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地域・州レベルの貧困の要因

ドキュメント内 untitled (ページ 30-33)

1.3. ペルーにおける貧困の要因

1.3.2. 地域・州レベルの貧困の要因

国連開発計画(

UNDP

United Nations Development Programme

)による人間開発指数

HDI

Human Development Index

33では、ペルーは

2004

年時点で中位人間開発国にあ たり、世界

177

カ国の中で

82

位である。過去の推移でみると、

2000

0.620

であった のに対し、

2005

年の数値では、

0.598

と若干低下している。

表 1-25 州別人間開発指数(HDI)

2005

上位8 中位9 下位8

州名 HDI 州名 HDI 州名 HDI

カヤオ 0.710 ラ・リベルタ 0.605 アマゾナス 0.554

リマ 0.703 マードレ・デ・ディオス 0.600 プーノ 0.547

タクナ 0.669 フニン 0.592 カハマルカ 0.540

イカ 0.648 アンカシュ 0.578 クスコ 0.538

アレキパ 0.646 ウカヤリ 0.576 ワヌコ 0.531 モケグア 0.643 パスコ 0.575 アヤクーチョ 0.528 ランバイェケ 0.627 サン・マルティン 0.573 アプリマク 0.521 トゥンベス 0.617 ピウラ 0.571 ワンカベリカ 0.492

ロレート 0.566 2000

上位8 中位9 下位8

州名 HDI 州名 HDI 州名 HDI

カヤオ 0.747 トゥンベス 0.620 クスコ 0.537

リマ 0.716 ラ・リベルタ 0.613 アマゾナス 0.515

タクナ 0.681 フニン 0.578 プーノ 0.512

イカ 0.667 アンカシュ 0.577 カハマルカ 0.495

モケグア 0.666 パスコ 0.575 ワヌコ 0.494 アレキパ 0.635 ウカヤリ 0.565 アヤクーチョ 0.488 ランバイェケ 0.625 ロレート 0.563 ワンカベリカ 0.460 マードレ・デ・ディオス 0.621 サン・マルティン 0.553 アプリマク 0.457

ピウラ 0.551

(出所)PNUD, (2006), p199, Cuadro IDH2より作成

33 人間開発指数の詳細については別添

2

貧困関連用語解説を参照。

(囲み 1.1)都市貧困の例:リマ市の貧困層   

リマ市はアンデス山脈と太平洋の間の沿岸地域(コスタ)に位置する。ラテンアメリカ都市の中で 5 番目に人 口が多く、ペルーの人口の 32%、GDP の 44%、国民所得の 50%を占める。主な経済活動は製造業と商業である。

リマ首都圏の人口は約 800 万人、うち、32.6%にあたる人口 260 万人が貧困層であると推定されている。 

リマ市の過去 50 年の経済発展とともに地方の農村(特に貧しい山岳地帯)からの人口の移動が続いた。農村 からリマに移動した人々の多くは貧困層で、市の周辺の北部、南部、東部にスペイン語で”CONOS”(コノス)と 呼ばれる居住地域(スラム)を形成した。それらの地域は、広範な砂質土壌地帯で電気、水、下水、公共サービ スが全くなかった。リマ市の天候の特徴として、雨が少ない気候のため、人々はダンボールやその他簡易な材料 で建設した小屋に住んでいる。これらの地域は市の一部として統合される一方、新たな国内移民が市の中心部か らさらに離れた地域へ居住し、コノスが拡大している。 

コノスに住む人口はリマ全体の人口の約 60%となっている。これらの地域に住む人々はリマの経済活動に労 働サービスを提供している。 

州レベルの

HDI

について、指数ランキングで上位

8

州、中位

9

州、下位

8

州で区切っ て考えた場合、

2000

年から

2005

年にかけて、多少入れ替わりがあったものの、その相 対的な順位に大きな変化はない。上位

8

州と、下位

8

州については、ほぼ同じ州がラン クされている。

UNDP

の人間開発報告書(

2006

年)によると、州内の地区レベル(

District

)の

HDI

で 比較的格差が少ないのは、トゥンベス、カヤオ、イカ、フニン、プーノ、モケグア、タ クナ州である。また、最も地区レベルでの格差があるのはラ・リベルタ州であり、この 州はペルー国内で唯一、

