[研究 1J において, NPI によって測定される自己愛傾向が「優越感・有能感」
「注目・賞賛欲求J I 自己主張性」の 3 つの下位側面をもつことが示された c し かし NPI の一部の項目内容がやや難解であるという指摘を被調査者から得て いるため,より平易な項目群からなる新たな自己愛傾向を測定する尺度を作成 する必要があると考えられた (12) 。そこで本節では,自己愛傾向を「優越感・
有能感 J I 注目・賞賛欲求 J I 自己主張性」の 3 側面から捉える NPI-S (Narcissistic Personality InventorγShort version 自己愛人格目録短縮版)を新たに
その信頼性と妥当性を検討する。
作成し,
l .
NPI-S の作成と因子分析[研究 3J (1 )目 的自己愛傾向を「優越感・有能感J I注目・賞賛欲求J I 自己主張性」の 3 側面 より平易な項目群で構成される NPI-S を作成する。
から捉え,
(2) 方 a ,尺度の作成
[研究1]における NPI の因子分析結果を参考に, I優越感・有能感 J I 注 目・賞賛欲求J I 自己主張性」の 3 つの下位側面から自己愛傾向を捉える NPI-S
法
(12) 例えば NPI の「優越感・有能感」因子については rS4 私は周りの人たちより ずばぬけた ものをもっていると思う J r18 私は周りの人が学ぶだけの値打ちのある長所をいくつかもってい る」といった項目, r注目・賞賛欲求」因子については r20 周りの人が私の期待しているだけの 敬意を払ってくれないと,気持ちが落ちつかなし、」などの項目。「自己主張性J 因子については r3 どうやら私は,控えめな人間というには程遠い人間だと思う J r lO.私はとんなことでも,あ まり気兼ねなどしないで自分の好きなように振る舞っている j といった項目について被調査者か ら. 白回答が困難である\"意味がよくわからない"などの指摘を受けた。
74 第 3 章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成 第 2 節 NPI-S の作成
7 5
TABLE 3‑2‑1 NP卜S の因子分析結果(斜交 Procrustes 回転後の因子パ空ーン)と I-T 相関,因子間相関 (N=1202)を新たに作成した。また,これまでの調査において被調査者から, NPI の項目 内容が難解であるとの指摘を得ているため.項目作成の際にはより平易な表現 となるように考慮した。新たに作成された NPI-S は各下位尺度 10 項目ずつの
30 項目からなり, 5 件法で測定された。b_ 分析対象
これまで、に行われた調査から NPI-S (30 項目, 5 件法)のデータを抽出し分 析を行った。分析には 1998 年 4 月から 1999 年 5 月にかけて行われた,愛知 県・岐阜県内の大学・短大・専門学校生 1202 名(男性 524 名,女性 678 名)のデ ータを用いた(13)υ なお,全被調査者の平均年齢は 18.88 (SD3.70) 歳であった。
卜T I‑T 111 下位 全体
[優越感・有能感]
4 私は‘周りの人たちより.優れた才能をもっていると思う 1 私は 才能に恵まれた人間であると思う
7 私は 周りの人たちより有能主人間であると君、う
16 私はー周りの人に影響を与えることがで吉るよう主才能をもっている 10 私は。周りの人が学ぶだけの値打ちのある長所をもっている 25 私は どんなことでも上手くこなせる人間だと思う 13 周りの人々は 私の才能を認めてくれる
28 閤りの人達が白骨の ζ とを良い人間だと言ってくれるので 自骨でもそう止んだと思う 19 私が言え 1;1,どんなことでもみん主信用してくれる
22 私に接する人はみん主,私という人間を気に入ってくれるようだ [注目・賞賛欲求]
23 私は句みんなの人気吾に止りたいと思っている 8 私は司どちらかといえば,主目される人聞に主りたい 26 私は.人々の話題に主るような人間になりたい
2 私 lこは.みんなの注目を集めてみたいという気持ちがある 5 私は句みんなからほめられたいと思っている
14 私は!多くの人から尊敬される人聞になりたい 11 周りの人が私のことを良〈思ってくれないと 落ちつかない 20 機会があれば町私は人目につくことを進んでやってみたい 29 人が私に注意を向けてくれないと 落ちつかない気分になる 17 私は句人々を従わせられるよう立偉い人間に立りたい
[自己主張性 1 24 私は.自己主張が強いほうだと思う
3 私は守自分の意見をはっきり言う人間だと思う 6 私は.控えめ主人間とは正反対の人間だと思う
