する 佃体のみを生じた。この結果は、二次代謝産物の違 い で特 徴付 けら れ る各 個体 群がraceと して取り扱われるべ きものであることを示してい る   (chemical race)。

  培養株を用 いた交雛実験により、ウラソ ゾのcliaiuical race間の遺伝的関係を解析した。

個 々のrace内の 交 雑に より 生じ たrl四 分胞子体とFI配偶体 は、それぞれのr(Iceを特徴 付 ける化学成分 を生成した。異なるrace間の 正逆交雑により生じた1 1凹分胞子体には以下の 場合があった 。1)両親の二次代謝産物を ともに生成する。2)両親の 二次代謝産物のいずれ かのみを生成 する。3A)両親の生成する二 次代謝産物に加え、さらに 異なる化合物を生成す る 。3B)両 親の 生成する二次代謝 産物の一方に加え、さらに 異なる化合物を生成する。後 二 者 は、 両親 株の 酵素群の補完に より、雑種特異的な産物が形 成されることを示唆する。2つ のraceが 同 所 的 に 生 育 す る 場 所 で の 個 体 群 構 造 を 解 析 し た 。prepdcifenol raceと laureatin raceが 同所 的に 生育 する 南 茅部 町の3調 査地 のひ とっ では、雑種四分胞子体 に 加え、雑種配 偶体(組み替え型)が高頻度で見出された。このことは、自然交雑により新たに prepacifenol/laureatlIlraceが形 成さ れつっあることを強 く示唆する。一方、laurencin raceとepilaurallene raceが 同所 的に 生育 す る忍 路湾 に於 いて は 、rwe問 雑種 は希 であ り、四分胞子 体(おそらくFl世代)が少数 見出されるのみであった。 このことは、環境の選 択 によ る棲 み分 け があ り、 組み 替え 型 の配偶体が生じない ことにより、raceの独立性が 保 た れて いる こと を示唆する。cliemical raceの地理的分布と 、各rilceを特徴付ける化合 物 の 生合 成過 程、 お よび 最終 氷期 以降 の 日本海の古環境を考 慮することにより、raceの分 化 と分布域の変 動過程を説明する作業仮説を 立てた。

  本研 究で 扱っ た4種は亜属レベ ルの形質のみならず、多く の形質を共有している。これ ら 近 縁種 の系 統関 係 を明 らか にす るた め 、以 下の5つ の形 質を 検討 した。1)分校様式、2) 半 月状 肥厚 、3)不動精子嚢核の 位置、4)低温耐性、5)含 ハロゲン二次代謝産物。これ に 基づき、これ らソゾ属4種の系統関係を類 推した。

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(3)

学位論文審査の要旨

主 査    教 授    増 田 道 夫 副 査    教 授    片 倉 晴 雄 副 査    助 教 授    堀 □ 健 雄 副 査    助 教 授    市 村 輝 宜

副 査    助 教 授    鈴 木    稔 ( 大 学 院 地 球 環 境 科 学 研 究 科 )

     学位論文題名

lvIorphological and chemotaxonomlCStudieSOfZ ーロ銘髭刀C 励      刀をゅ〇刀ZC ロ andrelatedSpeCieS

     (紅藻ウラソゾ及び近縁種の形態学的及び成分分類学的研究)

   紅 藻 ソ ゾ 属 ( イ ギ ス 目 フ ジ マ ツ モ 科 ) は 形 態 学 的 形 質 の 変 異 の 把 握 が 困 難 で 、 分 類 学 的 に 難 し い グ ル ー プ と さ れ て い る 。 本 属 植 物 は 特 異 な 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産 物 を 生 成 す る こ と に よ っ て も 特 徴 付 け ら れ 、 こ れ ら の 化 合 物 の 分 類 学 的 形 質 と し て の 有 効 性 が 指 摘 さ れ て き た が 、 本 格 的 な 成分 分類 学は 試み られ てい なか った 。 著 者 は こ れ ら の 化 合 物 の 系 統 分 類 学 的 意 義 を 明 ら か に す る 目 的 で 、 日 本 近 海 に 生 育す る種 のう ち、 Laurencia composita Yamada キクソゾ、己,okamurae Yamada ミッデ ソゾ、工・ー問ワD 凡ピ門J むAbeetMasuda 二ッポンソゾ、及び己.門ゆP 〇門洫Yamada ウラソ ゾ の 4 種 に つ い て 、 天 然 藻 体 及 び 培 養 藻 体 を 用 い た 形 態 学 的 及 び 成 分 分 類 学 的 研 究を行い、多くの新知見を得た。

   外 観 が 互 い に 類 似 し て お り 、 し ば し ば 混 同 され てき たキ クソ ゾと ミッ デソ ゾは 、 形 態 学 的 並 び に 生 態 学 的 特 徴 の 他 に 、 二 次 代 謝 産 物 の 違 い に よ っ て 明 瞭 に 区 別 す る こ と が で き た 。 キ ク ソ ゾ は カ ミ グ ラ ン 型 セ ス キ テ ル ベ ノ イ ド を 、 ミ ッ デ ソ ゾ は シ ク 口 口 ー ラ ン 型 セ ス キ テ ル ペ ノ イ ド を 生 成 す る 。 こ れ ま で 他 種 と 混 同 さ れ て き た ソ ゾ 属 の 1 種 を 新 種 二 ッ ポ ン ソ ゾ と し て 記 載 し た 。 本 種 は 硬 い 軟 骨 質 の 藻 体 を 持 つ こ と 、 三 方 向 分 枝 、 向 軸 側 に 強 く 湾 曲 す る 最 末 小 枝 、 主 に 腋 部 に 生 ず る 不 定 枝 及 び 枝 の 組 織 に 半 ば 埋 没 す る 衰 果 に よ っ て 近 縁 種 と 区 別 さ れ 、 特 異 的 な 二 次 代 謝 産 物 laurenenyne や japonenyne を 生 成 す る こ と に よ っ て も 特 徴 付 け ら れる 。ウ ラ ソ ゾ に は 、 形 態 的 に は 区 別 で き な い が 化 学 成 分 の 異 な る 、 多 数 の chemicalraces が 存 在 す る こ と を 培 養 実 験 と 交 雑 実 験 に よ っ て 証 明 し た 。 各 chemicalrace は そ れ ぞ れ 特 有 の 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産 物 に よ っ て 特 徴 付 け ら れ 、 そ れ ら は カ ミ グ ラ ン 型 セス キテ ルペ ノイ ド のprepacifenol とhalochamigreneepoxide 、C |エプロモェーテルの laurenCin 、laureatin 、iSOprelaurefuCin ヽepilaumllene 、kumauSallene である。また、組 み 換 え 型 の 新 し い race が 分 布 域 を 拡 大 し つ っ あ る こ と を 、 フ イ ー ル ド 調 査 に よ っ て示した。

   こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 二 次 代 謝 産 物 の 分 類 学 的 形 質 と し て の 意 義 を 明 ら か に

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したことによって海藻類の系統分類学の新しい分野を開拓したものであり、生物 学に貢献するところ大なるものがある。

   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認

める。

参照

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