• 検索結果がありません。

RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

19. 企業名 Heathrow Airport Limited (ヒースロー空港)

19.1 RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

企業概要

ロンドン・ヒースロー空港は、ヒースロー空港ホールディング有限会社(Heathrow Airport Holdings Limited)が所有し、ヒースロー空港有限会社(Heathrow Airport Limited)が運営する ロンドンのハブ空港であり、一日平均1万3千便のフライトと20万人の旅客数を抱える。

同ホールディング会社はさらにロンドンに 2 つあるガトウィック(Gatwick)及びスタンステ ッド(Stansted)の両空港も所有している。

再エネ電力調達の目標と達成状況

ヒースロー空港は空港施設について、2050 年までに炭素排出量がゼロとなるよう持続可 能な成長をめざしており、同社保有施設・敷地内における自家発電装置を増設することで、

2017年4月より電力需要を100%再エネ電源により賄う予定である149

2015年にはエネルギー需要管理プログラムでエネルギー消費を27GWh削減した。また、

5月には165枚の太陽光発電パネルをCompass Centreに設置した。この太陽光発電設備の容 量は37MWで、炭素排出量を年間17トン削減している。

再エネ電力以外の気候変動対策目標

ヒースロー空港の温室効果ガス削減目標は2020年までに固定資産からの排出量を1990

年比34%削減することである。

ヒースロー2.0 (Heathrow2.0) は航空業界の持続可能な未来を提供するためにより一歩進 んだ目標を立てている。この目標には炭素を排出しない空港にするための大きな一歩とし て、炭素を排出しない新しい滑走路による成長の促進及び2017年度より再エネ電源のみで 電力需要を賄うことが盛り込まれている。さらに、空気がよりきれいになることで生活の 質が向上するよう努める。

新しいヒースロー2.0戦略は、社会、環境、及び経済に関して200以上の目標を掲げてい る。これは4つの柱:最適な労働環境、最適な居住環境、持続可能な経済成長、及び旅を したくなる社会から成り立っている。

149 RE100ウェブサイト、http://there100.org/companies、2018320日取得

最適な居住環境

遅くとも 2022 年までに 23 時半以降の出発便を原則半 減させることを求めた自発 的に静かな夜を求める憲章

(Quiet Night Charter)

を含む、地域コミュニティ の利益を確保する新たなイ ニシアティブをヒースロー 2.0 は示している。また、

騒音と炭素排出量によって 航空会社を公式に評価する ための、静かできれいな飛 行(Fly Quiet and Clean)と呼ばれる表も提 示している。

旅をしたくなる社会 炭素を排出しない新しい滑 走路による成長の促進 空港の持続可能性に関する 最先端の拠点を形成 ヒースロー空港を再エネ電 源のみで賄う

持続可能な経済への努力 第 3 滑走路の建設・運用を 通して 2030 年までに 1 万 人に対して研修を行い、ま たヒースロー空港で働くヒ ースローのサプライチェー ン中の企業の被雇用者がロ ンドンで生活するのに十分 な賃金を獲得できるよう転 換していく方法の手立てを 2017 年に公表する。これ

により、ヒースロー 2.0 はよりよい労働環境を提供 することを目指す。

図 19-1 ヒースロー2.0の概要

出所)ヒースロー2.0 ウェブサイト、http://your.heathrow.com/heathrow-launches-heathrow-2-0-sustainability-strategy-centre-excellence-plan/、20183820日取得

2050年の炭素を排出しない空港施設(建物とその他固定施設)の運営とそのための内部 目標は以下の通りである。

表 19-1 ヒースロー空港のカーボン・ニュートラルの戦略と目標

戦略 指標 目標

2050 年までに炭素を排出しない空 港施設(建物とその他固定施設)

の運営とそのための内部目標

固定施設のエネギー消費に より発生する炭素排出量を CO2 として換算(トン)

2050 年までに固定施設のエネルギー 消費により発生する炭素量をゼロにす

同社の 2020 年の中期目標:

2020 年までに対 1990 年度比で炭素排 出量を 34%削減

今後の目標は 2017 年度に設定 新しい施設の計画には、最先端のエ

ネルギー効率を検討する。

運用に必要な電力量 (kWh/pax)

既存の建物やその他施設のエネルギ ー効率を改善することへ投資する

運用に必要な電力量 (kWh/pax)

2017 年度のエネルギー効率目標:

運用に必要な電力量を 2017 年の終わり までに 6.3 kWh/pax とする

エネルギー効率を改善するよう提 携企業の運用と成長を促進する。

2018 年までに提携している企業のヒー スロー空港での事業に対してエネルギ ー効率を改善できる適切な方法を考案 する。

同社施設内、もしくは地域の再生 可能資源によるエネルギー利用の 割合を増やす。

同社施設内、もしくは地域 の再生可能資源によるエネ ルギー利用を増やす (%) 同社施設外より再エネを購入する。 同社施設外より供給される再

エネの割合(%)

