5.1 ベーシック XML/EDI 導入のメリット
ベーシックXML/EDIは,従来からのインターネットEDIのEDI電文(ビジネス文書)のシ ンタックスルールをXML化したものであるが,このXML/EDIシステムの導入メリットは以下の 2つがある。
(1) XML技術の先取り
XML は,これからのインターネット言語として必須と認識されており,インターネット 電子商取引(B2C,B2B)に関わらず多くの分野[ナレッジマネジメント(知識管理),文 書処理,印刷処理,音声処理,CAD]で利用されている。最近のB2B標準は全てXML技術 ベースとなっており,マイクロソフトIE(Internet Explorer)には基盤のXML機能が組み 込まれており,身近になっている。
ベーシックXML/EDIの調査研究・導入を通してXML技術の先取りに繋がる。
(2) 優れたインターネットEDIシステムの構築
1996年から登場して導入が拡大しているインターネットEDIシステムに対して,ベーシ
ックXML/EDIシステムは以下のメリットがある。
① 増設・改造のやり易さとコストダウン
XMLが基本的に持ち合わせている柔軟性と拡張性の特長が利用でき,当該EDIシステ ムの将来の増設・改造をやり易くし,結果的にTCO(Total Cost of Ownership)削減に繋 がる。
② 社内システムとの連携
EDIシステムの効果を極大化するには社内システム(バックエンドシステムなど)との 連携(自動,手動)が必要であるが,XMLベースEDIとすることによりそのEDIデータ の意味情報(セマンティック)レベルの処理が可能になり,柔軟性のある社内システムと の連携が可能になる(4章参照)。また,XMLはバックエンドシステムのデータフォーマ ットとしての採用が進んでおり,この場合更にXML/EDI データとバックエンドシステム の連携が容易になる。
③ Web-EDIの問題点の解決
従来からのWeb-EDIは,潜在的な問題として,クライアント側の多画面・多変換の問 題を抱えているが,XMLベースのWeb-EDIはシステム設計方法により,この問題を解決 できる。(「2.5 システム構築上の留意事項とシステム設計」を参照)
5.2 コラボレーション XML/EDI 導入のメリット
コラボレーションXML/EDIは,ビジネスプロセスまでの標準化・電子化を実施するEDIシス テムであり,この実現のための国際的な標準フレームワークとしてebXMLとRosettaNetがある。
このコラボレーションXML/EDIの導入メリットとして以下がある。
(1) ビジネスプロセス・ビジネスプロトコルの標準化,ビジネスプロセスの電子化
従来からのEDI標準化の取り組みはビジネスプロトコル(標準メッセージと標準データ項 目)の標準化の範囲だった(CII,EDIFACT,X12など)。ビジネスプロセスとコラボレー
ション処理は,企業の固有処理として実装され,結果的に高いTCOに繋がっていた。
コラボレーションXML/EDIシステムの代表的な事例のebXMLとRosettaNet標準は,
ビジネスプロセスまでの標準化を実施している。これらの標準の採用によって,ビジネスプ ロセスまでの相互運用性を確保した EDI システムの構築が可能になり,プロプライアトリ EDIシステムへの依存を少なくする。
また,ebXML標準ではビジネスプロセスを電子的に記述できる仕組み「BPSS(Business
Process Specification Schema)標準」を策定しており,このBPSSの利用によりビジネス プロセス処理の自動化に繋がる。
(2) 相互運用性を確保した高機能・高信頼性のEDIシステム基盤の構築
ebXMLでは,機能サービスビューの仕様としてMS仕様,CPPA仕様,及びR&R仕様
を開発している。
MS(Message Service)仕様は,EDI電文を構造化してパッケージングし,最新のセキュ
リティ機能を実装し,かつ高信頼性でEDI電文を搬送する機能を標準化しており,このMS 仕様の採用により,相互運用性を確保した安全(セキュア)な高信頼性のEDIシステムを構 築できる。
CPPA(Collaboration-Protocol Profile and Agreement)仕様は,従来は紙ベースで契約 していたEDI取引方式を,EDIの各ユーザー企業毎にEDI取引方式を電子的に定義する。
この電子的に記述されたEDI取引方式により,EDIシステム構築の自動化に繋げる仕様であ り,将来のEDIシステムの自動構築に繋がる。
R&R仕様は,ebXML仕様に関するデータベース(リポジトリ)の構造・アクセス方法を
規定しており,ebXML準拠システムの運用の基盤の一つになる。
5.3 ベーシック XML/EDI とコラボレーション XML/EDI の連続性
(1) コラボレーションXML/EDIをB2B国際標準のebXMLベースのXML/EDIと考えた場合 ベーシックXML/EDIのメッセージ搬送レベルの標準をebXML MS仕様ベースとして採 用し,順次,事業運用ビュー(BOV)の部分までebXMLを採用して行くと考えると連続性 があると言える。
また,UN/CEFACTのElectronic Business Architecture WGでは従来のEDIメッセー ジ(EDIFACTなど)をebXML MS仕様準拠のメッセージ搬送にて送受信する仕組みを開 発している。
(2) コラボレーションXML/EDIをビジネスプロセスまでの標準化・電子化と考えた場合
① データ項目と標準メッセージの連続性
長年に渡って開発・改良してきた業界又は各企業のEDI用のデータ項目と標準メッセー ジに関して,その項目の意味・必要性,標準メッセージに載せる項目の並びなどの情報は,
