3 コラボレーション XML/EDI
3.5 コラボレーション XML/EDI の ebXML 適用設計
図 3.12 B2B サーバーの負荷分散システム構成例
3.4.2.3 メッセージ搬送レベル標準適用の場合の IP アドレスについて
メッセージ搬送レベルの標準(例:ebXML MS仕様,RosettaNet RNIF仕様)の中には,固 定 IPアドレス(あるいはURL)を持ったサーバー間でのみ使用可能なものがある。これらの標 準は,ダイアルアップ接続によってインターネット接続業者を介してインターネットを利用するよ うな場合には使用することができない。このような問題は,中小企業などが大手の取引先からEDI の実施を要請されたときに顕在化するものと考えられる。
この問題の対処法としては,これらの標準をサポートするASPサービスを利用することが簡単 かつ安価な方法である。
3.4.2.4 Web 画面表示方法と標準メッセージ変換方法
コラボレーションXML/EDIでの交換メッセージ(XMLビジネス文書)は,各社の自社社内シ ステムで画面表示又は帳票印刷して確認することになる。
XMLビジネス文書の画面表示方法は,XMLスタイルシート(XSLTスタイルシート)を利用 して表示できる。この方法は,ベーシックXML/EDIのWeb-EDIでの画面表示方法と同一であり,
2.5.2項(XML,XMLスタイルシートを活用したWeb-EDIの方式設計)を参照されたい。
コラボレーション XML/EDI でも,採用している標準メッセージ(ビジネス文書)の変換が必 要になる(例:自社固有メッセージ→業界標準メッセージへの変換,業界標準メッセージ→業界連 携標準メッセージへの変換)。XSLT(XSL Transformations)を利用したメッセージ変換が可能 であり,この方法は,2.5.4項(XMLベース標準メッセージの変換方法)を参照されたい。
(1) 標準化の範囲
XML/EDI標準化設計における標準化の範囲としては,メッセージ搬送,ビジネス文書(EDI
メッセージ),及びビジネスプロセスに分けることができる。
メッセージ搬送に関しては,ebXML標準化組織(OASIS ebXML Messaging TC)により 実装を意識した標準仕様書(ebXML MS V2.0)が完成しており,実用化できる標準化レベル にある。さらに,メッセージ搬送に関しては,企業とか業界等に依存せず共通的に実装でき ることが重要であることから,個別の業界では,メッセージ搬送に関する個別の仕様作成の 取り組みをしないことが望ましい。
ビジネス文書,ビジネスプロセスに関しては,ebXML 標準化組織では,標準化のための 技法を中心に標準化に取り組んでいる。これは,ビジネス文書やビジネスプロセスの実務レ ベルの標準化に関しては個別の業務依存性が高く,個別の標準化組織が取り組むべきである と考えているからである。さらに ebXMLでは,ビジネス文書だけでなく,上位のビジネス プロセスまでを含めた標準化の技術基盤を提供している。
業界等の標準化団体にとっての標準化の範囲としては,本来のビジネス戦略に基づくビジ ネスモデルやビジネスプロセスモデル等の標準化活動を推進し,ビジネス文書,ビジネスプ ロセスを標準化の範囲とすることができる。
(2) ebXMLの採用
ebXML の採用に関しても,標準化の範囲と同様に,メッセージ搬送,ビジネス文書,ビ
ジネスプロセスに分けて決定することができる。
メッセージ搬送に関しては,ebXML MS (Message Service)仕様をそのまま採用すること ができる。ebXML MSの機能は,メッセージ搬送インフラストラクチャとその上位に分ける ことができる。メッセージ搬送インフラストラクチャとしては,HTTP又はHTTPSと,そ の上位レイヤにSOAP標準を採用し,SOAPエンベロープによるパッケージングを構成でき
る。また ebXML MSそのものは,さらに上位レイヤに位置付き,ルーティングや信頼性搬
送等の技術標準を規定している。これらはいずれも,ebXML仕様の基盤技術としてそのまま 採用することができる。
次に,ビジネス文書やビジネスプロセスに関しては,ebXML を設計技法として採用する ことができる。具体的には,ビジネス文書のデータ項目の設計のためには,ebXML CC (Core
Component)仕様を採用することができる。ビジネス文書のXML上のメッセージタグの設計
のためには,ebXML ネーミングルールを採用できる。また,ビジネスプロセスのプロセス 仕様設計のためには,ebXML BPSS (Business Process Specification Schema)を採用できる。
さらに,システム(技術)レベルの取引の合意書として,ebXML CPPA (Collaboration- Protocol Profile and Agreement)仕様に準拠したCPP及びCPAを採用できる。つまり,業 界等の個別の標準化組織で取り組んでいるシステム的な取引合意書[例:採用する通信プロ トコル,セキュリティ機能(認証,否認防止,暗号化),信頼性通信仕様など]を電子的に 記述して取引当事者相互に合意する標準仕様として採用することが出来る。
これらのebXML標準仕様は,極力採用することが望ましい。なぜならば,ebXML標準仕
様を多くの業界が採用することで,共通のebXMLインフラストラクチャ(例:ebXML R&R 仕様ベースのリポジトリシステム)やソリューションソフトウェア製品により,業界や国を
超えたビジネス文書の交換やビジネスプロセスの協働,及び業際コラボレーションに活用で きるからである。さらに,ebXMLソリューションベンダーにとっても共通のebXMLソリュ ーションソフトウェア製品が提供可能になり,そのソフトウェア製品が普及することで,廉 価化を期待できるためである。
3.5.2 ebXML ビジネスプロセス設計
