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第 7 章 SONET/SDH 回線を用いた地上デジタル放送 IF 信号伝送

7.2 OFDM-IF 伝送システム

7.2.1 システム概要

本システムの概念図を図 7.1 に示す.本システムの基本概念は,OFDM-IF 信号

(37.15MHz)をデジタル波形サンプリングして,波形データを SONET/SDH ネッ トワークによって伝送するものである.波形サンプリングによって OFDM 波形伝 送を行うためには,送受信間のサンプリングクロック周波数の完全同期が必要とな るが,本システムでは,SONET/SDHネットワークの高精度周波数クロック[55] を 利用している.SONET/SDHネットワークは,完全同期デジタル通信システムであ り,ネットワークを構成するすべての通信ノードは,同一のクロックで網同期が行 われている.すなわち,主局に設置された高精度・高安定なクロック発振源(例え ばセシウム発振器)を基準にしてデータ信号生成が行われ,配下の複数の従属局は 主局から受信したデータ信号からクロックを抽出し,従属基準である発振源(例え ばルビジウム発振器)を同期させることで,ネットワーク全体の網同期を実現して いる.したがって,SONET/SDHネットワークに接続した通信端末は,お互いに同 期することができる.

図 7.1(a)において,2台の伝送装置は,同一のSONET/ SDHネットワークからデ

ータ(155.52MHz)を受信し,そのクロックに同期することでお互いが同期する.

送信端では,ODFM-IF信号(37.15MHz)を符号化したのちSONET/SDH回線でデ ータ伝送し,受信端でデータを復号してアナログ信号を再生する.

一方,図 7.1 (b)に示すようにSONET/SDHネットワークを介さずにOFDM-IF伝

送装置を対向させることもできる.片方の装置をクロック基準とし,対向側をこれ に従属させることで,ダークファイバや波長分割多重(WDM)伝送装置を用いた

OFDM-IF信号伝送方式には,無線伝送あるいは光ファイバを用いたROF伝送[56]

が考えられている.いずれも中継数や伝送距離によって C/N が劣化することは免 れない.しかし,本デジタル方式によるOFDM-IF伝送の場合,原理的には信号中 継数や伝送距離に制限を受けることはなく,高品質の IF 信号伝送が可能となる.

また,波形サンプリングを行っているため,被伝送信号である OFDM 信号は,

SONET/SDHネットワークのクロックとは無関係に,放送局クロックで生成された

OFDM変調波形のまま伝送することができる.

(a)

(b)

図 7.1 システム概念図

7.2.2 伝送装置

データ回線として使用するSONET(北米系)とSDH(ITU-T)の規格は厳密に は異なっている.しかし,基本的に両者には互換性があり,本開発装置は両者に対 応できるように設計されている.以下,説明を容易にするため,SDH への接続を 前提とした説明を行う.

図 7.2 に伝送装置の構成,表 7.1 に主要諸元を示す.本装置は ITU-T 準拠の STM-1(155.52Mbit/s)の光インターフェースを有する.光受信器(O/E)で受信

SC (128kbit/s)

OFDM (37.15Mbit/s) OFDM

(37.15Mbit/s) SC (128kbit/s)

OFDM-IF 伝送装置 OFDM-IF

伝送装置

デジタル 同期網

SONET/SDH NETWORK

従属同期 基準 従属同期

発振器

155.52Mbit/s 155.52Mbit/s

OFDM-IF OFDM-IF 伝送装置

伝送装置

ダークファイバ

従属同期 OFDM

(37.15Mbit/s) SC (128kbit/s)

SC (128kbit/s)

OFDM (37.15Mbit/s)

基準発振器

したデータ信号から 155.52MHz のクロックを抽出(CR)し,これに同期した

OFDM-IF 信号のサンプリング用基準クロック(REF)を生成する.IF 信号のダ

イナミックレンジ(C/N)を十分確保するため,OFDM 信号の波形サンプリング には12ビットのA/Dコンバータを使用している.また,波形再生には14ビット のD/Aコンバータを使用し,補間処理によって高調波の発生を抑圧している.

本装置は,OFDM-IF信号のほか,放送機器制御用の 128kbit/sサービスチャン ネル(SC)の伝送機能も具備している. SC信号の伝送を行うため,UART(RS422) を有し,SC 信号とサンプリングした OFDM 信号は,STM-1 の VC-4(ペイロー

ド領域149.76Mbit/s)にマッピングしている.

本装置では,37.15MHzのODFM-IF信号を直接サンプリングしており,回路の ほとんどをデジタル処理化することで装置の簡素化と小型化を図っている.高さ約 45mm(1U)の薄型筐体で,双方向の信号伝送機能を実現している.この双方向 伝送は,放送波の送出方向の伝送だけでなく,送出波監視用のリバースリンクとし ても使用することが可能である.

OFDM 変調波の包絡線振幅は大きく変動し,その出現確率はレーリー分布に従 うことが知られている[57].本装置では,信号系の非線形性に起因する相互変調

(IM)の発生を抑圧するため,バックオフを10dBとして設計した.また,OFDM 信号の帯域制限と,スプリアスの出力を防ぐため,狭帯域のSAWフィルタを具備 している.

図 7.2 伝送装置の構成

表 7.1 主要諸元

項目 規格

光インターフェース 155.52Mbit/s (STM-1) 伝送信号種別 OFDM(ISDB-T)×1ch

128kbit/s SC×1ch

伝送方向 Full Duplex

中心周波数 37.15MHz

伝送帯域 5.8MHz (SAWフィルタ含) 周波数偏差 入力信号に対して±0.2Hz 波形(振幅)分解能 12ビット(伝送)

入出力パワー -10dBm (50Ω) パワーバックオフ 10dB

12bit ADC OFDM

INPUT

UART RS422

128kbit/s (RX)

Framer

De Framer RS422

128kbit/s (TX)

14bit DAC 37.15MHz SAW Filter 37.15MHz SAW Filter LPFLPF

Section/Path O/H Terminator

CR

FPGAFPGA

Flash Memory CPU

TCP/IP

19.44MHz OSC

REF

VCO PLL

ADC, DAC, FPGA ADC, DAC, FPGA

SONET/SDH 155.52Mbit/s SONET/SDH 155.52Mbit/s

Timing

Ethernet 100BASE-T

Ethernet 100BASE-T

OFDM OUTPUT

TX

RX TX Signal

Processing

TX Signal Processing

E/O

O/E

UART

写真 試作装置の外観

7.2.3 特性評価結果

伝送装置について,OFDM-IF信号の伝送特性の評価を行った.評価に用いた信 号パラメータを表 7.2に示す.

(1) 等価C/N特性

伝送装置の等価 C/N は,変調誤差比(MER)から換算して求めた.OFDM-IF 伝送装置の等価MERは,Layer AおよびB共に45.7dBが得られており,これを

MER測定器のMER-C/N換算表を用いて換算すると,伝送装置の等価C/Nは50dB

以上得られていることになる.

(2) スペクトル特性

伝送装置出力のスペクトルマスクを図 7.3に示す.SAW フィルタの帯域制限に

よって,ARIB STD-B31[8] 規定のスペクトルマスクを十分満足している.

SONET/SDH

STM-1 OFDM

Input OFDM

Output RS422

Status Display Ethernet

RJ45 OSC

SAW Filter FPGA ADC/DAC

CPU

SONET/SDH TERM

表 7.2 OFDMパラメータ

パラメータ A B C

モード Mode 3

ガードインターバル比 1/8

セグメント数 1 12

変調方式 QPSK 64QAM

内符号化率 3/4 3/4

インターリーブ 2 2

図 7.3 スペクトルマスク