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3.3 Fr 中性化器の設計・製作

3.3.2 Fr 中性化器の製作

ら放出される際の可能な立体角2πに対する割合はおよそ2×103である.ここで,全 ての原子は1サイクルで100%イオン化/中性化され,上記立体角の割合による確率で中 性化器から外に出るとする.その場合の中性化器内に残存する原子の初期値に対する割合 をサイクル数でプロットしたものが図3.13の太線である.

3.13 Fr中性化器内に残存する原子とサイクル数の関係

およそ1000サイクルで初期に中性化器に存在する原子のほぼ90%が中性化器から放 出されることが分かる.図3.13の上部の指数関数曲線は,210Frがそれぞれ1サイクル の時間を仮定した際にそのサイクルの時点でどれほど崩壊せずに残存しているかを示す.

最も上部の実線はここまで議論を行なってきた値からの概算値を使用した場合,2番目・

3番目は1サイクルにそれよりも長い時間がかかる場合を示している.イオン化/中性化 のサイクルから原子が抜ける時間は,かなり余裕を持って見積もっても崩壊よりも充分速 いと考えられる.

ただし,これは大まかな傾向を見るための簡略化したモデルであり,イオン化/中性化 効率等考慮していない要素もあることを申し添えておく.

3.14 Fr中性化の構成図.(1)オーブン,(2)中性化標的,(3)熱シールド及びヒー ター,(4)真空チェンバーの一部である.

中性化標的

図(3.15)Fr中性化の為の中性化標的の外観を示す.中性化標的はFrのイオン化ポ

テンシャルEIP(Fr) = 4.1 eV [55]より十分小さな仕事関数をもち,また,原子の脱離は熱 的に行われ温度が高ければより脱離が起きやすくなるため高融点の金属である事が必要で ある.今回は中性化標的の素材は厚さ100 nmの純度99.99%のイットリウム(Y)コー ティングを施したタンタルを用いた.Yの仕事関数はEWF(Y) = 3.1 eVであり,これは Frのイオン化ポテンシャルより充分小さいので表面中性化が可能である.また,Yの融 点は1522 Cであり,高温の運転にも耐える事ができる.

中性化標的の大きさは直径2 mmの円形で,ここから可能な全立体角に原子が放出さ れる.中性化標的は電気的には碍子を用いて絶縁されており,任意の電圧を印加すること が出来るようになっている.

3.15 Fr中性化標的外観.中央下部の白い碍子の中心に中性化標的が見える.周囲 の銀色の部分はオーブンからの熱を遮断する熱シールドである.

オーブン,ヒーター及び熱シールド

オーブンはFrをイオン化するために,中性化標的と逆にFrのイオン化ポテンシャル よりも大きな仕事関数を持つ金属を使用する.今回オーブン素材は純度99.99%のプラ

チナ(Pt)で厚さ100 nmのコーティングを施したタンタルを用いた.Pt の仕事関数は

EWF(Pt) = 5.6 eVであるから,表面に付着したFrはイオン化される.また,Pt及びタ ンタルの融点は1768 C及び3020 Cであり,中性化標的と同様に高温で使用出来る.

オーブンの周囲を取り囲むようにタングステン製のヒーターが設置されており,ここに 電流を流す事で最高で約1300 Cまで昇温を行うことが可能である.

オーブン及びヒーターの周囲は4重のステンレス製熱シールドで覆われており,ヒー ターによって発生した熱を効率よく閉じ込めることが出来るようになっている.加えて,

このシールド部分に電圧を加えることによってPtオーブンから放出されるRbイオンを オーブン内部に閉じ込める電場を形成するリフレクターとすることが出来る.

また,オーブンの温度は直近にある熱電対でモニターすることが出来る.

図3.16に中性化標的とオーブンの外観を示す.

中性化器チェンバー

図3.17に中性化器チェンバーを示す.中性化器の内容物は最高1300 Cと大変高温に なることから,チェンバーの過熱に注意を払う必要がある.オーブン及びヒーター周囲の 熱シールドでも防ぎ切れない熱伝導があることから,チェンバー全体を冷やすことが出 来るように冷却水配管が張り巡らされている.中性化器運転時は冷却水チラーを接続し,

チェンバーの冷却を行う.

チェンバーの真空引きはロータリーポンプ及びターボ分子ポンプで行う.真空系ポー ト,熱電対配線ポート,ヒーター配線ポート及び汎用ポートを備えている.

3.16 Fr中性化器熱シールド外観.手前側上部の直径20 mmの穴からFrイオン ビームを入射する.手前側中央下部の小さな穴には碍子付き中性化標的を挿入する.

奥側下部に見える穴はちょうど中性化標的の正面に位置しており,そこから原子線が取 り出される.

3.17 中性化器チェンバー

第 4

Rb イオンビームによる Fr 中性化器

の性能評価実験

この章では前章で詳細を述べたFr中性化器のルビジウム(Rb)による性能評価実験に ついて述べる.Frは放射性元素であり加速器を使用しなければ生成出来ない為簡単には 実験が行えないが,化学的性質のよく似たアルカリ原子であるRbを用いて実験装置の性 能を評価することができる.