8. 企業名 Starbucks Corporation(スターバックス)
8.1 RE100 に関連する再エネ電力調達の取り組み
企業概要
スターバックスは1971年創業のカフェで、現在は世界中にフランチャイズ展開している。
現在70カ国以上に、直営、契約店あわせて2万4000店舗以上あり、売り上げは2017年で 2240億ドル、店舗、生産サイト、本社で働く従業員は総数27万7000人、このうち米国で の正規雇用は18万5000人、そのうち17万5000人が店舗で働いている。
スターバックスのウェブサイトで入手できる最新の報告書は2016年のものしかなかった ため、本報告書は2016年報告書に基づいている。
再エネ電力調達の目標と達成状況
RE100に参画した2015年、スターバックスは世界中の同社直営店舗においてすでに再エ
ネ100%を達成していた。2014年の総電力使用量7億8500万kWhのうち59.3%が再エネ
であったが、2015年は13億9200万kWhすべてを再エネで賄った。2015年度に購入した再 エネ電力の内、米国、カナダの風力由来の電力が13 億 2500 万 kWh、また、ヨーロッパ、
中東、アフリカの再エネ市場から6680 万 kWh を買い付けている。
市場を北米だけに絞ることなく、他地域の市場を追加することは、スターバックスのエネ ルギー資源の多様化に大きく貢献している。
また、将来的にアジアの店舗に対して現地の事情に即したエネルギー戦略を策定すると 公表している。さらに、2020年までに全世界の事業用電力を再エネに100%へ切り替えへの コミットメントを表明している。
再エネ 100%は達成したものの、スターバックスは総電力使用量が 2011年5 億5800万
kWhから2015年までの5年間で約2.5倍も増加している。これは飲食産業における彼らの ビジネスが大幅に拡大し、具体的には、食品商取引や保冷・加熱のためのエネルギー使用率 が高まったことを反映すると説明している。
総電力消費量の増加を認識し、スターバックスは直営店での電力使用の効率化に取り組 んでいる。米国、カナダの直営店における(単位面積/店舗/月)あたりの平均電気消費量を
測定し、2008 年度を基準値とした変化率を算出する。2015年までに25%の削減を目標とし
ていたが、4.3%しか純減できていない。
しかし、高い目標を定めることにより、店舗と設備の設計においてイノベーションを促し、
電力使用の効率化を高める原動力となることを期待している。
表 8-1 年度別再エネ100%達成率と総電力消費量
目標 単位 目標 2015 2014 2013 2015 年度までに世界
各国の直営店におけ る電力利用の 100% 相 当を再エネで供給
% 100 100 59 55 100 万 kWh 1392 785 650
出所)スターバックス 2015, P.10より作成
再エネ電力以外の気候対策目標
スターバックスは小売店舗の環境配慮を高める取り組み、グリーンリテールを行ってい る。その目標には例えば2025年までに1万店舗のグリーンリテール店舗を建設、運営、カ ップにおけるリサイクル素材の含有量、カップのリサイクル率・再利用率を2022年までに 倍増、2020年までにパートナー1万人を持続可能性の提唱者にすることが含まれる。
また、省エネ目標として、直営店のエネルギー消費を2025年までに25%削減することを 掲げている。
表 8-2 スターバックスの省エネ目標
目標 単位 目標 2015 2014 2013 直営店で 2015 年度ま
でにエネルギー消費 を 25%削減
% 25 4.3 4.6 7.1 100 万 kWh 5.1 6.51 6.49 6.32
注:単位は米国・カナダの直営店における単位面積/店舗/月間あたりの平均電気使用量。
出所)スターバックス 2015, P.10より作成
排出量の削減方策
電化率向上ではないが、店舗の省エネに向けた取り組みを熱心に行っている。
ス タ ー バ ッ ク ス は 店 舗 の グ リ ー ン 化 を 図 り 、220 か 国 1,200 以 上 の 店 舗 で LEED
(Leadership in Energy and Environmental Design) 認定62を取得している。さらに、全世界の LEED認定プロジェクトの20%をスターバックスの店舗が占めている。2015 年度は716の 総店舗数のうち74%が認定を取得している。
62 USGBCウェブサイト、https://new.usgbc.org/leed、2018年3月19日取得
表 8-3 スターバックスのLEED認証取得率
目標 単位 目標 2015 2014 2013 直営店で 2015 年度ま
でにエネルギー消費 を 25%削減
% 100 74 64 65
出所)スターバックス 2015, P.10より作成
エネルギー削減のために、エネルギー消費の大半を占める加熱と保冷、空調設備を遠隔監 視・管理し、電化率最適化を図るエネルギーマネジメントシステムを約6,000 店舗に設置し ている。
さらに、カナダ、中国、ドイツ、英国、米国の7000店舗でLEDライトに切り替えること で、店舗電力諸費を平均約7%の削減につながった。
カップのグリーン化とリサイクル率の向上にも取り組んでおり、リユーザブルカップの 利用を促進するため割引サービスを提供する、再生繊維 (PCF)を 10%含有するホットド リンク用カップを開発した。その他、ホットドリンク用カップのリサイクル素材含有量を倍 増させる研究、コールドドリンク用カップの代替素材開発が行われている。
2016 年のグローバル・ソーシャルインパクト・パフォーマンス報告書では、「イノベー ション、持続可能性、効率性の推進を目的とする、店舗展開計画全体を対象とした店舗検証 プログラム」を策定していることを明かし、「新規店舗と既存店舗を対象に、建築に関する 規格、水道光熱利用の効率性目標、パートナーとの連携の枠組みを評価・策定していくこと で、グリーン リテールが実現された店舗を 2025 年までに 1万店舗にすることを目標」に 設定している。
再エネ電力調達の達成手法
(1) 温室効果ガス(GHG)排出量とエネルギー消費量削減
2015年のGHG排出量は総計134万2419トンだった。全体の80%以上がスターバックス の店舗、オフィス、マニュファクチュアから排出されている。また、排出量算出の際は世界 資源研究所(World Resource Institute、WRI)、持続可能な開発のための世界経済人会議(World Business Council for Sustainable Development、WBCSD)の温室効果ガスプロトコル(Greenhouse Gas Protocol、GHGP)63を採用し、GHG排出量をScope 1とScope 2に分類している。Scope 1は直接GHG排出量を測定できるスターバックス本社が所有及び管理する施設でのエネル ギー消費からの排出量を示す。
