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光増幅海底中継伝送路の保守概念

第 3 章 光ループバックを用いた光中継器監視方法

3.2 光増幅海底中継伝送路の保守概念

3.2.1 高信頼化された光増幅海底中継伝送路

一般に光海底ケーブルシステムの海中設備は,設計寿命25年以上,シップリペ ア2回以下という極めて高い信頼性が要求される.光増幅中継伝送システムでは再 生中継方式のような高速回路を使用しないため,さらに高信頼度の光海底ケーブル システムを実現できる.例えば,1995 年 12 月に完成し運用が行われている第 5 太平洋横断ケーブルネットワーク(TPC-5CN)の基本方式であるOS-A方式 [1] で は,各光中継器における励起光源の並列同時励起によって,1中継器当り約10FIT1 の信頼性を設計配分している [10].また同システムの光ファイバ区間に 1 スパン 当り最大1FITを割り当てると,1中継区間当りの信頼性は11FIT程度となる.従 って,300 中継,方式長 9,000km の大洋横断ケーブルを想定した場合,1 ファイ バペア当り 3,300FIT となる.すなわち,1 ファイバペア当りの平均故障間隔

(MTBF:Mean Time Between Failure)は,約34年という高い信頼度で設計さ

れていることになる.

1 FIT(Failures in Time).デバイスの不良発生率の単位であり,1FITは1個のデバイス当り

3.2.2 光増幅海底中継伝送路の自己回復特性

OS-A方式 [1]は,光増幅器の励起光パワーを安定化すると共に,光増幅器の利 得動作点を飽和領域に設定して利得圧縮点で動作させている.このため,励起光パ ワーの劣化や光ファイバ区間の損失増加が生じて光増幅器の入力信号レベルが低 下しても,光増幅器の利得圧縮点からの伸張が行われ,後続の数中継でほぼ標準出 力レベルに復帰する自己回復特性(Self-Healing)を有している.図 3.1は,40km 中継継問隔 9,000kmシステムにおける伝搬距離に対する信号光パワーと雑音光パ ワー(1nm 帯域当り)の変化を計算したものである.ここで,計算に使用した光 増幅器の入出力特性を図 3.1 中に示す.利得波長特性は,便宜上 2 次バターワー ス型とした.図 3.1 では,4,000km 点のファイバ区間に 15dB の損失増加を与え たときの各光信号パワーの変化(太線)を,正常の伝送状態の場合(細線)と比較 している.15dBの損失増加に対しても,信号光パワーレベルは障害点以降の中継 器で除々に正常パワーに自己復帰しており,9,000km伝送後の光SNR劣化はわず

か0.8dB程度であることがわかる.また図 3.2は,障害位置をパラメータ(1,000,

4,000,7,000km)とした場合の損失増加量に対する9,000km伝送後の光SNR(受

信帯域は 1nm)を示している.障害点がシステム受信端に近づくほど,障害に対 するSNR劣化は増加するものの,損失増加量が25dB程度以下であれば,5.3Gbit/s, NRZ信号の符号誤り率特性(BER:Bit Error Ratio)が10-11となるSNRを確保 できている.以上のように,1中継区間の特性劣化によるシステム全体への波及効 果は,再生中継方式に比べはるかに軽減される.従って光増幅中継伝送システムは,

その自己同復特性により,区間損失増加のような障害に対して優れたシステム耐力 を有していることがわかる.

3.2.3 伝送路の保守概念と要求される監視機能

海底ケーブルシステムの線路監視に課せられた重要な役割は,伝送路内の障害 発生位置と障害状況の正確かつ迅速な標定である.さらにシステム(ネットワーク)

障害発生の予防の観点から障害予測が可能なことが望ましい.前者は修理作業に必 要な障害位置および障害程度に関する情報を与え,後者は伝送路の計画修理や回線 迂回措置などのレストレーション計画などの対する予備的な情報を与える.従って,

海底ケーブルシステムの保守運用の点で,上記を満足する最小限の機能を有するこ とが必要である.

従来の再生中継方式では,1中継器の光源の障害がシステム全体に波及すること

から,光源の予備冗長構成により高信頼化を図ると共に,保守運用で各中継器の光 源の電流や出力パワー等のモニタ,光源の切替情報を得ることは重要であり,これ に必要な中継器コマンドテレメトリ機能は不可欠であった.一方,光増幅中継系で は,前記のような中継伝送路の透過性,励起光源の並列励起等による冗長化および 伝送路の自己回復特性によって,1中継区間の劣化がシステム全体に与える影響が 小さいため,詳細な中継器モニタの必要性が軽減される.このため光増幅中継伝送 システムの中継系の監視では,再生中継方式と同等な監視項目は必ずしも要求され ない.むしろ過剰な監視機能は,中継器回路の簡素化を損ない,低コスト化と保守・

運用の効率化を妨げてしまう.そこで,光増幅中継伝送システムの監視方式は,伝 送路の特徴・構成に適合するよう勘案することが重要である.

図 3.1 光ファイバ損失増加に対する光信号および光雑音パワーの変化

図 3.2 光ファイバ損失増加に対する受信光SNRへの影響