1.2 公共事業関係予算の円滑な執行に向けた取り組み
1.2.5 常態化した技能労働者不足(建設産業の構造的問題)
(2) 建設業就業者数に占める技能労働者数の割合
2010年国勢調査の建設業就業者数及び技能労働者数13について、5歳刻みの年齢階層別 にグラフ化したものが図表1-2-19である。
2010年の建設業就業者数は447万人に対し、技能労働者は266万人となっており、建 設業就業者数全体の約6割を占めている。なお、両者共通して55歳~64歳にかけての年 齢層(1970年前後の入職者:団塊世代)が高く、この年齢層は数年後に退職となり、就業 者数は急減することが予測される。
図表1-2-19 建設業就業者数・技能労働者数(2010年)
(出典)総務省「国勢調査」を基に当研究所で作成
(3) 若年入職率と離職率
近年、若年層(15 歳~24 歳)の建設業への入職者の減少が問題となっている。各調査 年次の入職率(若年層の建設業就業者数÷同年齢層の人口)の推移を見ると、1995年がピ ークとなり、その後年々入職率は低下している。つまり、近年の若年入職者の減少は、新 卒世代の人口減だけでなく、若年層の中で建設業を選択する者の割合の減少の影響が大き いことがわかる(図表1-2-20)。
若年入職率の低下は建設投資額の推移と同じ動きを見せており、建設投資額の減少等を 背景に後述するように、賃金の低下などを通して、若年層の建設業離れは加速したものと 考えられる。
13 国勢調査の大分類「建設・採掘従事者」数を指す。
0 100 200 300 400 500 600 700
( 千人)
建設業就業者数 技能労働者
建設業就業者
技能労働者
55~64 歳の高年 齢層が高い。
137 103 146 150 98
52 36
443
363 429
629
445
262
155
1.7% 1.1% 1.5% 1.8%
1.3%
0.8% 0.6%
5.7%
4.4% 4.9%
6.4%
5.3%
3.6%
2.4%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
0 200 400 600 800 1,000
1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年
(千人)
15歳~19歳入職者数 20歳~24歳在職者数 15~19歳入職率 20歳~24歳在職率
図表1-2-20 若年層入職者数・入職率の推移
(出典)総務省「国勢調査」を基に当研究所で作成
次に、図表1-2-21は、建設業へ入職した、新規大卒者、新規短大卒等者、新規高卒者の 就業後3年間14における離職率の推移である。平成15年~平成22年度にかけての離職率
(就業3年後)をみると、離職率は高卒>短大卒等>大卒の順となっており、より若い層 になるほど離職率が高いことがわかる。
図表1-2-21 卒業3年後 若年層離職率の推移
(出典)厚生労働省「新規学卒者の離職状況に関する資料一覧」を基に当研究所で作成
14 平成15年~平成22年度については就業後3年の離職率。平成23年度については就業2年後の離 職率。平成24年度については就業1年後の離職率。
H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年 H23年 H24年
大卒 37.9% 36.1% 34.2% 32.6% 30.0% 29.2% 27.6% 27.6% 21.5% 12.2%
短大卒等 50.3% 50.4% 48.7% 49.0% 44.3% 43.1% 40.8% 42.5% 33.0% 21.8%
高卒 57.4% 57.3% 55.2% 51.2% 46.8% 43.4% 43.7% 46.8% 39.2% 27.3%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
大卒 短大卒等 高卒
就業後3年 就業後2年~1年
(4) 建設技能労働者 建設業離れの要因
図表1-2-22は若手・中堅の建設技能労働者が入職・離職する原因を調査したものである。
この調査結果を見ると、若手・中堅ともに入職しない・離職する要因として、「収入の低さ」
を1 番に挙げている。元々建設業界には 3K(きつい・汚い・危険)というイメージがあ り、若者から敬遠される要因が存在していたが、「仕事のきつさ」、「作業環境の厳しさ」、
「休日の少なさ」はいまだ上位を占めており、3K の「きつい仕事」というイメージは若 年・中堅層に根深く残っている。その他にも、「社会保険等の未整備」等も挙げられており、
建設産業の労働条件、労働環境の現状が建設業離れの原因として挙げられている。
図表1-2-22 建設技能労働者入職・離職原因
(出典)建設産業専門団体連合会「建設技能労働力の確保に関する調査報告書」(2007年3月)
(5) 建設業就業者数の将来推計
建設業就業者数は年々高齢化が進んでおり、団塊世代を中心とした高年齢層の就業者が 近い将来大量に退職し、これによる就業者の減少が若年・中堅層における増加をはるかに 上回ることで、就業者数が年々減少していくことが懸念されている。
当研究所では、2013年10月に発表した「建設経済レポート(No.61)」内に掲載してい る「2.1 建設業就業者の需給ギャップ地域別推計」でコーホート分析の手法を用いた建設 業就業者の将来推計を行った。その結果、2005年から2010年までの傾向15がそのまま続 けば、就業者数は2025年に2,405千人となり、2012年時点の就業者数4,140千人より4 割以上も少なくなるという予測結果となっている。しかし、2005年~2010年という期間 は、建設投資全体として長期低迷が続いていた時期でもあり、さすがにこれは悲観的すぎ
15 「国勢調査」2005年~2010年にかけての建設業就業者減少率。
ると考え、かなり楽観的と思われるプラス補正(図表1-2-23)を試みたが、いずれも2012 年に比べ就業者数の減少が生じることは避けられない推計結果となっている(図表 1-2-24)。
図表1-2-23 2005年~2010年変化率補正内容
図表1-2-24 建設業就業者数 2012年と2025年比較(全国)
年・ケース 建設業就業者総数
(千人)
2012 年比較
(増減数)
2012 年比較
(増減率)
2012 年(基準年) 4,140 - -
2025 年(補正なし) 2,405 △1,735 △41.9%
2025 年(若年層補正) 2,980 △1,160 △28.0%
2025 年(中堅層補正) 3,135 △1,005 △24.3%
2025 年(高年齢層補正) 2,652 △1,488 △35.9%
2025 年(3 補正合算) 4,009 △131 △3.2%
建設業就業者数は高齢化、若年者の入職率の低下も加わり、今後、建設業就業者数の減 少は不可避であり、震災復興需要、東京オリンピック・パラリンピック特需が過ぎても労 働需給が緩和するのは一時的であり、早晩人手不足に戻る可能性は極めて高く、この問題 は建設産業の構造的な問題であることをここで強く認識しておきたい。
補正ケース 変化率の補正内容
若年層補正① 若年者の入職促進に国や業界が努めていることから、若年層(15歳~24歳 まで)の入職率が2000年のレベルまで回復すると仮定
中堅層補正②
建設投資額が2010年度を底に回復しつつあることから、中堅層の純減に歯 止めがかかり、中堅層(25歳~59歳まで)の変化率をプラスマイナス0.0%と 仮定
高年齢層補正③
年金の支給開始年齢が60歳から段階的に65歳まで引き上げられ、将来的に さらに引き上げられる可能性もあることから、高年齢層(60歳~69歳まで) が退職を延期し、同年齢層の退職者数を50%減(減少率が半分)と仮定 補正①+②+③ 補正①~③の仮定を全て合算