炭素を発生させない空港を運用するた めの最初の段階として、2017 年 4 月 以降はヒースロー空港を 100%再生可 能電源にて賄う

固定施設のエネルギー消費により発 生する残りの排出量に対して、最後 の手段となるのが炭素排出の相殺を 進めることである。

同社計画の目標 11 を対象

出所)ヒースロー空港 2017

ヒースロー空港は再エネ以外にも総合的な環境対策に取り組んでいる。ヒースロー2.0で は、同空港を最先端設備から成る航空の拠点とするための新しいイニシアティブを打ち出 していることは既に述べた。

これには、新規の研究開発振興計画や新しい滑走路による空港のさらなる成長、炭素排 出をゼロにすること、地域住民への騒音を配慮し深夜便を少なくとも半減させることを盛 り込んだ。この戦略には環境団体や学術組織、地域住民のリーダー、同空港従業員、旅 客、提携企業や納入業者の意見が反映されている。

ヒースロー2.0の一部として同社は50万ポンドを航空機による騒音や炭素排出等の影響 を最小限に抑えるための研究開発を振興するために投じた。同社は航空業界や研究及びビ ジネス業界からの参加者を特定するために専門家の意見を仰ぐことにしている。今年の終 わりまでに、出来るだけ多くの資金源を確保し、この計画を2019年に開始する予定であ る。

2016年には以下のような成果があった。

 廃棄物の45%をリサイクルした。

 旧ターミナル 2 の取壊しにより発生した廃棄物の90%以上がリサイクルされ、現在、

自然光を多く取り入れた屋根とバイオマスを燃料とするボイラーによるエネルギー供 給装置を備えた新ターミナルを建設している。

 このボイラー・プラントは地域の資源である木質チップを燃料とし、炭素を排出せずに ターミナルに電力、暖房熱の供給、及び冷房を行う。

 建物内でのエネルギー消費により排出されるCO2を1990年度比で13万4675トン、

約37%削減したが、これは2020年までに34%削減するとした目標を上回るものであっ

た。

 欧州のどの空港よりも多くの航空便が、より静かで環境にやさしい次世代旅客機(A350, A380 and 787)で運行されている。

排出量の削減方策

ヒースロー空港の「Heathrow Energy Reduction Code of Conducts」には排出削減目標等が以 下のように記されている。

ヒースローのCO2削減目標とエネルギー戦略は以下の事項を目的とする:

 エネルギー消費をより効率かすることで費用を最大限節約すること

 エネルギーセンター等の空港内のエネルギー関連施設を通じて気候変動に対する回 復力を高めること

 CO2排出削減に関する政府の政策を支持すること

 計画申請と継続した利益を支援すること

 これらは以下の行動によって達成する:

 設計時から既存のシステムを効率的に使い、エネルギーを消費しないようにする

 エネルギー効率システムを設計し組込むことでエネルギー消費を削減する

 低炭素もしくは無炭素の技術を用いた供給源が利用可能な場合は既存のエネルギー 供給源から変更する

 効果的な選択肢や戦略を打ち立てることでエネルギー利用を最適化する

 ヒースロー持続可能性パートナーシップ(Heathrow Sustainability Partnership)を通じ てパートナー企業に以下のことを推奨する:

 可能な範囲でエネルギー消費量を削減する原則に従う。

 データが入手可能な限りヒースロー空港でのエネルギー消費量を把握し、エネルギ ー消費の削減が可能な項目を調査する。

 各社が実施できる測定手法に基づいてエネルギー行動計画を立てる。

 消費、炭素排出量、及び費用対効果を算出する。

 各社の建物、設備で達成できる範囲に基づいたエネルギー目標を設定する。

 ヒースロー持続可能性パートナーシップでの会合を通じて進捗状況を報告し、また 管理する。

 2020 年のヒースロー炭素排出削減目標に対するグループでの努力を協力して報告す る

ヒースロー空港では1990年以来旅客数は増加し、空港も拡大されてきたものの、同社は 建物内でのエネルギー消費から発生する炭素排出量を削減してきた。

以下のプロジェクトに取り組んだ結果、2012 年以降電力消費量を合計 70GWh を削減で きた150

 2年間のLED交換プログラムにより、7万個以上の空港のランプが取り換えられた。

 ターミナル 2 の照明管理システムによって建物が使用されていない時や日光で十分な 時はLEDランプのスイッチを切ることができるようになった。

 エネルギー最適化プロジェクトにより、使用されていない領域のシステムの電源を切 ることで、エネルギー効率の向上やエネルギー消費量の削減、及び運用費用を削減する ことができた。

150 ヒースロー空港ウェブサイト、https://your.heathrow.com/heathrow-energy-use-focus-earth-day/、20183 10日取得