1.2 公共事業関係予算の円滑な執行に向けた取り組み
1.2.4 建設企業の現状
東日本大震災からの復興加速、防災・減災、老朽化対策、東京オリンピック・パラリン ピックに係る事業が円滑に実施されることが望まれるなか、本項では、3 保証会社が実施 した「建設業景況調査10」及び当研究所が実施した「建設企業の経営状況等に関する調査」
等の結果を基に、建設企業の現状(建設企業が抱える問題点)を把握しておきたい。
(1) 建設業景況調査
3 保証会社が今年の 1 月に発表した調査結果11によると、現在、建設企業が直面してい る「経営上の問題点」については、「人手不足」が 57.0%と最も多く、これまで最も多か った「競争激化」の 44.7%を抜いてトップとなり、「人手不足」が日に日に深刻化してい ることが確認できた。
続いて、「下請の確保難」も 36.5%と上昇を続けており、これは重層下請構造の建設業 界にとって、「人手不足」の影響が反映したものとうかがえる(図表1-2-11)。
9 当研究所が発表する「建設経済モデルによる建設投資の見通し(2014年1月推計)」による。
10 北海道建設業信用保証株式会社、東日本建設業保証株式会社、西日本建設業保証株式会社が共同で
毎年3,6,9,12月に実施。保証事業会社と取引関係にある建設企業の中から、地区別、業種別、規模
別の分布状況を考慮し、建設業の経営動向を反映するに足りると認められる企業を対象としている。
調査対象会社は原則として固定。
11 地域建設会社2,802社に調査票を送り、2,470社(88.2%)の回答を得て集計・分析。
57 44.7 36.5 31.7 29.7 18.2 16.1 9.9 7.9 6.9 2.4 1.8 1 0.9
0 20 40 60 80 100
図表1-2-11 経営上の問題点 推移
(出典)3保証会社「建設業景況調査」(平成25年度第3回)
その他に、「受注の減少」31.7%、「従業員の高齢化」29.7%、「資材価格の上昇」18.2%、
「下請代金の上昇」16.1%等、経営上の問題点として挙がっているが(図表1-2-12)、「競 争激化」、「受注の減少」が低下して、上記のように「人手不足」、「下請の確保難」が上昇 するという傾向は顕著である(図表1-2-11)。
(出典)3保証会社「建設業景況調査」(平成25年度第3回)
人手不足 競争激化 下請の確保難 受注の減少 従業員の高齢化
人手不足 競争激化 下請の確保難 受注の減少 従業員の高齢化 資材価格の上昇 下請代金の上昇 諸経費の増加 資材の確保難 人件費の上昇 借入難 金利負担の増加 その他 代金回収難
90 % 80 %
70 % 60 % 50 % 40 % 30 %
20 % 10 % 0 % 100 %
3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12
人手不足
競争激化
受注の減少
下請の確保難 従業員の高齢化
図表 1-2-12 経営上の問題
2011年
(%)
2013年 2012年
( 2 )建設企業の経営状況等に関する調査
①アンケート調査の概要
(Ⅰ)名 称:「建設企業の経営状況等」に関するアンケート調査
(Ⅱ)調査時期:2013年10月21日~2013年11月22日
(Ⅲ)調査対象:ⅰ)資本金1,000万円以上かつ経営事項審査を受けた企業
ⅱ)上記の条件を満たす企業より無作為に抽出した3,000社を選定 (3,000社は47都道府県で均等割りしている)
(Ⅳ)調査方法:調査票を送付
(Ⅴ)回答企業:613社 (回答率 20.4%)
②アンケート結果
(A)現在施工中工事の進捗状況
「現在施工中の工事について、進捗状況をご回答ください」の問いに対し、586社から 回答を得た(図表1-2-13)。
回答のうち、「予定通り進捗している」が 58.0%(340 社)、「予定通り進捗していない 工事も数件あり」が38.7%(227社)、「ほとんど工事が進捗していない」が2.2%(13社)、
「その他」が1.0%(6社)となっている。「その他」の意見の多数は工事件数が少ないと いった意見であった。
図表1-2-13 現在施工中工事の進捗状況について(全国)
58.0%(340社)
38.7%(227社)
2.2% (13社)
1.0%(6社)
予定通り進捗している
予定通り進捗していない 工事も数件あり
ほとんど工事が 進捗していない
その他
0 50 100 150 200 250 300 350 400
