第 2 章 メソポーラスシリカを被覆層とした Ni ナノ触媒の CO 選択メタン化活性とその発現機構 . 18
2.3 酸化物被覆層による Ni 焼結抑制効果の検討
2.3.2 V 担持及び MS 被覆層の効果
測される。これは V イオンが Ni(OH)2に吸着する際の Langmuir 型の吸着挙 動に起因していると考えられる。
(b) V 担持 NiO の還元時の Ni 焼結抑制
Fig.2-11にFE-SEMで観察した還元後のV/Niの結晶形態を示す。NiOから Ni への還元に伴い、結晶形態は針状結晶(Fig.2-9 の数 nm 程度)から粒状結晶
(100~200nm 程度)へ大きく変化した。V 含有量の増加に伴い、V/Ni 粒子は微
細化していく傾向となった。Fig.2-12に還元後の0.039V/NiのXRD及びXPS 測定結果を示す。Fig.2-12(a)に示した還元後の0.039V/NiのX線回折パターン で確認された鋭い回折ピークは Ni 金属(PDF 071-3740)に帰属された。
Fig.2-12(b)に示した還元後の0.039V/NiのX線光電子スペクトルを解析したと
ころ、V2p3/2結合エネルギーが516 eVでV2O3に帰属されるピークが確認され
た。Fig.2-12(b)の 525eVおよび531eV 付近で確認された他のXPSピークは、
それぞれ V2p1/2と O1sに帰属することができた。Fig.2-13 に還元後の V/Ni サ
ン プ ル の X 線 回 折 像 を 示 す 。V/Ni モ ル 比 が 0.025 を 超 過 し た 場 合 、 V2O3(PDF085-1411)あるいは V1.95Ni0.05O3(PDF 072-5931)に帰属される回折 ピークが確認された。
Fig.2-11 FE-SEM images of the series of xV/Ni sample after reduction:
(a) Ni, (b) 0.010V/Ni, (c) 0.039V/Ni, (d) 0.097V/Ni.
200nm
(a) (b)
(c) (d)
Fig.2-12 XRD patterns and XPS spectrums of 0.039V/Ni:
(a) XRD and (b) XPS after reduction.
In te n si ty (c ps )
535 530 525 520 515 510
Binding energy (eV)
3000 2500 2000 1500 1000
(b)
0 1 2 3 4
10 20 30 40 50 60 70 80
Ni(200)
Ni(111) Ni(220)
(a)
In te n si ty (c ps) × 10
52θ (deg.)
Fig. 2-13 XRD patterns of V/Ni samples after reduction.
Fig.2-14 NiO and Ni crystallite size of Ni and V/Ni, MS/V/Ni after reduction.
10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 2θ(deg.)
(012) (104) (110) (113) (116)(111) (200) (220)
0.097V/Ni 0.039V/Ni 0.025V/Ni 0.010V/Ni Ni V2O3/V1.95Ni0.05O3
Ni
20000
0 10 20 30 40 50 60 70 80
0 10 20 30 40 50 60 70 80
N iO cr ysta ll it e si ze (n m) N i c ryst al li te s ize (n m)
after reduction after calcinationNi xV/Ni yMS/xV/Ni
x 0 0.039 0.097 0 0.039 0.097 0.039
y 0 0 0 0.22 0.22 0.22 0.45
15.1nm であった。MS 被覆層は Ni の焼結を著しく抑制していた。MS/V/Ni である0.22MS/0.39V/NiではNi結晶子径は10.6nmとなり、0.22MS/Niと比 較すると若干ではあるがNi結晶子径の更なる減少が確認された。この現象はV 添加とMS被覆層による相乗効果を示している。VやMS被覆層を更に増やし た 場 合(0.22MS/0.097/Ni, 0.45MS/0.039/Ni)、Ni 及 び NiO の 結 晶 子 径 は 0.22MS/0.039V/Niと殆ど変らなかった。
ここでVおよびMS被覆層によりNiO及びNiの焼結抑制効果が得られた要 因を考察する。V及びMS被覆層の共通点として、Ni(OH)2に被覆する際にV 及び Si は溶液中でオキソ陰イオンとして存在している点が挙げられる 12)。溶
液中でNi(OH)2表面に担持されたこれらのオキソ陰イオンが乾燥時に脱水縮合
反応により酸素原子が基本単位間を架橋することで、多彩な構造の酸化物被覆
層をNi(OH)2表面に形成していると推測される。この様にNi(OH)2の粒界に酸
化物被覆層が形成されることで、焼成時及び還元時に Ni 同士の接触を防止す る仕切り材として働き、その結果焼結が抑制されたと考えられる。そこで、
Fig.2-15にNi(OH)2表面に各種成分を担持した際の還元前後のNiOとNi結晶 子径を示す。溶液中でポリ陰イオンを形成する成分を添加した V/Ni、Mo/Ni、
W/Ni、Si/Ni は還元前後でNiO及びNi 結晶子径は無担持のNi のみと比較し
て大幅に低減した。一方、ポリ陰イオンを形成しない成分を添加したFe/Niは 無担持のNiのみよりNiO及びNiの結晶子径の低下が若干確認できたものの、
他の成分と比べて焼結抑制は明らかに低い。V/Ni、Mo/Ni、W/Ni、Si/Niを比 較すると、焼成後のNiO結晶子径は殆ど変らないが、還元後ではNi結晶子径
の序列がSi/Ni>W/Ni>Mo/Ni>V/Niの順になった。この序列は溶液中でのポ
リ陰イオンの形成しやすさの傾向に一致していた12)。
Fig.2-16にV及びSiO2含有量に対する還元後のNiの結晶子径との関係を示 す。コア材がNiのみで構成されている場合、Niの結晶子径は78nmであった
Fig.2-15 NiO and Ni crystallite size of various component added Ni after reduction of after reduction.
