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いることが分かってきた[7]。Na\Bacは脂質二重膜や真核生物で発現され、各ドメイン やアミノ酸残基の役割などの構造的な研究や、開閉機構の研究が進められているが

[8−11]、微生物細胞内で本来どのような生理学的機能をもつているのかはまだ不明な

点が多い。

BaCi7/usρsθudofirn7us OF4株はリンゴ酸などの非発酵性の炭素原を用いたとき pH7.5以上pH11未満で生育可能な好アルカリ性細菌である。 pH9.5〜pHIO.5で最も よく生育し、このときの細胞内はpH7.5〜pH8.2に保たれている[12]。このpHホメオス タシスは、主にNa+/H+アンチポーターやNa+/Soluteシンポーター、Naチャネルから構i

成されるNa+サイクルによって維持されている[13]。 Na+サイクルにおいてNaチャネルは

Na+濃度が低いときの再取り込み経路として働くと考えられており、以前は杉山によっ てNa駆動型べん毛モーター固定子がその役割を持つのではないかと報告されてい た[14]。しかし、最近になってNa+の再取り込みによるpHホメオスタシスにおいて主要 な役割を果たすのはもう一つのNaチャネルである電位駆動型Na+チャネルNa,BPで

あることが報告された[5,15]。Nay BPをコードするncbA遺伝子が同定され、 Na、 BPは低

Na+濃度、アルカリpH環境下におけるpHホメオスタシスに非常に重要な働きを持つこ とが示された。さらに、NaxBP欠損株はpHホメオスタシス能が減少するだけではなく、

運動性が減少しタンブリングの頻度が上昇すること、誘引物質や高pHに対して野生 株とは「反対の走化性」を示すことがわかった[5]。OF4株の野生株では1mMアスパラ ギン酸(pH8、5)、1mMグルコース(pH8.5)、1mMリンゴ酸(pH10.5)などを誘引物質、

pH10.5を忌避物質として認識しているが、Nav BP欠損株では1mMアスパラギン酸

(pH8.5)、1mMグルコース(pH8.5)、1mMリンゴ酸(pH10.5)などを忌避物質、 pH10.5を

誘引物質として認識しており、Na\BPが走化性とも何らかの関わりを持っことが示され た。しかし、Na,BPはNa+駆動型べん毛モーター固定子ではなく、電位駆動型Na+チャ ネルであり、運動性や走化性との関係は未知である。電気生理学的な研究から、細菌 細胞内でのNa,BPの駆動(開閉)には膜電位以外にも他のタンパク質が関与して更な

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る引き金( additional trigger )になっているのではないかという可能性が示唆されてお

り[5]、運動性や走化性との関与から、更なる引き金となっているタンパク質が明らかに なるのではないかと期待された。そこで本研究ではNa.BP欠損株における運動性や 走化性異常の分子機構を調べることにした。

好アルカリ性細菌B∂Ci7/usρseudofirmus OF4株において電位駆動型Naチャネル NavBPを欠損させると、運動性や走化性に異常が起きることから、 Na\BPがべん毛の 構成タンパク質や走化性タンパク質と間接的もしくは直接的に相互作用するのではな いかと考えられた。そこでNa、BPが膜貫通型走化性レセプター(里ethyl−accepting ghemotaxis Rroteins、 MCPsとも呼ばれる)または走化性レセプター複合体と相互作用 するのではないかというモデルを考えた。

 走化性レセプター(MCP)は細胞外に誘引物質(または忌避物質)を認識するリガンド 結合領域を持ち、細胞内にリン酸リレー系を解してべん毛の回転方向を調節するシグ ナル領域を持つ。大腸菌においてMCPはヒスチジンキナーゼCheAとアダプタータン パク質CheWと複合体を形成して、細胞の極において局在化し、クラスター化している

[16−21]。このような走化性のシグナル伝達は、いくっかの違いがあるものの、枯草菌 などのBa・Cf7/us属細菌においても基本的な要素は同じである考えられている

[22,23,24]。走化性レセプター複合体の細胞の極での局在化およびクラスター化はシ グナルの増幅に非常に重要な働きを持っと考えられており[20,21]、枯草菌などの Baci7/us属を含む他の桿菌でも同様の走化性レセプターの局在化が報告されている

[25−27]。

 大腸菌の走化性レセプターの一つであるTarはアスパラギン酸以外にもマルトース を認識することができるが、それはマルトース結合タンパク質(MBP)との相互作用を介 して行われ、TarとMBPは共に細胞の極に局在化することが報告されている[17,28]。

 もしもOF4株においてNa、BPが走化性レセプター(または走化性レセプター複合体)

と直接的に相互作用するのであれば、Nas BPと走化性レセプターは細胞の極におい

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て共局在すると考えられた(図3−1A)。また、もしもべん毛モーターと相互作用するので あれば、OF4株のべん毛は周毛性であるので(第2章参照)、 Na\BPは細胞の極には 局在しないと考えられた(図3−1B)。そこで本研究では免疫蛍光顕微鏡観察(免疫染色 もしくは1mmuno再orescence里icroscopy、 IFMとも呼ばれる)により、極で局在する走化 性レセプターと、Na\BPの細胞内局在を比較した。 Nay BPは抗NavBPモノクn一ナル

抗体により検出し、走化性レセプターは枯草菌(Ba・Ci7/us subt?7is)の抗McpBポリクn一

ナル抗体により検出した。この抗McpB抗体とにより検出される走化性レセプターの遺 伝子は特定されておらず、推定上のMCP、「McpX」とした。

また大腸菌ではヒスチジンキナーゼCheAやアダプタータンパク質CheWがないと走 化性レセプターの極での局在性が低下するという報告がある[17]。そこで本研究では OF4株のcheA・VV遺伝子の破壊株を構築し、 Na, BPとMcpXの局在に与える影響を調 べた。最後にNavBPとCFP(cyan fiuorescent protein、シアン蛍光タンパク質)の融合タ ンパク質を発現するプラスミドを用いて、OF4株生細胞での1 avBP−CFPの細胞内局

在を観察した。

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