A
B
SC34
表3−6.NavBP−CFPとCFPの細胞内局在の定量化
5tぎ拠 Subcel)uiar]Ciralizatian ofNa BP−L 刊P(殉
A B Ome pole T・Ne
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蛍光顕微鏡の画像からNavBP−CFPとCFPの細胞内局在を、 A:片極(One pole)、 B:両極(Two poles)、C:片極と側面(One Pole and side(s))、D:両極と側面(Two poles and side(s))、E二側面
(Side(s))、拡散(局在しておらずほぼ均一に存在)に分類し、定量化した。
88
表3−7.BaCi7/us pseudofifrmus O F4株とその変異株の細胞長軸と短軸の長さ
細胞長軸(μm) 細胞短軸(μm)
811M(wild−type)
SC34(∠1 nob.4)
811M−cheAW
SC34−R(∠1刀oろ/1, neL)メ▲restored)
SC34/pSC−CFP SC34/pCFP
1.95±O.44 1.65:ヒ0.36
2.39±0.63 2.43±0.55 2.25±O.45 2.13±0.55
0.82±0.05 0.82±0.05 0.84±0.06 0.84±0.05
0.84:±二〇.05
0.84:ヒ0.04
微分干渉顕微鏡(DIC)画像から各株の細胞長軸(長さ)と細胞短軸(幅)を測定した。各株30細胞 の測定を行った。
89
811M
SC34・R
SC34
SC34/PCFP SC341pSC−CFP
図3−9.B.ρseudofirinus O F4各株の軟寒天培地上でのミグレーション分析
0.3%の寒天を含むMYE培地(pH10)で、811M株(野生株)、 SC34株(Na、 BP欠損株)、 SC34−R株
(Na>BP回復株)、 SC34/pSC−CFP株、 SC34/pCFP株を37℃、10時間培養i後、コロニーを観測し
た。
90
表3−8.B.psθudofirmus OF4各株のスワーミング分析とタンブリングバイアス
コロニー直径(mm)a タンブリングバイアスb 811M(wild−type)
SC34(△ncb.4)
SC34/pSC−CFP SC34/pCFP
SC34−R(△刀o左4, ncbA restored)
17.5 ± 2.0
11.8 ± 1.O
l5.8 ± 1.9
12.0 ± 0.5
17.0 ± 1.8
±枯±廿
十a)0.3%の寒天を含むMYE培地(pHIO)で、811M株(野生株)、 SC34株(Na、BP欠損株)、 SC34 p SC−CFP株、 SC34/pCFP株、 SC34−R株(1 ax,BP回復株)を37℃、10時間培養後、コロニー直径
(mm)測定した。三回の独立した実験を行いその平均を示した,
b)暗視野顕微鏡を用いてハンギングドロップ法で液体のMYE培地(pH10)でのタンブリングバイア
スを観測し、811M株(野生株)と比較した。91
ncbA遺伝子を戻したSC34−R株(Nav BP回復株)ではそれがほぼ回復した。
Na\BP−CFPを発現するプラスミドをもっSC34/pSC−CFP株では野生株に近いコロニ
ー形成、タンブリングバイアスを示したが、CFPを発現するプラスミドを持つ
SC34/pCFP株ではSC34株(Na、BP欠損株)と同様に小さいコロニー、タンブリングバイアスを示した。
以上の結果から、Na、BP−CFPは、 Na、 BPとして機能し、SC34株(Na、 BP欠損株)の走
化性の異常を相補していることが推察された。92
第4節考察
好アルカリ性細菌五ρsθαdo励μ50F4株において電位駆動型NaチャネルNa,BP はpHホメオスタシス、運動性、走化性に関与することが以前から示されていた[5]。 pH の突然の上昇時には、チャネルが開くという報告があり、これによって起こるNa+の流入 がNa+/H+アンチポーターを支持することによりpHホメオスタシスが起きると考えられて いる[5]。Na\BPはNa+濃度や溶質濃度が低いときのpHホメオスタシスに重要であるが、
Na濃度や溶質濃度が十分であってもpHIO.5などの極端に高いpHでは生育に重要
である。
Na\BP欠損株(SC34株)はpHホメオスタシス能の低下だけではなく、タンブリングバ イアスの増加や「反対の走化性」とった走化性も異常を起こす[5]。これらの走化性の 異常はpH8.5などの弱アルカリ性環境下やNa+濃度や溶質濃度が十分であっても起こ るため、pHホメオスタシスと無関係であると考えられた。そのためNa,BPがどのようにし て走化性に影響しているのかはこれまで全く知られていなかった。しかし本研究によっ てその一端がはじめて明らかになった。