3

つの自然区分(コスタ、シエラ、セルバ)を含む州である。

その他に格差が大きいのは、アンカシュ、アレキパ、ワヌコ、リマ、ウカヤリ州である。

なお、UNDPの人間開発指標と同様、2005年の

INEI

のデータを元に、支出、保健、教 育へのアクセス等からなる複合指数による州レベル、地区(

District

)レベルの貧困マッ プ34を社会開発協力基金(

FONCODES:Fondo de Cooperación para el Desarrollo Social

)が 作成しており、貧困州の傾向は

UNDP

の人間開発指数とほぼ同様である。

こうした州レベルの貧困の差異の要因としてまず考えられるのは、主要な産業構造との 関連である。WBの貧困アセスメントにおけるコスタ、シエラ、セルバの地域レベルの 相関分析では、セルバとシエラ地域では、農業セクター労働者と貧困者比率の相関が有 意となっていることに示されるように、農業セクターが主要産業である地域は貧困者比 率が高い傾向にある。州レベルで第一次産業セクターの割合が高い地域は、貧困州であ る傾向がある。

労働形態について、労働・雇用促進省(MTPE: Ministerio de Trabajo y Promoción del

Empleo

)の分析35では、インフォーマル・セクターの零細・小企業の割合が高い州と貧

困者比率とは正の相関関係がある。ワンカベリカ、ワヌコ、アマゾナス州など貧困者比 率が高い州はいずれもインフォーマルな零細・小企業の割合が高い。世帯レベルでの貧 困の要因として、インフォーマル・セクターで雇用されていること、貧困世帯と相関が あることを述べたが(1.3.1.(2)貧困世帯の特徴)、州レベルにおいても同様である。

州別の社会開発指標や公共インフラへのアクセスについても、貧困者比率の最も高いワ ンカベリカ州は、いずれの指標においても他州より低い。貧困者比率の高い州において も社会指標やインフラのアクセスが相対的に低い傾向がある(州別指標は別添資料

6

)。 人種との関連では、インディヘナ(先住民)36人口が多い地域や州ほど貧困者比率が高 い傾向がある。インディヘナの多くが農村に居住することから、農村人口比率が高いワ ンカベリカ、カハマルカ、アマゾナスなどでは、いずれもインディヘナの人口が多い。

ただし、州によっては州内の格差が大きいこと、州内の地理、気候、社会的状況の違い があることに留意して、社会開発指標や公共インフラへのアクセス状況を分析するべき である(囲み

1.2

)。

34 貧困者比率ではなく、欠乏指数(

Indice de Carencias

)という水、電気へのアクセスや栄養状態、女子の 識字率など、基本的ニーズに関する指標を組み合わせた指数。なお、この貧困マップで参照しているの は、

2005

年センサス結果であり、この結果について

2007

年現在、再度センサスを実施し直している。

35

MTPE, (2005), p34

36 スペイン語以外のケチュア語、アイマラ語などを話す民族を指すことが多いが、スペイン語以外の母語 を話す=先住民とは必ずしも特定できない。

WB

の貧困アセスメントでは、ペルーでインディヘナか否 かの判別をするのに単一の基準がないようであると述べている。

(囲み 1.2)各地域の貧困州の状況   

山岳地域南部最貧州、ワンカベリカ     

  ワンカベリカ州は高い山々と谷があり、海抜 1950〜5,000m の高度に位置する。山岳地帯では気温が低く、夜 は 0℃以下に下がる。中位の高度の地帯では、0℃以上の気候であり、谷では気温は暖かい。最貧困州のワンカ ベリカ州の経済規模は、全国の GDP の  0.6%のシェアしかない。また、毎年の経済成長率は 1%未満であり、過 去 10 年間の経済成長はわずか 4%にとどまっている。州人口の約 4 分の 3 はインディヘナ(先住民)の人々で あり、農村の山岳地帯で暮らし、ジャガイモ、穀物の生産、牛、リャマやアルパカ(アンデス高地に生息するラ クダ科の動物)等の家畜を飼育して生活している。農業生産は州 GDP の 23%を占める。その他の主要経済活動 は、銅や銀等の鉱業であり、GDP の 15%を占める。ペルー国内の 2 大発電所がワンカベリカ州にあるが、州内 の 40%の人口は電力へのアクセスがない。 

  ワンカベリカ州の山岳農村に住むインディヘナの人々は、歴史的にペルー社会から疎外されて暮らしてきた。

そのために公共インフラのアクセスがあまりなく、栄養失調人口の割合が国内で最も高い。典型的な農村世帯の 家は、日干し煉瓦で建てられ、部屋は1つの構造で、電気・水・下水へのアクセスがない。彼らは、就寝、料理 やその他家事を1つのスペースで全て行っている。閉鎖した空間で火を使って料理を行うことから、その煙が家 の中に滞留し、この地域に多い子供の呼吸器疾患の原因であるといわれている。加えて、彼らの居住スタイルは、

定期的に地域を襲う異常寒波に適しておらず、また、この異常気象により家畜が死に、作物が被害を被っている。

州内を貫く高い山脈があり、道路が未整備であることが、人々の公共サービスへのアクセスを阻んでいる。 

   

