第 2 章 ペルー政府の取組みと成果
2.3. 貧困削減の成果
2.3.1. MDGs の達成状況
数の低い
8
州に関しては計画以上の進捗があったが、欠乏指数の高い8
州は計画の約6
割と地域によって不均一であり、適切な移管の実施が必要である68。また、FONCODES
のプロジェクトは個別の対象地域の各組織単位(コミュニティ)で自立的な運営・維持 管理体制がとられていたが、市町村政府に移管された後の状況について検証する必要が ある。PRONAA
を地方分権化する最大の目的は、各地方の貧困状況と必要性に応じてプログラムを実施させることにあった。
2003
年以降、食堂救援プログラム(大衆食堂、Comedor
Popular
)などといったプログラムが地方政府へ移管されてきた。2007
年には栄養総合プログラム(
PIN
)が、195
郡政府(あるいは中規模都市)において移管のための基準 審査をした上で実施される。目標
2
〜6
の教育、保健、ジェンダー関連の指標を概観すると改善傾向にある指標が多 い。ただし、保健指標については、国際機関と国内機関との間でデータに乖離があるた め72、実態をよく把握することが必要である。初等教育の完全普及については改善しているとみなされる。
2005
年までの「青年層の 識字率」は97
%、「5
年生に進級する児童の割合」は90
%となっており、「初等教育修 了率」については100
%、「純就学率」は97
%となっている。初等教育のアクセスとい う点では、2015
年目標の100
%に向けて高い達成率であるとみなすことができる。ただ し、第1
章で示したように、学齢以外の15
歳以上の初等教育修了率は全国で低く、ま た教育の質という面でも課題がある。保健指標については、「5歳未満死亡率」や「乳児死亡率」が
1990
年以降大きく改善し ている。また、「熟練の保健スタッフによる介助出産」、「結核発症率」等の数値は改善 している一方で、「はしか予防接種率」、「DOTS
73により発見・治療された結核患者の割 合」などは近年あまり変化がないことから、それぞれの実施状況についてはさらに検証 すべきである。HIV/AIDS
等の性感染症の抑制に重要な役割を果たす避妊法の普及につ いては、家族計画プログラムの果たす役割が大きいが、その受益者の53%は非貧困層
であり、貧困層は47
%にとどまっている74。貧困層がHIV/AIDS
に感染した場合には、さらに貧困の度合いが深刻化するリスクが高まるため、貧困層における感染状況・経路 について把握し、適切にターゲティングを行ったプログラムの実施が求められる。
ジェンダーの平等に関する目標のうち、教育における機会に関する指標については、す でに達成、あるいは
2015
年までの達成が見込まれる水準にある。労働の平等について は、「非農業セクターに就業している女性の割合」が1990
年29.8
%に対し、2005
年34.6
%へ(表
2-17
)、「非農業セクターに賃金労働している女性の割合」も1991
年41.29
%から
2002
年42.2
%へと若干の増加であった(表2-18
)。政治における機会については、「国 会に占める女性議員の割合」は1990
年6
%に対し、2005
年18
%と改善が見られる。労 働および政治におけるジェンダーの平等については、特に目標値は設定されていないが、教育におけるジェンダーの平等に比べて、取組みはまだ遅れているものと考えられる。
目標
7
〜8
のインフラのサービス(水・衛生、電話、インターネット)へのアクセスに ついては、いずれも改善がみられる。特に「固定および携帯電話加入率」、「インターネ ット利用率」については大幅に改善している。MDGs
進捗報告書で2015
年までの達成 目標は、飲料水供給率が88%、下水施設普及率が 78%であるが、2005
年現在では、そ れぞれ83
%、63
%となっている。対外経済関係に関する指標では、「
1
人当たり援助額」が減少傾向にあるのに対し、「輸 出に対する債務返済率」は増加している。債務返済率の上昇は、2000
年以降、財政赤 字補填のために対外借入が増加したことに起因している。青年失業率については、1990
年代後半から2000
年にかけて全体として低下したものの、2005
年には20
%を超える水 準となっており、政府の取り組みが必要な分野である。72 予防接種率は、保健省への報告によるデータでは
1990
〜2000
年には93
%と目標の95
%に近い数値とな っているが、人口保健調査(ENDES)によるデータでは72%であり、データによってかなりの開きが見
られる。妊産婦死亡率については、ENDES2000
年のデータでは2000
年現在で10
万人当たり185
人であ るが、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機構(WHO)、汎米保健機構(PAHO)、国連人口基金(UNFPA)による調整後の数値では、
2000
年現在で10
万人当たり410
人と大きく異なっている。妊産婦死亡率の 低下に取り組むためには、やはり実態の把握が不可欠であり、データの収集方法や指標の算出方法など についても見直しが必要である。73
DOTS
とは、Directly Observed Treatment Short Course(直視監視下短期化学療法)の略であり、結核対策 の一つである。74
表 2-17 MDGsに関する達成状況
指標 1990 1995 2000 2005
目標1:貧困削減・飢餓の撲滅
下位20%層(貧困層)の所得あるいは消費シェア 5.6 4.4 3.0 3.7
5歳未満児にしめる低体重児の割合(%) 10.7 7.8 7.1 ..
