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RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

14. 企業名 ING Groep N.V.(ING)

14.1 RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み

企業概要

INGはInternational Nederlanden Groepの略称で、国際的な銀行・金融サービス企業であり、

1991年にアムステルダムに設立された。

主に小口金融、ネット銀行、商業銀行、投資銀行、アセットマネジメント、保険サービス を行っている。現在は40カ国に4万8000人の従業員がいる。

再エネ電力調達の目標と達成状況

2015 年 ING は世界的な目標として事業のカーボン・フットプリントの削減を公表した。

その実現のために INGは環境マネジメントシステムと環境アプローチを開発し、同社のグ ローバルな環境フットプリントの低減と、エネルギー利用、出張、廃棄物、水資源と持続可 能な調達の可能性やその影響についての意識の向上を促進した。

RE100 はこうした環境プログラムの統合的なアプローチの中の一つとして位置づけられ

ている。その対象範囲は、事業、建物、ITシステムで消費される電力で、これを100%再エ ネで賄うことである。

そのためにINGは以下のような目標を掲げている。

 ING が管理権限を持っている世界中の建物については2020年までに100%再エネ電力 を調達する

 可能な限りローカルな再エネプロジェクトから再エネ電力を調達する。再エネ電力と は風力、太陽光、地熱、水力といったような自然の中で継続的に再生産される資源を用 いて発電される電力を指す

再エネ電力比率は2016年に91%、2017年は95%だった。

表 14-1 INGのエネルギー消費量と炭素排出量

エネルギー源

エネルギー消費量/炭素排出量

2017 年 2016 年 2015 年 GWh 1000 トン GWh 1000 トン GWh 1000 トン

電力 12 5 23 9 38 28

再エネ電力 214 0 236 0 240 3 天然ガス 65 15 83 19 88 20

化石燃料 2 1 3 1 4 1

地域熱 22 5 22 5 15 3

合計 315 25 367 34 385 53 出所)ING 2018より作成

再エネ電力以外の気候変動対策目標

ING は気候変動を現代の最大の課題の 1 つと認識している。INGは事業からの環境影響 を低減するとともに、顧客の削減の支援も行っている。

INGが掲げる再エネ電力以外の目標は以下の通りである。

 2017年までに炭素排出量を30%、2020年までに50%削減する(2014年比)

 グローバルな事業から発生する、埋め立て廃棄物を2017年までに10%、2020年までに

20%削減する(2014年比)

 水資源のフットプリントを2017年までに10%2020年までに20%削減する(2014年比)

 残った炭素の排出量については、カーボン・ニュートラルになるまでオフセットする

 CDP で報告する進捗状況についての透明性を確保するための基準を見直し、資源利用 の環境パフォーマンスの指標を用いて年次報告書で公開する

 サプライチェーンがINGの質の高い環境基準を満たすために、積極的に支援する

 2020年までにグローバルでING のサプライヤーの95%が INGの持続可能調達基準に 合意するよう努める(ただし再エネは含まない)

 2016 年には持続可能な調達プログラムの一環として、450 のサプライヤーの続可能性 パフォーマンスを評価した

INGの2016年の炭素排出削減量は27%だった。

排出量の削減方策 (1) カーボン・オフセット

INGは削減できなかったCO2排出についてはボランタリーカーボンユニット(Voluntary

Carbon Units、VCUs)を調達してオフセットした。VCU は、例えばインドのソーラーエネ

ルギーアクセスプロジェクトのVCUを調達している。インドのプロジェクトは最下層の家 庭に対して電灯と給湯を提供するものであり、その他にゴールドスタンダード(Gold Standard)の家庭、学校、企業内の化石燃料を用いるヒーターを交換する太陽温熱プロジェ クトや大規模ウィンドパークプロジェクトのVCUも調達している。

2017年に取り組んでいるプロジェクトには例えば以下のプロジェクトがある。

Carbon Neutrality: REDD+ Project

このプロジェクトはボルネオのリンバ・ラヤ(Rimba Raya)で行われているプロジェ クトである。ING は事業からの CO2 排出を VU の調達で相殺している。2017 年はその大 部分をボルネオの REDD+ project から調達した。

このプロジェクトは、パーム油のプランテーションに転換するために伐採られる予定 だった約 4 万 7000ha の熱帯林の伐採を中止し、炭素を貯蔵できる沼地を保全するプロ ジェクトである。

このプロジェクトはコミュニティ開発と生物多様性保全、特に絶滅の危機にあるボルネ オのオランウータンを保護することを目的としていた。

この目的を達成するため、このプロジェクトでは、ローカルのコミュニティの食料安 全保障事情の改善、水源の保全、収入機会の創出、ヘルスケアと教育に積極的に関与し た。

