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(4) BPDU ガード

7.2  Ring Protocol の基本原理

図 7‒5 マルチリング構成

それぞれのリングを構成しているノードは独立したシングルリングとして動作します。このため,リング障 害の検出および復旧の検出はそれぞれのリングで独立して行われます。

(3) 共有リンクありのマルチリング構成

マルチリング構成のうち,隣接するリングの接点となるノードが二つ以上の場合の構成について次の図に示 します。

図 7‒6 共有リンクありのマルチリング構成

複数のシングルリングが,二つ以上のノードで接続されている場合,複数のリングでリンクを共有すること になります。このリンクを共有リンクと呼び,共有リンクのあるマルチリング構成を,共有リンクありのマ ルチリング構成と呼びます。これに対し,(2)のように,複数のシングルリングが一つのノードで接続さ れている場合には,共有リンクがありませんので,共有リンクなしのマルチリング構成と呼びます。

共有リンクありのマルチリング構成では,隣接するリングで共通の VLAN をデータ転送用の VLAN グ ループとして使用した場合に,共有リンクで障害が発生すると隣接するリングそれぞれのマスタノードが障 害を検出し,複数のリングをまたいだループ(いわゆるスーパーループ)が発生します。このため,本構成 ではシングルリング構成とは異なる障害検出,および切り替え動作を行う必要があります。

Ring Protocol では,共有リンクをリングの一部とする複数のリングのうち,一つを共有リンクの障害およ び復旧を監視するリング(共有リンク監視リング)とし,それ以外のリングを,共有リンクの障害および復 旧を監視しないリング(共有リンク非監視リング)とします。また,共有リンクの両端に位置するノードを 共有リンク非監視リングの最終端ノード(または,共有ノード)と呼びます。このように,各リングのマス タノードで監視対象リングを重複させないことによって,共有リンク間の障害によるループの発生を防止し ます。

7.2.2 制御 VLAN

Ring Protocol を利用するネットワークでは,制御フレームの送信範囲を限定するために,制御フレームの 送受信に専用の VLAN を使用します。この VLAN を制御 VLAN と呼び,リングを構成するすべてのノー ドで同一の VLAN を使用します。制御 VLAN は,リングごとに共通な一つの VLAN を使用しますので,

マルチリング構成時には,隣接するリングで異なる VLAN を使用する必要があります。

7.2.3 障害監視方法

Ring Protocol のリング障害の監視は,マスタノードがヘルスチェックフレームと呼ぶ制御フレームを定期 的に送信し,マスタノードがこのヘルスチェックフレームの受信可否を監視することで実現します。マスタ ノードでは,ヘルスチェックフレームが一定時間到達しないとリング障害が発生したと判断し,障害動作を 行います。また,リング障害中に再度ヘルスチェックフレームを受信すると,リング障害が復旧したと判断 し,復旧動作を行います。

マスタノードでは,片方向リンク障害での障害の検出および通信経路の切り替え動作を実施しません。片方 向リンク障害の発生時にも切り替え動作を実施したい場合は,UDLD を併用してください。UDLD では,

片方向リンク障害が検出された場合に該当ポートを inactive 状態にします。これによって,該当するリン グを監視するマスタノードはリング障害を検出し,通信経路を切り替えます。

7.2.4 通信経路の切り替え

マスタノードは,リング障害の検出による迂回経路への切り替えのために,セカンダリポートをブロッキン グ状態からフォワーディング状態に変更します。また,リング障害の復旧検出による経路の切り戻しのため に,セカンダリポートをフォワーディング状態からブロッキング状態に変更します。これに併せて,早急な 通信の復旧を行うために,リング内のすべてのノードで,MAC アドレステーブルエントリのクリアが必要 です。MAC アドレステーブルエントリのクリアが実施されないと,切り替え(または切り戻し)前の情報 に従ってデータフレームの転送が行われるため,正しくデータが届かないおそれがあります。したがって,

通信を復旧させるために,リングを構成するすべてのノードで MAC アドレステーブルエントリのクリアを 実施します。

マスタノードおよびトランジットノードそれぞれの場合の切り替え動作について次に説明します。

図 7‒7 Ring Protocol の経路切り替え動作概要

(1) マスタノードの経路切り替え

マスタノードでは,リング障害を検出するとセカンダリポートのブロッキング状態を解除します。また,リ ングポートで MAC アドレステーブルエントリのクリアを行います。これによって,MAC アドレスの学習 が行われるまでフラッディングを行います。セカンダリポートを経由したフレームの送受信によって MAC アドレス学習を行い,新しい経路への切り替えが完了します。

(2) トランジットノードの経路切り替え

マスタノードがリングの障害を検出すると,同一の制御 VLAN を持つリング内の,そのほかのトランジッ トノードに対して MAC アドレステーブルエントリのクリアを要求するために,フラッシュ制御フレームと 呼ぶ制御フレームを送信します。トランジットノードでは,このフラッシュ制御フレームを受信すると,リ ングポートでの MAC アドレステーブルエントリのクリアを行います。これによって,MAC アドレスの学 習が行われるまでフラッディングを行います。新しい経路でのフレームの送受信によって MAC アドレス 学習が行われ,通信経路の切り替えが完了します。

7.2.5 リングポートのデータ転送用 VLAN

Ring Protocol では,装置,Ring Protocol プログラム,またはリングポートが障害となった場合に,障害 復旧時のループの発生を防ぐために,リングポートのデータ転送用 VLAN 状態をブロッキング状態にしま す。このブロッキング状態は,次の契機で解除します。

• マスタノードが送信するフラッシュ制御フレームをトランジットノードで受信したとき

• リングポートフォワーディング遷移時間(forwarding-shift-time)がタイムアウトしたとき

リングネットワーク内で複数の障害が同時に発生し,一部の障害が復旧した場合,リングネットワークは障 害状態であるため,マスタノードはリングの復旧を検知しないで,フラッシュ制御フレームを送信しませ ん。リングポートフォワーディング遷移時間を設定すると,このような場合に,設定した時間の経過後,障 害から復旧したノードでリングポートのデータ転送用 VLAN のブロッキング状態を解除して,一部の通信 を復旧できます。

リングポートフォワーディング遷移時間は,装置,Ring Protocol プログラム,またはリングポートの障害 が復旧したときに設定されます。なお,マスタノードでは,リングポートフォワーディング遷移時間がタイ ムアウトしたときに,リング状態が障害状態の場合だけ,該当ポートのデータ転送用 VLAN をフォワー ディング状態に変更します。

リングポートフォワーディング遷移時間中にリング状態が障害状態以外の状態に遷移した場合,リングポー トフォワーディング遷移時間のタイマは解除され,該当ポートのデータ転送用 VLAN 状態はリング状態の 遷移に応じて次に示す状態に変更されます。

リング状態が障害状態から経路切り戻し抑止状態に遷移した場合 ブロッキング状態を維持します。

リング状態が障害状態から正常状態に遷移した場合

「表 7‒3 復旧検出時のデータ転送用リング VLAN 状態」を参照してください。

リングポートフォワーディング遷移時間中に系切替が発生した場合,新運用系 BCU でリングポートフォ ワーディング遷移時間のタイマを再設定します。このため,データ転送用 VLAN 状態は,リングポート フォワーディング遷移時間の設定値より長い時間ブロッキング状態となります。また,リングポートフォ ワーディング遷移時間中にコンフィグレーションコマンド forwarding-shift-time で設定値を変更した場 合,変更後の設定値は,次回のリンク障害復旧時および系切替時に反映されます。