9 私はとんなときでも 4 周りを気にせず自分の好き主ように振る舞う 30 私は、個性の強い人間だと思う
15 私は可どんなことにも挑戦していくほうだと思う 12 私は可自分で責任を持って決断するのが好きだ 21 いつも私は話しているうちに 話の中心になってしまう 27 私は可自分独自のやり方を通すほうだ
18 これまで私は自分の思う通りに生きてきたし句今後もそうしたいと思う
(3) 結果
NPI-S の 30 項目について, 3 因子に対応する仮説的因子パターンとして 1 ま たは 0 を選び,主因子解,斜交 Procrustes 法による確認的因子分析を行った。
その結果.仮説通りの 3 因子解が得られた。なお 30 項目による全分散のうち 3 因子によって説明できる割合は 45.53 %であった。 TABLE 3-2-1 に斜交 Procrustes 回転後の因子パターン,項目 尺度問相関(I-T: 当該項目を除く)
,回転後の因子関相関を示す。
TABLE
3-2-1 には項目一尺度問相関(I-T) も示しである。各項目と対応する 下位尺度(当該項目を除く)との相関係数をみると, I優越感・有能感」で r =.41 から r 二 .69, I注目・賞賛欲求」で r =.44 から r=.74, I 自己主張性」で r ニ 41 から r =.64 であった(全て P <.001) 。したがって, NPI-S の各下位尺度 はそれぞれ,ある程度のまとまりがあると考えられる。また,各項目と NPI-S 総得点(当該項目を除く)との相関係数は全て r
=.18 以上であり(全て ρ<.001)
,NPI-S 全体は自己愛傾向としてある程度のまとまりがあると考えられる。
仮説的因子パターンと回転後の因子パターンとの聞の一致係数 (Harman ,
1976) を TABLE 3-2-2 に示す。当該パターン聞の 3 つの一致係数は 94 から .96 と十分な値が得られた。したがって,斜交 Procrustes 回転後の因子パターンは
因子問相関 I
E E
7 1 9 3 5 5 7 5 5 2 5 5 5 6 5 5 4 4 3 4
nbkdauQdフ』ハUFbQU4gqunbnb《bnumb内URU刈吟A吋
Am-nonbou内4内ζ7'n/』ndヲ'41ハU《U《U1sハU41φl門unυ・ー一一一一
勺JM'tqU414ιnun4QU7'良υnυ4lnununυnυnU4lnU41 一一一
4 3 1 0 4 4 0 0 8 7
auauaU7'nORURdA咋ququ
3 8 4 5 6 1 3 4 6 8
nunununU41nuタ』内dnunu一一一一
qJMaunu守'FonunaquqluaU
8 7 7 6 6 6 5 5 5 3 8 2 5 6 8 7 8 2 9 6
nununununununununU4
,
一一一
11 .07 1 .75 01 ‑.09 1.77
‑.14 .03 1 .72 04 ‑.14 I .53 12 .03 I .51 06 .11 1.47 09 ‑.04 1.46 10 .14 1.44 15 ‑.03 1.43 11 ‑.06 1.40
E 41
I-T 下位 各項目と対応する下位尺度(当該項目を除く)との相関係数(項目ー尺度問相関) H 全体各項目と NPI 全体(当該項目を除く)との相関係数(項目 尺度問相関)
B 4
m出A・9白 tla匂aunbnUQdap必日マ今rhRdヲ'ヲ'戸bnbnORdλ守kdRd4白 7'nun-TqunU7'au勺4nuRd
4 5 5 5 4 4 1 5 4 4
A-Y内ζ7'『''A凶TnhukdnゆRU4』
6 6 5 4 5 4 4 4 4 4
7 2 9 9 6 4 6 9 9 2 4 4 3 2 4 4 3 4 3 3
(1 3) これらは第 4 章以降とは異なる被調査者である。なお,ここで用いられたデータは小塩 (1998a) で発表されたものを含む。
仮説的因子パターンを十分に反映しているといえる。
ここで見いだされた各因子 10 項目ずつの得点、を合計することにより,それ
ぞれ「優越感・有能感」得点, I注目・賞賛欲求J 得点, I 自己主張性」得点
7 6
第3章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成TABLE 3‑2‑2 仮説的因子パターンと Procrustes 回転後の因 子パターンとの聞の一致係数
回転後の l
仮説パターン因子パターン 11 111
94 05 06 1
1
05 96 。。
1 1
1 06 。。 94
