• 検索結果がありません。

RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

5. 企業名 Novo Nordisk A/S(ノボ・ノルディスク)

5.1 RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

企業概要

ノボ・ノルディスクでは 1989年にデンマークの Novo Industri A/S 社とNordisk Gentofte A/Sが合併して造られた医療会社で、2017年度の時点で世界79ヵ国に約4万2680名の雇 用を抱えている(Novo Nordisk 2017, P.4)。特に、糖尿病治療、血友病、成長障害、肥満な どの症例の治療に使われる医薬品の製造を行っており、年間売上高は約 19 億8800 万円を 計上している。

再エネ電力調達の目標と達成状況

ノボ・ノルディスクは 2015年にRE100 に加入し、2020年までに全関連施設にて使用す る電力を風力、太陽光、水力による再エネ電力のみで賄うことを目標としている(Novo

Nordisk A/S 2015)。なお、2017 年時点で同社の製造過程において消費された電力のうち、

79%が再エネ電力となっている。

表 5-1 再エネ電源の供給割合 単位:%

年度 割合

2013 74

2014 73

2015 78

2016 78

2017 79

出所)Novo Nordisk 2017, P.15より作成

再エネ電力以外の気候変動対策目標

再エネ導入量増加の背景には、省エネを通じて排出量を削減する、WWFとの共同プロジ ェクトの取り組み(後述)が挙げられる。ノボ・ノルディスクが消費するエネルギーは、2017 年時点においてバイオガス・天然ガス・木材を燃料とし自社内の施設を通じて自給するもの と、電気、蒸気、及び暖房熱等、地域の既存系統から購入するものがある。同社の主な事業 部門で消費されるエネルギー量は表 5-2の通りである。

表 5-2 エネルギー消費量の変化

単位:1000GJ 事業部門 2017 2016 2015

エネルギー消費量 2922 2935 2778

糖尿病ケアと肥満部門 2015 2050 2006

生物医薬品部門 482 460 322

その他(事務所建物、研究活動等) 425 425 450 エネルギー消費量の対前年度比の削

減割合

0% 6% 9%

出所)Novo Nordisk 2017, P.15, 105より作成

ノボ・ノルディスクによれば2006年より10年間で5500万ユーロを投入して毎年平均4 万6000トンの炭素排出量を削減した。この省エネ方針により、費用の低下、ポジティブな 企業イメージの増加、化石燃料への依存からの脱却、さらには企業活動の様々な可能性が広 がり、関係者から同社への期待に応えらたことで長期的な企業利益が増加したとしている。

同社の売上高とCO2排出量の増減は以下図 5-1の通りである

図 5-1 売上高とCO2排出量の関係

*1: 2015年時点をINDEX100とする。

出所)Novo Nordisk 2017, P.104より作成

またノボ・ノルディスクの中核事業である、糖尿病治療と肥満、及び生物学的医薬品の各 部門のCO2排出量は以下表の通りである。なお、製品の発送・流通に関する部門では2017 年度においても2016 年度より 3%の増加が見られるが、これは大半の製品は海上輸送され るものの、トラックを利用した陸上輸送と航空輸送も行われており、これらの数値に変化が ないためである。

表 5-3 産業ごとのCO2排出量の変化

単位:1000トン

事業部門 2017 2016 2015

エネルギー消費によるCO2排出量 90 92 107

糖尿病ケアと肥満部門 76 78 88

生物医薬品部門 12 11 6

その他(事務所建物、研究活動等) 2 3 13

製品販売を通じたCO2排出量

39 38 43

CO2排出量合計 129 130 150 出所)Novo Nordisk 2017, P.106より作成

排出量の削減方策

社員の移動手段に関して、2017 年よりタクシーに代わる電気自動車を自社で保有してい る。また、電化率ではないが、デンマークにおいて通勤時に公共交通を利用する社員に対し

交通費 50%分の税金を控除する仕組みを取り入れた。また出張はできるだけ避け、インタ

ーネットを通じたバーチャル会議を利用することで、移動手段等の社員の主張の際に発生 する排出量の削減に取り組んでいる。

再エネ電力調達の達成手法

ここでは、各国の現状をまとめる。まずデンマークでは、自社バイオガスプラント(4万

7000MWh/年)に加え、デンマークに本社があるDong Energy社と2007年5月に提携し、同

社の建設する洋上風力発電に出資し、2年後の2009年より同社が生産する電力量の約3分 の一を購入することで、100%再エネ電力によって需要を賄っている(Braga 2009, P.4)。

また、ブラジルでは認証された木材を原料とする同社所有の木質バイオマスプラントに よる電力供給に加え、既存の配電系統より水力発電によるからの再エネ電力を購入してい る。

中国では天津市にある製造施設の全需要電力分(4万MWh/年)に対して再エネ電力を購 入している。その一方で、2015年に内モンゴル自治区に33機の風力発電機からなる発電容

量計 200GWh/年の発電施設を建設し、同社の製造施設で使用する電力を大幅に上回る電力

を既存の送配電系統へ売電接続している。これにより、実質自社内での電力需要が全て風力 による自家発電にて賄われているのと同じこととなった。さらに日本では郡山に製造施設 があるが、風力は建設場所が見つからず、また太陽光は屋上の重量制限もあり再エネ電源を 設置することができず、地熱も費用対効果が見込めなかった。そのため、2013 年より全使 用電力に対してバイオマスと風力の再エネ電力証書を購入することで、全使用電力を再エ ネ電源で賄ったのと同等としている。

ノボ・ノルディスクは米国・カナダでは配電系統事業者との協力体制の元、太陽光発電所 による再エネ電力の導入を進めている。またフランスでは電力需要量の一部を賄うために 太陽光発電パネルの設置計画がなされ、それ以外の電力は既存電力網から太陽光発電によ る電力を購入する意向だ。加えて北欧と中国では、同社による新たな風力発電所の導入も計

画されている。その一方で、ロシア、アルジェリア、イランにある同社製造関連施設への再 エネ電力の調達方法は今後数年かけて具体化される見込みである。2017 年度の時点で世界 にある16施設のうち11施設において再エネが利用されている。

再エネ電力調達の検証手法

ノボ・ノルディスクは環境報告書に記載する影響範囲として、自社製造施設や研究開発施 設、その他事務関連の施設等のみを対象とし、冒頭で述べた同社へ商品やサービスを納入す る他社である納入業者やノボ・ノルディスクの製品のサプライチェーン上にある関係各社 のCO2排出量に関しては吟味されていない。

また、デンマークの独立した事務所に環境会計に関する情報を提供し、年次報告書に記載 する内容に関しての検証を行っているが、再エネを既存の配電系統、もしくは提携するエネ ルギー供給会社から購入する際の検証体制に関する具体的な記述は見当たらなかった。ま た、サプライヤーの再生可能エネルギーの検証方法や具体的な数値に関する記述も見当た らなかった。

RE100関連の情報開示の状況

2015年11月24日付のプレスリリースにて、RE100に加入し、2020年までに同社所有の 生産プラントでの電力需要を100%再エネにて賄うことを発表した。

これに加え、RE100 への加入は同社ウェブサイト、2017 年度の年次報告書及び次項で軽 く触れる、トリプルボトムラインの原則に則った企業活動を報告する同社のトリプルボト ムライン四半期報告書でも紹介している。