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シングルスパニングツリーのコンフィグレーショ ン

6.7.1 コンフィグレーションコマンド一覧

シングルスパニングツリーのコンフィグレーションコマンド一覧を次の表に示します。

表 6‒13 コンフィグレーションコマンド一覧

コマンド名 説明

spanning-tree cost ポートごとにパスコストのデフォルト値を設定します。

spanning-tree pathcost method ポートごとにパスコストに使用する値の幅のデフォルト値を設定 します。

spanning-tree port-priority ポートごとにポート優先度のデフォルト値を設定します。

spanning-tree single シングルスパニングツリーの動作,停止を設定します。

spanning-tree single cost シングルスパニングツリーのパスコストを設定します。

spanning-tree single forward-time ポートの状態遷移に必要な時間を設定します。

spanning-tree single hello-time BPDU の送信間隔を設定します。

spanning-tree single max-age 送信 BPDU の最大有効時間を設定します。

spanning-tree single pathcost method シングルスパニングツリーのパスコストに使用する値の幅を設定 します。

spanning-tree single port-priority シングルスパニングツリーのポート優先度を設定します。

spanning-tree single priority ブリッジ優先度を設定します。

spanning-tree single transmission-limit hello-time 当たりに送信できる最大 BPDU 数を設定します。

6.7.2 シングルスパニングツリーの設定

[設定のポイント]

シングルスパニングツリーの動作,停止を設定します。シングルスパニングツリーは,動作モード pvst,rapid-pvst を設定しただけでは動作しません。spanning-tree single コマンドを設定すると動作 を開始します。

VLAN 1 の PVST+とシングルスパニングツリーは同時に使用できません。シングルスパニングツ リーを設定すると VLAN 1 の PVST+は停止します。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single

シングルスパニングツリーを動作させます。この設定によって,VLAN 1 の PVST+が動作している場 合は動作を停止して,VLAN 1 はシングルスパニングツリーの対象となります。

6.7.3 シングルスパニングツリーのトポロジ設定

(1) ブリッジ優先度の設定

ブリッジ優先度は,ルートブリッジを決定するためのパラメータです。トポロジを設計する際に,ルートブ リッジにしたい装置を最高の優先度に設定し,ルートブリッジに障害が発生したときのために,次にルート ブリッジにしたい装置を 2 番目の優先度に設定します。

[設定のポイント]

ブリッジ優先度は値が小さいほど高い優先度となり,最も小さい値を設定した装置がルートブリッジに なります。ルートブリッジはブリッジ優先度と装置の MAC アドレスから成るブリッジ識別子で判定 するため,本パラメータを設定しない場合は装置の MAC アドレスが最も小さい装置がルートブリッジ になります。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single priority 4096

シングルスパニングツリーのブリッジ優先度を 4096 に設定します。

(2) パスコストの設定

パスコストは通信経路を決定するためのパラメータです。スパニングツリーのトポロジ設計では,ブリッジ 優先度の決定後に,指定ブリッジのルートポート(指定ブリッジからルートブリッジへの通信経路)を本パ ラメータで設計します。

[設定のポイント]

パスコスト値は指定ブリッジの各ポートに設定します。小さい値で設定することによってルートポー トに選択されやすくなります。設定しない場合,ポートの速度ごとに異なるデフォルト値になり,高速 なポートほどルートポートに選択されやすくなります。

パスコストは,速度の遅いポートを速いポートより優先して経路として使用したい場合に設定します。

速いポートを優先したトポロジとする場合は設定する必要はありません。

パスコスト値には short(16bit 値),long(32bit 値)の 2 種類があり,トポロジの全体で合わせる必 要があります。10 ギガビットイーサネット以上の回線速度を使用する場合は long(32bit 値)を使用 することをお勧めします。デフォルトでは short(16bit 値)で動作します。イーサネットインタフェー スの速度による自動的な設定は,short(16bit 値)か long(32bit 値)かで設定内容が異なります。パ スコストのデフォルト値を次の表に示します。

表 6‒14 パスコストのデフォルト値

ポートの速度 パスコストのデフォルト値

short(16bit 値) long(32bit 値)

10Mbit/s 100 2000000

100Mbit/s 19 200000

1Gbit/s 4 20000

10Gbit/s 2 2000

40Gbit/s 2 500

100Gbit/s 2 200

[コマンドによる設定]

1.(config)# interface gigabitethernet 1/1 (config-if)# spanning-tree cost 100 (config-if)# exit

ポート 1/1 のパスコストを 100 に設定します。

2.(config)# spanning-tree pathcost method long (config)# interface gigabitethernet 1/1 (config-if)# spanning-tree single cost 200000

long(32bit 値)のパスコストを使用するように設定したあとで,シングルスパニングツリーのポート 1/1 のパスコストを 200000 に変更します。ポート 1/1 ではシングルスパニングツリーだけパスコス ト 200000 となり,同じポートで使用している PVST+は 100 で動作します。

[注意事項]