を算出し,全 30 項目の得点を合計することにより NPI-S 総得点を算出した。
次に,これらの得点問の相関係数を算出した (TABLE3‑2‑3) 0 TABLE 3-2-3 には 各得点の平均値 , SD, α係数も示されている。
TABLE 3-2-3 に示されているように. NPI の各下位尺度は相互に正の相関関 係にある。そして[研究1]の結果と同様に. ["注目・賞賛欲求」と「自己主 張性」との間の相関係数はやや低い値を示していた。また内的整合性を表す α 係数は, α=.80 (1注目・賞賛欲求J) から α=.90 (NPI 総得点)と,十分な値を 示した。
TABLE 3‑2‑3 NPI-S の各得点聞の相関関係,平均, SO, α係数 (N=1202)
優越・有能 注目・賞賛 白己主張 平均 so α
NPトS 総得点 80 金合合 77' ・・ 77 合合合 8656 15.39 90
優越・有能 42' ・* 49 合*倉 25.66 6.22 86
注目・賞賛 33 台骨禽 30.83 7.14 87
自己主張 30.07 6.38 .80
*** p く 001
NPI-S 各得点の性差を検討したところ, ["優越感・有能感」について男性の 方が女性よりも有意に高得点であり(男性平均 26.65 , SD6.48 ; 女性平均 24.90 , SD5.90 ;
t
(1200) = 4.88. P<
.001), ["自己主張性J について女性の方が男性よりも有意に高得点である(男性平均 28.86. SD6.05 ; 女性平均 30.99 , SD6.48 ; t (1200) = 5.84,
P <
.001) という結果が得られた。2 .
NPI-S の再検査信頼性[研究 4](1 )目的
第 2 節 NPI-S の作成 77
[研究 3] で作成された NPI-S の再検査信頼性を検討する。
(2)方法
愛知県内の専門学校生 42 名(全て女性;平均年齢 18.31 歳 , SDO.87) を対象に,
N P I ‑ S
(30 項目, 5 件法)を約 5 ヶ月の間隔をあけて (1998 年 4 月と 9 月), 2 度に わたって測定した。なお,この被調査者は[研究 3] の一部である 3(3) 結果
NPI-S 総得点, ["優越感・有能感」得点, ["注目・賞賛欲求」得点, ["自己主 張性J 得点を 1 回目の調査と 2 回目の調査それぞれについて求め(1回目:
N P I ュ
S 総得点 平均 87.38, SD14.60 ; 1優越感・有能感」平均 24.55, SSD5.70 ; 1注目・賞 賛欲求」平均 3 1.05, SD7.03 ; 1 自己主張性」平均 3 1. 79 , SD6.48 ; 2 回目: NPI-S 総 得点 平均 81.64, SD16.82 ; r優越感・有能感」平均 24.19. SD5.80 ; 1注目・賞賛欲 求」平均 28.12. SD7.71 ; 1 自己主張性」平均 29.33, SD5.99) ,それぞれ対応する得
点聞の相関係数を算出した。その結果, NPI-S の約 5 ヶ月の間隔をおいた検
査ー再検査問の相関係数は NPI-S 総得点で r=.79 , ["優越感・有能感」で r = .64, ["注目・賞賛欲求」で r= .81. ["自己主張性j で r= .78 (全て P<.001. N = 42) であった。約 5 ヶ月の間隔をおいて実施された調査問でも高い相関が 得られたことから, NPI-S の再検査信頼性は十分に高いことが示された。[研究 3J では項目問の内的整合性に着目し, α係数を算出することによって
NPI-S の信頼性を検討した。[研究 3J と本研究の結果から, NPI-S は内的整合 性の観点からも,また時間的な安定性の観点からも,信頼性の高い尺度である といえよう。ただし本研究の結果では, NPI-S の下位尺度のうち「注目・賞賛欲求J と「自己主張性J の検査 再検査聞の相関係数が r
=.80 前後であった
のに対し, ["優越感・有能感」は r =.64 とやや低い値を示した。これらのことから「注目・賞賛欲求」と「自己主張性」によって測定される特性は時間の経
過に対して比較的安定しているが, ["優越感・有能感j によって測定される特 性は他の下位側面に比べて,時間の経過によって変動しやすい傾向にあると考78 第 3 章 自己愛人格目録 (NPI)の構造と自己愛人格目録短縮版 (NPI-S) の作成
えられる。
3 . NPI-S
,NPI
,SNPI の関連[研究 5J
(1 )目的NPI-S の妥当性を検討するために, NPI 及び佐方 (1986) によって作成され
