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好アルカリ性細菌Baci!7us psθudofirn7us OF4株 の運動性とべん毛形成の総括

第4章 総括

第1節 好アルカリ性細菌Baci!7us psθudofirn7us OF4株 の運動性とべん毛形成の総括

第2章ではB. psθudofirmus O F4株の運動性とべん毛形成の関係について明らかに した。,典型的な野生株(811M株)細胞一っ当たりのべん毛の本数は1本で様々な位置 に存在した。運動性向上株では2−3本であり周毛性であった。これらはp卜17.5から pHIO.3において培養pHの影響をあまり受けなかった(図2−1)。またフラジェリンの発現 量もpH非依存的であった(図2−2)。 OF4株において、生育下限pHのpH7.5でもべん毛 が形成されており、中性環境下での運動性の低下の原因はべん毛の非形成ではない

と考えられた。

 OF4株の遊泳速度は、230mMまではNa+濃度の対数的増加に従って直線的に上昇 した(図2−5)。また、中性pH条件下ではアルカリpH条件下よりもH+濃度が高いため、中 性pHではNa+駆動型べん毛モーターの固定子MotPSにおいてH+が競合阻害を起こす

可能性が示唆された。このほかにも中性pHにおける低い膜電位が影響している可能

性も考えられた[1]。

 pH8〜11におけるOF4株の遊泳速度はNa濃度が230mMを超えると徐々に低下した。

これはMotPSに二つ以上のNa+結合部位があることを示唆しており、枯草菌のMotPSに

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おいても同様の可能性が示唆されている[2−4]。このような部位はおそらく一つは細胞 内に、もう一つは細胞外にあると考えられており、べん毛を回転させる部位のほかにも、

Na濃度が高いときには回転を抑制する役割を果たす部位が存在すると想定されてい る。同じような可能性は大腸菌やサルモネラ、ビブリオのべん毛モーター固定子でも指

摘されている[2]。

 また、pH7においてはNa+濃度が230mMを過ぎても遊泳速度の上昇が観察された

(図2−5)。一般に、pH7付近まで生育が可能な好アルカリ性細菌は、生育においてアル カリ性pH環境下よりも中性pH環境下でより多くのNa+を要求する性質がある[3]。この好 アルカリ性細菌の中性pH環境下での高Na+濃度要求性は、中性pH環境下ではH+濃 度が高いため、Na+/Soluteシンポーターにおいて競合阻害が起きている可能性を示唆 されている[3]。べん毛モーターにおいても同様の競合阻害が起きている可能性が示 唆された。中性pH環境下ではNa+駆動型べん毛モータ・一一一一固定子MotPSのNa+結合部 位において競合阻害が起きると仮定すると、OF4株の遊泳速度は中性pH環境下にお いてべん毛モーターの回転を起こす部位に競合阻害が起きることによって低下すると 考えられる。そのような中性pH条件下では、回転を抑制する部位にも競合阻害が起こ るため、Na+濃度が230mM以上になっても遊泳速度が上昇するというモデルが考えら

れた(図4−1)。

 運動性向上株の運動性は粘度2.5cP(PVP濃度1%)までは上昇したが、野生株では

pH7以外ではこのような運動性の上昇はほとんど見られなかった(図2−6b,c,d)。 PVPな

どの線状高分子の添加によって培地の粘性が上昇すると細菌の遊泳速度が上昇する ことはすでに報告されており[4]、線状高分子の存在によって物体の運動に異方性が 付与されるというモデルが提唱されている。運動性向上株は高粘性液体培地だけでな く、pHIOのアルカリ性軟寒天培地上でも野生株よりも高い運動性を示した(図2−6)。運 動性向上株のフラジェリンの発現量と細胞一つ当たりのべん毛の本数は野生株よりも 増加しているが、テザードセル解析の結果から単独のべん毛モーターの相対的トルク

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は野生株と変わらなかったことから、これらの運動性の向上は、べん毛の本数が複数 になったことにより複数のべん毛が束になった構造を形成したことが起因していると考 えられた。べん毛が束になった構造を形成すると、運動時に菌体のプレがなくなること や、バンドル化したべん毛全体ではトルクの減少を抑えることができる可能性が報告さ

れている[5]。

 OF4株と同じ好アルカリ性細菌であるBaci7/us ha/odura/ls C−125株(以下C−125株)で

はpH依存性のべん毛形成、フラジェリン発現が報告されており、C−125株の細胞一つ 当たりのべん毛の本数は、培養pH10のとき平均21本であるが、培養pH6.9のときはべ ん毛はなくフラジェリンもまったく発現しておらず運動性もない[6]。今回のOF4株にお ける実験の結果から、仮にC−125株がべん毛を形成していたとしても中性pH環境下で は運動性は低いと思われる。またC−125株はpHホメオスタシスに重要な酸性高分子の 発現が中性環境下では著しく低下しているが[7]、OF4株では同様の働きを持つ S−layerタンパク質(SlpA)の発現量が中性pH条件下でもアルカリ性pH条件下とあまりか わらないという報告がある[8]。またC−125株のペプチドグリカンの架橋率は培養pH依 存性である[9]。このようにタンパク質の発現がpH依存的かという点においてC−125株と OF4株はかなり異なっていると考えられる。既に述べたようにNa+依存型のべん毛モー ターを持っ好アルカリ性細菌では、中性pH条件下ではもしもべん毛を形成していたと しても運動性は低く、中性pH条件下でべん毛は無用の長物である。同様にS−layerタ ンパク質はアルカリ性pH環境下におけるpHホメオスタシスに重要であるものの、中性 pH環境下においては必要がない[8]。 OF4株は中性環境下では生育速度が多少下が っても、べん毛やS−layerタンパク質を発現しており、これは外部pH環境の突然の上昇 に備えていると思われるものと考えられる[8]。実際に中性pH環境で培養iしたC−125株 細胞をアルカリ性pH環境に移すと自己溶解を引き起こすが[9]、 OF4株ではそのような ことは起こらない。OF4株では中性pH環境下で生育が遅くなろうともべん毛やS−layer タンパク質の発現を維持しているためこのような急激なpHの上昇にも対応できると考え

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られる。それに対しC−125株はpH環境に対応してタンパク質の発現を変化させ、その 環境に適応していると考えられ、両者の生存戦略の差が垣間見える。

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A

プレーキQEF

Na+濃度

230mM未満

(pH7〜il)

B

Na+濃度

230mM以上

(pH8〜11)

C

Na+濃度

230mM以上

 (pH7)

図4−1.高Na+濃度条件下におけるB. pseudofirmus OF4株の運動性モデル

(A)B. pseu(!ofirnius O F4株の遊泳速度は、230mMまではNa濃度の対数的増加に従って直線的に 上昇する。

(B)pH8〜pH11においてNa+濃度が230mM以上の場合には、細胞内Na濃度が高くなり、遊泳速度 が低下する可能性が考えられた。

(C)pH7では細胞内H+濃度が上昇することにより競合阻害が起こり、Na濃度が230mM以上になっ ても運動性が上昇する可能性が考えられた。

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第2節好アルカリ性細菌の電位駆動型Naチャネル欠損