1.4 PFI 等官民連携手法の動向
1.4.1 PFI・PPP の概要と現況
官民連携の手法であるPFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・
イニシアチブ)は、公共施設等の建設、維持管理、運営を民間の資金、経営能力及び技術 的能力を活用して、効率化やサービスの向上を図る公共事業の手法であり、PPP(Public Private Partnership:パブリック・プライベート・パートナーシップ)は、公共サービス の提供に民間が参画する手法を幅広く捉えた概念で、民間資本や民間のノウハウを活用し て効率化や公共サービスの向上を目指すものとされている1。
1 「国土交通省官民連携政策課におけるPPP/PFI支援の取組み」より
PFIは1990年代前半に英国で生まれた手法であり、既に英国を含め海外でPFI方式に よる公共サービスの提供が実施されており、有料橋、鉄道、学校、病院等の公共施設等の 整備等の分野で成果を収めている。そして我が国においては、安くて優れた品質の公共サ ービスの提供を実現することを目的とする、1999年7月に制定されたPFI法2に基づく事 業である。
PPPは官民協調による広義の事業方式であり、官民の部分委託からPFIまでを含むと考 えられる3(図表1-4-1)。
図表1-4-1 PFI・PPPのイメージ概略
PFI
その他の官民連携等
DBO
PPP
(出典)当研究所にて作成
(1) PFI の導入から現在の状況
図表1-4-2は、内閣府調査による1999年度から2013年度9月末までのPFI事業の実
施状況である。
2 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」
3 内閣府PFI推進室ウェブサイト「PFI事業導入の手引き」より
図表1-4-2 PFI事業の実施状況
(出典)内閣府 民間資金等活用事業推進室「PFIの現状について」
2013年度(平成25 年度)9月末時点での事業累計数は428事業であり、2008年度ま では年約40件の規模で増加していたが、2010年度以降は年約20件程度の増加ペースと なっている。国、地方公共団体等で実施方針等が公表された428件の内、事業者決定等に より公共負担額が決定したものは408件、4兆2,819億円の事業規模となり、7,954億円 のVFM4(事業規模の約18.6%)があって、国、地方公共団体等を通じた国全体の財政再 建に寄与したとされている5。
PFI を取り巻く政策・法制度の変化としては、まず 2003年に指定管理者制度が創設さ れたほか、2010年の新成長戦略閣議決定を受けたPFI法の改正により、2011年に公共施 設等運営権制度(コンセッション方式)・民間からの提案制度の導入、対象施設追加がな され、2013年6月には民活空港運営法が成立し、同月のPFI法改正に伴い10月には官民 連携のインフラファンドである株式会社民間資金等活用事業推進機構6が発足している。
このようにPFIの導入以後、官民連携事業の拡大・改善のために政策、法改正が継続し 行われてきている状況であるが、2012年12月以降の第2次安倍政権発足後においても、
PFIを含めた官民連携事業の拡大は重きを置かれている。
2013 年 6 月に公表された安倍内閣の第三の矢である「日本再興戦略」で公共施設運営 権等の民間開放(PPP/PFI)を推進すると位置づけられており、同月の「民間資金等活用 事業推進会議」において決定された「PPP/PFIの抜本改革に向けたアクションプラン」に より、2013年からの今後10年間で、公共施設等運営権制度を活用したPFI事業に 2~3 兆円、収益施設の併設・活用など事業収入等で費用を回収するPFI事業等に3~4兆円、
4 Value For Money:バリュー・フォー・マネー。詳細は後述
5 内閣府 民間資金等活用事業推進室「PFIの現状について」より
6 マーケットが形成するまでの時限措置として、2013年度に政府・民間から各 100億円を出資予定。
建設・維持管理に必要な出資・融資、コンサルタント派遣も行う。
公的不動産の有効活用など民間提案を活かしたPPP事業に2兆円、その他の事業類型(業 績連動導入、複数施設の包括化等)に3兆円と、過去10年間のほぼ3倍にあたる計10~
12兆円規模に及ぶ事業を重点的に推進することとし、PFIの抜本改革に重点的に取り組む 省庁・地方公共団体への評価を踏まえた補助金、交付金の重点化等を行うとしている。
また同年11月には、内閣府のPFI推進委員会において、ガイドラインの検証・見直し を図るため、3ワーキンググループの立ち上げ(VFM・リスク分担、モニタリング・事業 促進、手続簡易化について)がなされている。
(2) PPP について
PPPは、PFI法に基づくPFI事業を含む広義の官民連携であり、特にその名称で表す場 合は PFIを除くその他の手法か、PFIを含む全般的な官民連携事業を指すと考えられる。
そのため、現在の事業の方式は多岐に渡っており、今後も新たな手法が増えていく可能性 がある。