コラボレーションXML/EDIに生かせる(連続性があると言える)。
一方,データ項目の表現形式を例えばebXML CC(コア構成要素)仕様に合わせて再表 現すると,新しい表現方法になる。
② ビジネスプロセスの連続性
ビジネスプロセス規約の電子化の観点では,既に業界などで規定・運用しているビジネ
スプロセスをebXML BPSS仕様準拠で記述できる。ビジネスプロセスの電子化に繋がる。
従来のビジネスプロセスを電子化しただけなので,ビジネスプロセスの連続性がある。
備考:ビジネスプロセスの電子化:ビジネスプロセスの電子的表現とこれを参照しての ビジネスプロセス処理の自動化。
業界又は各企業のビジネスプロセスを,ebXMLのビジネスプロセス設計方法の UMM で再モデリングする方法がある。再モデリングの方法により従来のビジネスプロセスと連 続性を確保できる場合と,連続性がなくなる場合がある。
5.4 XML/EDI システムの導入シナリオ
現状想定される EDIシステムからXML/EDIシステムへの移行方式を図 5.1 EDI システムの導 入シナリオに示す。
図 5.1 EDI システムの導入シナリオ
5.4.1 ベーシック XML/EDI の導入シナリオ
現状のEDIとして,プロプライアトリEDI,業界標準EDI,及び業界標準インターネットEDI があるが,これらのEDIシステムはベーシックXML/EDIの構築又はアップグレードが良いオプ ションと思われる。その後,必要に応じてコラボレーションXML/EDIへの移行が可能である。
ベーシック XML/EDI には,メッセージ搬送基盤を実装しない場合と実装する場合があるが,
インターネット EDI 導入時点のメッセージ搬送レベルの標準化状況,及び当該インターネット EDIシステムの実装内容を総合的に判断して選択すれば良い。2002年9月時点の現状では,メッ セージ搬送レベルの国際標準はほぼ確立しているので,技術者・開発費用が許せばメッセージ搬送
プロプライアトリ EDI
業界標準 EDI
コラボレーション XML/EDI
企業固有メッセージ
業界標準メッセージ
業界標準メッセージ
VAN,専用回線
VAN,専用回線
インターネット
業界標準 XML メッセ ージ
インターネット メッセージ搬送標準
業界標準ビジネスプ ロセス,XML メッセージ
ネットワーク メッセージ搬送
インターネット メッセージ搬送標準 ビジネスプロトコル
ビジネスプロセス
業界標準 インターネット EDI
ベーシック XML/EDI
(メッセージ搬送基盤)
業界標準 XML メッセ ージ
インターネット ベーシック
XML/EDI
基盤を実装することを推奨する。
インターネットEDIを実現するメッセージ搬送レベルの標準としてIETFが策定したEDIINT と,UN/CEFACTとOASISが策定したebXML MS仕様がある。現状ではXML技術ベースの
ebXML MS仕様の採用が良いと思われる。理由としては,ebXML MS仕様は最新の技術仕様を
採用しコラボレーションXML/EDIへの連携が可能である。(EDIINTとebXML MS仕様の位置 付け・相違については3.3.1 メッセージ搬送レベルの標準化対応を参照)
5.4.2 コラボレーション XML/EDI の導入シナリオ 5.4.2.1 FSV 関係機能
(1) メッセージ搬送基盤
メッセージ搬送基盤の実装を推奨する。その標準としてはebXML MS 仕様の採用を推奨 する。理由は上述(5.4.1項)と同一である。
(2) 電子EDI取引方式機能
次のレベルのコラボレーションXML/EDIの導入シナリオとして電子EDI取引方式基盤の 導入がある。
技術的なEDI取引方式を電子化する機能標準としてebXML CPPA仕様がある。
CPPA仕様の採用の考え方として以下の2通りがある。
① 本格的CPPA採用
EDI 参加企業毎に異なると思われる EDI 取引方式を CPP(Collaboration- Protocol Profile) と し て 記 述 し , 取 引 当 事 者 間 で 合 意 す る CPA(Collaboration- Protocol
Agreement)を策定する。このCPAに基づいてEDIシステムの自動構築に繋がる。
② メッセージ搬送基盤の補足機能としてのCPPA採用
ebXML MS仕様はCPPA仕様と密接に関係があり,ebXML MS仕様準拠のEDI電文
のヘッダー情報の幾つかはCPPA仕様準拠のCPAの情報から構築される。メッセージ搬 送基盤の補足機能としてCPAの採用は一つの合理的なオプションである。
CPAの作成は,業界又は関係する企業グループ内で共通化して作成・活用することが出 来る。
(3) レジストリ・リポジトリ機能
業界又は企業としてのレジストリ・リポジトリ機能の導入は,必要に応じて検討すれば良 いと思われる。業界では,それぞれ独自の業界標準仕様の相互利用を望んでいる場合があり,
ebXML R&Rの利用はこのソリューションとなる。
5.4.2.2 BOV 関係機能
コラボレーション XML/EDI への移行は,適用する国際標準の策定状況を考慮・判断しての移 行が必要である。
(1) ビジネスプロセス定義機能
① ビジネスプロセス記述機能の採用
ビジネスプロセスを電子的に記述する仕組みとしてebXML BPSS(Business Process Specification Schema)仕様がある。ビジネスプロセスの電子化の第1のオプションはこ
のebXML BPSS仕様の適用である。このebXML BPSS仕様の適用により,ビジネスプロ