多様な特徴を持つ北部貧困州、カハマルカ   

  カハマルカ州はアンデス山脈西部に南北に広がって位置し、地理・気候の特徴が多様である。ハエン郡とサン・

イグナシオ郡は熱帯気候(平均気温 26℃、年間降雨量 900-1,100mm)である一方、アンデス渓谷地域は年間を 通して穏やかな気候である(気温は 13℃以上、年間降雨量 700-1,000mm)。高地では、寒暖の差が激しい(0℃

〜20℃、降雨量 900-1,300mm)。ペルー全土で農地の割合が 5%であるのに対し、カハマルカ州は全州の 18%が 農地であることから、農業州であるといえる。全人口の 72%が農村に住み、ジャガイモ、とうもろこし、小麦、

乳製品を生産している。しかしながら、金と銀の採掘が盛んになり、農業生産活動は過去 10 年で相対的に減少 してきている。1992 年に採鉱が始まった Yanacocha(現在、世界で 2 番目の金鉱)により、1996〜2005 年にカ ハマルカの鉱業セクターGDP は 2.8 倍に増加した。近年においては、鉱業はカハマルカ州 GDP の 38%を占め、

農業は 16%を占めている。鉱業セクターの成長により、過去 10 年にカハマルカの GDP は 2 倍に増加した。し かし、Yanacocha 金鉱の採掘による環境への影響は社会問題化し、政治不安の要因にもなっている。 

  カハマルカ州の貧困者比率は 24 州中 8 位である(2006 年)。貧困層の多くは、州南部の山岳地帯あるいは北 部の熱帯雨林に住んでいる。山岳地域の貧困層はワンカベリカ州、熱帯雨林の貧困層はロレート州と状況が似て いる。どちらの地域も州の中心から遠く、交通の便が非常に悪い。カハマルカ州の貧困者比率が高い要因は、農 業生産活動にある。農地は非常に小規模に分割されている上、交通の制約で農業生産物の利潤は低い。こうした 構造的要因の他、カハマルカ州は青年のアルコール依存率や 10 代の妊産婦比率が高いという社会問題がある。

その要因に関する研究はまだされていないが、鉱山開発による急激な富の増加がカハマルカ州の都市にもたらさ れたこととの関連性が指摘されている。 

     

熱帯雨林地域の貧困州、ロレート   

  ロレート州は、ペルー全土の 29%の面積を占める最大の州である。熱帯雨林地域(セルバ)に位置しており、

夏季は湿地帯を形成する広範な河川氾濫がある。これらの河川の多くはアマゾン河の水系に入っており、植生に 富んでいる。ほとんどの川は船で航行可能であり、地元住民の交通手段の1つとなっている。気候は、蒸し暑く、

湿度 84%で年間を通して降雨量が多く、5,000mm/年に達する。ロレート州内の農地は全体の約 0.5%しかなく、

主要経済活動は、オイル抽出(ペルーのオイル抽出生産の約 60%を占める)、材木、ゴム、家畜生産である。州 人口の 40%の農村の人々は狩猟や魚釣りで生活をしている。ロレート州は国内の他地域と道路で接続しておら ず、主な交通手段は船あるいは飛行機であり、地理的に孤立している。 

  ロレート州の貧困者比率は 24 州中 7 位である(2006 年)。ロレート州の高い貧困者比率の理由は、熱帯雨林 と広大な土地をかかえ、州内外の交通アクセスがよくないことにある。ロレート州の都市にも貧困層はいるが、

農村貧困層が最も厳しい状況で暮らしている。都市住民は保健・教育へのアクセスがあるが、農村住民は一番近 い病院へ行くにも数日かかることもある。ロレート州内の道路は整備されていない上に、12 月〜3 月にかけての 雨季には通行不可能となり、ほとんどの地域では河川が主要な交通手段となる。 

  また、地理的孤立が要因となるもう一つの問題は、日常生活必需品である物資の不足である。燃料、ミルク、

野菜などは都市よりも農村での価格が数倍高い。さらには、熱帯雨林には永年農地がほとんどないため、自給自 足農業ができない。農民は野生の植物の繁殖に悩まされながら小規模な農地を耕作するか、乾季に水位が下がっ て肥沃な土壌を残す川の周辺地を雨季以外の期間に耕作するしかない。また、ロレート州では他地域に比べても 衛生問題が深刻である。熱帯気候はバクテリアや病原菌の繁殖に都合がよい。水には寄生虫がおり、食物の腐食 が速く、熱帯病が多く、貧困層の健康への影響は大きい。 

ドキュメント内 untitled (ページ 30-33)