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RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

11. 企業名 Inter IKEA Systems B.V. (イケア)

11.1 RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

企業概要

イケアの企業組織は非常に大きいため、始めに組織構造を整理する。同グループは 2016 年5月、特定事業の専門性と効率性を高めるため、従来の製造・販売業を行うインター・イ ケア(Inter IKEA)・ホールディングB.V. と、投資事業を中心に行うインテルオーゴ(Interogo)

ホールディング株式会社に分割された。両者は共にインテルオーゴ財団が所有している。そ の後、同年8月にフランチャイズ・システムを改善し、両者の各部署の役割をより明確にす るために企業組織を再編し、インター・イケア・ホールディングB.V.は新たなインター・イ ケア・グループとして、 以下3つの部門から構成されることとなった(図 11-1)。

図 11-1 インター・イケア・グループの組織図

出所)インター・イケア・グループウェブサイト, www.inter.ikea.com/en/about-us/business-in-brief/、2018 223日取得

インター・イケア・グループの2016年度版の持続可能性レポートによれば、電力と熱供 給共に、同グループ傘下にある全関連施設を対象として再エネの利用を進めている。同グル ープで一番大きな部門は商品・供給(Range&Supply)部門で、各商品のバリューチェーンが

IKEA of Sweden ABによって統括され、またIKEA Supply AGは商品製造の一部と流通管理

部門を統括している。後者の担当業務・もしくは傘下の会社には、同グループで製造・販売 する商品に関連した部品を製造するIKEA Components 会社、販売・供給計、ロジスティク ス業務、中国の商品開発センター、輸送業務、マーケティング・顧客管理を担う IKEA

Communications会社等がある。また産業部門には木工関連の製造業を行うIKEA Industryが

ある。

インター・イケア・グループは、上記子会社を含め、商品やサービスを納入・提供してい る全企業であるサプライヤー(表 11-1参照)に対して、製造過程、労働条件、環境・社会 影響に対する企業行動規範 IKEA WAY (略称:IWAY) を2000年に導入し、その適応を 義務付けている。この規範は国際労働機関(ILO)が1983年と1998年にそれぞれ定めた、

職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約、労働における基本的原則及び権利に関す るILO宣言、2000年に採択された国連グローバル・コンパクト、さらには国連世界人権宣 言、国連児童の権利に関する条約(通称:子供の権利条約)を基にしている。

イケア店舗はオランダのデルフト市にある一店舗を除き、全てインター・イケア・システ

ム B.V.とフランチャイズ契約を結んでいる。しかし、同会社はフランチャイズに関する管

理業務は行うものの、店舗自体は1986年よりインター・イケア・グループとは別のイング カ(INGKA)・グループ、もしくは単にイケア・グループ(以下イケア)と呼ばれる、イン グカ・ホールディングB.V.が所有し営業している93。同グループはインター・イケア・グル ープと同じ創設者により設立されたが、その所有者はスティヒティング・インカ財団となっ ている。このイケア傘化のイケア店舗(ウェブサイト等で商品を注文し、店頭で受け取る

(pick-up and order point)も含む94) も同じく再エネ利用の対象となっている。下記表 11-1 に、地域ごとの店舗、ショッピングセンター及び店舗とインターネットでの注文顧客に対応 した流通センターの施設数をまとめる。

