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地方分権化と地方政府

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第 2 章 ペルー政府の取組みと成果

2.2. 貧困削減に向けた政府のキャパシティ

2.2.2. 地方分権化と地方政府

(1)

財政資金のキャパシティ

フジモリ政権下では、経済安定や治安回復など様々な課題を克服するために、中央集権 化を進めたが、基本的な公共・社会サービスを普及し、地域間格差を是正し、貧困削減 を効率的に進めていくには、適切な地方分権化が求められる。そのため、中央集権的な 行政機構の改革を行い、地方分権化を進めるための試みが、トレド政権下の

2002

年以 降行われてきており、それを加速しようとしているのが現在のガルシア政権の「地方分 権化ショック」政策である。

2006

年のペルー経済研究所(

IPE

Instituto Peruano de

Economía

)の調査によると、公共サービスインフラの不足分を補う投資額は

2005

年時

点で

230

億ドルと推算されている。また、多年度マクロ経済指針(

MMM

)によれば

2007

年から

2011

年に見込まれるインフラへの公共投資額は

13

億ドルである。地方分権化に よって、地方の財源不足を補ってインフラ投資を促進することが目標とされている。

地方自治体は、地域政府(

Gobierno Regional

、州政府を指す)と地方政府(

Gobierno Local

、 州レベルより下の地方政府を指す)の

2

つのレベルがある。地方行政区分としては、地 方政府はさらに、郡(

Provincia

)、市町村(

Distrito

)に分けられる60

2000

年以降、地 方分権化の基本的な法整備が進められてきた。州政府は徴税権を持たないが、州レベル より下の地方政府には資産税などの徴税権がある。地方政府の財政収入の内容をみると、

2005

年の実績で約

64

%が中央政府からの財政移転収入で、約

24

%が非税収(手数料や 物品・サービスの売り上げ)、約

10

%が税収となっている。約

64

%の財政移転収入のう ち、地方補填基金(

FONCOMUN: Fondo de Compensación Municipal

)や「一杯の牛乳(

Vaso

de Leche

)」等の社会プログラム資金の移転が約

41

%を占め、中央政府との共通歳入が

残りの約

23

%である。

60

25

の州

(Departamento)

、約

200

の郡(

200

、約

1,800

の市町村(

Distrito

)がある。

Distrito

は地理区分で は「区」となるが、ここでは、行政単位を指すので「市町村」とする。なお、カヤオ特別郡(Provincia

Constitución de Callao

)は地域政府としての地位を与えられたが、首都リマについて地域政府は設けられ

ておらず、リマ地域政府はリマ特別郡(Provincia Constitución de Lima)を除く他の郡を管轄している。

FONCOMUN

とは、後進地域、農村地域、都市周縁地域を重点として優先的に再配分を 行う基準61によって、各市における投資の促進を目的に設置された基金である。

FONCOMUN

の主たる財源は市振興税であり、この他に車両税、船舶税が充当されてい

る。

2005

年において

FONCOMUN

の対象となっている市は

1,831

市、金額で約

20

億ヌ エボソルとなっている。

中央政府との共通歳入の資源税(

Canon

)は、鉱山、石油、水力、漁業、林業、ガスの

6

つの資源に係る経済活動から得られる税金である62。資源税は導入以来、年々増加し ており、

2005

年の総額は

19

億ヌエボソルを超え、対

GDP

比でも

0.73

%にまで増えて いる。

2000

2003

年では、石油資源税が最も大きな割合を占めていたが、鉱山資源税 が

2005

年に

8

8,800

万ヌエボソルとなり、

2006

年には

17

4,600

万ヌエボソル、

2007

年(予測)約

48

億ヌエボソルと毎年倍増し、最も大きなシェアを占めている。また、

ガス資源税もカミセア天然ガスプロジェクトが操業を開始したことにより、

2004

7,300

万ヌエボソルから

2005

年は

3

億ヌエボソルを超えた。

2000

2006

年の地方政府の財政状況は、経常歳入は

2000

年約

36

億ヌエボソルから

2006

年約

78

億ヌエボソルへと伸びており(対

GDP

比では

1.9%から 2.6%)

、基礎的収支お よび総合収支のいずれも年度によって変動はあるが、全体でみると、

2001

年以外は赤 字計上されていない(表

2-16

)。一方、財政透明責任法で地方政府に対して設定してい る

3

つの指標63については、

2005

年において全てクリアしている地方政府は全体の約

7

割で、残りの約

3

割は到達しておらず、地方による財政のマネージメント能力の違いに 留意する必要がある。

表 2-16 地方政府の財政状況

(単位:百万ヌエボソル)

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経常歳入 3,624 3,692 4,113 4,631 5,375 6,457 7,863 非金融歳出 3,729 3,792 4,059 4,465 5,123 5,810 7,978   経常支出 2,204 2,290 2,525 2,795 3,124 3,586 4,888   資本支出 1,525 1,502 1,534 1,670 1,998 2,224 3,090 資本収入 290 202 154 167 73 99 394 基礎的収支 185 102 207 333 325 745 279 金利 92 110 92 84 84 70 89 総合収支 92 - 8 116 249 241 675 190

(出所) Banco Central de Reserva del Perú,

ウェブアドレスhttp://www.bcrp.gob.pe/bcr/Cuadros/Cuadros-Anuales-Historicos.html, 20078月現在

