l. NPI の因子分析[研究1]
(1 )目的
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日本の先行研究における NPI の因子構造は一貫しておらず.見いだされた因 子は研究者によって様々である。また先行研究における因子分析の手続き及び 結果に関する十分な情報を得ることができないため,先行研究開の因子分析結 果を詳細に検討することが困難である。さらに,先行研究の因子分析の多くは 下位因子聞の相関が仮定されない因子分析モデルが採用されているが, NPI は 全体として自己愛傾向を測定する尺度であり,さらにいくつかの相互に正の相 関関係にある下位側面から構成されている。その点を考慮に入れると, NPI の 因子分析を行う際には直交回転モデルではなく,相互相関を仮定した斜交回転 モデルを採用する方が望ましいと考えられる。以上のことをふまえ, NPI によ って測定される自己愛傾向の構造を探索的因子分析により検討する。
(2) 方法
1996 年 7 月から 1997 年 10 月にかけて,愛知県・岐阜県内の大学・短大・専 門学校生 709 名(男性 211 名.女性 498 名)に対して行われた調査から, NPI の
6 6
第 3 章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成 第 1 節 NPI の構造と他の自己愛尺度との関連6 7 T A B L E 3 ‑ 1 . 1
NPI の因子分析結果 {Promax 回転後の因子パ9 ーン)と l・T相関,因子間相関 (N=709)データを抽出し分析を行った(10) 。なお,全被調査者の平均年齢は 19.96 歳で あり,標準偏差 (sD) は 2.23 である。もともとRaskin & HaU (1979) が DSM
I I I
(APA,1980) の自己愛性人格障害の記述から作成した NPI は,二者択一の強 制選択法で回答する方式がとられている。大石らによる NPI も同様の方式が とられているのであるが,宮下・上地(1985) は 7 件法で,佐方(1986) は 5 件 法に回答方式を修正するなど,日本における NPI は様々に形を変えて用いら れてきている。ここで用いられた一連の調査では,あくまでも一般の人々の中 にみられる自己愛傾向を問題とする立場から, r とてもよく当てはまる (5 点)J
「どちらかというと当てはまる (4 点)J r どちらともいえない (3 点)J r どちら かというと当てはまらない (2 点 )J r全く当てはまらない(1点 )J の 5 件法に
よる自己評定方式で測定した。I‑T I‑T 111 I 下位 全体 [優越感・有能感1
54 私は周りの人たちより.ずばぬけたものをもっていると思う 14 私は才能に恵まれた人間であると思う
53 自分は他人より有能主人閣であると思う 46 周りの人々はたいてい私の権威を認めて〈れる
18 私は周りの人が学ぶだけの値打ちのある長所をいくつかもっている 49 私が言えば.どんなことでもみんな信用してくれる
9 私に接する人はみんな.私という人聞をしぜんに気に入ってくれるようだ 32 人は誰でも私の話を喜んで聞きたがる
27 私は美しいものを決して見逃さない優れた感性のもち主だ 7 周り町人たちが自骨のことを良い人間だと言って〈れ吾ので,自骨でもそうなんだと思う 43 自分自身では要領もいいし賢明さも備えていると可私は思っている
2 私は.周りの人に影響を与えることができるよう主才能をもっている 50 私は生まれっき.リーターとしての素質をもっている
21 私には自分の体を人に自慢したいという気持ちが晶る 15 私は良いリーダー仁なれる自信がある
41 人に好かれるのは.私自身にどこか魅力的なところがあるからだと思う 26 私は自分の体を見るのが好きだ
19 白骨の思う通りに人を使うの~.それほど鑑しいことだとは恩わない 自もし.こ町私自戸世界を自由にすることができる白書ら,もう:þしまし1;世町中にできると思う
[j,主目・賞賛欲求1 44 私には.注目の的になってみたいという気持ちがある 36 私は人からほめられることを望んでいる
12 どちらかといえば.私は注目される人間になりたい 48 私は偉い人だと言われる人聞に寄りたい 17 私は人々を従わせられるような権威をもちたいと思う 38. 私は支配欲が強い方だと思う
6 私は強い人間だと恩われたい
20 周りの人が私の期脅しているだけの世章を払ってくれない ι 買持ちが落ちつか1;い 28 ここというときには.私は人目につくことを進んでやってみたい