保全に加えて、このプロジェクトでは 100 万本の植樹を目指して、土壌の改善活動も行 った。

(2) 持続可能な調達

INGは世界中で2万5000のサプライヤーから40億ユーロの調達を行っている。INGに とってこれはサプライチェーンを通じて自社の持続可能性のためのアジェンダを推進する 大きなチャンスである。サプライヤーがING の基準を共有し、継続的に改善できるように 支援し、INGはリスクの低減のために先導的な役割を果たすことができると考えている。

ING の調達ポリシーと手続きは、ING が調達する製品やそのサプライヤーの持続可能性 に向けた姿勢に、社会や環境側面を取り入れるように求めている。INGは世界中で、サプラ イヤーに関連のある社会、環境、金融リスクのレベルを見定めるための支援ツールとしてサ プライヤー評価(supplier qualification、SQ)プロセスを導入した。この中では、特に強制労 働や児童労働、公平な労働基準、環境保護、腐敗防止といった人権に関わる側面に注力して いる。サプライヤーがSQに合格すれば、INGサプライヤーとして認められ、ING持続可能 調達基準(ING Procurement Sustainability Standards、IPSS)が適用される。

IPSSの準拠はEcoVadis持続可能性モニタリングとのパートナーシップを通じて監視され

る。2016年にはINGは以下のような取り組みを掲げた。

 IPSSカバー率を2020年までに95%まで高める

 2020年までにINGの建物はすべて再エネ電力を供給する

 20の循環型商品をテストする

 2016年には450のサプライヤーの持続可能性パフォーマンス評価を実施する

表 14-2 INGのCO2排出量(単位:1,000トン)

区分 2017年 2016年 2015年

Scope 1 16 20 22

Scope 2 103 14 32

Scope 3 30 29 29

合計 55 63 82 注:Scope 22017年のみロケーションベースで、その他はマーケットベースである。

出所)ING 2018

(3) 持続可能な金融

INGはまた、国連持続可能な開発目標を指示しており特に、経済的で持続可能な発展の目 標や持続可能な生産と消費に関する目標を掲げている。INGにとって、自らの排出量だけで なく、顧客の排出量を減らうすことも重要なテーマである。

INGは、CE100のメンバーとしてEllen MacArthur Foundationに参加し、循環型経済を推 進しており、循環型経済に則ったビジネスによる成長を目指す企業に、戦略的な投資、株式 購入、融資などを通じた支援を行っている。

総じて、ING は企業顧客がより持続可能になるための転換アクションを加速化するため のプロジェクトや、環境や社会的な課題に対するソリューションを開発する顧客に対して 金融支援を行っている。

この持続可能な転換のための金融(sustainable transitions finance、STF)スキームで支援し た総額は2016年で340億ユーロ以上であり、2020年目標である350億ユーロにわずかに届 かなかった。INGは社会に対してポジティブな影響のある活動に対して、持続可能な転換の ための金融支援や、管理可能な持続可能な資産(sustainable assets under management、SAuM)

の向上を推進している。

2016年にはSTFを通じた支援が343億ユーロ、SAuMを通じた支援が330億ユーロであ った。さらに、INGは環境と社会のリスク(Environmental and Social Risk、ESR)フレーム ワークを改善し、顧客に対する関与や金融支援プロポーザルの評価の指針として用いてい る。

ING はまた、持続可能な債券市場の開発にも取り組んできた。INGは2015 年11月に最 初のグリーンボンドを開始した。その売上の使途、CO2 排出削減による環境へのポジティ ブな影響についての情報公開を約束した。

グリーンボンドの売り上げの投資先は、当初は新規プロジェクトへの配分を 20%と予定 していたが、最終的に24%が新しいプロジェクトに回されることとなった。

再エネプロジェクトのポジティブな環境影響を計測するためのフレームワークは、外部 の専門家と共同で開発した。このフレームワークに基づいて、INGはグリーンボンドのプロ ジェクトからのCO2排出削減量は合計で年間74万4000トンと評価した。これはオランダ の9万3000世帯が1年間に排出するCO2と等しい量である。

この画期的なグリーンボンドの運営を担った INGの経験豊富なチームはその後、幅広い 顧客のために多くの画期的なグリーンボンドプロジェクトを主導してきた。

顧客には、フランスの電力会社EDF、中国銀行(Bank of China)、トルコの開発銀行Türkiye Sınai Kalkınma Bankası A.Ş. (TSKB)、スペインの電力会社Iberdrolaがいる。

さらに、ING は、オランダの乳製品企業 Royal Friesland Campina、オランダの電力会社

Tennet、スイスの電力会社Repower を支援し、オランダの電力会社Allianderには投資家か

らグリーン金融向けの資金も集めている。

2017年にはINGグループは貸付利率が顧客の持続可能性の評価に連動するタイプの融資 を開始した。Koninklijke Philips N.V.(ロイヤル・フィリップス)への融資で、持続可能性の 評価はSustainalyticsが行う。