• 検索結果がありません。

国レベルの貧困の要因

ドキュメント内 untitled (ページ 33-37)

1.3. ペルーにおける貧困の要因

1.3.3. 国レベルの貧困の要因

国レベルで貧困を考える際、貧困の動態的な変化について、さらに踏み込んで分析すべ きである。

2006

年の公式統計では、人口の

48.6%

、すなわち約半数が貧困層であると測 定されている。しかし、これらが慢性的貧困なのか、あるいは一時的貧困なのかでとる べき対策が異なる。慢性的貧困対策としては、全国レベルでの弱者向けの社会政策や経 済社会制度の改革などが必要となり、一時的貧困には、緊急支援の他、一時的貧困状態 に陥ることを回避する資金支援や社会保障へのアクセスの改善が必要となる。

1998

2001

年、

2001

2004

年の

ENAHO

の時系列パネルデータから、全体で「少なくと

1

年以上貧困状態にある」人々は、

67

68

%と推定されており、うち、慢性的貧困状 態を

4

年以上とみると、その数は

1998〜2001

年に全体の

25%、2001〜2004

28%、

一時的貧困を

4

年未満とすると、その数は

1998

2001

43

%、

2001

2004

39

%と 推定されている37。慢性的な貧困の要因とは、

1.3.1

の世帯レベルの貧困要因で検証した ように、世帯あるいは世帯主の特徴が重要な決定要因となる。また、人口、経済、労働 市場などのショックは、一時的貧困の重要な決定要因であるといわれている38。以下で は、国全体の貧困に影響を与えている要因について分析する。

(1)

慢性的貧困の主な要因

慢性的な貧困要因として、世帯レベルで地域に共通してみられる要因の一つとして、イ ンフォーマル・セクターでの雇用があげられており、ここではこの点について国レベル の視点から考察したい。

労働・雇用促進省(MTPE)の

2002

年の

ENAHO

に基づいたデータでは、約

1,200

万人 の労働人口のうち、約

53

%が従業員数

2

9

名までの零細企業で働いている。都市部、

農村部全体の自営業の中で非熟練労働者は約

20

%となっており、これらの合計でペル ーの労働人口の

4

分の

3

を占めている。その中で、

MTPE

は零細企業と小企業に焦点を あて、インフォーマル・セクターが全体のどの程度の割合を占めるのか推定した(表

1-26

)。同表によると、零細企業では

92

%、小企業(従業員数

10

49

人)では

40

%に あたる企業がインフォーマル・セクターにあたり、インフォーマル企業の平均月収は、

フォーマル企業に比べ、零細企業では約

4

分の1、小企業では約

3

分の

1

と格差が大き い。零細企業の約

92

%がインフォーマルであるとすると、労働人口の

48.4

%がインフ ォーマルな零細企業に雇用されていることになる。それらの人々の平均月収は

261

ヌエ ボソルと、ペルーの法定最低賃金の約半分にしか満たない額となっている。インフォー マル・セクターの零細・小企業に従事している労働者の場合、その多くが貧困層である ということはこうした側面からも裏づけられる。

非熟練労働者の多くがインフォーマル・セクターと仮定すると、ペルーの労働人口全体 の約

3

分の

2

がインフォーマル・セクターに属していると推定され、国全体でかなりの 規模を占める。ラテンアメリカ

10

カ国のインフォーマル・セクターの割合の比較では、

ペルーはボリビアとパナマに次いで

3

番目にその割合が高い国である。インフォーマ ル・セクターの零細・小規模企業活動への支援を全国レベルで行うことは貧困削減の観 点から重要である。

37

Chacaltana, (2006)

38

WB, (2005), p59

表 1-26 インフォーマル企業の割合と一人あたり平均月収

フォーマル インフォーマル

% 平均月収(ヌエボソル) % 平均月収(ヌエボソル)

零細企業 7.9 1,045.9 92.1 261.4

小企業 60.0 1,417.2 40.0 515.1

(出所)MTPE, (2005), p40, Cuadro 16より計算。

都市部:インフォーマル・セクターの経済活動

都市では、貧困層の多くがインフォーマル・セクターに従事している。インフォーマル・

セクターでの経済活動は、収入レベルが低く、不安定である上に、社会保障へのアクセ スが十分でなく、貧困リスクが高くなる。

WB

の貧困アセスメントによると、世帯主が女性であること、教育レベルが低いこと、

建設・製造・サービスセクター産業に従事していること、ブルーカラーワーカーである ことなどの労働者の属性がインフォーマル・セクターに従事する可能性の高さに関係す るとしている。すなわち、安定的な雇用機会の不足や教育レベルの低さ、女性といった 属性による差異がインフォーマル・セクターに留まることと関係している。

貧困層がインフォーマル・セクターの経済活動に留まるのは、さらに硬直的な経済・社 会構造に要因がある。

WB

の貧困アセスメントによると、近年の経済成長が、都市貧困 層にとって生産的でより給与のよい雇用にはつながっていないことが問題であるとし ている。貧困層の労働形態では自営が多いが、雇用主および従業員の教育のレベルが低 いため、小規模で生産性の低いインフォーマルなビジネスに従事するにとどまっている としている。また、フォーマル・セクターでの雇用が伸びない、ラテンアメリカに共通 してみられる理由として、労働者権利の保護が厳しく制定されている労働法の存在をあ げ、これが雇用主に正規雇用を増やすことを妨げているとも指摘している。雇用面のみ ならず、企業にとってもインフォーマルな形態に留まるのは、税金の不払いや登録の手 続きが不要等のメリットがあるためである。