貧困ギャップ比率(1日1ドルを貧困ラインとした場合)(%) 0.5 3.0 9.1 2.9 1日1ドル未満で暮らす人口比率(%) 2.0 8.9 18.1 10.5 貧困者比率(国の貧困ライン以下の人口比率)(%) .. .. 54.3 53.1 食料エネルギー消費が最低水準未満の人口比率(%) 42 19 .. 12
目標2:初等教育の完全普及
青年層の識字率(15-24歳)(%) 94 .. .. 97
5年生に進級する児童の割合(%) .. .. 86 90
初等教育修了率(学齢児にしめる割合)(%) .. .. 103 100 純就学率(学齢児にしめる割合)(%) .. .. 98 97
目標3:ジェンダーの平等、女性のエンパワメントの達成
国会に占める女性議員の割合(%) 6.0 11.0 11.0 18.0 初等・中等教育における男子に対する女子の割合(%) .. .. 99 103 識字青年女子の青年男子に対する割合(15-24歳)(%) 95 .. .. 98 非農業セクターに就業している女性の割合 29.8 31.6 33.3 34.6
目標4:子供の死亡率の削減
はしかの予防接種率(生後12-23ヶ月の幼児)(%) 64 98 97 80
乳児死亡率(1000出生当たり) 58 48 33 23
5歳未満児死亡率(1000人当たり) 78 63 41 27
目標5:妊産婦の健康の改善
熟練の保健スタッフによる介助を受けた出産の割合(%) .. 56
59
73 妊産婦死亡率(推定、10万出生当たり) .. .. 410
..
目標6:HIV/AIDS、マラリアなどの疾病の蔓延防止
HIV/AIDSにより孤児になった児童数 .. .. .. ..
避妊法普及率(15-49歳女性)(%) 55 64 69 ..
結核発症率(10万人当たり) 388 295 225 172 女性のHIV感染率(15-24歳)(%) .. .. .. ..
HIV感染率(15-49歳)(%) .. .. .. 0.6 DOTSにより発見・治療された結核患者の割合(%) .. 101 86 86 目標7:持続可能な環境作り
よりよい水へのアクセス(%) 74 .. .. 83
よりよい衛生設備へのアクセス(%) 52 .. .. 63
保障された所有権・居住権へのアクセス(%) .. .. .. ..
CO2排出量(1人当たりメートルトン) 1.0 1.0 1.1 1.0
森林面積(%) 55 .. 54 54
エネルギー使用1単位当たりGDP(PPPドル)(注1) 8.4 9.6 9.8 10.9
国定保護区面積(%) .. .. .. 16.9
目標8:グローバルな開発パートナーシップの構築
1人当たり援助額(ドル) 18 16 15 14
輸出に対する債務返済率(%)(注2) 10.8 15.9 25.9 26.0 固定および携帯電話加入率(1000人当たり) 26 50 115 280 インターネット利用率(1000人当たり) 0 0 31 146 パソコン保有率(1000人当たり) .. 15 40 100 青年女子の失業率(15-24歳)(%) 19.7 13.5 13.6 20.7 青年男子の失業率(15-24歳)(%) 12.6 9.8 13.7 21.0 青年全体の失業率(15-24歳)(%) 15.8 11.4 13.6 20.9
(出所) WBウェブサイト, Millennium Development Goals Country Tables(http://www.worldbank.org/ 2007年5月現在)
より作成。斜字体の数字は、該当する年ではなく、前後の年の数値。
(注1) エネルギー使用1単位当たりGDPとは、産業活動に使用された石油1キロ当たりの2000年国際ドル換算され た購買力平価(PPP)ベースGDPである。
(注2) 輸出に対する債務返済率には、財・サービスの輸出が含まれる。
表 2-18 MDGs進捗報告の数値と目標値
指標 目標値
目標1 貧困撲滅 1991 2001 2015
最貧困者比率(%) 23.0 23.9 ±11.5
貧困者比率(%) 54.4 54.3 ±27.3
5歳未満児に占める低体重児の割合(%) 10.8 7.07 5.4 食料エネルギー消費が最低水準未満の世帯の割合(%) 22.3 35.8 n.a.
目標2 初等教育の完全普及 1991 2002 2015
初等教育純就学率(%) 90.6 89.5 100.0
5年生に進級する児童の割合(%) 75.1 84.1 100.0 青年層の識字率(15-24歳)(%) n.a. 96.64 100.0
目標3 ジェンダー 1991 2002 2015
初等教育における男子に対する女子の割合(%) 98.54 99.86 100.00 中等教育における男子に対する女子の割合(%) 94.47 90.28 100.00 高等教育における男子に対する女子の割合(%) 77.73 101.90 100.00 非農業セクターに賃金労働している女性の割合(%) 41.29 42.2 n.a.
目標4 子供の死亡率の削減 1986-1996 1990-2000 2015
乳児死亡率(1000出生当たり) 50 43 17
5歳未満児死亡率(1000人当たり) 68 60 23
風疹予防接種率(保健省への報告によるデータ、%) n.a 93.0 95.0 (人口・保健調査ENDESによるデータ、%) 74 71.9 95.0
目標5: 妊産婦の健康改善 1992 1996 2000
熟練の保健スタッフによる介助を受けた出産の割合(%) 52.5 56.4 59.3 妊産婦死亡率(推定、10万出生当たり) n.a. 265 185
目標7 持続的な環境づくり 1990 2000 2015
飲料水供給率(%) 63 75 88
下水施設普及率(%) 54 56 78
(出所) Organización de Naciones Unidas, (2004), p19, Cuadro 1、p23, Cuadro 3および4、p31, Cuadro 5、p41, Cuadro 6、
p53, Cuadro 9および10、p63, Cuadro 11、p99, Cuadro 22より作成
(注) ENDESはEncuesta Demografíca y Salud Familiarの略語。