I 自己主張性1 16 私は自分の意見をはっきり言うほうだ
3 どうやら私は.控えめな人間というには程遠い人間だと思う 10 私悼とん立ことでも,畠まり書t董邑章どし立いで自舟の野きなように握る書っている 33 いつも私は話しているうちに.話の中心になってしまう 45 これまで私国自告の思い通りのやり方でやってきたし,寺桂もそうしたいと思っている
5 どんなことでも.敢えて挑戦するというよう主やり方 ff. 私の性格に合っ τ いる 37 自分自身の気持ちに忠実に生きることが.まず重要である 47 私はもともとリ-~ーになるのが性格に合っている 23 私は自分で責任を持って決断するということが好きである
(3) 結果 a. 因子分析
まず. NPI の各項目の平均値と標準偏差をチェックし,フロア項目のみられ た 2 項目 (NO.24. NO.51) を分析からはずした。そして,残りの 52 項目に対し て男女込みで因子分析(主因子解・ Promax 回転)を行ったところ,固有値の減 衰状況と因子の解釈可能性から 3 因子が妥当であると考えられた。 NPI は全体 として自己愛傾向を測定するために作成された尺度であるため,共通因子関に 相闘があると仮定される。そこで,因子分析を行う際に Promax 回転による斜 交回転を施した。次に,因子負荷量が.35 以上であることを基準として,各国 子に十分な負荷量を示さない 15 項目を分析からはずし残りの 37 項目に対し て再び因子分析を行った。 37 項目による全分散のうち 3 因子によって説明でき る割合は 43.22%であった。 TABLE 3ト1-1 に Promax 回転後の因子パターン,項
目ー尺度開相関(I-T; 当該項目を除く) .回転後の因子問相関を示す。各因子は以下のように解釈された。第 1 因子は 19 項目からなり. r54. 私は 周りの人たちより,ずばぬけたものをもっていると思う J r14. 私は才能に恵
因子間相関 I I E E
沼町山門川唱曲目別叩げnM明∞崎町出gm引例叩お均一一一一一一一一
4 2 0 7 3 7 2 5 9 8 0 5 0 6 6 1 0 1 7
4EnU内4旬ι-E4E4E内4内ununU唱'内,島内0・E内4句。nU4E一一一一一
万刊百円倒制使印関口出駒田柑M明日HM判的判川崎おお
‑.09 1 .801 .07
‑.04 1 .721 ‑.09
‑.07 1 .71 1 .23 15 1 .631 ‑.09 10 1 .61 1 .08
‑.09 1 .581 .23
‑.05 1 .551 .07 .13 1.541 ‑.09 12 1.53 1 .22
‑.02 .01 1 .77
‑.19 .12 1.71 00 ‑.12 1.70 28 ‑.07 1.53 17 ‑.01 1 .50 09 .12 I .46
‑.04 .18 1 .41 34 .20 1 .39 32 .05 1.35
E .49
(10) これらは第 4 章以降とは異なる被調査者である。なお,ここで母で方:tFたデータは小塩
0 9 9 7 a . 1 9 9
7b.1 9 9 8 a . 2∞2a) で用いられたデータを含む。 メヤ市けれ
(.T 下位 各項目と対応する下位尺度(当該項目を除く)との相関係数(項目ー尺度開相関) (-T全体:各項目と NP( 全体(当該項目を除く)との相関係数(項目ー尺度問相関)
E 叫お 8 5 1 0 5 8 5 9 4 1 6 5 5 9 4 1 6 3 0 6 6 7 5 S 4 5 4 5 5 5 6 6 4 6 5 4 4 4
限切回UM旧制見川町引印刷山田山関川崎U臼判制川町
adzdaMau-E内ζRJUヲ'4E
6 5 6 5 6 5 4 4 6
Fhd内ζnu内ζnO肉親向"が内d内dKIva-守noEDEJH骨内daa守向。
qJUヲ'n習45噌200nwu。oa吟eoa晶yaa守E3EaaaT内4UE34a守
9 7 6 2 5 5 6 9 9
凋骨肉。内OEaa崎a崎内
JBoa-68 第 3 章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成
まれた人間であると思う j など,自分が才能に恵まれており,他者よりも優れ
ており有能で、ある,といった内容の項目群からなる。この因子は.自尊感情や
自信といった非常に強い自己肯定感を意味する項目によって構成されていることから, 1優越感・有能感」因子と命名した。第 2 因子は 9 項目からなり,
