5. 企業名 Novo Nordisk A/S(ノボ・ノルディスク)
5.2 RE100 参画の状況
画されている。その一方で、ロシア、アルジェリア、イランにある同社製造関連施設への再 エネ電力の調達方法は今後数年かけて具体化される見込みである。2017 年度の時点で世界 にある16施設のうち11施設において再エネが利用されている。
再エネ電力調達の検証手法
ノボ・ノルディスクは環境報告書に記載する影響範囲として、自社製造施設や研究開発施 設、その他事務関連の施設等のみを対象とし、冒頭で述べた同社へ商品やサービスを納入す る他社である納入業者やノボ・ノルディスクの製品のサプライチェーン上にある関係各社 のCO2排出量に関しては吟味されていない。
また、デンマークの独立した事務所に環境会計に関する情報を提供し、年次報告書に記載 する内容に関しての検証を行っているが、再エネを既存の配電系統、もしくは提携するエネ ルギー供給会社から購入する際の検証体制に関する具体的な記述は見当たらなかった。ま た、サプライヤーの再生可能エネルギーの検証方法や具体的な数値に関する記述も見当た らなかった。
RE100関連の情報開示の状況
2015年11月24日付のプレスリリースにて、RE100に加入し、2020年までに同社所有の 生産プラントでの電力需要を100%再エネにて賄うことを発表した。
これに加え、RE100 への加入は同社ウェブサイト、2017 年度の年次報告書及び次項で軽 く触れる、トリプルボトムラインの原則に則った企業活動を報告する同社のトリプルボト ムライン四半期報告書でも紹介している。
動を包括的に報告することを目的とした国際統合レポートフレームワークでは、気候変動 や資源枯渇等の外部環境の変化と企業の対応、エネルギー効率、環境や社会的課題に関する 洞察、に関する項目(例:同フレームワークの第3.8項目、第4A項目を参照)を設けてい る(国際統合レポート評議会 2014)。
さらに、2008 年に発行された持続可能な発展のためのアカウンタビリティー原則
(AA1000 AccountAbility Principles for Sustainable Development、AA1000APS(2008))では、
環境への影響、持続可能性に関する課題とそれに対する企業の立案、及び目標設定を要求し ている。
これらを元に同社とは独立した会計事務所を通じて社会・環境に関するデータの監査を 行い、事務所からの監査報告も年次報告書に掲載している。主な項目は資源、排出、及び廃 棄物であり、さらに戦略的に重要な項目としてエネルギー、水利用、CO2排出量等を挙げて いる。
RE100参画にあたり協力・連携している組織・企業等
再エネの消費対象に関しては、製品製造過程を含む所有施設でのエネルギー消費だけで なく、バリューチェーン及びサプライチェーン(上流部門の提携企業と納入業者)に対して も協力して炭素排出量の削減に向け取り組んでいる。同社では気候提携(climate collaboration)
を提唱し、エネルギーに関する5つの項目(再エネ、エネルギー効率、エネルギー消費のス クリーニング、エネルギー消費の管理、製造過程における資源利用の効率)を対象とし(図 5-2)、提携先より提供されたデータを基に、どの項目が取り組みやすいか、協議を進め、
実行に移していく体制を整えている。
図 5-2 炭素排出量の削減に向けたサプライヤーと協力し合う5部門 出所)TBL Quarterly Report No.4, 2016より作成
同社が自社内の企業活動にとどまらず、関連企業の取り組みも大きく視野に入れている 理由として、2014年に同社が行った環境損益計算書(Environmental Profit and Loss Account)
による環境負荷の測定結果がある(Danish Ministry of the Environment 2014)。この計算書に より、まず環境負荷の主要因が温暖化ガスの排出であることが分かった(Danish Ministry of
the Environment 2014, P.15)。なお、それ以外の要因として排水や大気汚染を挙げている。
また同社の企業活動に比べ、サプライチェーン及びバリューチェーンを通じた事業の関連 活動による間接的な環境影響が非常に大きいことが判明した。この環境負荷の損益評価の 対象と結果は以下の通りである。
まず原材料の生産から製品の廃棄まで図 5-3 のようなバリューチェーンのモデルを作成 し、このバリューチェーンの中で、薬や器具の製造に至るまでの行程を以下の 4 段階に分 け、それぞれの段階でのCO2排出量やエネルギー消費量を比較している。
原油の産出やコーン等の原材料の生産段階(第3段目)
それらを加工しプラスチックやグルコース等を生産する原材料の加工段階(第 2 段 目)
薬の製造に使用する機器の製造、薬の原料の輸送、及び同社の事業活動に必要なその 他物品やサービス等を生産・提供する段階 (第1段目)、
ノボ・ノルディスクの企業活動である薬や機器の製造と梱包の段階(一部アウトソー スしている業務も含む)
図 5-3 ノボ・ノルディスクのバリューチェーン 出所)Danish Ministry of the Environment 2014, P.16より作成