た自己愛人格目録 (SNPI)と NPI-S との関連を検討する。また. [研究1]で見 いだされた下位尺度と NPI-S の下位尺度との関連を検討する。それぞれ対応す る下位尺度聞の相関は高く,対応しない下位尺度聞の相関は低いことが予想さ れる。さらに,佐方 (1986) によって見いだされた SNPI の下位尺度と NPI-S
の下位尺度との関連についても検討する。(2) 方法
a. 調査対象・調査時期
愛知県内の専門学校生 89 名(男性 2 名,女性 87 名)を対象に調査を行った C 平均年齢は 22.92 歳 (SD4.55) であった。調査は 1999 年 4 月に行われた。なお,
この被調査者は[研究 3J の一部であるつ b. 調査内容
NPI・S 研究 3J において作成された NPI-S (30 項目, 5 件法)を用いた。
NPI 研究 1J で用いられた NPI (54 項目. 5 件法)を用いた。
SNPI 佐方 (1986) によって作成された SNPI (42 項目, 5 件法)を用いた。
(3) 結果
NPI-S について全 30 項目の得点を合計することで NPI-S 総得点(平均 88.47 ,
SD13.92) を算出し,各下位尺度に対応する項目の得点を合計することで「優
越感・有能感J 得点(平均 26.31, SD5.51). r注目・賞賛欲求」得点(平均 30.62.SD6.23).
r 自己主張性」得点(平均 31.54. SD6.08) を算出した。次に NPI につ いて, [研究 1J の結果に従い. NPI 総得点(平均 98.25. S
D19.07),r優越感・
有能感j 得点(平均 46.18. SD10.96), r 注目・賞賛欲求 j 得点(平均 24.70.
SD5.29), r 自己主張性」得点(平均 27.37, SD556) を算出した。 SNPI について
は佐方 (1986) に従い. SNPI 総得点(平均 107.42.
SD21.02),r優越性・指導
第 2 節 NPI.S の作成 79
性・対人影響力J 得点(平均 57.74. SD13.64), r 自己顕示・自己耽溺j 得点(平 均 40.18. SD7.61l, r 自己有能性・自信J (平均 30.07. SD6.48) を算出した。
そして, NPI-S の各得点と NPI, SNPI の各得点との相関係数を算出した (TABLE 3-2-4) 。
TABLE 3‑2‑4 NPI-S と NPI , SNPI との関連 (N=89)
4 H
総得点 優越・有能桝十 ^,fl-~注目・賞賛 自己主張総得点 84" ・ 78'合金 55 合合合 65' 合合 優越・有能 76' 合* 84' 禽合 43 ・合* 53'"
注目・賞賛 68" ・ 46 脅.. 74' ・・ 38'"
自己主張 73 食合食 51''' 31" 83・・合
S N P I
総得点 81" 脅 7r'合 56 台骨合 57 合合*
優越性・指導性・対人影響力 77合合. 82"合合 48・・* 54 合*を 自己顕示・自己耽溺 67 合合舎 53 合金. 61' ・・ 37'"
自己有能性・自信 73'" 66 合合会 43 宵合台 63 脅合合
p く 01 """ p く∞1
まず NPI-S と NPI との関連をみると. NPI-S 総得点と NPI 総得点との相関係 数は r =.84 であった。また NPI-S の各下位尺度と NPI の各下位尺度との関連を みると,同じ意味内容の下位尺度聞の相関は r= .74 から r= .84 であるのに対 し,異なる意味内容の下位尺度問の相関は r= .31 から r= .57 であった 3 した がって, NPI-S は NPI によって測定される自己愛傾向の特性をある程度保持し ていると考えられる。
NPI-S と SNPI との関連をみると, NPI-S と SNPI 総得点との相関係数は
r
= .81 であった O 下位尺度どうしの関連をみると, NPI-S の「優越感・有能感」は SNPI の「優越性・指導性・対人影響力 J と最も関連しており (r
=
.82) , NPI-S の「注目・賞賛欲求J は SNPI の「自己顕示・自己耽溺」と最も関連し ていた (r= .67) 。また NPI-S の「自己主張性」は SNPI の「自己有能性・自信」と最も関連していた (r
=
.63) 。これらのことから NPI-S の 3 つの下位尺度は,佐方 (1986) によって見いだされた SNPI の 3 つの下位尺度にほぼ対応した意 味内容を有していると考えることができるだろう。