(B)工事進捗が遅れている理由
(A)で「予定通り進捗している」以外を回答した246社に工事進捗が遅れている理由 を尋ねたところ、「人手不足」が196社(79.7%)、「資材不足」が50社(20.3%)、「機械・
運搬車不足」が46社(18.7%)、「その他」が52社(21.1%)となっており、工事進捗が 遅れている理由の8 割近くが「人手不足」を上げている(図表1-2-14)。また「その他」
の意見の中には、「発注者側との協議が難航」・「地元との協議が難航」・「用地未買収」・「設 計上の不備」・「天候不良」・「技術者不足」といった意見もあった。
図表1-2-14 工事進捗が遅れている理由について(全国)
(C)有効と思われる公共事業予算執行促進策
「有効と思われる公共事業予算執行促進策をご回答ください(複数回答可)」の問いに対 し、613社から回答を得た(図表1-2-15)。
回答のうち、「労務単価の引き上げ」が 400 社(65.3%)、「契約時の設計変更・スライ ド条項明確化(物価変動によるリスクヘッジ)」が 126 社(20.6%)、「監理技術者配置要 件の緩和」が216社(35.2%)、「ダンピング受注の排除(最低制限価格制度、低入札価格 調査制度の見直し)」が 196 社(32.0%)、「柔軟な入札契約方式(多様化)の採用(指名 競争入札、随意契約、大型ロット発注、CM 方式、PFI 等)」が 141 社(23.0%)、「その 他」が28社(4.6%)となっている。
最も回答数が多かったのは「労務単価の引き上げ」となっており、これは人手不足を背 景とした労務費の高騰が深刻化していることや、建設技能労働者の賃金実態に合わせた実 勢単価を求める声であると考えられる。
また「その他」の意見の中には、「安定した発注量」・「発注の標準化」・「発注時期の分散 化」を求める意見もあった。
79.7%(196社)
20.3%(50社)
18.7%(46社)
21.1%(52社)
人手不足
資材不足
機械・運搬車不足
その他
0 50 100 150 200 250
図表1-2-15 有効と思われる公共事業予算執行促進策について(全国)
(3) 技能労働者過不足率の状況
国土交通省が毎月発表している「建設労働需給調査」の 8 職種(型わく工(土木)・型 わく工(建築)・左官・とび工・鉄筋工(土木)・鉄筋工(建築)・電工・配管工」計におい て、2008年から現在に至るまでの技能労働者過不足率の推移を示したのが図表1-2-16で ある。
過不足率の推移をみると、東日本大震災以降、技能労働者の不足状況は継続しており、
日に日に深刻さを増してきている状況である。
65.3%(400社)
20.6%(126社)
35.2%(216社)
32.0%(196社)
23.0%(141社)
4.6%(28社)
労務単価の引き上げ
契約時の設計変更・スライド条項明確化
(物価変動によるリスクヘッジ)
監理技術者配置要件の緩和
ダンピング受注の排除
(最低制限価格制度、低入札価格調査制度の見直し)
柔軟な入札契約方式(多様化)の採用
(指名競争・随意契約、大型ロット発注、CM方式、PFI等)
その他
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
図表1-2-16 建設技能労働者過不足率の推移(全国)
(出典)国土交通省「建設労働需給調査結果(8職種)」を基に当研究所で作成
( 注 )2014年は1月末現在
次に直近8年間の技能労働者過不足率(年度平均)をブロック別にグラフ化したものが 図表1-2-17である。
ブロック別にみても、震災以降、不足状況は継続していることがわかる。震災以降は東 北や関東での地域的現象として問題視されてきたが、現在では全国的に不足感が強まって いる状況であり、これらの表からは「人手不足」が常態化していることが確認できる。
図表1-2-17 建設技能労働者過不足率の推移(ブロック別)
(出典)国土交通省「建設労働需給調査(8職種)」を基に当研究所で作成
( 注 )2013年度は2月末現在
‐3.0%
‐2.0%
‐1.0%
0.0%
1.0%
2.0%
3.0%
‐6.0
‐4.0
‐2.0 0.0 2.0 4.0 6.0
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度
過不足率(%)
北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 沖縄
余剰不足