(注1) 2003年〜2006年数値は、暫定値。

61 配分の基準は以下の点等である(

INEI

のデータを参照)

人口(農村人口に比重を置く)

乳児死亡率(リマおよびカヤオ以外の市町村)

基本的ニーズ不足指数(リマおよびカヤオの各郡)

62 石油については、生産金額の

12.5%、鉱山等の資源については法人税の 50%、林業については利用権の 50%が地方政府へ移転される。

63 指標

1=債務全額/純経常収入額

(≤100%)指標

2=年間債務サービス額/純経常収入額

(州政府:≤25%、

郡、市町村政府:<

30%

、指標

3

:過去

3

年間の一次収支の平均(<

0

、出所:

MEF, (2007), P80, Table 24

より。

天然資源収入からの財政移転は、資源を持つ州に財源が移転されることになる。経済財 政省の多年度マクロ経済指針(

MMM

)の分析では、

2000

年〜

2007

年にかけて、国際 市場で石油、ガス、鉱物資源の価格が上昇したことから、資源税(

Canon

)と資源採掘 権のロイヤリティ収入が増加した。その結果、資源税(

Canon

)移転については資源を 持つ州において有利となり、州別の

1

人あたりの資源税と基本的ニーズ指数(

NBI

)と の相関関係をみると

2007

年ではマイナス

0.3

の負の相関があり、貧困州ほど配分が少 ない傾向がある64

2007

年予算の州別の

1

人あたりの財政支出額と

FONCODES

の欠乏指数65との関係をみ ると、欠乏指標の低い

5

1

区(リマ、カヤオ、タクナ、アレキパ、モケグア、イカ)

に投入された

1

人あたりの国家予算は、最も欠乏指数の高い

5

州(ワンカベリカ、ワヌ コ、カハマルカ、アプリマク、アヤクーチョ)に投入された額の平均値の

2

倍となって いる66。教育、保健セクターの

1

人あたり政府支出と欠乏指標との相関をみても、貧困 州の支出は富裕州と比較して低い傾向があり、特に保健セクターについては、欠乏指標 が低い富裕州(リマ、タクナ、モケグア、マードレ・デ・ディオス)は、欠乏指標の高 い州を含めた残りの州の支出の

2

倍である67

中央政府からの地方政府への財政移転は、貧困州に対し予算配分上で一定の配慮がある ものの、

2002

2007

年の移転収入の増加は、結果として、貧困州よりも富裕州に対す る増加が大きかったとみられる。貧困州におけるインフラ整備と人的資本開発を進める ためには、国内財政資金の配分の適正化が必要である。

(2)

社会プログラムの地方分権化の進捗

地方分権化の下では、地方政府が財政資金を効率的に利用し、自らの責任で有効なプロ ジェクトやプログラムの形成を行い、実施することが求められる。地方政府は地域住民 に最も近く、地域の問題も把握しており、地域のニーズに基づいた計画を策定できると いう前提がある。しかし、地方政府の能力が十分でない場合、権限や資金の供与が先行 しても、外部からの支援がなければ、プログラムの効率的な実施にはつながらない。

保健省は

2004

年以降、州政府レベルへの地方分権化プロセスを開始している。ガルシ ア政権では地方分権化政策の一つとして、郡、市町村レベルの政府に一次医療機能(基 礎衛生機能、医療予防機能、一次医療行政、診療所の建設と機材の配備、一人医療拠点 や小規模医療拠点の配備)を移管するパイロットプロジェクトを開始したところである。

このパイロットプロジェクトでは結果重視の予算配分が行われている。また、教育に関 しては、初等教育の市町村への移管が試行的に行われている。

FONCODES

PRONAA

の市町村政府への移管は、トレド時代の

2003

年に開始された。

移管対象となる市町村は、一定の判定基準に合格したところである。ガルシア政権では

2007

年度中に

FONCODES

の全てのプロジェクトの移管を完了することが目標とされて

いる。

FONCODES

のコンポーネントの中で社会・生産インフラプロジェクトは、

2003

2006

年の間で

1,151

市町村へ移管がなされ、

2007

年に残りの

558

市町村への移管が

計画されている。しかしながら、

2005

2006

年の地方政府への権限の移管は、欠乏指

64

MEF, (2007a), p76

65 社会開発協力基金(

FONCODES

)が算定している指数。詳しくは、本報告書の

1

章を参照。

66

Vasquez, (2007a), p53

67

Vasquez, (2007a), p45-46

数の低い

8

州に関しては計画以上の進捗があったが、欠乏指数の高い

8

州は計画の約

6

割と地域によって不均一であり、適切な移管の実施が必要である68。また、

FONCODES

のプロジェクトは個別の対象地域の各組織単位(コミュニティ)で自立的な運営・維持 管理体制がとられていたが、市町村政府に移管された後の状況について検証する必要が ある。

PRONAA

を地方分権化する最大の目的は、各地方の貧困状況と必要性に応じてプログ

ラムを実施させることにあった。

2003

年以降、食堂救援プログラム(大衆食堂、

Comedor

Popular

)などといったプログラムが地方政府へ移管されてきた。

2007

年には栄養総合

プログラム(

PIN

)が、

195

郡政府(あるいは中規模都市)において移管のための基準 審査をした上で実施される。

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