PPP の手法としては、PFIのほか、DBO7、包括管理委託や指定管理者制度を用いた方 式等があげられ、官民JV、第三セクター方式も含まれると考えられる。DBOは民間の資 金調達を伴わない、民間での設計・施工・運営を一括して受託する手法で、浄水施設、廃 棄物処理施設等に多く導入がなされている。
PPPでは様々な手法の選択の余地があることから、政府、自治体においても新しい手法 が検討されている。神奈川県秦野市では学校と地域施設の複合化事業の検討での、2012年 度の「民間活力導入可能性調査」において、PFI方式にとらわれない先進的PPP手法により、
PFIに比べて高い効果を得られる可能性があるとしている8。また、2020年東京オリンピッ
クの施設整備においても、従来のPFIにとらわれない官民連携の新手法の導入の可能性があ り、今後、さらに新たなPPPの手法が創出されていくことが予想される。
(3) PFI 、 PPP の事業類型、方式、用語等について
現在における、PFIその他の官民連携の対象施設・事業方式・事業類型9、関連用語、手 法等を以下に記す。
①PFIの対象施設
(公共施設)
道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等。
7 デザイン・ビルド・オペレイト。詳細は後述
8 秦野市役所ウェブサイトより
9 内閣府ウェブサイトより
(公用施設)
庁舎、宿舎等。
(公益的施設等)
公営住宅、教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、
駐車場、地下街等。
(その他の施設)
情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設、観光施設、研究施 設。
②PFIの主な事業方式
(BTO方式)
Build Transfer Operate。民間が施設建設、公共施設管理者等に移転し、民間が管理 運営を行う事業方式。
(BOT方式)
Build Operate Transfer。民間が施設建設、管理運営。事業終了後に公共施設管理者 等に移転する事業方式。
(BOO方式)
Build Own Operate。民間が施設建設、管理運営。事業終了時民間で施設撤去する事 業方式。
(RO方式)
Rehabilitate Operate。民間が施設改修後、民間で管理運営を行う事業方式。
③PFIの事業類型
(サービス購入型)
コストは公共からのサービス購入料で支払われる。
(独立採算型)
コストを利用者から利用料回収する。
(ミックス型)
コストをサービス購入料と利用料収入の双方から回収する。上記二つの混合型。
④PFI/PPPの関連用語、手法等
(VFM)
バリュー・フォー・マネー(Value For Money)。PFI事業における重要な概念の一つ で、支払いに対して最も価値の高いサービスを供給するという考え方の指標。従来方式 に比べPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合(コスト削減効果)。
(PSC10(従来の公共事業のLCC11)-PFI事業のLCC)/PSC×100(%)
特定事業の選定時に公表され、事業判断の指標となる。
(コンセッション方式)
公共施設等運営権を設定し、サービス料金の民間設定可能や、運営権の継続・保全(売 却)、減価償却を可能にするもの。
(SPC)
特別目的会社(Special Purpose Company)。ある特別の事業を行うために設立され た事業会社。PFI事業においては、公募提案する共同企業体(コンソーシアム)が、新 会社を設立して、建設・運営・管理にあたることが多い。
(指定管理者制度)
平成15 年9月の地方自治法改正により設けられた、公共施設設置の目的を効果的に 達成するために管理運営を民間事業者も含めた団体に委任できる制度。
(DBO)
デザイン・ビルド・オペレイト(Design Build Operate)。民間の資金調達を必ずし も伴わない、民間で設計・施工・運営を一括して受託する手法で、官民連携手法(PPP)
の一つであるとされている。PFIと区別する場合、民間の資金調達を伴わない手法を指 すと考えられる。
1.4.2 地方公共団体が行う PFI 事業の現状と課題
内閣府(PFI推進室)の集計による2013年9月末現在の我が国のPFI事業428件の実 施主体の内訳は、国が69件、地方公共団体が320件、その他が39件である(図表1-4-3)。
それぞれの事業を案件別で見ると、国の事業中 45 件が庁舎と宿舎であるほか、警察・消 防・行刑施設等が8件となっている。地方公共団体事業を見ると、最も多いのが「教育と 文化」107件(学校や図書館等)、次いで「健康と環境」73件(病院、廃棄物処理施設等)、
「まちづくり」43件(道路、公園、下水道等)である。その他の大半は「教育と文化」で あるが、ほとんどが国立大学法人のPFIである。
10 Public Sector Comparator:パブリック・セクター・コンパレーター。公共工事としての事業期間全
体を通じた公共財政負担見込額の現在価値(内閣府ウェブサイトより)。
11 Life Cycle Cost:ライフサイクルコスト