表 11-1 イケアの納入・下請け業者数

単位:社

分野 サプライ

ヤー数 説明

家具製造 1028 自社部門も含む、家庭用家具の製造業者。

2000年のIWAY開始当初からの参加企業。

運輸会社(陸上・海上輸送) 250

鉄道・トラック・河川・海上輸送による店舗や流 通センターへの輸送業務を担う。原則、バリュ ーチェーン上では空輸は行われていない。

運輸会社(顧客販売・サービス) 94

顧客への直接販売、商品の店舗内受け取り・

組立・設置サービス業者。直接IKEAが全サ ービス業者との契約を結ぶわけではない。

IKEAカタログ 31 紙媒体のみのカタログ製造に関わる製紙パル プ業者と印刷業者

IKEA フード 88 IKEAビストロ、レストランとスウェーデン・フー

ド・マーケットへ食べ物や材料を供給する業者

IKEA IMS 371

事業経営に必要な物資やサービス(カート、ラ ック、店内照明設備、店舗及び維持管理業務 用の制服、仕事着等)の供給業者

店舗の清掃、セキュリティー、廃 棄物処理、顧客販売サービスの 供給

359 輸送とサービス機能に関してIKEAと直接契

約を結んでいる左記サービの供給会社

IKEA 部品(Components) 381

梱包を除く、家庭用家具の部品や材料を IKEAのサプライヤーや下請け業者に納入す る業者

IKEA産業(Industry) 805

無垢材、ボード・オン・フレーム、板を用いた家 具の製品をIKEAに供給し、材料・部品をバリ ューチェーンへ供給する業者

財産・設備管理 185 IKEAの店舗とIMSを除く全設備の清掃、維 持管理、廃棄物管理を行う業者

出所)IKEA Group 2016, P.61より作成

93 イケアウェブサイト、www.inter.ikea.com/en/about-us/milestones/#y1980、2018316日取得

94 イケアウェブサイト、https://m.ikea.com/ca/en/pages/local_store/pup_index/、2018316日取得

表 11-2 流通センターと店舗

単位:軒 地域 店舗数* ショッピング

センター数

店舗と通信販売顧客に 対応した流通センター

アジア 36 3 5

ヨーロッパ 257 26 34

豪州 10 0 1

ロシア 14 14 1

北米 62 0 16

*: pick-up and order point形態の店舗も含む 出所)INGKA Holding B.V. 2017, P.2より作成

再エネ電力調達の目標と達成状況

イケアは2020年までに再エネによるエネルギー自給率を100%にする目標を立てている。

2009 年から再エネ電力への投資が始まり、既存電力からの購入も含めた再エネ電力の利用 率は過去数年間で急激に増加している。

下記表にある通り、2014年度には年間電力消費量の16.2%に当たる500GWhが風力と太 陽光発電により賄われていたが、2年後の2016年度にはショッピングセンターでの消費量 を除くとイケア・グループ全体の熱電合わせた年間消費量のうち、77.3%が自社発電、既存 配電網からの購入、及び地域熱供給による再エネをエネルギー源としたものを利用してい る。尚、ショッピングセンターを加えた場合は全電力需要のうち 64.5%が再エネ電源によ り、また熱電合計では 60.5%が再エネ源の利用となっている。2017 年度にはショッピング センターを加えた熱電合計の消費量全体の 73.1%が再エネ電源により供給されている。各 年度は9月期首、8月が期末である。

表 11-3 再エネの年間発電量と熱供給量

単位:GWh

2014年度 2015年度 2016年度1

再エネ電源の全消費電力に占める割合 16.2% 33.3% 77.3%

風力発電の発電量 410 985 1789

太陽光発電の発電量 90 109 127

バイオマス発電の発電量 - - 23

再エネによる熱エネルギー供給割合 42% 53.4% 63.1%

再エネ源による熱供給量 1310 1319 1271 再エネによる全エネルギー供給割合 42% 53.4% 71%

再エネ源からの熱電供給量 1810 2412 3209 注)ショッピングセンターを除く

出所)IKEA Group 2016, P.43より作成

また、店舗、物流センター(ロジスティクス、輸送、売上・供給計画策定)、IKEA Industry

(木工関連の製造業)、IKEA Components(部品関連の製造業)の各部門別に見た、熱と電 力を合計した年間消費量に対する、再エネ源の割合は下記表 11-4の通りである。この統計 の再エネ源には自社発電分に加え、既存の配電網より購入した再エネ電力、及び地域暖房か ら供給される熱も加えられている。尚、2016 年度においてショッピングセンターの再エネ

利用率は7.4%にとどまっており、この数値も加えた場合、全体の割合は以下の表の73.1%

から63.4%へと下がる。

表 11-4 各部門における全熱電需要量に対する再エネの割合

単位:%

部門 2014 年度 2015 年度 2016 年度

小売り 53.7 51.4 66.5

流通センター 55.1 55.2 64.8

イケア産業(家具) 55.6 68.6 86.3

イケア産業(板) 69.2 70.3 73.3

イケア部品 41.8 38.3 48.8

合計 59.8 61.9 73.1

出所)IKEA Group 2016, P.44より作成

再エネ電力以外の気候変動対策目標

イケア・グループでは、エネルギー効率を高め、エネルギー需要量を減らすことも気候変 動への対策として重要視しており、2020年度までの達成目標も設定している。以下、表 11-5 は、基準年度を2010年度とした、店舗、物流センター、IKEA産業、IKEA 部品の部門別に 見たエネルギー効率の改善状況である。

表 11-5 各部門におけるエネルギー消費削減率と目標

単位:%

部門 2014 年度 2015 年度 2016 年度 2020 年 目標

小売り 15.1 14.6 15.5 30.0

流通センター 25.0 26.8 28.6 30.0

イケア産業部門(フラットライン・無垢

材) 17.9 12.6 14.0 30.0

イケア産業部門(板) -1.6 4.7 1.4 30.0

イケア部品1 25.9 48.0 48.3 30.0

注)ショッピングセンターを除く。

1: 基準年度は2012年度

出所)IKEA Group 2016, P.46より作成

上記各部門に加え、イケア・グループへの納入業者全体でもIWAYを通じて、2017年度 中にエネルギー効率を20%高める目標を立てている(IKEA Group 2016, P.38)。尚、2016年 度までのエネルギー効率は下記表 11-6の通りで、2016年時点でCO2排出量は2012年度比

較で17.3%減少し、エネルギー効率は18.7%向上、また水利用効率も41.6%向上している。

表 11-6 家庭用家具等の納入業者の再エネ導入に関する動向

単位:%

項目 基準年度

2012 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 エネルギー

エネルギー消費量(GWh) 7853 6744 7727 7938 エネルギー効率(kWh/m3・購入製

品) 308.0 250.0

253.9 250.4 再エネの割合(%) 24.8 26.6 28.0 31.8 温室効果ガス排出

CO2 換算の温室効果ガス排出量

(t) 2024.195 1888.114

2126.674 2082.279 CO2 換算の温室効果ガス排出効率

(kg/ m3) 79.4 70.0 69.9 65.7 出所)IKEA Group 2016, P.38より作成

また、イケア・グループで取扱う商品やカタログの製造過程においても再エネの利用を推 し進めている。同グループのカタログはデジタルと紙媒体の両方があるが、その製造には19 ヶ国にまたがる製紙会社7社と出版社23社が関わっているが、カタログ製造時に消費する 電力と熱における再エネ量は、2016年時点で全エネルギー消費量に対して42%となってい る(下記表 11-7)。

表 11-7 カタログ製造に関する環境データ

項目 基準年度

2010 年度 2014 年度 2015 年度 2016 年度 カタログ製造

カタログ部数(百万冊) 197 217 211 213 使用した紙の量(t) 102.476 102.077 100.390 96.934