0 10 20 30 40 50 60 70 80
0 10 20 30 40 50 60 70 80
Ni only V-added Ni
N iO cr ysta ll it e si ze (n m) N i c rystal li te s iz e (n m)
after reductionafter calcination
Mo-added Ni W-added Ni Si-added Ni Fe-added Ni
Fig.2-16 Change in Ni crystallite size of Ni, V/Ni , MS/Ni and MS/Ni/AlVOx
samples with V/Ni or Si/Ni values.
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
N i c ry sta lli te si ze (n m)
V/Ni or Si/Ni (molar ratio) Ni
V/Ni MS/Ni
MS/Ni/AlVO
x(y軸上の○)。V含有量がV/Niモル比 0.097(■)まで増加するに伴い、Ni結晶 子径は連続的に減少した。MS被覆層(△)はV添加と比較してNiの焼結抑制に 対して更に有効であることが明らかとなった。MS被覆量がSi/Niモル比0.22 まで増加するに従い、Ni結晶子径は連続的に減少した。MS被覆量がSi/Niモ ル比0.22 を超過すると、Ni 結晶子径はほとんど一定になった。この結果は、
特に MS 被覆層によって、還元中に Ni の焼結が有効に抑制されていることを 示す。またMS/Ni-AlVOx(●)は還元後のNi 結晶子径が 40nmとなり、MS 被 覆層(△)よりの2倍のNi結晶子径であった。これは微細なNiナノ粒子に直接 MS被覆層を形成しているため、還元後もNi結晶子径が小さく維持されたと推 測する。CO メタン化反応は構造敏感反応と知られており13),14)、微細なNi 粒 子である程、より高い触媒活性を示す傾向となる。今回の研究で確認された MS被覆層による著しい Ni の焼結抑制は、Ni表面積だけでなく構造敏感性に よる触媒活性の改良に対して明確な効果を有すると考えられる。
Fig.2-17に還元後の 0.22MS/0.039V/Ni の TEM 観察結果を示す。Fig.2-17 よりV/Ni コア粒子の表面はMS層で均一に被覆されていた。この MS被覆層 はコア材の表面上に垂直で隙間のない規律正しいメゾポア孔を形成し、MS 被 覆層の厚みは平均30nmであった。Fig.2-18に還元後の0.22MS/0.039V/Niの 高解像度SEM像およびEDSマッピング像を示す。Fig.2-11(c)で示したMS被 覆 層 を 形 成 し て い な い 0.039V/Ni と 比 較 し て 、MS 被 覆 層 を 形 成 し た
0.22MS/0.039V/Ni の方は非常に微細な Ni 粒子を有していると言える。また
Fig.2-18(c),(d)より、Si及びV成分はNi表面上で均一に分散していた。
以上より、MS/V/Niはコアシェル構造を有していると考えられる。また、CO パルス吸着測定によってMS被覆層のガス透過性を確認することができた。さ らに、0.22MS/0.039V/NiのBET比表面積は307 m2/gと比較的高く、MS被 覆層は高い多孔質構造を有していることが言える。
Fig.2-17 TEM image of 0.22MS/0.039V/Ni sample after reduction.
100 nm
0.039V/Ni core 0.22MS shell
Fig.2-18 SEM images of 0.22MS/0.039V/Ni after reduction: (a) SEM image and EDS mappings (b) Ni, (c) Si, (d) V .