144, 私には,注目の的になってみたいという気持ちがある J 136. 私は人からほめられることを望んでいる」など,主に自分が他者に注目されたり賞賛されたり することを期待する項目からなっていることから, 1注目・賞賛欲求」因子と 命名した。第 3 因子は 9 項目からなり. 116. 私は自分の意見をはっきり言うほ うだ J 110. 私はどんなことでも,あまり気兼ねなどしないで自分の好きなよ うに振る舞っている」など,自分の意見をはっきりと言い,自ら決断する,ま た,やや自己中心的という言葉で表すことができるような内容の項目群からな っていることから, 1 自己主張性」因子と命名した。なお男女別で因子分析を 行ったところ,多少の項目の移動はみられたが,各因子の指標となる項目の移 動はみられず,ほぼ同様の因子構造がみられた。したがって,この 3 因子は男
女共通のものであるとみなしでもよいと考えられる。TABLE
3-1-1 には項目ー尺度問相関(I-T) も示しである。各項目と対応する 下位尺度(当該項目を除く)との相関係数(I-T下位)をみると, 1優越感・有能 感J で r =.40 から r=.71, 1注目・賞賛欲求j で r =.45 から r
= .69,1 白己主 張性J で r
=.39 から r
=.63 であった(全て P <.001) 。したがって, NPI の各下 位尺度はそれぞれ,ある程度のまとまりがあると考えられる。また,各項目と NPI 全体(当該項目を除く)との相関係数(I-T全体)は全て r =.36 以上であり (全て p
< .001),NPI の 37 項目全体は自己愛傾向としてある程度のまとまりが
あると考えられる。
ここで見いだされた各因子に負荷量の高い項目の得点を合計することによ
り,それぞれ「優越感・有能感」得点, 1注目・賞賛欲求」得点, 1 自己主張
性」得点を算出した。そして,全 37 項目の得点を合計することにより, NPI 総得点を算出した。次に,これらの得点問の相関係数を算出した。 TABLE3‑1‑2 に,各得点、聞の相関係数,各得点の平均値 , SD. α係数を示す。 TABLE
3‑1‑2 に示したように. NPI の各下位尺度得点は相互に正の相関関係にある。また
内的整合性を表す α係数は, α=.80 (r 注目・賞賛欲求J) から α=.94 (NPI 総第 l 節 NPI の構造と他の自己愛尺度との関連 69
TABLE 3‑1‑2 NPI の各得点聞の相関関係,平均, SO, α係数 (N=709) 優越・有能 注目・賞賛 自己主張 平均 50 α NPI 総得点 94 合合. 81'" 80 合合禽 99,10 21,60 94
優越・有能 63 金台* 66' 合台 46,32 11.76 .91
注目・賞賛 51" 合 26,35 7.05 85
自己主張 26.45 6,02 ,80
会,. p< ∞ 1
得点)と,十分な値を示した。
なお'性差の検討を行ったところ. NPI 総得点. 1優越感・有能感J 1注目・賞 賛欲求J 1 自己主張性」の全ての得点について,男性の方が女性よりも有意に 高得点であるという結果が得られた (NPI 総得点:男性平均 105.80, SD 20,29 ; 女性平均 96.18, SD21.56 ; t (707) = 5,52. P < .001; r優越感・有能感J 男性平均 50.13. SD11.05 ; 女性平均 44,67. SD11.72; t(707) =5.77. p<.OOl; r注目・賞賛 欲求 J 男性平均 28 .4 1 , SD6.74 ; 女性平均 25 .4 9 , SD7.03 ; t (707) = 5,12.
ρ<.001; r 自己主張性J 男性平均 27.26. SD5.85 ; 女性平均 26.07. SD 6.07 ; t (707) = 2.41, P < , 05) 。
b. 項目削除後の NPI と項目削除前の NPI
54 項目による NPI 総得点と, 37 項目による NPI 総得点, 1優越感・有能感」
得点, 1注目・賞賛欲求J 得点, 1 自己主張性j 得点との相関関係を TABLE 3‑ 1-3 に示す。 54 項目による NPI 総得点と 37 項目の NPI との間の相関係数は
r
= ,98 と高い相関関係がみられた。したがって, 37 項目の NPI はもとの 54 項 目による NPI によって測定される自己愛傾向とほぼ同じ特性を測定している と考えられる。TABLE 3‑1‑3 因子分析前の NPI と因子分析後の NPI との関連 (N=709)
NPI54 項目 ... p< ∞1
NPI37l1頁目 98・..
