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ストック効果の実例 -圏央道-

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1.3 建設投資の経済効果

1.3.3 ストック効果の実例 -圏央道-

前項では社会資本整備のストック効果に着目したが、本項ではその具体例として、圏央 道を取り上げる。

( 1 ) 圏央道とは

圏央道(首都圏中央連絡自動車道)は、都心から半径およそ40km~60kmの位置に計画 された、延長約 300km の高規格幹線道路である。圏央道は、横浜、厚木、八王子、川越、

つくば、成田、木更津などの都市を連絡し、東京湾アクアライン、東京外かく環状道路な どと一体となって首都圏の広域的な幹線道路網を形成する首都圏 3 環状道路の一番外側に 位置する環状道路として、首都圏の道路交通の円滑化、環境改善、沿線都市間の連絡強化、

地域づくり支援、災害時の代替路としての機能など多くの役割を担っている。

現在、約300kmのうち約170kmは供用中であり、完成は2015年を予定している。

図表1-3-14 圏央道

中央道 関越道

東北道 常磐道

東関道

東名道

(出典)国土交通省関東地方整備局ウェブサイトを加工

( 2 ) 圏央道が民間投資に与える影響 ~工場立地~

圏央道が民間投資に与える影響として挙げられるのは、工場立地の促進効果である。図

表1-3-15は平成6年を1.0とした場合の新規工場立地面積(累計)について、圏央道沿線

と全国で比較したものであるが、圏央道沿線では平成7年の青梅IC~鶴ヶ島JCT開通を契 機に工場立地が急拡大しており、全国と比較すると平成24年時点で3.3倍もの立地促進効 果が表れている。

ただし工場立地効果については、他の地域での立地減少と差し引きすると日本全体では プラスマイナスゼロだという見方もある。しかしながら、立地した地域に直接的な経済効 果が期待されるだけでなく、新たな立地先で生産性の向上が図られるのであれば、国全体 でも企業活動、経済活動にプラスの効果を生むと考えられる。

図表1-3-15 新規工場立地面積(累積)の推移

(出典)国土交通省関東地方整備局「圏央道の開通区間の効果」

( 3 ) 圏央道が民間投資に与える影響 ~物流施設の立地促進~

また、圏央道は将来的に全線が開通した際に、都心から放射状に延びているすべての高 速道路に連結し、各高速道路間の所要時間の大幅な短縮が見込めることから、物流施設の 集積を促している。従来であれば物流拠点を分散して設置しなければならなかったものが、

圏央道沿線に大型の物流施設を 1 ヶ所設置しておけば、都心を経由することなく、圏央道 を通って東名高速道路から中央道、関越道、東北道へと、各地への配送が可能になり、周 辺の物流施設を集約統合して圏央道沿線の大型施設に移転するという動きが加速している。

近年、首都圏等都市部周辺の交通利便性の高いエリアを中心に延べ床面積が10,000㎡以 上ある大規模物流施設への需要が高まっており、活発な投資が見られる。GLP(グローバ ル・ロジスティック・プロパティーズ)、プロロジスといった外資系の物流会社を始めとし て、三井不動産、三菱地所等国内大手デベロッパーも積極的な投資姿勢を見せている。

このような大規模物流施設は、従来の保管機能を中心とした倉庫とは異なり、高度な仕 分け、荷捌き等の機能を有しており、顧客への迅速な配送が求められる通信販売系の企業、

特に近年成長が著しいEコマース関連企業が積極的に活用している状況にある。

図表1-3-16は圏央道周辺の主要物流施設をマッピングしたものであるが、圏央道の開通済 の区間を中心に多くの物流施設が立地、もしくは開発中であることが分かる。

図1-3-16 圏央道周辺の物流施設

プロロジスパーク 成田1、成田3 プロロジスパーク常総

(計画中) プロロジスパーク北本

(開発中) プロロジスパーク 川島1、川島2(開発中)

プロロジスパーク 座間1、座間2(開発中) プロロジスパーク海老名

MFLP久喜

MFLP厚木

GLP厚木

GLP綾瀬

GLP成田、成田Ⅱ GLP桶川

ロジポート相模原

ヤマト運輸 厚木ゲートウェイ

ロジポート橋本(開発中)

GLP座間

プロロジス MFLP GLP ラサール不動産投資顧問・三菱地所 ヤマト運輸 凡例:

GLP狭山日高Ⅰ(開発中) GLP狭山日高Ⅱ(開発中)