リンクアグリゲーションを使用する場合,チャネルグループのパスコストは,チャネルグループ内の全 集約ポートの合計ではなく,チャネルグループ内の集約ポートのうち最低速度の回線の値となります。

(3) ポート優先度の設定

ポート優先度は 2 台の装置間での接続をスパニングツリーで冗長化し,パスコストも同じ値とする場合に,

どちらのポートを使用するかを決定するために設定します。

2 台の装置間の接続を冗長化する機能にはリンクアグリゲーションがあり,通常はリンクアグリゲーション を使用することをお勧めします。接続する対向の装置がリンクアグリゲーションをサポートしていないで,

スパニングツリーで冗長化する必要がある場合に本機能を使用してください。

[設定のポイント]

ポート優先度は値が小さいほど高い優先度となります。2 台の装置間で冗長化している場合に,ルート ブリッジに近い側の装置でポート優先度の高いポートが通信経路として使われます。本パラメータを 設定しない場合はポート番号の小さいポートが優先されます。

[コマンドによる設定]

1.(config)# interface gigabitethernet 1/1 (config-if)# spanning-tree port-priority 64 (config-if)# exit

ポート 1/1 のポート優先度を 64 に設定します。

2.(config)# interface gigabitethernet 1/1

(config-if)# spanning-tree single port-priority 144

シングルスパニングツリーのポート 1/1 のポート優先度を 144 に変更します。ポート 1/1 ではシング ルスパニングツリーだけポート優先度 144 となり,同じポートで使用している PVST+は 64 で動作し ます。

6.7.4 シングルスパニングツリーのパラメータ設定

各パラメータは「2×(forward-time−1)≧max-age≧2×(hello-time + 1)」という関係を満たすよう に設定する必要があります。パラメータを変える場合は,トポロジ全体でパラメータを合わせる必要があり ます。

(1) BPDU の送信間隔の設定

BPDU の送信間隔は,短くした場合はトポロジ変更を検知しやすくなります。長くした場合はトポロジ変 更の検知までに時間が掛かるようになる一方で,BPDU トラフィックや本装置のスパニングツリープログ ラムの負荷を軽減できます。

[設定のポイント]

設定しない場合,2 秒間隔で BPDU を送信します。通常は設定する必要はありません。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single hello-time 3

シングルスパニングツリーの BPDU 送信間隔を 3 秒に設定します。

[注意事項]

BPDU の送信間隔を短くすると,トポロジ変更を検知しやすくなる一方で BPDU トラフィックが増加 することによってスパニングツリープログラムの負荷が増加します。本パラメータをデフォルト値(2 秒)より短くすることでタイムアウトのメッセージ出力やトポロジ変更が頻発する場合は,デフォルト 値に戻して使用してください。

(2) 送信する最大 BPDU 数の設定

スパニングツリーでは,CPU 負荷の増大を抑えるために,hello-time(BPDU 送信間隔)当たりに送信す る最大 BPDU 数を決められます。トポロジ変更が連続的に発生すると,トポロジ変更を通知,収束するた めに大量の BPDU が送信され,BPDU トラフィックの増加,CPU 負荷の増大につながります。送信する BPDU の最大数を制限することでこれらを抑えます。

[設定のポイント]

設定しない場合,hello-time(BPDU 送信間隔)当たりの最大 BPDU 数は 3 で動作します。本パラメー タのコンフィグレーションは Rapid STP だけ有効であり,STP は 3(固定)で動作します。通常は設 定する必要はありません。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single transmission-limit 5

シングルスパニングツリーの hello-time 当たりの最大送信 BPDU 数を 5 に設定します。

(3) BPDU の最大有効時間

ルートブリッジから送信する BPDU の最大有効時間を設定します。BPDU のカウンタは装置を経由する たびに増加して,最大有効時間を超えた BPDU は無効な BPDU となって無視されます。

[設定のポイント]

最大有効時間を大きく設定することで,多くの装置に BPDU が届くようになります。設定しない場合,

最大有効時間は 20 で動作します。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single max-age 25

シングルスパニングツリーの BPDU の最大有効時間を 25 に設定します。

(4) 状態遷移時間の設定

STP モードまたは Rapid STP モードでタイマによる動作となる場合,ポートの状態が一定時間ごとに遷移 します。STP モードの場合は Blocking から Listening,Learning,Forwarding と遷移し,Rapid STP モードの場合は Discarding から Learning,Forwarding と遷移します。この状態遷移に必要な時間を設 定できます。小さい値を設定すると,より早く Forwarding 状態に遷移できます。

[設定のポイント]

設定しない場合,状態遷移時間は 15 秒で動作します。本パラメータを短い時間に変更する場合,BPDU の最大有効時間(max-age),送信間隔(hello-time)との関係が「2×(forward-time−1)≧max-age≧2×(hello-time + 1)」を満たすように設定してください。

[コマンドによる設定]

1.(config)# spanning-tree single forward-time 10 シングルスパニングツリーの状態遷移時間を 10 に設定します。