具体的には、マニュファクチュア、店舗オペレーション、会社所有の輸送機関と航空機を 含む。Scope 2 は会社が購入・消費した電力の発電で生じた間接GHG排出量を表す。2014
年から6.7%から増加しており、理由として、店舗純増と新しいセクターへビジネスを拡大
したことで省エネによる削減効果を相殺されてしまったことを挙げている。
63 温室効果ガスプロトコルウェブサイト、http://www.ghgprotocol.org/corporate-standard、2018年3月19日 取得
図 8-1 GHG フットプリント 2013-2015 出所)スターバックスウェブサイト「気候変動」、
https://www.starbucks.com/responsibility/environment/climate-chang、2018年3月19日取得
(2) 再エネ電力の調達と投資
スターバックスは米国とカナダの再エネ証書(Renewable Energy Certificates、RECs)を購 入、ヨーロッパでは再エネ電力調達契約(Power Purchase Agreement、PPAs)で再エネ電力 を調達している。また、ワシントン州では民間の公益事業会社である風力発電所Puget Sound
Energy64から再エネ電力を調達している。Puget Sound Energyとパートナーシップを結び、ワ
シントン運輸・公益事業委員会65の認可の下実施されるGreen Direct66プロジェクト67に参加 することで、スターバックスはワシントン州にある116店舗でPuget Sound Energyから直接 購入した再エネ電力で電力を賄おうと試みている。最終的にはワシントン州にする約 3000 の住宅に供給するのに十分な再エネ電力の発電容量を確保することを目標としている。
Green Directプロジェクトでは従来の物理電力から切り離されたグリーン電力証書(RECs)
を調達するのではなく、プロジェクト自体から直接再エネ電力を調達することが可能にな る。
公益事業がより多くの電力消費者(購買力)を集めることで、比較的手頃な価格で再エネ 電力を提供できる発電所を大規模かつ集権的に建設することができる。
同様に、顧客の需要を集約することでより良心的な電力料金を設定することが可能にな る。このように、パブリックセクターとプライベートセクター間で長期の業務協定を結ぶこ とで、多くのバイヤーが抱えていた問題の解決が容易になった。
64 PSEウェブサイト、https://pse.com/Pages/default.aspx、2018年3月19日取得
65 ワシントン運輸・公益事業委員会ウェブサイト、https://www.utc.wa.gov/Pages/Default.aspx、2018年3月 19日取得
66 PSEウェブサイト、https://pse.com/savingsandenergycenter/GreenPower/Pages/Green-Direct.aspx、2018年3 月19日取得
67 Green Directの初期参加企業には商業顧客 (REI,Starbucks, Target), 地方政府 (Anacortes, Bellevue, King County, Mercer Island, Snoqualmie)、地方機関 (Western Washington University, Sound Transit)がなっ ている。
企業が独自に再エネ発電設備を所持していたとしても、それだけで全体の電力需要を満 たすことは困難であるため、送電網や電力公益事業に依拠する必要がある。その際、化石 燃料を一部使用する電力公益事業が散在する中で、再エネ100%の公益事業へのアクセス を可視化した。さらに、仮に他の顧客が化石燃料由来の電力を使用し続けることで、PSE の電力料金が高騰したとしても、Green Directプロジェクトの参加者の支払う電気代のレー トは固定されているという利点がある。
専門家の評価では、このパブリックセクターとプライベートセクター間の大規模かつ長 期的なサブスクリプション方式の再エネ電力メニュー(Green Tariff)は革新的であり、米 国内の多くの小売業者と自治体、ローカル機関のロールモデルに相応しいと評価されてい る68。
スターバックス2016年の秋から、ノースカロライナ州に260エーカー(1.05㎢)の敷地 に14万9000枚のソーラーパネルを設置する太陽光発電所NC‐47 を建設してきた。NC-47ではノースカロライナ、デラウェア、ケンタッキー、メリーランド州、ヴァージニア、
ウェストヴァージニア、ワシントンD.C.にあるスターバックス600店舗の電力消費と同等 量の再エネ電力を発電することができる。これは従来のカーボン・オフセットからの脱却 を目指す動きを反映し、エネルギー産業に直接従事することを意味する。
こうした取り組みは、スターバックスのような企業と再エネ技術に携わる企業の両者に
win‐win関係をもたらすとスターバックスの再エネ調達責任者であるパトリック・レオナ
ルドは説明する69。
図 8-2 NC-47の写真
出所)スターバックスウェブサイト、https://news.starbucks.com/news/starbucks-renewable-energy-strategy、
2018年3月19日取得
68 Green Direct のようなUtility Subscriber Programに類似したCommunity Solarとの比較は下記の記事を参 考:Solar Industry, “New Utility Model Could Change How Corporations, Governments Buy Renewables、
https://solarindustrymag.com/new-utility-model-change-corporations-governments-buy-renewables、2018年3月 19日取得
69 Starbucks Newsroom,” North Carolina Solar Farm Powers New Starbucks Renewable Energy Strategy、
https://news.starbucks.com/news/starbucks-renewable-energy-strategy、2018年3月19日取得