(出典)国土交通省関東地方整備局ウェブサイトを加工

特に、埼玉県の久喜市、川島市周辺に物流施設が集中的に立地している事が分かる。久 喜は圏央道と東北道の結節点として東北地方と首都圏を結ぶ重要な拠点であることから、

周辺地域で物流施設の新設が相次いでいるものと思われる。現在、圏央道白岡菖蒲IC-久喜 白岡JCT間は開通済であり、その両端の区間(桶川北本IC-白岡菖蒲IC間、久喜白岡JCT-つくば中央IC)が工事中であるが、2014年度~2015年度にかけて開通目標が定められてお り、物流の要所として立地優位性が高いエリアであると考えられる。

また、久喜市、川島市周辺地域に続いて、相模原市や愛川町といった神奈川県西部の圏 央道沿線エリアでも、多くの物流企業が立地していることが分かる。このエリアは東名道 と中央道の中間に位置しており、2013 年 3月に東名道に接続する海老名 JCT-相模原愛川 IC間が開通。また、2014年6月中には、相模原愛川IC~高尾山 IC間も開通する予定で あり、圏央道により東名道に加えて中央道、関越道が結ばれることとなる見込みである。

このように、圏央道周辺では既存の高速道路との結節点の周辺地域を中心に物流拠点の 新設が増加しており、今後物流施設の開発が更に活発化し、首都圏の物流が大きく変化す る可能性がある。

( 4 ) 物流施設が立地する背景

こうした動向の背景には圏央道により、輸送時間の短縮や定時性の確保がし易くなった ことが大きく関係している。

例えば図表1-3-17は中央道・八王子JCT~横浜港までの輸送ルートを比較したものであ るが、圏央道を経由することにより、中央自動車道から横浜港までの輸送時間が約71分(整 備前の約6割)に短縮され、また、国道16号線の混雑による到着遅れが解消し、定時性を 確保することが出来るようになった。

図表1-3-17 輸送ルート(中央道・八王子JCT~横浜港)と所要時間

(出典)国土交通省関東地方整備局ウェブサイト

日本の物流では宅配便の時間指定に代表されるような定時性の提供が一般的なサービス となっており、近年では E コマースの拡大に伴い定時性だけにとどまらず、配送時間の短 縮や配送料の軽減、無料化等、消費者にとっての利便性を高めるサービスが広まってきて いる。

例えばアマゾンジャパンは2009年10月から「当日お急ぎ便」を、ヤフージャパンは2012 年11月より「きょうつく」を開始しており、所定の時間内の注文で当日配送を行っている。

このような消費者ニーズを受け、より早く、効率的な物流網が必要不可欠となる中、圏 央道の開通は納品の定時性確保・迅速化、物流コストの削減といった効果を生みだし、企 業側の物流効率性の向上に寄与している。そして、圏央道が開通したからこそ、配送迅速 化の新たなサービスを提供する事が可能となり、それが物流施設を立地させ、国民生活に おける快適性の創出にも役立っている。

これまで述べてきたように、圏央道は社会資本が整備され、それらが機能することによ って継続的に得られるストック効果が発現している事例と考えられる。現在、全面開通に 向け工事が進められている最中であり、今後も開通を睨んで工場、物流施設の新設の動き が活性化し、更なるストック効果が期待される。

まとめ

本章では建設投資の中でも特に公共投資の経済効果に焦点を当てた。公共事業について は、①財政再建の観点、②地方に対するバラマキ、③乗数効果の低下という 3 つの代表的 な批判について概観し、またストック効果が発現している事例として圏央道を取り上げた。

我が国では 1985 年のプラザ合意による円高不況対策として公共投資が活用されて以降、

景気対策が繰り返されるうちに、公共投資の経済効果の中で、主たる関心がフロー効果に 偏ってしまった。

つまり、景気浮揚効果と地域間所得再分配効果にばかり焦点が当たり、公共投資が一時 的な景気対策としての側面だけで捉えられる傾向にある。そのため、年金不安等で消費性 向が低下したことにより乗数効果が小さくなると、「公共投資の効果は小さく一時的」とい った、まるで公共投資が不要であるかのような批判がなされる。

しかし、公共投資は本来、周辺地域に対して継続的に効率性、生産性や生活の質の向上 を生み出すストック効果を目的として行われるべきものである。

「すぐに効果が発現する事業」を優先することにも一理あるが、景気対策的な考え方で あり、今後の公共投資においては、たとえ用地取得や工事に長期間を要する事業であって も、ストック効果の大きい事業を戦略的に実施していくべきである。

ドキュメント内 Microsoft Word - ②62号はじめに.docx (ページ 72-77)