このモデルを基にした2011年度における全4段階の環境負荷は2億2300万ユーロであ ったが、そのうちの 87%がノボ・ノルディスクの間接的な企業活動である1段目から 3 段 目までで発生していることが明らかになった(表 5-4)。また、環境負荷の内、77%が温暖 化ガスの排出によるもので、その 88%が同様にノボ・ノルディスクのサプライチェーンの 下段、特に第 1・及び第 3 段階(Tier1 及び 3)にて発生していることが分かった(Danish Ministry of the Environment 2014, P.23)。なお、この損益計算には、各段階での商品の製造や 発送、サービスの供給等の企業活動に直結した環境影響の要因と、各過程において使用され る機械、設備、道具等の製造過程において発生する間接的な要因も考慮している。その結果、
直接的な環境要因は6700万ユーロと全体の約3割にとどまっている(Danish Ministry of the Environment 2014, P.25)。
表 5-4 各バリューチェーンの段階における全環境負荷
単位:100万ユーロ バリューチェーンの段階 水利用 温暖化ガス 大気汚染 合計 割合(%)
自社操業 7 21 1 29 13
バリューチェーン
第1段目 10 58 12 80 36
第2段目 3 23 1 27 12
第3段目 14 69 4 87 39
合計 34 171 18 223 100
出所)Danish Ministry of the Environment 2014, P.7より作成
表 5-5 各バリューチェーンの段階における直接的要因による環境負荷
単位:100万ユーロ バリューチェーンの段階 水利用 温暖化ガス 大気汚染 合計 割合(%)
自社操業 7 21 1 29 13
バリューチェーン
第1段目 6 8 1 15 22
第2段目 1 3 0.4 4 7
第3段目 10 10 0.5 21 31
合計 34 24 40 3 67
出所)Danish Ministry of the Environment 2014, P.7より作成
表 5-6 各工程における直接的要因による環境負荷
単位:100万ユーロ 製品の行程/要因 水利用 温暖化ガス 大気汚染 合計 割合(%)
装置 3 2 0 5 7
流通 0.2 8 1 9 15
エネルギー(自社サイト) 0 8 0 8 12
エネルギー(アウトソース) 0 11 1 12 18
水利用(自社サイト) 0.5 0 0 1 1
維持管理 0.03 1 0 1 1
梱包 1 3 0 4 6
薬剤 19 7 1 27 40
合計 24 40 3 67 100
出所)Danish Ministry of the Environment 2014, P.7より作成
なお、ノボ・ノルディスクでは炭素排出の計測と管理する上でのコンセプトに、通常用い られる製品のカーボン・フットプリントだけでなく、製造された薬や器具の使用状況を考え た、患者のカーボン・フットプリントという概念を提唱している(図 5-4)。これは、健康 管理システムの側面から同社の製品を利用する際に必要となる、血糖値モニタリング機器 等の医療器具に加え、その他の患者に使用される薬剤、ケアマネージメント、入院治療など も含め、炭素排出を統合的に管理していくものである。
図 5-4 患者のカーボン・フットプリントの概念
出所)Novo Nordisk 2016, P.11より作成
同社は2003年に社内での議論とWWFとの対話を通じて 2003年に気候変動に対する行 動を取ることを決めた(Braga 2009, P.2)。それ以前にも環境への意識は高かったようだが、
詳細を記述したある資料は見当たらない。
対策としてまず取り組んだのは、化石燃料への依存を減らし、炭素の排出量を減らすこと であった。3年後の2006年には、WWFが進めている気候に優しい企業へのイニシアティブ に10社目の企業として参加することとなった。このプログラムは温暖化ガスの削減を目指 して1998年に世界で初めて設立された企業とのパートナーシップであった。このパートナ ーシップでは、既存の取り組み方のような現段階でのCO2排出量と削減可能な量を見積も る既存の方法ではなく、WWFによって温暖化の影響を抑えられる排出削減量をあえて設定 し、その後に、具体的な方策を練っていくものであった。そのために様々な改良や革新的な ことがなされた。冷却・換気システムを含むエネルギー管理の研修が行われ、企業のバラン ス・スコアカードにCO2排出の目標削減量を盛り込むこととなり、自社内のエネルギー管
理部門が強化されていった。これにより、産業設備の生産性が向上し、エネルギー消費量も 抑えられ、また再エネの利用も増えることとなった。
その後、デンマークでは2014年までに企業活動で消費するエネルギーを再エネのみで供 給することを目標とし、2006年より前述したDong Energy社と交渉を始め、2007年に提携 した。この提携を通じて同社はノボ・ノルディスクの施設や企業活動におけるエネルギー効 率を高め、エネルギー消費量を減らすためのエネルギー消費の監査や技術的な指導を受け た。
なお、ノボ・ノルディスクは2015年12月よりC40 Cities Climate Leadership Group及 びロンドン大学ユニバーシティ・カレッジとともに、糖尿病患者の多くが都市部に住んでい ることに着目し、世界の都市環境と生活の質を改善することに取り組んでいる(Novo
Nordisk and C40, 2015)。その中で、都市の気候変動やCO2の削減にも取り組んでいる。
RE100参画による社外への影響
情報は入手できなかった。