優越・有能
92合*合
注目・賞賛 自己主張
81'" 78'・*
70 第3 章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成
2.NPI と佐方及び Murray による自己愛尺度 (SNPI, MNPI)との関連
[研究 2J(11) (1 )目的
日本語化されており自己愛傾向を測定する代表的な NPI 以外の尺度として,
佐方 (1986) による自己愛人格目録 (SNPI), Murray (1938 ;外林訳, 1961)に よる自己愛尺度 (MNPI)を挙げることができる。しかし NPI がこれらの尺度 とどのような関係にあるのかはこれまでに明らかにされていない。そこで NPI と SNPI, MNPI との関連を検討する。そして, [研究 1J において見いだされ た NPI 下位尺度の意味を検討する。
(2) 方法 a. 被調査者
愛知県・岐阜県の短大生・専門学校生 99 名(男性 43 名.女性 56 名)を対象に 調査を行った。調査時期は 1996 年 7 月であり,この調査対象は[研究 1J の一 部である。
b. 質問紙
NPI 研究1]と同様に,回答は「とてもよく当てはまる」から「全く 当てはまらない」までの 5 件法で行われた。
SNPI 佐方 (1986) が作成した SNPI を用いた。項目数は 42 項目である。
回答は「とてもよく当てはまる J から「全く当てはまらないj までの 5 件法で
行われた。MNPI Murray (1938 ;外林訳, 1961) に記載されている自己愛尺度 (MNPI) 20 項目のうち,内容的に回答が困難だと思われる 2 項目を省いた残りの 18 項 目を用いた。回答は,他の尺度と同様に「とてもよく当てはまる」から「全く 当てはまらないj までの 5 件法で行われた。
(3) 結果
NPI については[研究 1J に従い. NPI 総得点 (37 項目:平均 102.93. SD19.57). (11)この研究は.小塩(I998b) のデータを再分析し再構成したものである o
第 1 節 NPI の構造と他の自己愛尺度との関連 71
「優越感・有能感J 得点 (19 項目;平均 47.93. SD10.96), r注目・賞賛欲求」得 点 (9 項目;平均 27.54 , SD5.96), r 自己主張性」得点 (9 項目;平均 27.46. SD 5.78) を算出した。 SNPI については佐方 (1986) に従い, SNPI 総得点(平均 114.51, SD22.91). r優越性・指導性・対人影響力」得点(平均 59.60. SD14.98), f 自己顕示・自己耽溺J 得点(平均 44.16, SD829), r 自己有能性・自信J (平均
32.28, SD7.32) を算出したっ MNPI については, 18 項目の得点を合計すること
で MNPI 総得点(平均 53.91, SD8.51) を算出した。
次に NPI の各得点と SNPI の各得点, MNPI 総得点との相関係数を算出した (TABLE 3-1-4) 。その結果, NPI 総得点と SNPI, MNPI の各得点との閑には正 の有意な相関関係がみられた。しかし NPI と SNPI との相関係数が r= .87 と高 い値であるのに対し, NPI と MNPI 総得点との相関係数は r =.52 と.中程度で あった。また NPI の下位尺度をみると. r優越感・有能感J は SNPI 総得点,
「優越性・指導性・対人影響力 J r 自己有能性・自信j と r= ー79 以上の高い正 の相関関係にあった。しかし「優越感・有能感」と「自己顕示・自己耽溺 J.
MNPI 総得点との相関係数はやや低い値であった。「注目・賞賛欲求」は SNPI 総得点. r 自己顕示・自己耽溺」と r= ー 70 以上の高い正の相関関係にあった。
「注目・賞賛欲求J は, NPI の他の下位尺度に比べて MNPI 総得点と関連する 傾向にあった。「自己主張性」は SNPI の各得点との聞には正の関連がみられ たが, MNPI 総得点との相関は低い値を示した (1'= .19, n.sJ 。
TABLE3‑1‑4 NPI と SNPI , MNPI との関連 (N=99)
NPI
総得点 優越・有能 注目・賞賛 自己主張
SNPI
総得点 .87"会 83'" 70'" .64金・*
優越性・指導性・対人影響力 .86'会脅 88" ・ 57会合脅 63'"
自己顕示・自己耽溺 .69台場禽 5 7'合合 79 合*合 44 合.. 自己有能性・自信 85 会*・ 79 合会合 65 脅*合 71'"
MNPI
総得点 52合*・ 46・*・ 62・合* 19
p く∞1
これらの結果から,第 1 に NPI と SNPI は類似した尺度であること.第 2 に