農村部:農業生産性の低さ、インディヘナ(先住民)

農村貧困層は主に農業セクターに従事しているが、特にシエラ地域、セルバ地域に多い。

農村貧困層は、家計を主に農業収入のみに頼っており、収入が不安定である。農業以外 の収入源が限定的であることや農業生産性が低い場合、貧困のリスクが高いといえる。

ペルーの農業は、コスタにおける近代的な技術による輸出向け農作物生産とシエラにお ける伝統的かつ労働集約的で、国内市場向けの農作物生産と二重構造になっている。貧 困層は主に後者のタイプの農業に従事している。ジャガイモ、とうもろこし、小麦とい った作物の生産が中心となるが、国連食糧農業機関(

FAO

Food and Agriculture Organization of the United Nations

)のデータによるとジャガイモの生産性(単位面積あた りの収量)は世界

93

位、とうもろこしは

63

位、小麦は

83

位と非常に低い。また、

1970

年代における農業改革の影響で、貧困地域では土地所有が非常に小規模に分割されてお り、農業センサスによると、農業者の

24

%が

1

ヘクタール未満、

55

%が

3

ヘクタール 未満の農地しか所有していない。特に、山岳地域では土地の分割が進んでおり、灌漑さ れている農地も少ない。

WB

の貧困アセスメントによると、農業以外の収入源があるかどうかについては、「世

帯主が女性である」、「世帯主の教育レベルが高い」、「電気などの基本的サービスへのア クセスがある」、「より大きな町に居住している」などの条件がある場合は、非農業経済 活動に従事している可能性が高くなるという結果がある。したがって、逆にこれらの条 件が無い場合には、非農業経済活動の機会が限られる。多くの貧困層はこのような状況 である。

農業生産性については、「世帯主の教育レベルの高さ」、「土地所有権の付与」、「電気へ のアクセス」、「技術的援助」、「融資を受けられること」が生産性を上昇させる要素とし ている。これらの要素の不足が農業生産性向上を阻み、慢性的貧困状況を生むことにな ると推察される。

2001

年の

ENAHO

結果から、ペルー全国で約

4

割以上がインディヘナであると推定さ

れている39。特に農村部においてインディヘナの人口割合が高く、州レベルの貧困要因 で述べたように、農村人口の多い州ほどインディヘナ人口が多く、貧困者比率が高い傾 向がある。インディヘナは非インディヘナに比して、貧困者比率および最貧困者比率と もに約

20

ポイント高い。また、都市部のリマでは、インディヘナと非インディヘナの 貧困者比率の差は約

15

ポイント、農村部においては約

13

ポイントの差である。したが って、いずれの地域においてもインディヘナと非インディヘナでの差がみられる。

インディヘナがより貧しい傾向にある理由は、非常に複雑である。独自の文化を持ち、

長期にわたって文化的隔離があること、インディヘナのコミュニティが地理的に孤立し ていた環境が背景にある。インディヘナの貧困世帯は、非インディヘナの貧困世帯より も子供の就学率や医療機関へのアクセスなどの社会指標が低い。教育については、基本 的な読み書きのレベルが低いという質的な問題が深刻であること(

1.2.4

教育)、世帯主 の教育レベルと貧困との関係が高いこと(

1.3.1(2)

貧困世帯の特徴)を示したが、特に インディヘナはスペイン語を母語としないため、教育方法の配慮が必要であるが、そう した配慮が不足している問題が指摘されている40。また、電気、水などの公共インフラ へのアクセスは、貧困世帯のみならず、非貧困層も含めた全世帯で非インディヘナ世帯 と比較して低いことが指摘されている。そのため、国全体としても、インディヘナを貧 困削減の対象として重視する必要がある。さらにジェンダー格差もインディヘナ人口に おいて高いことがあることから41、貧困対策の立案において留意する必要がある。

(2)

一時的貧困の主な要因:貧困のリスク、脆弱性 都市部:マクロ経済ショック42による影響

WB

の貧困アセスメントによると、リマ、その他都市の貧困層は、農村の貧困層と比較 して、経済危機の影響でショックを受けた割合が高い。ただし、非貧困層との比較では ショックを受けた割合にあまり差異がない。全国的にはショックを受けた非貧困層世帯 の割合がやや多く、リマ市では同等、他の都市部で貧困層の割合がやや高いが、いずれ も、統計的な差異は認められないとしている。一方、性別でみると、全体として女性が 世帯主の場合は、男性の世帯主よりも経済的ショックを受けた割合が高いことを指摘し ている。

39 例えば、母国語がスペイン語でない、あるいは、自己申告でインディヘナであるとされている割合が

45%

である。

WB, (2005), P53

。原典は、

Trivelli, Carolina (2004)”Indegenous Poverty in Peru: An Empirical Analysis”

40

Banco Munidal, (2006b), p10

41

JBIC, (2001), P17

42

WB

のアセスメントでは、「世帯主の失業あるいは異なる業種/セクターへ転職」と定義している。

ドキュメント内 untitled (ページ 33-37)