本研究において、好アルカリ性細菌B.ρsettdofirmus OF4株において電位駆動型 NaチャネルNas BPと推定上の走化性レセプターMcpXの関係について明らかにした
ことをまとめると以下のようになる。
推定上の走化性レセプターであるMcpXが細胞の極において局在することを明らか にした。これは大腸菌や枯草菌の場合と同様であった[17,26]。McpXのクラスターは 細胞の極だけではなく側面にも見られた(図3−5、図3−6、表3−5)。MCPはSec機構に よってまず側面に挿入され、分裂を経て極へと局在すると考えられており[38,39]、側 面に見られたクラスターはこれに由来するものであると考えられた。
また、NavBPも細胞の極において局在することが明らかにした。 Na、 BPの極での局在 は免疫抗体顕微鏡観察(IFM)(図3−5、図3−6、表3−5)およびNa。BP−CFPを発現させ
93
た細胞の蛍光顕微鏡観察(図3−8、表3−6)の両方で観察できた。Na、 BP−CFPを発現さ せるとNaxBP欠損株の走化性異常が相補されたことから、 Na、 BP−CFPはNa, BPとし て機能していることが推察された。
McpXとNavBPが高い割合で極において共局在することも明らかにした図3−5、表 3−5)。McpX(またはMcpXを含む走化性レセプター複合体)とNa、 BPはなんらかの相互 作用をしている可能性が示唆された。第2章で述べたように、B. psθudofirn?us OF4株 のべん毛は周毛性であり、Na.BPやMcpXの細胞内局在とは関係がなかった。
Na\BP欠損株(SC34株)では、 McpXの発現量は変わらないものの(図3−4)、その極で の局在性は低下しており拡散していると考えられた(図3−5、表3−5)。Na\BPをコードす るncbA遺伝子を染色体上に戻したNa、 BP回復株(SC34−R株)では、その局在性は戻 り、NavBP、 McpXともに極において局在した(図3−5、表3−5)
c加Aル遺伝子破壊株(811M−cheAW株)ではMcpXだけでなくNa, BPの局在性も低 下した(図3−5、表3−5)。大腸菌においてCheAWはMCPと複合体を作ることが知られ
ており、MCPの極での局在化、クラスター化に必要である[17,40,41]。 B.ρseudofirmus
OF4株におけるc加Aル遺伝子を破壊した場合のMCPの局在性の低下は、大腸菌ほ
どではなかった。大腸菌はアダプタータンパク質としてCheWしか持たないため、CheWを欠損するとシグナルを伝達することができないが、枯草菌はCheWのほかにも CheVを持っており、CheWを欠損してもCheVがあればシグナルを伝達することができ ることが知られている[22,42]。同じBaci7/us属であるB. pseudofirmus OF4株もCheV を持っていると考えられ、CheAWの欠損による影響が大腸菌の場合よりも少なかった
と考えられた。
これらのことから、Na、 BPの欠損によりMcpXの局在性が低下し走化性の異常が起き る可能性が示唆された。ニフェジピン処理した細胞はキャピラリー試験において「反対 の走化性」を示すことが報告されているが[5]、ニフェジピン処理した細胞のN ax.BPと McpXの局在性は低下していなかった(図3−5、図3−6)。っまりNavBPが極に局在して
94
いても機能していなければ走化性に異常をきたすと考えられ、これはN avBPによる膜 電位の変動がB. psθudofinnus OF4株のシグナル伝達に重要な役割を持つ可能性を 示唆すると考えられた。初期の研究でイオンチャネルの阻害剤が細菌の走化性、運動
性を阻害するという報告があるが[43,44]、Nav BPのようなチャネルがターゲットとなって
いる可能性がある。細胞の極においてCheAキナーゼやCheZホスファターゼはリン酸化/脱リン酸化に よってCheYを調製している[45]。 NayBPのC末端にはリン酸基を受容する可能性のあ るアスパラギン酸残基が存在し、多くの真核生物のイオンチャネルの開閉はC末端の
リン酸化/脱リン酸化によって調節されていることから[46,47]、Na、 BPも細胞の極にお
いてCheAキナーゼやCheZホスファターゼによりリン酸化/脱リン酸化され調製されて いる可能性がある。今後、McpXの遺伝子が同定され、 Na, BPとの相互作用の性質が明らかになること によって、走化性との関係が明らかになることが期待される。
95
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