第 6 章 カナダ BC 州:鉱業再生計画(マインプラン)の動向、人材育成問題
6.4. 今後の鉱業労働者に関する人材確保の必要性
6.4.1. Prospecting the Future-Meeting Human Resources Challenges in the
カ ナ ダ 政 府 は 鉱 業 界 が 直 面 す る 短 期 、 お よ び 長 期 の 人 事 問 題 を 調 査 し 、 Prospecting the Future – Meeting Human Resources Challenges in the Canadian Minerals And Metals Industry (将来の展望-カナダの鉱業界が直面す る人事問題政策)という調査報告書をまとめた。2 年半の月日をかけてまとめられた 実態調査は、実際に関係者企業、従事者、労働者、鉱業関係の専門職を育成する教 育機関関係者など、幅広い関係者とのアンケートや面接調査を通して資料が収集さ れ、まとめられた。
高齢化問題
カナダの鉱業界の業界労働人口の平均年齢は、カナダ全体の労働人口よりも高 い。
鉱業界の労働人口の50%が40歳から54歳にあたるが、カナダ全体の労働人口 と比較してみると、その年齢層がカナダ全体の労働人口に占める割合は、39%であ る。
30 歳以下の労働人口が鉱業界で特に低く、熟練を要する職や専門職においては、
特にその傾向が顕著である。
図表6-1 鉱業界と全業界の年齢層による人口の分布比較
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65+
歳
%
鉱業界 カナダ全体
資料: カナダ統計局 (2001年国勢調査)
図表6-2 鉱業界の職業別による労働人口の内訳
0 5 10 15 20 25 30
% 35
30歳以下 50歳以上
資料: Prospecting the Future の被雇用者アンケート調査(サンプル=694人)
退職問題:
• 鉱業界関係者は、向こう10年の間に、現在の労働人口の24.5%が定年退 職をすると推測しているのに対し、アンケート調査の結果では40%の現労働 人口が10年以内に退職を希望しているという結果が出ており、企業側の推 測と被雇用者の間に約63%のギャップがあり、現在の労働者の不足を考え ると、これは検討すべき問題といえる。
• また、10年以内に退職を希望している労働人口の44.6%が、専門職につい ている。
図表6-3 鉱業界の将来の退職者の推定
期間 企業が予測する 退職者の割合
被雇用者が予測する 退職者の割合
2005年から2009年 14.5% 16.9%*
2005年から2014年10年間
の累積 24.5% 40.0%
2004年の雇用者78,184人を元に推定。
※この数字には定年前に退職を予定しているものを含む。
雇用供給の成長
• 将来予測されている大幅な退職者が発生した場合によるカナダ全体の深刻な 労働人口不足が発生するが、鉱業界が直面する労働人口不足は、さらにそれ を上回るものであろうと予測されている。
• 2002年以降、鉱業界のGDP成長は、カナダ経済平均の倍以上であり、鉱業
科学者・技師 技
術 者 関 係
熟 練 労 働 者
労働者 輸送運搬
回 答 者 全 員 ア ン ケ ー ト
• 退職者の補充をするだけでなく、今後の鉱業界の成長により、今後の労働人 口確保は深刻な問題とされている。特に、熟年労働者や専門職においては、
求人確保難が著しいと見られている。
図表6-4 GDP の成長率: 鉱業界とカナダ全体との比較
4.06
-4.58
8.15
5.26
1.63
3.25 2.34 3.09
-6 -4 -2 0 2 4 6 8 10
2000-2001 2001-2002 2002-2003 2003-2004
成長率 年
鉱業界 カナダ全体
資料: カナダ統計局 (CANSIM 379-0017)
職業訓練と教育プログラム
• 高卒者の鉱業関係の専門職への進学率は、業界が必要とする専門職の要 員をはるか下回るとされている。
• 大学院、大学、専門学校などの専門教育を受けている候補者の鉱業界への 募集は、カナダ国内の他の産業や他国の企業との競争により、大変困難で ある。
• 過去の鉱業界への就職の停滞の結果、鉱業技師の卒業者の低迷と大学で の鉱業技士資格プログラムの閉鎖が、近年の現状として上げられている。
図表6-5 カナダの鉱業界の卒業生
カナダの鉱業界の卒業生
272 252 250 227 204
55 49 86
43 28
17 10
28
20
13
0 50 100 150 200 250 300 350 400
1998年 1999年 2000年 2001年 2002年
人
博士 修士 学士
資料: カナダ統計局
求人問題―従来と異なるグループ
• 鉱業界は、従来から女性の就職者が少なく、現在、鉱業界で女性の占める割 合は13%にすぎない。
• 鉱業界には、現在、先住民が従事しているが、その全体に占める割合は低く、
特に専門職への先住民の従事者は少数である。
• 他人種少数民族の鉱業界従事者は、全体の3%以下に過ぎない。また、カナ ダへの新たな移民者の就職は特に少ない。
図表6-6 鉱業界における先住民族労働人人口の占める割合
統計局産業コード 労働人口全体に占める割合
2121 炭鉱業 2.9%
2122 非鉄金属鉱業 6.3%
2123 非金属鉱業と工業用砂利 4.0%
2131 鉱業界の付随産業―鉱業石油ガスの抽出* 6.2%
3314 非鉄金属(アルミニウムを除く)の生産と加工* 1.8%
合 計 4.8%
資料: カナダ統計局 (2001年国勢調査)
※2131と3314に含まれる職業タイプに他の調査と統一する為意多少調整が加えられてい る。
その他の求人問題
• 石油、ガス、及び電力開発、建築界などの他業界からの専門職の求人
• 鉱業界に関する認識の少なさと、鉱業界への仕事に対する間違ったイメージ
• 僻地に位置する鉱山活動へ従事することへの疑念
鉱業界の利点
• 鉱業界は、選りすぐれた人材を引き寄せる数々の利点がある。その第一とし て、高賃金と福利厚生の充実である。
• 平均賃金は、石油・ガス業界の方が多少上回るものの、電力、林業、製造業、
建設業と比較すると、大変魅力的である。
• 就職の安定性も、その魅力の一つである。
求人と就職者の格差
鉱業界の求人と就職難の格差を 3 つの過程において推測したところ、次のような 結果がカナダ政府より報告されている。
• 先ず、鉱業界が現在の活動を維持した場合、求人数と新たな専門職新卒者 を比較した場合、その格差は向こう10年において27,560人に及ぶとされて いる
• また、鉱業界が現在の活動より多少の成長を達成した場合には、その格差 は47,350人に及ぶ。
• 更に、鉱業界が現在より急成長をした場合には、81,970人の新たな人材が 必要となり、供給との格差は将来10年後には70,810人に達するとされてい る。
図表6-7 鉱業界の成長率別に見られる人員不足の推定(シナリオによる予測) 2005年から2014年までのる累積 シナリオ
経済成長なし 経済成長―低 経済成長―高
2004年鉱業界 82,712 90,343 93,672 累積人員需要 36,470 57,150 81,970
累積人員供給 8,910 9,800 11,160
需要と供給の格差 27,560 47,350 70,810
図表6-8 鉱業界従事者の州別内訳
鉱業界関係者の州別内訳
アルバーター 4%
大西洋側の3州 10%
ケベック 27%
サシュカチュ ワン 10%
オンタリオ 33%
マニトバ 5%
ブリティッシ ュ・コロンビ
ア 11%
資料:カナダ統計局 (準州のデーターを除く。また石油・ガス関係者を除く)