ebXML ビジネスプロセス設計としては,ebXML設計技法の採用,ビジネスプロセス・コラボ
レーション・トランザクションの扱い,TPAの扱いの観点がある。
(1) ebXML設計技法(UMM・UML)の採用
ebXML仕様体系上のビジネスプロセス設計においては,ebXMLベースシステムの設計技
法 と し て ,UMM (UN/CEFACT Modeling Methodology),UML (Unified Modeling
Language)を採用すべきか否かの決定がある。結論としては,ビジネスプロセス設計には,
まず,UMMとかUMLを意識することなく,業務面から本来あるべき姿として設計すべき である。しかし,設計したビジネスプロセスを広く普及させるためには,UMM,UMLにて 設計することを推奨したい。また,UMM設計技法を採用する方法として,UMMの専門家 に委託することで,UMM,UMLを意識しなくてとも対応することができる。
ebXMLの採用を前提としたビジネスプロセス設計においては,UMM,UMLを採用する
ことが望ましい。しかし現実上では,UMMによるビジネスプロセス設計はあまり普及して いないこともあり,業務のわかる設計者がすぐに理解できるレベルにない。またUMMはあ くまで設計技法でしかないため,ビジネスプロセス設計は,本来あるべき姿のビジネスプロ セス設計が優先されるべきである。
UMMを採用する本来の効果としては,業務面とシステム面の不整合性を防ぐ働きや,海 外取引等によりグローバルにビジネスプロセスを理解し合う働きがあり,グローバルビジネ スにおいて重要な役割を担うものである。そこで,UMMを採用する効果も認識し,外部委 託により作成したUMMを活用するなど,UMMを採用する方向で発展させることが望まし い姿と考えられる。
(2) ビジネスプロセス・コラボレーション・トランザクションの扱い
ebXMLによるビジネスプロセス設計において,UMMのビジネスモデルの管理ビュー(視
点粒度)を取り決めることになる。管理ビューとしては,ビジネスプロセス,ビジネスコラ ボレーション,ビジネストランザクションなどがある。現状のビジネスプロセスを,標準対 象のどの管理ビューに対応付けるかを決定する必要がある。
ビジネストランザクションは,要求メッセージと応答メッセージのペアの関係として定義 できるため,注文と注文請けとか,出荷と入荷のペアが想定できる。ビジネストランザクシ ョンとしては,注文管理,出荷管理が対応付くと決定できる。
ビジネスプロセスとビジネスコラボレーションをどの単位でまとめるかを整理する必要が ある。ビジネスプロセスは,商談,見積,契約の上流プロセスから,受発注,出荷,決済の 下流プロセスを総合的に含むものであり,上流から下流までの業務を含む総称として決定す ることになる。また,ビジネスコラボレーションは,ビジネストランザクションの固まりか らなり,コラボレーション管理する範囲を決定することになる。つまり,ビジネスプロセス
はビジネスコラボレーションの最上位概念として定義でき,ビジネスコラボレーションはビ ジネストランザクションの上位概念であると定義できる。
管理ビューの適用参考例を,表 3.4 ebXML の管理ビューの適用参考例に示す。
本表の管理ビューでの最上位のビジネスプロセスは,狭義のビジネスプロセスを意味する。
広義のビジネスプロセスは,ビジネス文書のトランザクションのやり取りの仕組みも含めた 広い意味を持っている。
表 3.4 ebXML の管理ビューの適用参考例
管理ビュー 適用参考例
ビジネスプロセス l 一般調達:受発注+出荷検収 l 継続調達:需要調整+出荷検収 ビジネスコラボレーシ
ョン
l 需給調整:需給管理+注文管理 l 在庫調整:需給管理+在庫管理 l 受発注 :注文管理+納期管理 l 出荷検収:出荷管理+検収管理 ビジネストランザクシ
ョン
l 需給管理:所要計画メッセージと供給回答メッセージ l 注文管理:注文メッセージと注文請けメッセージ l 納期管理:納期確認メッセージと納期回答メッセージ l 出荷管理:出荷メッセージと入荷メッセージ
l 検収管理:検査・検収メッセージと売買掛メッセージ l 在庫管理:在庫計画メッセージと在庫補充メッセージ
(3) TPAの扱い
TPA (Trading Partner Agreement)に関しては,取引合意書(業務レベルTPA)と技術合 意書(システムレベルTPA)に分けることができる。また,ebXMLでは,これらのTPAを,
CPPA又はBPSSに実装することができる。具体的には,システムレベルTPAはCPPA仕 様準拠のCPA(Collaboration- Protocol Agreement)として記述できる。業務レベルTPA の一部は,BPSS 仕様に基づいたビジネスプロセス文書として記述できる(例:要求ビジネ ス文書と応答ビジネス文書の対応と応答までの最大時間など)。これらのTPAは,本質的に は個別企業の当事者間での合意事項であるが,個別企業の取決め事項を少なくし,業界等の 標準化組織において共通の合意事項を設け,TPAの扱いを取り決めることができる。これは,
従来型のEDIにおいて,当事者企業間での個別合意事項が多すぎ,取引先毎で合意事項が異 なる問題に対する反省の意味を含むものである。
業界等の標準化組織としてのTPAの扱いとして,共通の合意事項を設計する。そのために,
まず個別企業の当事者間で考えられる合意すべき事項を洗い出すことになる。さらに,その 中から共通的な合意事項を抜き出す。この共通的な合意事項をもとに,ebXML仕様に実装し,
標準化組織としてのCPP,CPAの雛形,及びBPSS雛形を作成することができる。
3.5.3 ebXML ビジネス文書設計
ebXML ビジネス文書設計としては,ebXMLメッセージ標準の採用,電子封筒の扱い,メッセ
ージバリデーション,メッセージ中継,及び文字コードの扱いの観点がある。